小説 矯正牧場の牛奴隷 4 (Pixiv Fanbox)
Published:
2020-10-23 08:50:56
Edited:
2023-01-04 23:37:11
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4
朝、大小の排泄と食餌。そして、うすら甘い水による水分補給。
午前、小の排泄と水分補給。ただしこのときの水は無味無臭。
昼、小の排泄と食餌。水分補給は、やはりふつうの水。
午後、小の排泄と水分補給。このときも、水はただの水。
夕方、小の排泄と食餌、ふつうの水の水分補給。
そして、就寝前の小の排泄と甘い水。
はじめは、轡を噛まされっ放しの口の怠さに悩まされた。だが数日のうちに慣れてしまった。
首を自由に動かせないことにも、手を使えないことにも、いつしか馴らされていた。
午前中、ほかの囚人は交代で連れ出され、1時間ほどで戻ってくる。おそらく映像の部屋に連れて行かれ、搾乳されているだろう。
1度に複数連れ出されることもあるから、搾乳部屋はそれ以上にあるに違いない。
しかし、実紗が搾乳されることはなかった。
あたりまえだ。妊娠もしていないし、出産後でもない女性から、母乳が出るわけがない。実紗を搾乳しても、なにも出てこない。
ではなぜ、映像の囚人は、乳首から母乳をしたたらせていたのか。
同じ牛舎の者たちは、どうして毎日搾乳に連れ出されているのか。
なにもすることがなく、そのことばかり考えてしまうが、答えは見いだせなかった。
それは、解答を導き出せるほどの情報が、実紗に与えられていないから。
それに加えて――。
「んふぅ……」
干し草の上で身をよじり、甘い吐息を漏らしてしまった。
実紗の尿道には、尿道用排泄管理器具が。肛門には、肛門用排泄管理器具が。肉壺には、金属製ディルドが挿入、固定されている。
それらはけっして動くことはない。しかし小部屋の中で脚を、身体を動かすたび、実紗の柔らかい肉は動く。そのたびに、数ミリ単位で異物に粘膜を擦られる。
その刺激が、ごくごく緩い快感を生んでいた。
それは平常時なら、女体を高めることはないほどの小さな快感。
しかし実紗の肉体は、性感開発で絶頂寸前まで追い上げられたときの、火照りと疼きを宿したまま。
3穴を占拠する異物がもたらす緩い快感は、その火照りと疼きを冷まさない程度の効果はあった。
加えて、3穴以外の性感帯も敏感になった気がする。
とくに曝け出された乳房と乳首は、ふとしたことで触れてしまうだけで、ジーンと甘い快感が広がってしまうようになった。
そのせいで、実紗は常に蕩けた状態に貶められている。
快楽を求める本能が脳のリソースを一定程度奪い、深い思考は長続きしない。
そんな暮らしが1週間続いた朝のことである。
「待て」
朝の排泄と食餌、水分補給が終わり、扉から離れようとした実紗を、看守が呼び止めた。
「ふむ、だいぶ乳首と乳輪が肥大してきたな」
標準囚人服から曝け出されたそこを四六時中見ていたせいで、自分自身では気付けなかった。
だがたしかに、言われてみればそんな気もする。
「そろそろ、頃合いかもしれんな……」
頃合いとはなんなのか。しかしその疑問を、口にすることはできなかった。
「回れ右だ」
そう言われて180度向きを変え、看守に背を向けると、閂が外され扉が開かれた。
「けっして動くな」
そして、背後から胸に手を回され、乳首から乳輪にかけて3本の指でつままれた。
その指に、乳輪側から乳首に向かって力を込められて――。
「んぅ、うぁ……」
ゾクリと快感が駆け抜けたときである。
「……うぇ(えっ)?」
乳首の先から、白い液体がピュッと飛び出した。
もう1度。
「んふ、んっ……」
ピュッ。
