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 山之中女子学園には、ヒトイヌ科とヒトイヌトレーナー科がある。  基本的にヒトイヌ科の者とトレーナー科の学園生がペアを組む制度の性質上、両科のクラスが分かれているわけではない。ひとつのクラスに、ヒトイヌ科とトレーナー科の学園生が、ほぼ同数所属している。  ただし、その教室に置かれている机と椅子は、トレーナー科の人数ぶんだけ。  ヒトイヌ科の者はリードを引かれて登校したあと、午前中の授業のあいだは、飼育係たるトレーナー科学園生の机の横で『待て』の姿勢で控えていなければならない。  ヒトイヌ科の者のお昼の食餌は、顔の拘束具の開口式口枷から流し込まれる流動食。なお、水分補給は同じやり方で適宜行なわれる。  それから、午後はおさんぽの時間。学園内に作られた町並みの中を、ほんものの犬のように散歩する。  ただし盛夏の時期のみ、おさんぽは午前中。常春の山之中とはいえ、その時期の午後は気温が上がりすぎるからだ。  そしておさんぽのあとは休憩を兼ねて1時間の授業が行なわれ、寮に戻ってヒトイヌ装具から解放される。  その後、夕食の時間を除き就寝までは自由時間。  そんな学園に華恵と楓が入学、お互い初対面で惹かれ合いペアになってから、1年半の歳月が過ぎた。  入学以来、2学期制の学園で1年生の2学期、2年生の1学期、さらに2学期と、ふたりは互いをペアとして指名し合っていた。  そのなかで、楓は卒業するまで華恵とペアでありたいと、華恵は楓をペアとして指名し続けたいと考えるようになっていた。 (いえ、それだけじゃない……)  楓は思う。 (卒業してからも、私は華恵と一緒にいたい)  とはいえ、華恵はヒトイヌになりたいと、卒業してからもヒトイヌであり続けたいと考えている。  卒業後も華恵と一緒にいるということは、彼女の飼い主になるということだ。 (はたして、私に……)  華恵を人ではなくヒトイヌとして、生涯飼い続けることができるのか。  格別の贅沢をしなければ一生食べていけるだけの財産分与が確約されている楓は、一般女性よりヒトイヌを飼うにあたってのハードルは低い。  だが、それはあくまで資金面での話。  もともとヒトイヌを飼うことに興味がなかった楓には、人ひとり、いやヒトイヌ1頭の一生を背負う覚悟は、いまだできていなかった。 (あたしは……)  卒業まで、楓とペアでいたい。  いや、卒業してからも、楓にヒトイヌとして飼われ続けたい。  楓が華恵と一緒にいたいと思っているのと同じように、彼女もそう考えるようになっていた。 (でも……)  楓は、そう言ってくれない。  彼女は、自分のことを嫌っていない。それどころか、誰よりも好いてくれている。そうでなければ、4期にわたり、ペアとして指名してくれないだろう。  ではなぜ、卒業後も飼い続けると宣言してくれないのか。  その理由を、華恵はなんとなく察していた。  楓はもともと、ヒトイヌに強い興味を持って学園に来たのではない。それだけに、プライベートでヒトイヌを飼うイメージが持てないのだろう。  華恵のことを人として、ひとりの女の子として好いてくれていても、その相手を生涯飼育し続けると決められないのだ。 (だったら、自分がヒトイヌになることを諦め、ひとりの女の子として楓に愛される道を……)  だがそれは、華恵にとって選べない道だった。  自ら選んで切り拓いたヒトイヌの道を諦めることは、華恵にはできなかった。 (卒業まであと1年半……)  そのあいだに、楓がヒトイヌを飼う決意をしてくれるか。  それとも、自分が翻意するか。 (ともあれ、今は……)  飼育係のトレーナーたる楓の躾を素直に受けるしかない。  