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昆虫の逆襲ー。


大学生、塚本卓也の彼女、

篠原怜奈は「クィーン」と名乗る昆虫に憑依され、

最後には”心を消されてしまい”完全にクィーンに肉体を

奪われてしまったー。


信じられないことだが、現実だー。

執拗に、家に入り込んだ虫を敵視し、

徹底的に叩き潰していた卓也は、

”昆虫の怒り”に触れてしまったー


彼女の怜奈を乗っ取った”昆虫の女王”とは

いったい何なのだろうかー。

人間には、まだ知らない”何か”が昆虫界にも

存在していたと、そういうことなのだろうかー。


あれから1ヶ月。


世界はー

突如として凶暴化し、人間を襲い始めた昆虫達を前に

大混乱となっていた。


各地で駆除隊が結成される。

しかしながら、”昆虫が人間に明確な敵意を持って襲ってくる”

なんてことは、人類の歴史上、なかったことだ。


自衛隊による駆除。

地元の有志たちによる駆除。

警察による駆除。

各地で駆除が行われるも、

前代未聞の出来事に対応できなくなってしまう。


国も大混乱し、

まともな対応ができないまま、

圧倒的物量に-人間社会の被害は拡大していった。


今まで”害虫”として弾圧してきたはずの昆虫たちにー

人間が”押されていく”そんな事態になってしまっていたのだー。


混乱する人類。

そんな最中だったー


突然、テレビの放送が何者かにジャックされたのだった。


彼女を奪われ、失意のまなざしでテレビを

見つめていた卓也は目を見開いたー。


あれから1か月ー

怜奈が目の前で乗っ取られて

目の前で消されてしまったー

自分は、何もできなかったー。

卓也は無力だったー。


そんな卓也が呆然と見ていた

テレビに映し出されたのはーーー

虫を自分の体に這わせて微笑む

怜奈だったーーー


「・・・愚かな人間たちよ…」

怜奈は笑うー


裸体に虫を大量にはわせてー

まるでそれが服のように見える状態の怜奈ー


妖艶に微笑む怜奈は別人のようだったー


虫が苦手な怜奈が、

身体中に虫を這わせて喜んでいるー


「--私はーーー怜奈」


顔にハチを這わせてー

胸元にムカデが這い、

そしてその綺麗な太ももにはアリたちが蠢いている。


「これはお前達への復讐…

 私たちは、お前達に何万、

 いえ、何億という数、殺されてきた…」

怜奈が憎しみをこめて言う。


怜奈の表情にかつての面影はないー

既に、完全に乗っ取られてしまっていることが

テレビ画面を通じていてもわかるー


「くそっ…怜奈…」

卓也は、テレビに映る怜奈の姿を見ながら

目から涙をこぼすー


自分に、何かできることはなかったのかー、と

自問自答しながらー。


テレビに映る怜奈はさらに続けた。


「---ーーだが、そんな時代は終わった。

 今度は、わたしたちがお前らの大切なものを

 奪う時代になるのよ」


怜奈が高らかに宣言すると立ち上がって微笑んだ。


「---ホラ、見て…

 わたし…こんな風に虫に支配されちゃった…!

 

 みんなも、わたしみたいに、

 虫の為に働く”体”になるの!


 もうわたしは、虫たちの意のまま!

 体の中に入った虫に、

 この綺麗な体も、記憶も、精神も、人生も!

 ぜ~んぶとられちゃった!」


嬉しそうに言う怜奈。


そこまで言うと、鋭い目つきに戻り、笑ったー。


カナブンのような虫を舌でペロリと舐めながら

怜奈が不気味にほほ笑むー。


「ふふっ…どうだ?

 人間らしいだろう?