「うぉんあ(そんな)……ぉうぃえ(どうして)……」
自分の乳首から、白い液体――母乳が出たのか。
愕然とし茫然とつぶやくと、囚人の反応に慣れているのか、実紗の耳元で看守がささやいた。
「就寝前と朝の水だけ、味が違うことに気づかなかったか?」
気づいていた。だがそれは、スポーツドリンクかなにかが薄められているのだと思っていた。
「それはな、乳腺を活性化させる薬が混ぜられていたからだ」
「うぇ(えっ)……」
「就寝前の水には、ごく少量の睡眠薬も混ぜられていたが、そちらは味を変化させない。あの味は、乳腺活性化剤の味なんだよ」
「うぉんあ(そんな)……」
しかし、抗議することはできなかった。
恐れ諦めることに馴らされてきった実紗は、知らず知らずのうちに身体を作り変えられたことにも、抗議することを諦めた。
「本日より、226番の搾乳を始める!」
そんな実紗に宣言すると、看守が再び耳元に口を寄せた。
「すでにおまえにはファンが多い。配信される搾乳映像の視聴数は記録的なものになるだろう。初めての乳のオークションに関しては、いくらの値がつくか予想もできん。ともあれ、うまく搾乳できればご褒美がもらえるから、せいぜい頑張って乳を出せ」
そして恐るべき言葉をささやくと、薄く嗤って立ち去った。
首枷の金具にリードの革紐をつながれ、前手で手枷どうしつながれて、廊下を歩かされる。
牛舎を出て長い距離を歩くのは1週間ぶり。踵のない超ハイヒールブーツで歩くことには慣れていない。そのうえ、わずか1週間で体力が落ちた気がする。
加えて、3穴に挿入された排泄管理器具とディルドだ。
牛舎に連れてこられるときもそうだった。歩くことによって、粘膜が硬い金属とゴムチューブに擦られる。牛舎の小部屋で身をよじるだけ得られたものより大きい快感が、常に3穴を襲ってくる。
とはいえ、それは実紗を酔わせるほどの刺激はもたらしてくれない。
ただ、肉の火照りと疼きを強め。
「はぅ、ぅあ、あっ……」
轡を噛まされた口から甘い吐息を漏らさせ、涎を垂らさせるだけ。
「あっ、うぁ、あぅ……」
そんな状態で、実紗は連行されていく。
ひとりの看守にリードを握られ、両脇に立つ看守ふたりに両腕を取られて。
(そういえば……)
牛舎に連れてこられるときは、看守ふたり体制だった。
実紗より少し前に連れ出され、10メートルほど前方を連行される225番につく看守もふたり。
にもかかわらず、どうして実紗は看守3人体制で連行されるのか。
両脇に立ち、拘束された腕を取られ、倒れないよう支えるように――。
そこまで考えて、ハッとした。
『すでにおまえにはファンが多い。配信される搾乳映像の視聴数は記録的なものになるだろう』
先ほどの看守の言葉。
さすがに無料かつ大々的に、搾乳映像が配信されるわけではないと思われる。そんなことをしていたら、とうの昔に強制牧場の実態は露見しているはずだ。
おそらく、映像配信は厳選された会員制。しかも高額の有料配信だ。
加えて、それに続いた言葉。
『初めての乳のオークションに関しては、いくらの値がつくか予想もできん』
つまり、映像配信と同時に、搾られた母乳のオークションも行なわれる。
(もし、連行中に私が転倒して怪我をしたら……)
それらによって得られる収入が、ふいになる。
それは、とてつもない人権蹂躙であるどころか、あきらかな違法行為だ。
1週間前の実紗なら、正義感からくる怒りをたぎらせていただろう。
しかし、今の実紗は、恐れ諦めることに馴らされていた。
恐れ諦めることが習い性になっていたうえに、聡明さもいまだ名残り程度には持っていた。
(配信は厳選された会員制だから……)
誰彼なしに、搾乳映像が見られるわけではない。
(おまけに……)
