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「いよいよ、入学式ね」  瞳に妖しい光を灯し、日高真智《ひだか まち》が口を開いた。  真智とボク、逢野蔵《おおの くら》は、幼なじみだ。  とはいえ、お互いの家の格はまったく違う。  真智の日高家は、ボクたちが住んでいた田舎町を実質的に支配する名家。対するボクの家は、しがない勤め人の家系である。  それが日高家の教育方針だったのか、幼い頃は、そんなことは気にせず仲よく遊んだ。ふたりが成長して思春期を迎えてからも、真智と日高家の人々は、親しく接してくれた。  思えばその頃、気づくべきだった。  いつしか真智が、ボク以外の同級生と距離を置き始めていたことに。  若くして自分の中のS性に目覚めた彼女が、数多くいる同世代の男の子のなかから、好みの奴隷候補を物色していたことに。  そしてボクだけが、絶対的支配者たる令嬢の、お眼鏡にかなったことに。  早々に気づけていたら、ボクの運命は変わっていたかもしれない。  乳首にピアスを着けられ、ペニスと睾丸を完全封印する貞操帯を嵌められ、女子用の下着と制服を着せられ、女子校に通う羽目にはならなかったかもしれない。  忸怩たる思いにほぞを噛んでいると、真智があらためて口を開いた。 「見せてくれるかしら?」 「な、なにを……?」  思わず問うてしまったが、彼女がなにを見たいのか、ボクにはわかっていた。 「うふふ……知ってるくせに」  そのことはお見通しの真智が、妖しく嗤う。 「で、でも……」  それでもボクがためらうのは、ここがボクが学園生活を送る予定の学校だから。 「早くしないと、ほかの子たちも来ちゃうよ」  真智が言うように、ボク以外の新入生が、いつ来るかもしれないゆえである。  とはいえ、それで真智が赦してくれるわけがない。  そもそも彼女は、それら状況をわかったうえで、ボクに命じているのだ。 「くッ……」  悔しさと恥ずかしさに唇を噛み、ボクは思いきってセーラー服の上衣をはだけ、プリーツスカートをたくし上げた。 「うふふ……いい感じよ」  そのさまを見て、真智が目を細める。 「長年の運動制限と食事療法により、女の子に近い丸みを帯びた身体になってる。すっかり股間に馴染んだ特殊貞操帯により、下着を穿いてしまえば、ペニスや睾丸の痕跡はほとんどない。これなら、女の子として学園に通えるわ」  ほんとうに、そうなのだろうか。あることを、在学中隠し通せるのだろうか。  ボクがそう口にすると、真智は即座にボクの疑問を否定した。 「女子校では、女の子どうしの恋愛は公認。校内で私が蔵の恋人として振る舞えば、あなたが男の子だと疑う者はいないわ。それにそもそも、中性的なボーイッシュな子は、女子校では人気者なのよ。もちろん、ほかの子のほうを見ることは、けっして許さないけれど」  そして嗜虐的な視線でボクを見据え、唇の端を吊り上げた。 「でも、わかってる? 私の恋人の女の子として女子校に通い、卒業したら、もう蔵はふつうの男の子には戻れなくなるのよ」  わかっていた。わかったうえで、ボクは運命を受け入れていた。  女子校の貞操帯女装男子として、真智に支配されて生かされる運命を。

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