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遊園地ー。

色とりどりの光が、人々を照らす。


「--1年間あっという間だったなぁ~」

明美が観覧車を見つめながら笑うー。


去年ー

俺は約束したー


「--来年も、一緒にここに来ようね」


来年もまた、一緒にここに来る、と。

そしてー、その約束を果たす日が来た。


「--どうしたの?」

明美が振り返ってほほ笑むー。


優しい明美の笑顔ー。

俺にとって、かけがえのない、宝ー。


「---え…あ、いや…」

康成が周囲を見つめながらほほ笑む。


なんか、夢みたいだー。


明美とこうして一緒にいられる時間が

何よりも幸せだー。


こんな時間が、永遠に続けばいいー。


明美がほほ笑みながら、俺の方に近づいてくるー


「も~!康成ってば~!

 寝ぼけてるの~?」


明美が俺に抱き着いてくるー。


ー!?


「--え…」

俺は、唖然とする。

鋭い痛みが走るー。


明美が小さな血のついた小さなナイフを

ペロリと舐めながら笑う。


「いつまでも、いつまでも、。うっぜぇんだよ!」


ーーえ…

目の前にいたはずの明美がー

いつの間にか、茶髪にー

”憑依されて変えられた明美”に変わっているー


「---え……あ、、明美…」


俺は戸惑うー

遊園地の光が、赤く染まるー


目の前にいたはずの明美の姿が、高藤の姿に変わるー。


「……な、、、なんでお前が…ここに…?」

俺は血を流しながら叫ぶー


ノイズのように、高藤の声が響くー


「--”憑依”しちゃいけないなんて

 法律があるのか?

 ”憑依”は犯罪か??


 あ?法律があるなら言ってみろよ?

 日本国憲法第何条だ?あ???

 

 --リア充…大☆爆☆発!」


面白そうに叫ぶ高藤ー。


「--あきらめろ」

目の前にいたはずの高藤が消えて

再び明美がほほ笑みながら、目の前に立っているー


「--あんたに約束は果たせないー

 わたしとの約束は、夢に消えるー

 おとなしく あ・き・ら・め・ろ」


明美が、俺を睨みながら言うー。


ふざけるなー


俺は拳を握りしめた。

夢になんかしてたまるかー。


俺は、明美との約束を守るんだー。


明美を元に戻してー

高藤に憑依薬を渡した女子を見つけ出してーーー


約束を、果たすんだー。


”助けて”

明美の声が、どこからか聞こえた気がしたー


・・・・・・・・・・・・


倉本 康成

2年B組生徒。彼女が憑依されてしまう。


藤森 明美

2年B組生徒。お茶目な性格。憑依されてしまい…?


柳沢 零次

2年B組生徒。康成の親友。


篠塚 沙耶香

2年C組生徒。生徒会長。同じ中学の出身。


哀川 裕子

2年B組生徒。陰険なお嬢様


間宮 結乃

2年B組生徒。明美と親しかった生徒の一人。大人しい性格。


国松 千穂

2年B組生徒。明美と親しかった生徒の一人。スポーツ大好き。


小野坂 亮介

2年A組生徒。ナルシストな吹奏楽部部長。


☆登場人物詳細は↓でどうぞ☆

(いつも書いている注意ですが、

 \300と出ていても、このお話を読めている人は

 既にプランご加入頂いている皆様なので、別途料金がかかったりはしません!)

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・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