厳選された会員は、けっして秘密を漏らしたりしないだろう。
(だから……)
実紗が搾乳牛奴隷の身分に堕ちたことが、広く一般に知られるわけではない。
第2強制収容所、いや矯正牧場の罠に絡め取られ、実紗は搾乳部屋に連行されていく。
(従順を装い、加点を重ね、1日でも早く出所するんだ……)
それが自分にとって、最善の選択なのだと信じ込まされたまま。
搾乳には、さらに狡猾な罠が仕組まれているのだと知らずに。
「ここだ、入れ」
首枷のリードを引く看守が扉を開けると、そこはモニターで見せられたのと同じ造りの部屋だった。
部屋全体は、1辺が3メートルほどの正方形。コンクリート打ちっぱなしの床。その中央やや奥の壁寄りに、蹄ブーツを履かされた実紗の身長と同じくらいの木の柱。
天井と3方の壁は、床と同じくコンクリート打ちっぱなしで、残る1面は壁全体が鏡張り。
おそらくその鏡は、いわゆるマジックミラーだ。その奥に撮影機材が設えられているのだろう。あるいはそこに、観客席があるのかもしれない。
そうと察していながら、抵抗する気持ちにもなれず、柱の前まで引き立てられる。
拘束の妨げになるからだろうか、肛門用排泄管理器具に取りつけられていた尻尾を外され、柱を背にして立たされる。
それからいったん前手の拘束を解かれ、そのまま腕を後ろに回されて、背中で柱を抱くような体制で後手につながれた。
そこで看守が二手に分かれ、実紗は柱に縛りつけられていく。
大きな乳房を挟んで絞り出すように、胸の上下を革ベルトできつく締められた。
「んっ、う……」
それで艶を帯びてうめいたところで脚を軽く開かされ、柱の側面に足首を押し当てられてベルトで縛られる。
「うっ、んん……」
足を重心より後ろに引いて固定されたため、胸を突き出すような姿勢を強いられ、ベルトがいっそうきつく乳房の根元に食い込む。
さらにお腹、二の腕をベルトで締めあげられ、首枷も柱に固定されたところで、搾乳機。
銀色に輝く金属製のカップを乳房に押し当てられると、それが乳首と乳輪に吸いついた。
「あぅ、んん……」
それで甘い吐息を漏らすと、看守がカップを細いチェーンで吊り、薄く嗤って実紗から離れた。
目の前には、壁一面の鏡。
その向こうには、柱に縛りつけられ、搾乳機を取り付けられた実紗の姿を捉えるカメラ。
さらにカメラの向こうには、配信される映像を見る大勢の視聴者。
そのことにあらためて気づき、コクリと喉を鳴らしたところで、搾乳機のカップがブルリと震えた。
ついに、搾乳が始まったのだ。
空気圧のポンプが緻密に制御され、乳輪から乳首にかけ、順番に搾り出すように内部が蠢く。
ピュッ。
看守に搾られたときと同じ、乳首の先端から母乳が噴き出す感覚。
「はっ、ひゃう!?」
ゾクリと快感が駆け抜け、轡を噛まされた口で嬌声をあげてしまう。
噴き出した母乳を機械に吸い上げられたところで、もう1度。
「はふぁあん……」
甘く喘いで、涎をゴポリと溢れさせてしまった。
そのときである。
肉壺に挿入されていたディルドが振動し始めた。
緩く刺激され続けてきたそこを、猛烈な快感が襲う。
「はひゃああッ!?」
長く待ち望んだ快感に、艶めいて喘いでしまう。
「はふぁ、ぉうぃえ(どうして)……?」
ここにきて、ディルドが振動し始めたのか。
おそらく、搾乳機に母乳が吸い込まれたことを感知し、自動でディルドの振動スイッチが入れられたのだろう。
蕩けかけた頭で考えて、配信と母乳オークションのことを告げたときの、看守の言葉の続きを思い出した。
『うまく搾乳できればご褒美がもらえるから、せいぜい頑張って乳を出せ』
つまりこの快感が、搾乳のご褒美なのだ。
搾乳機につながれ、うまく搾乳できたご褒美に、快感をもらえているのだ。