そう思い直し、華恵はヒトイヌとして一歩先に進むための躾に臨んだ。  山之中学園では、1年生時はヒトイヌとして飼育係のトレーナーの指示に忠実に歩行する訓練を中心に行なわれる。  それを1年で身につけたあとは、少しずつ応用の訓練が行なわれるとともに、その進行度合いに応じて、ヒトイヌ装具が追加・交換される。  登校時、楓が鞄に入れて持ち歩きつつも――彼女自身が望んでしていたのではなく、校則で定められたことである――いまだ使われたことがない装具。  それの装着を行なうため、担任教師の許可を得たうえで午前の授業中、華恵は校舎内の処置室に連れ込まれた。  その部屋の中央部の処置台の上に、華恵はヒトイヌ状態であお向けに寝かされた。  脚の拘束具を着けるときと同じポーズ。  ただしいつもと違い、腰の下に合成皮革張りのクッションが敷かれている。  そのせいで床から浮いた状態のお尻には、ほんものの犬にはあるはずのものがなかった。  それは、尻尾。  これまで、ヒトイヌ華恵には尻尾がなかった。いわば未完成のヒトイヌだったのだ。  だが今日、華恵はヒトイヌとして完全体になる。楓の手による調教はまだまだ続くが、形はひとまず完成する。  とはいえ、学園指定の尻尾の装着には、高いハードルがあった。  犬の尻尾をかたどった毛束の根元、円形の土台部分の裏側に、太さ2センチほどの棒を介して取りつけられた、三角すいのような部分。  一番太い部位の直径が4センチ近くあるそれを、楓がヒトイヌ華恵に見せつけた。 「……ッ!?」  いずれはそれを嵌められるのだと、何度か見せられたことはある。  それを装着された先輩たちは、毎日四足歩行している。  だが、これから自分に着けられるという状況であらためて見せられたそれは、とてつもなく凶悪な代物だった。 (こ、こんなの……あたしのお尻に挿入《はい》らない)  理性ではなく本能の部分で、そう感じてしまう。  そう、尻尾の装具の三角すいは、ヒトイヌの肛門に挿入されるものなのだ。  その部分を肛門内に納め、土台につながる棒部分を括約筋で食い締めることで、尻尾を固定する。さらに上下からファスナーを閉じて円形の土台をスーツで押さえることで、けっして抜けなくさせる。  入学当時から聞かされ、知識としては知っていた事実が、現実味を帯びて重くのしかかる。 (できることなら……)  装着を先延ばししたい気持ちが、華恵のなかに生まれる。  しかし、楓は許してくれないだろう。  ヒトイヌ装具をきつく締め込まれるときと同じように、尻尾装具の三角すい――アナルプラグを、容赦なくねじ込まれるに違いない。 (でも……)  装具装着に容赦のない楓だが、華恵が耐えられないことはけっしてしない。あえて口にはしないが、そうと心に決めていることが、ひしひしと伝わってくる。 『きついところ、痛いところはない?』  スーツを着付けたあと訊ねるのも。 『装具が締まりすぎたりしていない?』  ヒトイヌの設えをすべて整えて最後に確認するのも、その方針あってのことだ。 (だから……)  華恵は、楓に身を委ねる。 「始めるよ」  宣言して開いた両脚のあいだにしゃがんだ楓が最初に手にしたのは、ファスナー用の小さな鍵。  それをつまみの根元の鍵穴に差し込むと、お股のファスナーのふたつのスライダーのうち、ひとつを動かした。  少しずつ、1秒1センチ程度の速さでゆっくりと。 「うふふ……」  妖艶に嗤う声が聞こえた気がしたのは、楓がほんとうに笑ったのか。それとも、華恵の空耳か。  余裕がなさすぎて、どちらかわからない。  とはいえ、ほんとうに嗤い声が聞こえても不思議ではないほど、楓の瞳は妖しく輝いていた。 (どうして……?)  楓はそんな顔をするのか。  新たなヒトイヌ装具、尻尾のアナルプラグを楓に嵌めるのが、そんなに楽しいのか。  楓の手でヒトイヌに仕立ててもらうことを、華恵が愉しんでいるように。  それも、わからない。  ファスナーが開けられたせいでお股に外気が触れ、ますます考える余裕を失っていく。 「恥ずかしいね、山田さん?」  それは、お股が丸出しになったことか。  それとも――。 「山田さんのここ、びしょ濡れになってるよ」  妖しく輝く目を細めて、楓が告げた。 「う、うぉ(嘘)……」 「嘘じゃないよ」  そこで医療用の薄いゴム袋を嵌めた楓が、露わになったそこに触れた。  直後、妖しい感覚が生まれる。 「う、ぃっ……!?」  甘みを帯びた悲鳴。  くちゅ。  粘着質な水音。  割れめに沿って楓が指を動かすと、妖しい感覚がジーンと広がる。 「ぅ、あ、ぁ……」  くちゅ、くちゅ。  口から漏らすくぐもった艶声と、媚肉から聞こえるいやらしい音。 「気持ちいいの、山田さん?」  もう、否定できなかった。 「ぅあぃ(はい)……」  答えて小さくうなずき、楓の指技に酔わされていく。  実のところ、楓が巧みなわけではない。むしろ、稚拙なほうだ。  にもかかわらず華恵が性の悦びを得ているのは、してくれているのが楓だから。大好きな彼女乃指がそこに触れているからこそ、華恵は高まるのだ。  加えて、華恵は――。  そこで、快楽が大きくなった。 「あ、ぅ、ぁうぅ……」  妖しい感覚が背すじを駆け抜け、艶めいてうめく。  熱く火照る媚肉が、とぷんと蜜を吐き出す。 「すごいよ、山田さん。洪水みたい」  そのさまを揶揄され、強く羞恥を覚える。  恥ずかしさすら性感を冷ますことはなく、むしろ華恵を高める触媒にしかならない。 「ローションは必要ないようね」  楓が口を開いた直後、彼女の指が肛門に触れた。  くちゅ。  とそこでも淫靡な水音。  媚肉が吐き出した蜜が、肛門にまで垂れていたのだ。  その蜜をまぶすように、窄まりの周りに円を描くように楓の指が動く。  くちゅ、ぴちゅ。  あえて華恵に聞かせるように。そこまで湿らせるほど、媚肉を濡らしていることを自覚させるように。  いやらしく、執拗に、窄まりの周りの肉をほぐしていく。  楓の指の動きが、肛門にも妖しい感触を生み始めた。 「う、ぁ、う……」  その感覚が、華恵をうめかせる。  うめかせて、いっそう肉を熱くさせる。  媚肉からとぷん、とぷんと蜜を吐き出させる。  そのタイミングで、楓の指が窄まりの中心を押した。 「あ、ぅあっ……」  ひときわ艶めいてうめいたところで、楓の声。 「山田さん、軽くいきんで」  その言葉に、反射的に従った直後である。 「……ッ!?」  つぷん、と楓の指が窄まりをこじ開けた。 「あ、ぃ、あ……」  ゾワゾワと妖しい感覚を生みながら、楓の指が侵入してきた。 「ぁ、う、ぉうぃえ(どうして)……?」  あっけなく侵入を許したのか。 「それはね……」  その言葉にならない問いかけにも、楓は答えてくれる。  1年半の飼育をへて、顔の拘束具で開口を強制された華恵の言葉にならない声を、彼女は聞き取れるようになっていたのだ。  とはいえそれは、楓だけの特殊技能ではない。  開口を強制されているからといって、完全に声を封印されているわけではないし、ヒトイヌが思わず発する言葉の種類は限られる。  長期にわたって飼育を担当していれば、ヒトイヌがなにを言いたいのかわかるようになる。 「身体の自然な反応よ。いきむと肛門が少しだけ開き、かえって挿入しやすくなるの」  楓の言葉が、ほんとうなのかどうかはわからない。  だが現実に、彼女の指は肛門に侵入している。