小説 貞操帯倶楽部 2章 貞操帯を着けてみる (Pixiv Fanbox)
Published:
2018-07-10 11:49:35
Edited:
2020-04-10 09:35:37
Imported:
2021-10
Content
2章 貞操帯を着けてみる
「だったらさ、試しに着けてみたらいいじゃん。なぁ、愛美?」
翌日、再び訪れた貞操帯倶楽部部室で入部を迷っていることを告げると、豊岡先輩がこともなげに答えた。
「そうね。ここでお話するあいだだけ着けてみて、帰るときに外す。そういうことなら……どう?」
「それなら……はい」
話を振られた愛美先輩に問いかけられて、思わずうなずいてしまった。
「それじゃ、さっそく」
にっこり笑った愛美先輩が、私の手を取って立たせる。取った手を引いて、3つ並んだドアの一番左、更衣室へと誘《いざな》う。
(ほんとうに、いいの?)
予想外の急展開に、私のなかのもうひとりの私が問うた。
(このまま流されて、貞操帯を着けてもいいの?)
それはおそらく、私の理性が鳴らす警鐘だ。自分の優柔不断で流されやすい性格を理解している私の理性が、今もまた流されているんじゃないかと警告しているのだ。
(でも、違う……)
私は流されているわけじゃない。
これは、試着だ。これからのことを決めるため、今だけ仮に着けてみて、帰るときには外す。それだけのことだ。
警告する理性に、理性的に反論して抑え込み、手を引かれて更衣室に入る。
すると更衣室の中は思いのほか広かった。
「じゃあ、スカートとショーツを脱いで」
「えっ……?」
後ろ手でドアを閉めた愛美先輩に言われてとまどうが、考えてみればあたりまえ。貞操帯を着けるというのは、そういうことだ。
「ああ、そうね。ひとりだと恥ずかしいよね。私も脱ぐから安心して」
しかしとまどいながらもスカートを脱ごうとすると、愛美先輩が先に自分のスカートのホックに手をかけた。
愛美先輩に気を使わせてしまったことに対する、後悔が半分。愛美先輩が気を使ってくれたことへの、嬉しさ半分。
慌ててスカートのホックを外し、ファスナーを下ろしながら横目で見ると、愛美先輩のスカートの下は、今日も貞操帯だけだった。
「あの、愛美先輩……貞操帯の上に……」
なにか穿かないんですか。そう訊ねかけて、慌てて口を押さえるがあとの祭り。愛美先輩がスカートを脱ぐところをガン見していたことが、バレてしまった。
「うん、私はあまり穿かないわね……」
しかし愛美先輩は、私が見ていたことを気に留めていないようだった。
「純やほかの子はなにか穿いてるし、私も生理のときはサニタリーショーツを穿くんだけど……」
逆に、愛美先輩のほうが指摘されて焦っているようだった。
とはいえ、私にもあまりそのことを気にしている余裕はない。
愛美先輩には貞操帯があるが、私はショーツの下になにもないのだ。
上半身は制服のセーラー服をきちんと着たまま、下だけすっぽんぽんという状態に、激しく羞恥心をかきたてられる。
「裕香、恥ずかしい?」
「は、はい……」
私への呼びかけが『裕香さん』から『裕香』に変わっていることにも気づかず、股間を手で隠し、もじもじしてしまう。
「じゃあ、早く貞操帯着けようね。でも、その前に……」
そう言った愛美先輩が手にしていたのは、身体測定のときに使うメジャーだった。
「は、測るんですか?」
「ええ、そうよ。私たちの貞操帯は毎日着け続けても快適に暮らせるよう作られているけれど、そのぶんサイズにはシビアなの」
私の前にしゃがんで、腰周りのサイズを何箇所か測定しながら愛美先輩が語った話を要約すると、こんな内容だった。