「----はっ!」

康成は、飛び起きた。


ーーー夢、か。


康成は首を振る。

机の上には、明美から誕生日プレゼントに貰ったオルゴール。


悪夢を見たー


「--必ず…必ず約束は守るから」

机の上に飾ってある康成と明美の写真を見つめるー。


「-----…なにたそがれちゃってるの?」

偶然、部屋に入ってきた妹の夏帆が苦笑いする。


「---うぇっ!?ノックぐらいしろよ!」

康成が言うと、夏帆はにこにこしながら言う。


「--お兄ちゃん~!最近、明美さん全然遊びに来ないよね~!」

ーと。


「--ん?あぁ…まぁ…明美も忙しくて」

康成は苦笑いしながら誤魔化す。

夏帆は明美によくなついていたー。

急に明美が遊びに来なくなったことに違和感を感じるのも、無理はない。


「--次に会った時、明美さんから、

 お菓子の作り方教えてもらう約束だったのにな~」

夏帆はそこまで言うと、

康成の方を見るー


「お兄ちゃん…明美さんと喧嘩でもしたの?」


「え…いや」

康成は目を逸らす。

明美が憑依されたとは、夏帆には言えないー。

妹の夏帆を巻き込みたくない。


「---も~!あんなに素敵なお姉さん、

 悲しませたら、わたしが代わりにぷんすかするからね!」

夏帆が頬を膨らませながら言うー。


「---夏帆」

康成は少しだけ悲しそうにほほ笑んだー。


「--明美はまた、必ず来てくれるからー。

 もう少し、待っててくれ。 な?」


康成の言葉に、夏帆は少しだけ不思議そうにうなずいたー。


・・・・・・・・・・・・・・・


「----あ、来た」

「憑依されてるってどういうことなのかな?」

「最近、明美、変だもんねぇ~」


クラスメイトの一部が冷ややかな目を明美に向ける。


「チッ」

明美は聞こえるように舌打ちしながら

自分の座席に座る。

不機嫌そうに、鞄から教科書を取り出す明美。


そこに、陰険女子のリーダー・哀川裕子がやってきたー。


「----ねぇ、明美」

裕子が悪い笑みを浮かべながら言う。


「--この前、長谷部が言ってた”憑依されて変えられた”って

 どういうこと?」

不良生徒・長谷部が言ってたことを

ニヤニヤしながら聞く裕子。


「---知らない。」

明美が愛想なく答える。


裕子はイヤらしい笑みを浮かべながら明美の顔を覗き込む。


「ねぇねぇ、明美~教えてよ」


「うるさい!」

明美が声を荒げる。


既に登校していた周囲のクラスメイトがびっくりして

明美と裕子のほうを見るー


裕子は笑うー。

そして、

まだ康成が登校していないことを確認してから

裕子は明美に向かって呟くー。


「ねぇねぇ、あんた、本当はまだ

 倉本のこと好きなんじゃないの?」


憑依されてから変わってしまった明美と

親しくしていた裕子ー。

しかし、ここに来て突然態度を変え始めた。


”明美が憑依されて変えられた”ことを知ったからだろうか。

それともーーーー…。


裕子の言葉に明美は舌打ちして裕子を睨む。


「---さっきから、何が言いたいの?」

明美の言葉に

裕子は「わぁ~!元優等生の表情とは思えない~!

こっわ~い!」とふざけた仕草でわざとらしく叫ぶ。


「----…じゃあさ…」

裕子が笑いながら明美に耳打ちをするー


「---本当にアイツのことが嫌いなら、

 アイツを酷い目に遭わせてあげなよ。

 もっと、もっと、もっと」

裕子が表情を歪めながら言うー。


「---…」

明美は、不愉快そうに裕子のほうを睨んだー。


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


午前中の授業が終わるー。

康成は、ため息をつきながら

明美のほうを見つめる。


明美は今日も不機嫌オーラ全開で

愛想なく、スマホをいじっているー。


”ちょっと話があるんだけど”

昼休みに入ると、

別のクラスの生徒会長・沙耶香から

連絡が入った。


「話…?」


断る理由もない。

康成は、昼食を手早く済ませると、そのまま

生徒会室に向かうー。


「----」

康成が教室から出ていくのを見ていた

陰険女子の裕子は、明美に声をかけたー


「ほら、あいつをひどい目に遭わせるチャンスー」

裕子が康成の机の鞄を指さす。


「--アイツの私物、盗んで捨てるってのも

 面白そうじゃない?」

裕子に言われて、明美は裕子のほうを見るー。


「---あいつのこと、うざいんでしょ?

 だったらもっともっと苦しめてやらなきゃ。


 それともー?

 ほんとは、アイツのことまだ好きなのかしら?

