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3話.奴隷のカラダ、家畜の肉体 『オイルマッサージだけでイッちゃうなんて、ほんとうにいやらしい子……まるで性奴隷になるために生まれたみたい』  灯里が意識を失う寸前にかけた言葉は、彼女の耳に届いただろう。  その言葉はたとえ恍惚の状態で聞かされたものでも、いやそんな状態で聞かされた言葉だからこそ、彼女の心に深く染み込んだはずだ。  その言葉にかぎらず、ラウラが調教中にかける言葉は、すべて計算ずくのものである。たとえ、それがひとりごとのように発せられた言葉でも。  それらの言葉ひとつひとつと、マッサージだけで絶頂したという事実が、灯里の心に深い疵を作っただろう  おそらく初めての絶頂をもたらした快感を、灯里の肉体は覚えただろう。  そのことを確信しながら、ラウラは次の責めのため、新たな縄を手にした。  初めての絶頂でたどり着いた恍惚の世界には、不思議な充実感があった。  いや、それは幸福感と言うべきかもしれない。  憎き女の手で絶頂させられることを拒んだはずなのに。  この快楽の果てには、奴隷堕ちの運命が待っていることは、わかっているのに。  奴隷に堕ちてしまえば、これまでの人生も、これからの未来も、なにもかも失うはずなのに。  それなのに、なぜか満たされたような感じ。この恍惚の世界さえあれば、ほかになにもいらないと思ってしまいそうになる。 (これじゃ……いけない……)  しかし、わずかに恍惚から覚め、かすかに戻った理性で考えられたのは一瞬。すぐ頭が蕩け、先のことなど、どうでもよくなってしまう。  それは、オイルマッサージの途中から効果を発揮し始めた遅効性の媚薬が、いまだ効いているから。  しかし、灯里は香油に媚薬が混入されていることを知らない。媚薬に耐性があるラウラは両手に香油まみれにしつつも平然としているから、疑うこともできない。  だから、一向に恍惚から覚めない理由がわからない。  それゆえに、ラウラにかけられた言葉が心に染み込む。 『こんなに感じやすくていやらしいおっぱいの持ち主は、奴隷に堕ちるしかないわね』  そのとおりだ。香油まみれの手でおっぱいを弄られただけで高まってしまうようないやらしい女の子は、奴隷堕ちがお似合いだ。 『いやらしいアカリは、オイルマッサージだけでイッちゃうの』  その予言どおりオイルマッサージで絶頂した自分には、奴隷の身分がふさわしい。 『まるで性奴隷になるために生まれたみたい』  そうかもしれない。自分はもともと性奴隷になるために生まれてきたのかもしれない。  恍惚の世界のなかでとはいえ、そう思ってしまった灯里に、新しい縄を手にラウラが迫る。 「一歩、心が奴隷に近づいたわね」  そう言って唇の端を吊り上げ、左脚の膝の少し上あたりに、縄を巻きつける。 「心が奴隷に近づいたぶん、肉体も奴隷に近づけてあげる」  そして、ラウラはたすき掛けの吊り縄と同じように残りの縄を梁にかけ、灯里の片足を吊ってしまった。  片足を吊られて開脚を強制され、晒された股間の前に、ラウラがしゃがみ込む。 「ぅあぁ……あぅあぃい(恥ずかしい)……」  反射的に羞恥の声をあげてしまうが、灯里は心のどこかで期待を抱いていた。  媚薬に冒された脳で、もう一度あの大きな大きな快感が欲しいとさえ思っていた。 「うふふ……綺麗な色ね」  そんな灯里のそこを凝視して、ラウラが口を開く。 「色素の沈着も型くずれもなく、清楚な色と形。乙女の証の膜が少し破損しているのは、激しい運動をしている女の子にはよくあること。けっして灯里の価値を損ねるものではない。それでいて……」  そこでラウラの指が、入り口の縁に触れた。 「ぅあん……」  それだけで甘い声をあげてしまったところで、指がゆっくり動いた。  ゾゾゾ、と妖しい感覚。 