鏡に映った己の姿を見て絶望する逃走中の女装奴隷7号 (Pixiv Fanbox)
Published:
2022-08-01 09:00:00
Imported:
2022-08
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ボクがある女の手でこの場所に囚われ、女装奴隷7号と呼ばれるようになってから、どれほどの時間が経っただろう。
10日ほどのような気もするし、もうひと月以上が経過したようにも思える。
突然スプレーで霧状の睡眠薬を吸わされ、意識を失ったボクは、目を覚ますとここにいた。以来、与えられる食事の回数と、取らされる睡眠の回数で日にちを数えた。10日というのは、そうして数えた日数だ。
だが、あるとき気づいた。
鼻のすぐ下までを覆うネックコルセットをくつろげられ、強制的に与えられる食事が、1日3回とは限らない。被らされた全頭マスクの鼻の呼吸穴から睡眠薬を吸わされて、無理やり取らされる睡眠が、24時間ごとという保証はない。
おまけに、眠らされたままここに運び込まれ、覚醒させられるまでに経過した時間もわからない。
眠らされているあいだに、奴隷としての肉体改造を施したという女の言葉がほんとうだとすれば、誘拐当日に目覚めたとは考えにくい。
ともあれ、それから食事と睡眠の回数を数えて10日間。ボクは改造されたという自分の身体の状態を確認できていない。
視覚を完全に奪われて、なにも見えなかったのだ。
全頭マスクを被らされているのも、ネックコルセットを嵌められているのも、それらを勝手に外せないよう厳重に拘束されているのも、すべて身体感覚でそうと察知したこと。
いや、おそらくボクが着けられているのは、全頭マスクにネックコルセット、上半身の拘束具だけではない。
女が貞操帯と呼ぶ硬い金属の装具が、股間に嵌められている。足には、超ハイヒールのブーツを穿かされている。お腹から胸の下部にかけてをコルセットで締めあげられ、息を大きく吸い込むことが難しい。
目は見えないし、手の自由がないので触れて確認することはできないが、なんとなくそこまでは理解できていた。
だがボクが気づいていないだけで、ほかにもなにか取りつけられているかもしれない。
食事と水分補給の合間、そんなボクに奴隷調教が課される。
とはいえそれは、耐えがたい痛みをともなうものではなかった。おもに、快楽を与えられる調教だった。
その過程で、ボクは着けられた装具だけでなく、身体そのものにも異変を起きていると察知した。
それは、胸。女の手がそこでサワサワと動いたとき、本来ないはずの柔らかい肉の層が、そこにあることを感じた。次に、その肉塊の性的感度が異様に高いことに気づいた。
そのことにとまどいつつも、女の子がされるような胸への愛撫だけで性的な昂ぶりを覚えてしまう。
それから、お尻。ローションが塗《まぶ》された女の指を、ボクの肛門はあっさりと受け入れてしまった。さらに、肛門用淫具の挿入も、あっけなく許してしまった。
あまつさえ、それら変態的行為でも、ボクは性的な快楽を得てしまう。
それで覚醒させられるまでのあいだに、なんらかの手段――おそらく、ボクの知らない薬品かなにか――を用いて乳房と乳首の開発が行なわれ、肛門の拡張まで施されていたことを思い知らされた。
とはいえ、ボクは男だ。乳首と肛門でいくら昂ぶらされても、射精しなくては性的に満足できない。
肛門性感のみで射精にまで達することもできるとのちに知ったが、この時点ではまだ、ボクはそこまで開発されていない性の初心者《ビギナー》だった。
同時に女は、女装奴隷調教の熟練者《エキスパート》だった。
まずは、射精を求めてのみじめな懇願。それで貞操帯から解放してもらっての、ペニス責め。
女の手で、器具で、道具で、ボクは繰り返し射精させられた。イクことが、イカされることが辛くなり、今度はもうやめてと懇願しても、許してもらえなかった。
ボクは、過剰な快楽は苦痛にもなることを、身体に覚えさせられた。
そして徹底的に搾りつくされたあと、貞操帯でペニスを再封印。
次の日からも乳首と肛門を開発されつつ、溜まってきたところでまたペニス搾精責め。
それが辛く苦しいものでもあるとわかっていながら、ボクは本能の求めに負けて責めを請うてしまう。
女はその一部始終を、動画として配信していると言っていた。
それが、ほんとうかどうかはわからない。だが、ほんとうだとしても、どうということはない。
ボクの顔は全頭マスクで隠されているし、おそらく体型も、各種拘束具と装具で歪められている。もし友人知人が配信を見たとしても、調教されているのがボクだとは気づかないだろう。
そんなある日、目覚めると視界が回復していることに気づいた。
頭全体への締めつけは残っているから、全頭マスクが外されたわけではないだろう。
おそらく、全頭マスクの上に着けられていた目隠しが外されているのだ。回復したとはいえ、視界が狭く暗くぼやけているのは、全頭マスクの目の位置に穿たれた、小さい穴から見ているのに違いない。
とはいえ、ネックコルセットで首を動かせないから、制限された視界で自分の身体を見ることはできない。