 ”真面目にやってるのバカらしくなっちゃった”って言うのは

 嘘なのかしら…?」


裕子が明美を挑発するー。

明美は舌打ちをすると「バカにしないで!」と

呟いて、康成の鞄を乱暴に探り始めるー。


そしてー

「---!」

明美が表情を歪めるー


康成の鞄の中には

明美が誕生日プレゼントとして渡した

オルゴールが入っていたー

康成は、いつも大切にオルゴールを

持ち歩いているー。


「--いいじゃん」

裕子がニヤリと笑ったー


「それ、盗んで、捨てちゃえ」

裕子の悪魔のような笑みー

明美は複雑そうな表情を浮かべながら、

”康成を苦しめたい”という気持ちに支配されて、

笑みを浮かべながら、康成の鞄から

思い出のオルゴールを勝手に持ち去ったー。


・・・・・・・・・・・・・・・・


「--篠塚さん」

生徒会室に入ると、沙耶香は既に

待っていたー。


「-----」

沙耶香が、康成の方を見つめる。


高藤が”会長”と言っていたのが気になる。

でもーー。


康成が口を開こうとすると、

そこに、親友の零次、

憑依される前に明美と親しかったクラスメイトの二人、

テニス部部長の千穂と、

吹奏楽部所属のツインテール少女・結乃がやってくるー。


「----みんな…?どうしてここに?」

康成が、零次たちがやってきたことに驚いていると

沙耶香がほほ笑んだ。


「---倉本くん。一人で抱え込んじゃだめ」

生徒会長の沙耶香が言う。


「え…」

康成が沙耶香のほうを見る。


「-ーーー昔っから、そうだよね。

 倉本くんって、一人で何でも抱え込んじゃう。

 明美が倉本くんのこと、”お人よしすぎ”って

 よく言ってたけど、わかる気がする」


沙耶香はそこまで言うと、

康成を見つめながら言う。


「--明美を助けるために、手伝ってくれそうな人に、

 わたしなりに声かけちゃった


 …余計なお世話だったかな?」


沙耶香の言葉に

康成は首を横に振ったー。


”俺は、一人で抱え込みすぎてたのかもしれないー”


「ありがとう。篠塚さん」

康成の言葉に、沙耶香は嬉しそうにほほ笑むー。


そして、沙耶香に促されて、

康成は、改めてこれまでのことを説明したー。


明美が憑依されたこと、

憑依していたのは高藤であったことー

高藤に憑依薬を渡した”女子”がいることー。


全てを説明し終えると、康成は、4人のほうを見るー


正直ー

誰が、高藤に憑依薬を渡したのか、分からないー


ある意味”愉快犯”であった高藤とは違い

”高藤に憑依薬を渡した女子”は計算高く

ボロを出さないー

高藤のように、おびき出して捕まえることは

難しいーーー

一人じゃ、手詰まりになりかけていたのも、事実。


「ーー康成。俺たち、親友だろ。

 俺はお前と、藤森さんの味方だー。

 できる限りのことはするぜ。」

零次が言うー。


「--うん。あたしたちも出来る限り、協力するよ。

 明美は、あたしたちの親友だし、ね!結乃!」


「うん。明美があんな状態じゃ、わたしもさみしいし」


明美の親友だった千穂と結乃も、笑顔で康成に

そう言葉をかけたー。


康成が、

零次、沙耶香、結乃、千穂を順番に見つめるー。


「みんな、ありがとう」

康成が頭を下げるー。


明美が憑依されてから、ついつい疑心暗鬼になっていた。

零次や、沙耶香まで疑ったー


零次は、何かを隠している気がするし、

文化祭の時に妹とはぐれた際の慌てぶりには違和感を感じたー。


生徒会長の沙耶香は、高藤が”会長”と言ってたこと、

そして”時折楽しそうに見えること”ー

気になることはたくさんある。

ただ、本人は”違う”確かにそう言った。


吹奏楽部の結乃ー、と言うと、

康成に対して意味深な態度を取る

吹奏楽部の部長の小野坂のことが引っかかるー。


テニス部の千穂は、高藤を追い詰めた時に

一緒にいたからーーー

犯人ではないと思いたいー。


疑えば、キリがないー。

でもーーーー


”あの女”


高藤がそう呼んでいた”憑依薬を渡した人物”はひとりのはずだー。


だからーーー

康成は、今、目の前にいる仲間たちを信じたいー。


「---みんなで、明美を助けよう!」

生徒会長の沙耶香が言う。


「おう!」

「うん!」

「よ~し!」

零次・結乃・千穂が、それぞれ頷くー


「ーー本当にありがとう。

 みんな、俺に力を貸してくれ!」

康成は4人にそう言い放ったー


明美ーー

いつの日かまたー


君がまた、この輪に戻ってこれるようにーーー


俺は、負けないー

絶対にー


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


放課後ー


康成は下校の準備をしていて、

あることに気づくー


明美からもらったオルゴールがないことに。


「---え…」

康成は、戸惑いの表情を浮かべるー


”どう?わたしからの誕生日プレゼント!