昔の貞操帯や、現代のものでも性的プレイ用の貞操帯――私には貞操帯を使った性的なプレイをイメージすることができなかったが――は、ウエストのくびれている部分で横ベルトを留める。そこは肉が厚く柔らかい部分だから、若干のサイズ違いは許容できるが、しゃがんだり屈んだりするときお腹を圧迫されて苦しい。食事もお腹いっぱい食べることはできない。
「でも、私たちの貞操帯は、ローライズのパンツのように、腰骨にひっかけるように着けるタイプ。位置が低いからお腹を圧迫しない代わり、腰骨周辺は肉が薄いから、サイズに対する許容度が少ないの」
そしてそこまで語ったところで、腰周りの測定を終えた愛美先輩が、しゃがんだまま顔を上げて私を見た。
「脚を開いて」
「えっ……」
恥ずかしい。
さっきまでは愛美先輩の話を集中して聞き、理解しようとすることで恥ずかしさが紛れていたが、今はもう話も終わった。
愛美先輩の美しい顔の横に私のそこの毛が見える光景に、またもや激しく羞恥心をかきたてられる。
「腰周りの測定は終わったから、お股周りを測定するの。脚を開いて」
しかしそう言われると、ためらうことはできなかった。
「は、はい……」
震える声で答え、おずおずと脚を開く。
「もう少し広く。それじゃ測れないわ」
「えっ……あ、はい」
恥ずかしい。恥ずかしい。できることなら、もうやめて逃げだしたい。
でも、できなかった。
ここまできて――愛美先輩にまでスカートを脱ぐようなことをさせて――今さら自分勝手に逃げだせるわけがない。
流されやすく、優柔不断な私の性格。その性格を知っていて、警告してくれた理性を抑え込んでしまった今。流されていく私を止めるものはない。
(早く……早く終わって)
そう願いながら、目をぎゅっと閉じて羞恥心に耐える。
おへその何センチか下に端を当てがったメジャーが、両脚の間を通ってお尻のほうへ。
「このメジャーは使う前に消毒してるから、安心してね」
「えっ……?」
そう言われて意味がわからず、思わず目を開けた刹那――。
「ひうっ!?」
女の子の大切なところにメジャーが押しつけられて、変な声を出してしまった。
「ぃ、あ、あ……」
割れめに少し食い込むほどメジャーを引っ張られて、そこが弱い電気を流されたように痺れた。
(今の声、絶対に聞かれてる。恥ずかしい……)
しがしその直後、私はもっと恥ずかしい思いをすることになった。
測定を終え、私のそこから離れたメジャーの15センチのあたりから下。割れめに食い込んだ部分が、濡れて光っていたのだ。
その液体の正体は、わかっていた。
おしっこじゃない。もちろん汗などであるはずがない。女の子の股間から分泌される粘りけのある液体なんて、ひとつしかない。
しかし愛美先輩は、そのことにはいっさい触れず、自然な動作で液体を拭き取った。
「測定終わり。裕香に合うサイズの貞操帯を取ってくるわね」
そして穏やかにほほ笑むとスカートを穿き、愛美先輩は測定結果を記録したメモを持って更衣室を出ていった。
(どうして……?)
メジャーを濡らしてしまったのだろう。
愛美先輩が出ていったあと、顔から火が出る思いをしながら考える。
(メジャーが、私のいちばん感じるところを刺激したから?)
それは違う。たしかにメジャーは割れめに少し食い込み、陰核《クリトリス》を軽く押した。思わず声を出してしまったのは、そのせいだ。
しかし、濡らしていたのは、そのせいじゃない。その少し前から、割れめの奥が熱くなるのを感じていた。
『脚を開いて』
愛美先輩に命じられ、羞恥心に耐えながら、脚を開き始めた頃から。
(でも、なぜ……?)