それになにより、楓は華恵に嘘をつかない。  女の子の場所が、びしょ濡れだと指摘したときのように。 「あ、あぇ(なぜ)……」  媚肉のみならず、肛門でも性の悦びを得てしまうのか。 「きっと、山田さんがエッチなヒトイヌだからでしょうね」  それは楓が今日、初めてついた嘘だった。  人の肛門には少なからず性感帯が存在している。個人差こそあれど、誰しも肛門で快楽を得られるものなのだ。  その事実を包み隠し、楓は華恵がエッチだからと決めつけた。 (あぁ、あたし……エッチなヒトイヌなんだ……)  しかし、楓は嘘をつかないと思っている華恵は、そう信じさせられた。 「私、ヒトイヌはエッチなほうが好きなの」  さらに言われて、華恵はエッチでもいいんだと、いやエッチなほうがいいんだと思わせられた。  そこで、挿入後じっとしていた楓の指が動き始める。  少しずつ、華恵の奥まで。それからまた、ゆっくり引いていく。  その動きに合わせ、お尻の妖しい感覚が強くなる。 「ぁ、う、あぅ……」  開口を強制された口から漏れる吐息が、どんどん艶を帯びていく。 「あぅ、ぁ、あ……」  ますます性感が高まり、媚肉が蜜を吐き出す。  溢れた蜜が、肛門に垂れる。  その粘液を潤滑剤に、指の動きが妖艶さを増してきた。  くちゅ、くちゅ。  お尻から聞こえる水音も、いやらしさを増してきた。  肛門性感で官能の焔が燃え上がる。  燃え上がった焔で、華恵は身を焦がされる。  焦がされた身が、肉が、いっそう熱く火照る。 「ずいぶん柔らかくなってきた……もう頃合いかしらね」  そこで、楓のひとりごとのような声が聞こえた。 「山田さん、もう1回いきんで」  続いて、はっきりと語りかけられた。 「あぅ……ぅあぃ(はい)」  思考することなく、その声に従ったところで――。 「……ッ!?」  楓の指とは違う、硬いものが肛門に押し当てられた。 「ぅ……あ、あ!?」  硬い異物が、窄まりをこじ開け始めた。 「おぇあ(これは)……?」  異物の正体が尻尾のアナルプラグだと気づき。 「あぃああぃ(入らない)ッ!?」  思わず声をあげた刹那、その一番太い部分が、肛門の最も狭いところを通過した。  すぽん、とプラグがお尻に嵌り込む。 「ぅ、アゥうん……」  これまでで最高に大きな快感がゾクッと駆け抜け、華恵が艶めいてうめく。 「あ、ぃ、うン……」  思わず嵌まったプラグを括約筋でキュッと食い締めてしまい、もう一度。 「全部入ったね?」 「ぁう……ぁんえ(なんで)?」  あんな凶悪な代物を、痛みもなくお尻に挿入されたのか。 「山田さんが気持ちよくなってたのは、肛門のマッサージだったのよ。それですっかりほぐされて、あなたのお尻の穴は、プラグを受け入れられるようになってたの」  華恵の疑問に答えながら、楓がファスナーを閉じ始めた。  熱く火照る媚肉が、スーツの膜に隠される。尻尾の毛束を上下から挟み込むように。  股間の開口部から露出するのは毛束だけになったところで、ファスナーのスライダーを施錠された。  円形の土台をスーツで押さえられ、楓が管理する鍵なしには、自力で尻尾のプラグを抜くことができなくなった。  そんな華恵を、楓が抱き起こす。  膝をつかせて『待て』の姿勢を取ったところで、尻尾プラグ装着に合わせて交換されていた股間ベルトを這わされる。  お尻の位置に合わせて取りつけられた金属リングから尻尾を抜き出し、リングの位置を微調整しつつ全体の長さを調整。これまで以上にきつく締め込んで、バックルに施錠。  それから、楓に背後から抱きしめられ、耳元でささやかれた。 「もうすぐお昼。ご飯を食べたら、おさんぽの時間よ。