 おじいちゃんに頼んで

 わたしと康成の思い出をイメージした

 オルゴール、つくっちゃった!”


「--どうして」

康成が呟くと、

近くにいた陰険女子の裕子が笑った。


「わたし、見たよ~」

挑発的に笑う裕子。


「--見た?」

康成が聞き返すと裕子が答える。


「明美があんたの鞄から、

 オルゴールみたいの持ち去るところ!」


裕子の言葉に、康成は戸惑うー。


「----あんたの元カノ、ついに

 人からモノを盗むようになっちゃったんだねぇ~!

 ちょっと前まであんなに真面目だったのにぃ~!」


康成は裕子のほうを見つめるー


元々、裕子は素行に問題がある。

陰険な女子グループを率いていて、

幼いころから金持ちの両親のに甘やかされていて、

そのせいで、わがままかつ傲慢な性格に育ってしまっているー。


でもー


何故、明美と康成に執着するのかー。

康成には、それが分からなかった。


明美が憑依されて変えられてから

明美とやたら親しくしていてー

明美と組んで、康成を停学に追い込んだこともあった。


だが、康成は裕子に恨まれるようなことをした覚えがない。

裕子が、明美と康成に執着するのは、何故なのか。


「--…どうせまた、明美と組んで、俺に

 何かしようとしてるんだろ?」


康成が言うと、裕子は不快そうな表情を浮かべる。


「--俺に何の恨みがあるのか知らないけどさ…」

康成はそう言うと、裕子のほうを、まっすぐと見つめるー。


「---俺や、明美のことを追い詰めようとするならー…

 俺も、黙ってるわけにはいかない」


「--なによ、その目」

裕子が声を荒げるー。


「--どんな嫌がらせをされても、俺は、負けない」

康成はそれだけ言うと、教室から立ち去って行く。


「---……」

康成の背中を見ながら、裕子は

イライラした様子で自分の爪をかじり始めたー。


・・・・・・・・・・・・・・・・


下校中ー

通り道の河川敷のベンチで、

明美が一人座って、川を眺めていたー


自分はどうしてしまったのだろうー。

どうして、康成を嫌いになったのかー

どうして、何もかもイヤになって真面目にやるのが馬鹿らしいと思うようになったのかー


わからないー


「わたし…おかしくなっちゃったのかも」

自虐的に笑うー。


明美の手には、

康成の鞄から盗み出した

オルゴール。


憑依される前の自分が、康成にプレゼントした

思い出のオルゴール。


「--いいじゃん」

「それ、盗んで、捨てちゃえ」


陰険女子・裕子の言葉を思い出す。


「---いつもいつも、うざいのよ」

康成のことを思い出しながら

明美は、川に向かって、オルゴールを投げ捨てようとしたー


「---あ、明美さん!」


「---!?」

オルゴールを投げようとしていた手を止めて

明美が振り返るとー

そこには、康成の妹・夏帆がいた。


中学校から下校中に、偶然、夏帆が

通りかかったのだったー


「---夏帆ちゃん」

険しい表情を浮かべながら明美はオルゴールを投げるのを

やめると、夏帆のほうに向かって歩いていくー


「--最近、全然遊びに来てくれないから

 寂しかったんですよぉ~」

夏帆が拗ねた表情を浮かべながら言う。


「-----」

明美は険しい表情で夏帆を見つめているー。


「--あれ?なんか、明美さん、

 前よりかわいくなったような~?」

天然な夏帆が笑いながら言うー。


憑依されたあとの明美の姿はー

髪が茶髪になり、化粧が少し濃くなり、

スカートも少し短くなったー


事情を知らない夏帆は、そんな明美に向かって、

可愛くなりましたね~!と笑う。


「--ありがと」

明美が少し照れ臭そうにしながら、

近くのベンチに座る。


夏帆もそのベンチに座りー

ふたりで川を見つめながら話し始める。


「---最近…

 お兄ちゃんと喧嘩でもしたんですか?」

夏帆が気になっていたことを口にするー。