「それでいて、性奴隷としてのいやらしさも持ち合わせている……今も、もの欲しげにぱっくり口を開き、充血した粘膜を晒し、熱い蜜を吐き出し続けて……」  言われながらも、ゾゾゾと妖しい感覚は続く。  触れられている箇所に、どこか硬さを感じる。もしかしたら、それは指ではなく、なにかの道具なのかもしれない。  灯里が漠然と考えたときである。 「香油まみれのうえに蜜の潤滑まで加わるから、石けん水を使わなくても綺麗に剃れるわ」  一瞬、言葉の意味がわからなかった。 「うぉえあ(それは)……?」  どういう意味かと尋ねかけて、ハッとした。  媚肉の周りに触れる硬い感触は、剃刀なのだ。剃刀で、そこの飾り毛を剃られているのだ。 「ぃ、あ……」  やめてと叫びかけて。 「動かない! 切れちゃうわよ!」  機先を制して恫喝され、震えあがってしまう。  それで動けなくなったところで、股間の剃毛は続く。  ゾゾゾ。ゾゾゾ。  香油と灯里自身の蜜で潤滑され、なめらかに剃刀が動くたび、駆け抜ける妖しい感覚。  ゾゾゾ。ゾゾゾ。  そのたび、確実に飾り毛が失われていく。 「奴隷は、主人に隠しごとをしてはならない。飾り毛で性器を隠すなんて、もってのほか。正面からでも主人がそこの具合を確認できるよう、性奴隷は無毛でなくてはならない」  つまり、今行われている剃毛は、灯里の肉体を奴隷のカラダに貶める行為にほかならないのだ。  そのことを思い知らされながら、剃毛は続く。  すでに剃り落とされた毛を、香油ごと布で拭き取られ、そこに指ですくった蜜をまぶされる。そして肉をつまみあげられながら、さらに深剃り。  ゾリゾリゾリ。  すでに短くなった毛を、執拗に剃られる感覚。その行為にも、灯里の性感は一向に冷めない。 (な、なぜ……?)  剃毛行為でも、自らの肉体を奴隷のカラダに堕とす剃毛行為にも、感じてしまうのだろう。  それは、媚薬の効果が続いているからである。  そのせいで媚肉そのものには触れられなくても、周りの肉を押され、つままれ、剃刀を当てられるだけで、感じてしまうのだ。  とはいえ、媚薬入り香油まみれの腕で素股されたときと違い、直接媚肉が刺激されるわけではない。  そのため、灯里が絶頂するまで高まることはない。  いわば、心のどこかに大きな快感と甘美な絶頂への期待を抱いたまま、その頂きを垣間見せられ続けているような状態。 (もっと、気持ちよくなりたい……)  そのせいで、灯里の本能は、より大きな快感を求め始める。 (また、イキたい……)  望んでいないはずの絶頂を、心のどこかで渇望し始める。  もちろん、灯里自身が心の底からそれを望んでいるわけではない。ずいぶん小さくなってしまった理性を含む心の大部分は、いまだにそれを拒んでいる。  その意味では、灯里の心が奴隷に落ちきったわけではない。ラウラが指摘したように、奴隷に一歩近づいただけだ。  とはいえ、頑固に進もうとしない者と、一歩進んだ者とでは雲泥の差がある。一歩進んだ者は、二歩め三歩めを踏みだすことへのためらいは少ない。  そして今行われる剃毛処置は、灯里が奴隷堕ちに向かって二歩三歩と進むよう、仕向けるためのもの。  その意図を隠し、剃刀を当てても毛が当たる感触がなくなるまで綺麗に毛を剃り終えて、ラウラは片足吊りのまま、灯里の身体を回転させて魔鏡に向けた。 「ご覧なさい」  言われて反射的に顔を上げ、息を飲む。  片足を吊り上げられ、大きく開かされた脚の付け根。そこにあるはずの飾り毛は綺麗に剃り落とされ、ぱっくりと開いた媚肉がヌラヌラと濡れ光る粘膜を晒していた。 (な、なんて……)  いやらしい光景なのだろう。 「うふふ……すっかりいやらしい見ためになったわね」  そのとおりだ。自分でもあさましく感じるほどに、そこはなにかを求めているように見えた。 「このいやらしさ、まさしく奴隷のカラダ」 「うぃあ(いや)……ぅああぃえ (やめて)……」  それは、否定の言葉ではなかった。