恥ずかしい思いをしながら脚を開いて、濡らしてしまったのだろう。
濡れ始めたタイミングはわかっても、そうなった理由がわからない。
とはいえ、女の子がどんな気持ちになったとき、そこが濡れるかくらいは知っている。
私はあのとき、無意識のうちに、淫らな行為を期待していたのだ。
「恥ずかしい……」
いつもしとやかでたおやかな愛美先輩と比べ、自分はなんてはしたないのだろう。その差を恥じてつぶやいたとき、彼女の昨日の言葉を思いだした。
『当時のものは女性の性交を禁止するという一点に特化したものだった。でも現代の貞操帯は、肉体の貞操とともに、精神の貞操を守るためのものなの』
愛美先輩がしとやかでたおやかなのは、肉体の貞操のみならず、精神の貞操も貞操帯で守っているからなのだろうか。
(だとしたら……)
貞操帯を着けて暮らせば、私も愛美先輩のようになれるのだろうか。
「もし、そうなら……)
そこまで考えたところで更衣室の扉がノックされ。
「裕香、入るわよ」
愛美先輩が、貞操帯を手にして戻ってきた。
「これが、裕香の貞操帯よ」
ほほ笑んで、捧げ持った貞操帯を、愛美先輩が見せる。
ふだんなら『裕香の』という部分に引っかかりを感じていただろうが、今の私にそんな余裕はない。
ともあれ、昨日もさっきも、先輩が着けているのを短時間見ただけだった貞操帯そのものを凝視する。
前面は、これまでの印象と同じ。全体的にはサイドが高く、前後が低い三次元のカーブを描く横ベルトに、南京錠でおしゃもじ形の縦の金属板が組み合わされた形。そこに、さらにもう1枚、同じ金属製の小さな穴が無数に穿たれた板が南京錠を介して取りつけられている。
金色の南京錠の弦の部分に円形の板が被されているのは、おそらく強度的に落ちるであろうその部分を守るためか。
昨日は黒いゴム――いやシリコーンか――で縁どりされていると思ったが、それは縁だけではなく、肌に触れる内側全体を覆っていた。
つまり、貞操帯本体は硬い金属製だが、肌に触れる部分は柔らかいシリコーンゴム。
『私たちの貞操帯は毎日着け続けても快適に暮らせるよう作られている』
その配慮が、きちんとなされているということだ、
さらにおしゃもじ形の金属板が膨らみきり、また下に向かって萎み始めたあたり。小さな穴が無数の穿たれた板の裏側には、幅1センチ長さ5センチ程度の溝が開けられている。
おそらく、そこが女の子の割れめにあたる部分なのだろう。この構造なら、おしっこの排泄は問題なくできて、しかも外部からの異物の侵入は防げる。
そして、後ろ側。
その見ためは、ひとことで言えばTバックのショーツ。前側より、いや横のベルトよりもっと幅の狭い金属板が、噛み合わせるような形の金具を介して、横のベルトに取りつけられている。
表面には、ほかにも穴あき板をはめ込んで留める金具が見えているが、前面同様シリコーンゴムに覆われた裏面には、まったく凸凹がない。
ふつうのTバックショーツとの違いは、細い縦板の途中が円形に膨らみ、そこが丸くくり抜かれていること。おそらくそこから、大きいほうの排泄をする。
なんとよく考えられ、精緻に作られているのだろう。
『現代の貞操帯は違う。1日24時間、毎日着け続けても、快適に暮らせるよう作られているの』
まさしくその通りだ。この貞操帯には、着けた女性の貞操を完璧に守りつつ、快適に暮らせるよう、工夫が凝らされている。
特別高価な素材が使われているわけではないが、作り手の経験と技術が惜しみなく注ぎ込まれた逸品。けっして安い値段では――。
そこまで考え、ふと気になった。
『私たちの貞操帯は毎日着け続けても快適に暮らせるよう作られているけれど、そのぶんサイズにはシビアなの』
今しがた、愛美先輩はそう言った。
そのサイズにシビアな貞操帯を、愛美先輩はすぐに用意してきた。
偶然、私にぴったりのサイズがあった、ということではないだろう。複数用意されていたサイズのなかから、私に合うものを選んできたに違いない。
だとすれば、どれほどの数の貞操帯が、ここには保管されているのだろうか。
そのことを口にすると、愛美先輩は穏やかにほほ笑んで答えてくれた。
「それほど大量に在庫してるわけじゃないわ」
「えっ、でも……」