尻尾つきの完全なヒトイヌ姿を、みんなに見てもらおうね」  その言葉に、あらためて尻尾のプラグを意識しながら。 「ぁ、ぅあぃ(はい)」  華恵は蕩けてうなずいた。  楓にリードを取られ、学園内に作られた町並みを歩く。  折りたたんで拘束された動かし、肘と膝を使って、尻尾つきの状態で初めてのおさんぽ。  ただでも圧倒的な存在感をもって肛門を占拠する尻尾のプラグが、一歩手足を運ぶごとにお尻の肉を擦る。  そこで快感を得ることを覚えたばかりの肉体が、いっそう昂ぶらされる。  加えて、尻尾つき仕様に交換され、これまでよりきつく締め込まれた股間のベルトだ。  それが、スーツ越しにお股に食い込む。  食い込んで、熱く火照る媚肉を刺激する。  そのせいで、いつもより身体が熱い。 「はッ、はッ、はッ……」  犬の呼吸も、普段より荒い。  熱に浮かされたように頭がぼうっとするのは、肉の熱のせいか。それとも、官能に頭が蕩けているのか。  わからない。わからないが、ヒトイヌとしての歩行は乱れない、  1年半にわたり、楓に躾けてもらったから。躾けてくれた楓が、今もリードを手に導いてくれているから。  華恵はすべてを楓に委ねられる。 「はッ、はッ、はッ……」  犬のように呼吸しながら、犬のごとく涎を垂れ流し、ヒトイヌとして四足歩行できる。 「はッ、はッ、はッ……」  楓と彼女の指示だけに集中できる。  ここにきて、華恵の願望はますます強くなってきた。  自分はただ、ヒトイヌになりたいのではない。  ヒトイヌになり、ヒトイヌとして、大好きな女性《ひと》――楓に飼われたい。  学園にいるあいだ飼育係を務めてもらうだけじゃなく、卒業後も所有され、飼われ続けたい。  学園を卒業してからも、愛する彼女の容赦ない躾を、ずっと受け続けたい。  その思いが、どんどん大きくなってきた。 (そして、たぶん……いえ、きっと、楓も今は私と同じように……)  リードを取り、側に寄り添って歩いてくれる彼女の存在を感じながら、華恵の期待は膨らんでいった。  ヒトイヌ装具にいやらしく刺激され続ける、お尻と媚肉の快感に蕩けながら。  華恵のリードを取って歩きながら、楓ははっきりと自覚した。 (私は……)  ただ、華恵と一緒にいたいわけではない。  自らの手でヒトイヌに仕立てた華恵を、ヒトイヌとして躾け、ヒトイヌとして飼いたいのだ。 (いえ、それは……)  今に始まったことではない。  初めて華恵にヒトイヌ装具を装着したときから、その願望は楓のなかに生まれていた。  ただ、好きな女の子を、人ではなくヒトイヌとして、生涯飼育する覚悟を持てなかっただけ。  その覚悟を今、楓は決めた。  いや、それも正確ではない。  相手の指向に合わせてそうするのではなく、ヒトイヌ華恵を飼い、躾け、責め苛みたいとが、自らの望みであると悟ったのだ。 (だから……)  これからも、楓自身が望むように、華恵を厳しく躾ける。  躾けるだけじゃなく、優しくいやらしく責め苛む。  自分だけのヒトイヌにすべく、かわいい華恵の精神と肉体に、楓の所有物としての証を刻む。 (でも……)  そこで、楓はその瞳に妖しい光を灯した。 (でも、卒業まで、華恵には私の気持ちを伝えない……私に一生飼われたいと思ってるあなたは、きっとやきもきして過ごすのでしょうね)  そして、尻尾を振りながらヨチヨチ歩く華恵を見下ろして唇の端を吊り上げ、愛しきヒトイヌには聞こえない程度の小さな声でつぶやいた。 「それもまたヒトイヌの躾、私からあなたへの責めなのよ」 イラスト『ヒトイヌ科3年3組の山田さんはおさんぽイヤイヤ中』キャプションSSに続く。

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