無慈悲なことを言わないよう、懇願しているだけの言葉だった。  灯里自身、心のみならず肉体も、奴隷のカラダにされつつあると理解していた。  そして灯里の表情と反応を見てのことを感じ取り、心のなかでほくそ笑みながら、ラウラは次の一手を用意した。    ラウラが片足吊りと後手縛りの縄を解いた。その時点で、灯里の両手は自由になった。  彼女の身体に施された拘束は、たすき掛けの吊り縄のみ。長時間縛られていた両手には少し違和感が残っているが、それはじきに回復するだろう。  抵抗を試みるなら、今がチャンス。  しかし、できなかった。抵抗はおろか、逃げよう試みる気すら起こらなかった。  両手を上げれば、吊り縄の結びめに手が届く。背中側なので直接目で見ることは難しいが、時間をかければ解くこともできる。  だが、ラウラがそれを許すとは思えない。  それに縄の拘束を解いたところで、出入り口のないこの部屋からは出られない。仮に出られたところで、ここは異世界ホライゾンタル。そしてもし自分の世界に戻る方法があってもとしても、強制翻訳魔法をかけられた灯里は、元の言葉を理解できない状態。  そのうえ、一歩だけとはいえ、灯里の心は奴隷に近づいてしまっている。  それらすべてが相まって、手足の拘束は解かれても、灯里の心は雁字搦めに縛られたまま。  そのせいで動けずにいる灯里に、ラウラが魔法で召喚した革の拘束具を着けていく。  革製のガーター付きT字帯の横ベルトを、ウエストの細い位置できつく締められた。続いて股間を覆う縦のベルトを股のあいだに通され、割れめに軽く食い込む程度のきつさで、締めこまれた。 「ぅあ……」  その絶妙の締め具合がいまだ媚薬が効いている肉体に緩い快感を生み、短く喘いだところで、先端に長いベルトが取り付けられた革のミトンを両手に嵌められる。  その拘束具の手首のベルトを締められると、もう指は使えなくなった。  ある程度の大きさのものなら手のひら全体を使って持てるかもしれない。しかし革がぶ厚く指先の感覚が薄いこととも相まって、細かい作業は絶対不可能。  そのことを灯里が悟ったところで、ラウラが口を開いた。 「人と獣の違い、わかる?」 「ぅえ(えっ)……?」 「まずは、口。人の口は言葉を話すけれど、獣の口は意味のある言葉を発しない。そして、手。人の手は道具を持って使えるけれど、獣の手は、なにも持てないただの前足……その意味で、今のアカリは人ではなく獣ね」  言われて、ハッとした。  奴隷の口枷のせいで、声は出せても言葉は喋れない状態に貶められた灯里の口は、獣の口と同じだ。  新たに着けられたミトンのせいで、人としての作業がまったくできない灯里の手は、獣の前足と同じだ。  そのことに気づいて愕然とする灯里を、ラウラがさらに拘束していく。 「そんなアカリを、ほんとうの獣に堕としてあげる」  そう言ってラウラが灯里の右腕を窮屈に折りたたみ、編み上げ紐が設えられた革の袋を腕全体に被せる。  ぶ厚い革のひんやりした感触。しかし革そのものは上質で、肌への当たりは柔らかい。特に袋の突き当たり、肘に当たる部分の内部には、ぶ厚い革がもう一枚重ねられているようだ。  そして腕の拘束具とミトンの手枷部分を金具でつなぐと、前腕部上面の編み上げの締めこみが始まる。  キュッ、キュッ、キュッ。  編み上げの革紐と拘束具の革が擦れる音が聞こえるたび、窮屈さが増す。  キュッ、キュッ、キュッ。  編み上げを引き絞られるたび、肘を前に突き出しミトンの手のひらを肩に乗せた状態で、前腕部と二の腕が密着していく。  袋状の拘束具の先端、突き出した肘の先には、太さ5センチ程度、長さは10センチ弱の金属製の棒が取り付けられている。 (これは、なんだろう……?)  部屋の明かりを反射して鈍く輝く金属棒を漠然と見ているうち、編み上げの革紐を固く結ばれた。  これで灯里の右腕は、窮屈に折りたたんで軽く締めつけられた状態から、逃れられなくなった。  