「貞操帯は、横ベルトに縦の金属板を組み合わせる構造。ふつう体型の子ならそれぞれ1センチきざみで数種類用意しておけば、ほとんど対応できるの」
(いえ、違う……)
その話を聞いて、直感した。
横ベルトだけならそのとおりだろうが、縦の金属板は違う。全体のサイズだけじゃなく、アソコやお尻の穴の位置も関係する。そしてその位置関係は、人によって微妙に違うはずだ。
とはいえ、下半身になにも着けていない私に、それ以上疑問を訊ねる余裕はなかった。
恥ずかしい。
恥ずかしくて、顔が熱い。おそらく今、私の顔は耳まで真っ赤だろう。
穏やかにほほ笑んだまま、そんな私をじっと見て、愛美先輩が告げる。
「じゃあ、着けてみましょう」
「は、はい……」
小さく短く答えたところで、私の前に愛美先輩がしゃがみ込んだ。
「うふふ……」
愉しそうに笑いながら、愛美先輩が横ベルトと縦の金属板を留める南京錠に鍵を差し込む。
カチリ。
硬質な金属音とともに南京錠が解錠され、貞操帯が緩く開く。
片手に貞操帯を持った愛美先輩が、私の腰に抱きつくように、お尻に手を回す。
そのことにドキリとしたところで、愛美先輩が上目遣いに私を見た。
先輩の頬が上気している――ように見えた。
瞳が妖しく輝いている――気がした。
「うふふ……着けちゃうよ」
「は、はい……」
どこか熱を感じさせる声に答えると、尾てい骨の少し上に、貞操帯が押し当てられた。
「うふふ……」
なぜ、愛美先輩は、こんなふうに笑うのだろう。ふと気になったところで、腰骨の上に横ベルトを這わされた。
「うふふ……」
なぜ、今日の愛美先輩は、どことなく妖艶な空気を漂わせているのだろう。
私の身体にも熱が生まれるのは、先輩の妖艶な空気に酔わされているからか。
「うふふ……」
貞操帯の横ベルトが、前方に回ってきた。
その片方の先端には、細い突起。反対側には、突起とほぼ同じ大きさの穴。先端どうしが重ね合わされ、穴に突起が差し込まれると、横ベルトは私の腰周りに隙間なく密着していた。
「脚、開いて」
わかっている。お尻の側で太ももに当たっている縦の金属板を閉じるためには、脚を開かなくてはならない。
そのことを理解していながら、私は脚を開くことを躊躇した。
それは私のそこが、メジャーを濡らしてしまったときと同じ状態に陥っていると自覚していたからである。
(でも……)
一瞬のためらいのあと、私はおずおずと脚を開いた。
それは、メジャーを濡らしたことに、愛美先輩がいっさい触れなかったから。触れないばかりか、なにごともなかったかのように、自然な動きでメジャーを拭き取ってくれたから。
そのことで、私の愛美先輩に対する信頼感は増していた。
先輩なら、そんなことを指摘したりしないだろうと信じていた。
この人になら、身を委ねてもいいとすら感じていた。
思えば、そのとき私はすでに――。
「ひうっ!?」
そのとき、縦の金属板のTバック部分が、お尻の肉を左右に割った。
お尻の穴をムニッと押し出すように、その周りを軽く圧迫された。
貞操帯の後ろ部分の形状を思い出したところで、両脚の間から、おしゃもじ形の金属板が前方に回される。
「ひっ、あ……」
熱く火照るそこに、冷たいシリコーンゴムの内張りが触れた。
「ひいっ……!?」
媚肉に金属板が押し当てられた直後、それが細い溝からムニッと押し出される感覚。
横ベルトの突起に縦の金属板の穴が組み合わされると、愛美先輩が南京錠とその弦に被せる円形金属板を手に取った。
「鍵、かけるわね」
「は、はい……」
熱に浮かされたように先輩の言葉に答えた直後――。
カチリ。
先輩が指先に力を込めただけで、あっけなく私の股間が封印された。
「どう、きつすぎたり、食い込んだりしてるところはない?」
「はい、特には……でもなんか……」
「全体的に、ちょっとだけきつい感じ?」
「はい、そのとおりです」
「うふふ……それは貞操帯の特徴よ。伸縮性がない素材を肌にぴったり密着させるためには、ほんのちょっとだけきつめサイズを選んだほうがいいの。特に食い込んだり血流を妨げてるようなことがないなら、このまま試着を続けましょう」
そう言って私がショーツを穿き、スカートを直すのを待って、愛美先輩は更衣室のドアを開けた。