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こちらは『永久封印指定の魔女』 https://masamibdsm.fanbox.cc/posts/1552259 の前日譚的作品です。  数藤《すどう》ルリカ。  先の大戦の末期、わが国が投入した特殊部隊の元隊員である。  国際法で禁止された違法な遺伝子操作により、肉体を極限まで強化された兵士で構成された部隊は、最前線で多大なる戦果を挙げた。  ルリカはそのなかでも、最強と謳われた戦士だった。  しかし彼女が所属した部隊は、国際法違反を隠蔽するために大戦終結後すぐ解散。  部隊と研究の存在そのものをなかったことにするため、遺伝子操作を行なった研究班も、遺伝子を操作された部隊員も、全員人知れず処刑され、研究資料はすべて破棄された。  しかしルリカだけは、生かされることになった。  もちろん人道的配慮でも、功績が評価されて減刑されたわけでもない。  遺伝子操作による肉体強化の最高傑作である彼女は、次世代の研究資料として生かされることになったのだ。  その女戦士が今、超高性能双眼鏡の狭い視界に見える箱の中にいる。  いや、『在る』と言うべきか。  猛獣捕獲用の麻酔弾を十数発撃ち込まれて眠らされて捕獲されたルリカは、特殊強化繊維で作られた拘束袋を3重に着せられた。  そのうえで、11本もの革ベルトで鋼鉄製の人型棺に縛りつけられ、閉じられた蓋を特殊なネジで固定されている。  さらに彼女を閉じ込めた鋼製人型棺は重量物固定用のベルトをラチェットで締め上げて固縛され、ジュラルミン製の箱に収められ、完全武装の一個小隊の護衛つきでここまで運ばれてきた。  危険物の表示がされ、爆発物搬送用に擬態された箱は、ルリカ輸送のためだけに作られた専用品である。  2本の鋼製帯で封印された箱は、4つの錠で封印されている。その鍵は、すべて異なる形状。箱本体とは別ルートで運ばれ、4人の看守が別々に所持している。  その箱が装甲車から下ろされ、新設された刑務所に運び込まれようとしていた。  ルリカはこれから、永久封印指定囚人として、地下数十メートルに設えられた監獄に収監され――。 「待ってて、ルリカ……」  彼女が収監された場所を確認して呟き、私は双眼鏡を顔から外した。  今日から、ルリカを救出するための、私の戦いが始まる。  それはおそらく、数年に及ぶものになるだろう。 (そのあいだ……)  ルリカは耐えられるのか。耐え続け、心身ともに正常な状態を保ち続けられるのか。 (いえ、ルリカならきっと……)  そう自分に言い聞かせ、私はその場を離れた。

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ガリタル

本当にこの完全拘束は最高ですね。容赦なさすぎて好きです。