まるで、獣の前足のように――。  そこで、先ほどのラウラの言葉を思い出した。 『そんなアカリを、ほんとうの獣に堕としてあげる』  それは比喩的な意味ではなく、拘束具の力で物理的に獣のような状態に貶めるという意味だったのだ。  それでも、灯里は抵抗できなかった。  先ほどよりさらに、身体の自由を奪われたから。それ以上に、抗うことの無意味さを思い知らされていたから。  見せられるひとつひとつの現実。かけられるひと言ひと言の言葉。施される調教の手順の的確さと巧みさ。それらラウラの手練手管により、疵を追った心が、折れかけているから。  灯里は抵抗すること、いや抗おうと思うことすらできず、左腕も折りたたまれて拘束されてしまう。  そうして物理的にいっさい抵抗できないという意味で、灯里を再び元の状態に貶めて、ラウラはたすき掛けの吊り縄も解いた。  そして灯里を正座させ――ホライゾンタルに正座の文化はないのだろう。その言葉は使わなかったが――ラウラは、脚も拘束していった。  まず魔法の力で灯里の身体を少し持ち上げ、それぞれの脚にコルセットにも似た拘束具を嵌められる。  拘束そのものや調教自体には使用しないが、ラウラはときおりこうして魔法を使う。それもまた、力を示すことで逆らっても無駄と思わせ、反抗の心を折る手練手管のひとつ。  その思惑どおり反抗心を奪われた状態で、灯里は脚も拘束されていく。  キュッ、キュッ、キュッ。  腕のときと同じように、編み上げ紐を締められ、脚も折りたたんだ状態で固定される。  キュッ、キュッ、キュッ。  太ももの裏とふくらはぎが密着し、脚も拘束具に閉じ込められる。  腕の拘束具との違いは先端が閉じておらず、膝が露出していること。その膝に外側に金属板が貼り付けられた革のカップを被され、ストラップを介して拘束具本体の金具に取り付けられ、片足の拘束は完了。  続いてもう一方の脚も同じように拘束して、T字帯のガーターと接続。  さらにミトンの先端に設えられた長いベルトを背中で交差させて身体の前面に回し、乳房を挟んで絞りだすように締めあげて再び背中で留める。  そして拘束の仕上げに、ラウラが金属製の輪と鎖を取り出した。 「着けられたら最後、手足を拘束されていなくても、施術者の手を借りないと外せない奴隷の首輪よ。でも今のアカリにとっては、家畜の首輪と呼んだほうがいいかしらね」  家畜。  その言葉に一瞬ドキリとして、あらためて今の自分はそのとおりの状態なのだと気づく。  奴隷の口枷で、人が人たる所以の言葉を奪われた。手にミトンを嵌められたうえに腕も折りたたんで拘束され、筆談もできない。 (で、でも……)  そこで、灯里はふと気になった。 (私、この世界の文字を書けるの?)  ラウラにかけられた強制翻訳魔法により、ホライゾンタルの言葉――エルデ共通言語を、聞くことも話すこともできる。教科書の文字が意味不明の記号にしか見えなかったことで、読むときにも翻訳魔法が働くことは確認済み。  しかし文字を書くには、その文字を憶えていなければ――。  そこで、ラウラの言葉を思い出した。 『おまえはわたくしに調教され、奴隷の身分に堕とされてしまうのだから』  そう、ラウラは自分を奴隷に堕とそうとしている。  奴隷は、主人の命令を聞き取れなくてはならない。わからないことがあれば、訊ねる必要があるだろう。あるいは、命令が文書の形で伝えられることもあるかもしれない。だから聞き、話し、読む能力は必要。  でも、書く力だけは必要ない。  しかも、今のアカリは奴隷ですらなく――。 「うふふ、これでアカリは肉体は、牝犬に貶められた。しばらくのあいだ、アカリはわたくしの家畜」  家畜の首輪をボルトとナットで閉じ、魔法でロックして、ラウラが取り付けた鎖の先を握った。

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