だが、身体全体を回して、閉じ込められている場所のようすは探れる。
簡素な寝台から身をよじると、目の前には窓のないコンクリート製の壁。右には、責め具と薬品が並べられた棚。左には、調教動画配信に使われる撮影器具。そして、残る一面に鉄の扉。
出入り口は、そこ1箇所のようだ。
立ち上がるためいったん寝台の縁に腰かける体勢を取ろうとして、挿入されっ放しだった責め具で、肛門を抉《えぐ》られてしまった
「ン、ぐあ……ッ!?」
全頭マスクの奥で目を剥き、ネックコルセットの上端で塞がれた口でくぐもった悲鳴をあげる
「ンヒッ……!?」
反射的に弾かれたように立ち上がり、慣れないハイヒールのせいでバランスを崩しかけ、たたらを踏んでしまう。
「ンあ……ッ」
それでまた肛門をこじられて、快感混じりの痛みがジーンと広がる。
「ん、ぅん……」
扉に歩み寄ろうとして、1歩進むたび肛門性感を煽られる。
(こ、これでは……)
歩くどころではない。
しかし、力いっぱいいきんでみても、肛門の責め具はびくともしなかった。
抜けるどころか、上半身をわずかでも屈めたら、いっそう深く食い入ってきた。
なんらかの方法で、それはボクの肛門に固定されているのだ。
仕方なく、できるだけ責め具に刺激されないよう、お尻をわずかに突き出すような姿勢でヨチヨチと扉に歩み寄る。
鍵がかけられているだろうと思いつつ、一縷の望みで肘と不自由な手を使ってノブを押し下げて――。
カチャ。
期待どおり、かつ予想に反し、扉は開いた。
(あの女は、きっと……)
油断しているのだ。だから、外した目隠しを嵌め直さなかった。扉の鍵を、かけ忘れた。
そう考えて、開いた扉から外に出る。
そこは、幅2メートルほどの廊下だった。首は回せないから身体全体の方向を変えて見る。右は、すぐそこに壁。左は、突き当たりが見えない。
それは、視界が制限されているせいなのか。それとも、先が見えないほど長い長い廊下なのか。
わからない。
この廊下を歩いていけば、ここから出られるのか。出たところが、どんな場所なのか。
わからない。
途中で女と出くわさないか。あるいは、女に仲間がいないか。
それも、わからない。
(でも……)
逃げ出すなら、今しかない。そして、次の好機《チャンス》がいつ訪れるか。いや、ボクが完全に奴隷に堕ちるまでに、訪れるかどうかもわからない。
コクリ。
と1度喉を鳴らし、意を決して歩き始める。
コツ、コツ、コツ。
ハイヒールの踵が床を叩く音が、やけに大きく聞こえる。その音で、遠くからでもボクの逃走が気取られるのではないかと思えるほどに。
「ン、ンふ、ンふ」
息が苦しい。それはハイヒールで歩くことに慣れていないからか。それとも、口呼吸ができないうえに、鼻の呼吸孔が小さいせいか。
ともあれ、ボクはすでに動き出してしまった。
動き出した以上、途中で立ち止まることはできない。
コツ、コツ、コツ。
ハイヒールの音を廊下に響かせて。
「ンふ、ンふ、ンふ」
苦しい呼吸を繰り返し。
ボクは歩き続ける。
コツ、コツ、コツ。
「ンふ、ンふ、ンふ」
苦しい、苦しい。
(でも……)
苦しいだけじゃない。
歩を進めるごとに、乳首につながれたなにかが揺れ、妖しく性感を煽る。
足を運ぶたび、挿入固定されたお尻の責め具が、開発済みの肛門をこじる。
「ンふ、ンぅ、ンぅん……」
そうしようと意識しなくても、鼻に抜ける吐息に甘みが混じる。
残酷な拘束具と装具に囚われた肉が火照る。体温が上がる。そのせいで、さらに息が苦しくなる。
昨日徹底的に搾精されたおかげで、勃起の兆候がないのが、せめてもの救い。
もしそうでなければ、ペニスを完全封印されたボクは、塗炭の苦しみを味わっていただろう。
ともあれ、ようやく廊下の突き当たりが見えてきた。
そこは、直角の曲がり角。
ヨチヨチと、ヨロヨロと曲がり、前を見ると――。
「……ッ!」
全頭マスクを被され、ネックコルセットを嵌められ、小ぶりな乳房を革のハーネスで絞り出され、コルセットでウエストを締めあげられ、股間を貞操帯で封印され、厳重に拘束された女奴隷がいた。
(いや、この奴隷は……)
女奴隷じゃない。女装奴隷だ。
(いや、ボク以外の女装奴隷が……)
いるわけでもない。
(これは鏡……そこに映っているのは……)
ボクだ。
全頭マスクを被され、ネックコルセットを嵌められ、小ぶりな乳房を革のハーネスで絞り出され、コルセットでウエストを締めあげられ、股間を貞操帯で封印され、厳重に拘束された女装奴隷7号だ。
(そ、そんな……)
無惨に改造された肉体に、愕然とする。
(こ、こんな……)
ひどい仕打ちに、唖然とする。
ネックコルセットに設えられた金属製リングには、透明なケースに入れられ、ボクの身分証が吊られていた。
そこに貼られている顔写真や本名、住所や学校名を晒しながら、ボクは女装奴隷調教シーンを配信されていたのだ。
(も、もう……ボクは……)
戻れない。ふつうの男子の肉体にも、まともな男子としての暮らしにも。
そうと思い知らされ、呆然とするボクのうしろに、いつしか女が立っていた。
そして、鏡のなかでボクの肩に両手を置き、全頭マスクの下の耳にささやいた。
「わかったでしょう? あなたは、私の女装奴隷7号なるしかないのよ」
(了)