快感イコールご褒美と即座に認識してしまうほどに、実紗の本能は快楽を求めていた。この時点で、実紗の精神は快楽に酔わされていた。
「あっ、はふぁ……」
乳輪から乳首にかけて、絶妙な力加減で搾られ、その快感に喘ぐ。
「ふぁあ、ああっ!」
振動するディルドに肉壺を刺激され、蕩けて喘ぐ。
さらにもう1度乳を搾られたところで、ディルドの振動が強くなった。
その激しい振動が、股間プレート全体に伝わる。
伝わって、尿道と肛門の排泄も震わせる。陰核の直上でも震える。
股間の感じるところすべてを刺激され、実紗は一気に押し上げられた。
「あっ、ふひぁああッ!」
轡を噛まされた口から涎を噴き出しながら、あられもなく喘ぐ。
「はふぁあぁああんッ!」
搾乳機の中に乳を噴き出しながら、前後不覚に陥って喘ぐ。
気持ちいい、気持ちいい。
搾乳されていることが、それによって得られるご褒美が、気持ちいい。
1週間にわたって、緩い刺激に炙られ続けてきた肉体が、一気に燃えあがる。
気持ちいい、気持ちいい。
快感が大きすぎて、大きすきる快感に翻弄されて、蕩ける頭ではそれ以外考えられない。
そして、この大きな快感は、搾乳されているからこそ得られるものなのだ。
搾乳されなければ、この快楽は得られないのだ。
実のところ、そう思わせることが、搾乳の罠。巧妙かつ狡猾な矯正牧場の最後のしかけ。
その罠に嵌った囚人――牛奴隷は、快感を求めて搾乳の時間を心待ちにするようになる。
恐れと諦めに加え、搾乳への期待で従順に服従するようになる。
その罠の正体に、矯正牧場の思惑に、快感に翻弄される実紗は気づけなかった。
気づけないまま、罠に絡め取られていった。
そして――。
「はふぁあ、ぁああッ!」
ひときわ大きな快感の大波に襲われたとき、なにかか来た。
いや、実紗がたどり着いたというべきか。
大いなる悦びの世界、絶頂。
今回は寸止めされることなく、一気にそこへ追い上げられる。
縛《いまし》められた手足が、蹄のブーツとグローブの中でこわばる。
柱に縫いつけられた身体が、ビクンビクンと跳ねる。
自分がなにをしているのか、なにを口走っているのかもわからない。
ただ、圧倒的な快楽に翻弄されて実紗は――。
「ふひッグッぅううッ!」
くぐもって悦びを叫び、やがて身体から力を抜いた。
そのぶざまでみじめで、でも妖艶な姿を、鏡の向こうのカメラに曝け出しながら。
それからは、毎日搾乳を心待ちにする日々だった。
矯正牧場に収容された頃は持っていた、弁護士としての正義感も矜恃も完全に失い、嬉々として搾乳されるだけの存在に貶められた。
その姿、まさに牛奴隷。
実紗は完全に牛奴隷に堕とされてしまった――かに見えた。
しかし、身も心も牛奴隷になり果てる寸前、実紗は矯正牧場から解放された。
それは、矯正収容所制度が、突然廃止されることになったから。
もちろん、実紗の運動が実を結んだからではない。早々に頓挫した彼女の運動を、誰かが引き継いだわけでもない。
実紗が始めたものとはまったく違う形で、彼女とは異なる立場の者がたてた小さな波がやがて大きなうねりとなり、ついに矯正収容所制度を飲み込んだのだ。
解放後、収容された病院でその事実を知らされた実紗は、その波を起こした人物のことを考える。
その人物は、実紗が守るべき弱き存在と、決めつけていた立場の人だった。
(思えば、かつての私には……)
どこかに奢りがあったのかもしれない。
弱い人を守ると公言しながら、彼ら彼女らを力なき者と見下していたのかもしれない。
そう思い至った実紗は、心に決めた。
今後はほんとうの意味で、弱き立場の人々に寄り添おうと。
そのうえで、弁護士たる自分にしかできない役目を果たそうと。
そう決めた実紗は、晴れやかな気持ちに満たされていた。
(了)