 この女の記憶を介して、人間のことを

 色々と知ることができたわ…

 うふふっ…」


冷徹に笑う怜奈。


「---怜奈!くそっ…怜奈!」

彼女を奪われ、生気を失っていた卓也は

テレビに向かって叫ぶー


その言葉が怜奈に届くことはないー


怜奈は髪をいじりながら、

虫を体に這わせて笑うー


「---人間の体はこれから

 ”器”として使わせてもらう。


 この女のようにねーーー

 さぁ、おびえなさい人間ども…


 怜奈が・・・

 あなたたちを地獄に落として

 あ・げ・る♪」


そう言い、怜奈がウインクする。


ーーー卓也に向けていた

優しい笑顔をテレビに向けるーーー


優しくも、悪魔のような笑みー。

怜奈の目から、涙のように小さな虫がこぼれ落ちるー。

目が一瞬ぐるんと回転するー


怜奈の身体はーー

ちゃんと、生きているのだろうかー。

卓也の不安はさらに膨れ上がっていくー


怜奈はテレビに向かって挑発的なポーズを取りながら笑うー


「--もう、あなたたちに逃げ場はないーー

 うふふふふふふふっ!」


そしてー

映像は途切れたーーーー。


「怜奈…!」

卓也は涙を流した。


彼女の怜奈がーー

虫にもてあそばれているーーー。


世間ではーー

昆虫に襲われて大勢が犠牲になっているーーー

それなのにーー自分は。


卓也は立ち上がった。


自暴自棄になっている場合じゃないー。


「……怜奈に会いに行こう…。」

そう呟き、部屋の隅の写真を見る。

自分と、怜奈が仲良くピースしている写真をーーー


「……可哀想だよ」


昆虫に対しても優しかった怜奈を思い出す。


「怜奈ーーーー。

 必ず俺が助け出すからー。」


ここで、ふさぎ込んでいて、何になる?

悩んでいれば、怜奈は助かるのか?

ふさぎ込んでいれば、怜奈は助かるのか?

いいや、違う。

ずっと、ここにいても何も変わらない。

怜奈は乗っ取られたまま、

弄ばれ続けるー。


あの時、昆虫のクィーンは、

怜奈の心は消えたと言った。


だが、信じないー。


怜奈は、まだ動いているー

たとえ乗っ取られていたとしても

怜奈の身体は、まだ動いているー


何か、方法があるはずだー


可能性が、0.1%でもある限りー

卓也はあきらめたくなかった。


「---…」

卓也は怜奈から以前貰った

腕時計を握り締めると、

そのまま家の外に向かっていった。


”怜奈・・・

 必ず、必ず助ける。

 だから待っててくれ”


卓也は意を決してそう呟いた。


「---俺は…俺の道を貫く」

卓也が呟く。


「虫の奴らを、ぶっ潰してやるぜ」

そうだー害虫は駆除しなくてはならない。

虫どもが、どう思おうと、それが卓也の生き方だ。


虫どもだって、他の虫を食って生きているやつらもいるー。

やつらだけが「---覚悟しろ!虫ども!」

自宅にあった殺虫剤をリュックに詰め込み、

両手に殺虫剤を装備して家を飛び出す卓也。


外には大量の虫がうごめいていて、人の気配はない。


「--うおおおおおお!」

卓也は殺虫剤を撒きながら

虫がうごめく街を突破していくー


怜奈がどこにいるのかは分からない。

まずは近くの警察署に駆け込んで、

そこで装備を整えるー。


・・・だが、

現実はそう甘いものではない。


この世界は漫画の世界ではない。


卓也は、ヒーローなどではない。

アニメの主人公などではない。

そこに、主人公補正など存在しないーーーー。


「----!!!」

殺虫剤がなくなるー


スズメバチの群れに襲われるー


「くそっ!くそ!離れろ!」

卓也がスズメバチを振り払おうとするー


しかしー

”人間の命を奪う”ために行動していた

スズメバチはー

卓也の身体を次々と貫いていくー


「れ…怜奈ぁああああああ!」

卓也が叫ぶー

その声は、怜奈には届かないー。


卓也が家から出て3時間後ー。

彼はスズメバチの群れに襲われて

あっけなく”絶命”したーーー。


怜奈への思いを叫びながらーー。


一人の力では…

どうすることもできなかったー。


”家に入ってくる昆虫は撲滅するべし”


そう唱えていた卓也へのーーー

”罰”なのかもしれないーーー


昆虫に支配された”怜奈”の逆襲は

始まったばかりだったーー。


今日も彼女は足に数千匹の虫を

這わせながら微笑むのだった…


「----た……く…や」

怜奈が小声で何かを呟くー


しかし、すぐに不気味な笑みを浮かべながら

怜奈は口から虫を吐き出しながら、呟いたー


「人間……これが、虫の怒りだー」


とー


おわり


・・・・・・・・・・・・・・・


コメント


原作がこういう風に終わってるので、

一瞬、リメイク中に「ちゃんと虫と戦っちゃおうかな~」とも

思ったのですが、それはまた別作品で書こうかな…ということで

原作通りバットエンドになりました~!


いつか、虫に憑依された人間と戦うような”新作”も

機会があれば書いてみたいデス!


お読み下さりありがとうございました!!

(元作品が短いので、いつも通りこちらは100円プランでも

 読めるようになっています!)


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