「---…喧嘩…」

明美が口を開くー


康成のことがうざくてたまらないー


でもー

喧嘩をした覚えもないし、

何かひどいことをされたー、という気がするだけで

実際には何もされていない気がする。


「---……今はちょっと、いろいろあって」

明美が暗い表情で呟く。


高藤に記憶や思考、感情をいじられて、

康成に対してイライラだけが募るー。

真面目にやるのが馬鹿らしい、だとか

負の感情ばかりが、自分の感情を支配するー


「---そっか…

 いろいろありますよね」

夏帆がうなずくー。


「---……わたし……

 アイツのことがうざくてうざくてたまらないの…」

明美が悲しそうな表情で呟く。


「---お、、お兄ちゃんのことですか?」

夏帆がびっくりしながら言うと、

明美は夏帆のほうを見ながら呟くー


「--ごめんね…夏帆ちゃんにこんなこと言って。

 でも…思い出すだけでむかついて、イライラしちゃって…

 何もかもがイヤになって」

明美の言葉に、夏帆はとても驚いた様子だ。


あんなに仲良しだった

お兄ちゃんと明美さんに何があったんだろう?と

首を傾げながらー。


「---でもね…

 アイツのこと考えると、時々胸が苦しくなるのー。

 嫌いなはずなのに、、なんだか……

 

 それにーー

 どうして嫌いになったのかも、

 どうしてウザイと思うのかも、

 全然分からなくて…」


明美が感情的にそう告げるー。


「---……」

夏帆が、明美のほうを見つめるー


前に会った時と、全然雰囲気が違うー

いったい、どうしてしまったんだろうー?

そんな風に思いながらー。


川のほうを見つめながら明美が目を潤ませながら言う。


「わたし、ちょっとおかしいのかも」

自虐的な言い方ー。

自分でも、自分に何が起きているのかわからないー


”憑依”ってー?

”憑依されて変えられた”ってー?


明美の頭の中は、混乱して

ぐちゃぐちゃになっていたー。


「---おかしくなんか、ないですよ」

夏帆が呟く。


「…え」

明美が夏帆のほうを見ると、

夏帆が笑いながら言う。


「わたしだって、お兄ちゃんのこと好きだけど、

 時々、すっごくむかつくこともあるし、

 イライラすることもあるし、

 お兄ちゃんなんていなくなっちゃえ!って

 思うことだってあるし…


 でも、兄妹も、恋人も、

 そんなものじゃないですか?


 好きだけど、なんかこう、好きだから

 むかついちゃうこともあるっていうか?


 うまく言えないですけど、

 別に、明美さんの気持ちも、

 おかしなものじゃないと思いますよ」


夏帆が”まぁ、わたしは彼氏とかいないんで、

テキトーなこと言ってますケド”と笑うー。


「---…夏帆ちゃん…」

明美が夏帆のほうを見ながら呟くー


「--だいじょうぶ!

 ほら、今は喧嘩中だったとしても

 お兄ちゃん、ああ見えて単純だから

 また仲直りできますって!


 ってか、お兄ちゃん帰ってきても、

 明美さんで頭いっぱいだし!」


夏帆の言葉に、

明美はほんの少しだけー

優しく微笑んだー。


「--…でも、、アイツは

 わたしのこと、きっと恨んでるよ」

明美が悲しそうに言う。


「---アイツ、ちょっと前に停学になったでしょ?」

明美の言葉に、

夏帆がうなずくー


「--あれ…わたしがアイツをはめたせいなの」

明美の言葉に、夏帆が「えぇ!?」と驚くー。


「-ーーわかったでしょ。

 わたしは悪い女なの」

明美は、そこまで言うと、ベンチから立ち上がる。


そして、夏帆に何かを手渡したー。


明美が康成の鞄から盗み出して

川に投げ捨てようとしていたオルゴールを。


「--アイツ渡しといて」

明美の言葉に、夏帆が「え?」と首を傾げる。


「--…忘れ物って言えばわかるから」

それだけ言うと、明美は足早に立ち去ろうとする。


「---ーーー!」

偶然、そこに康成が通りかかった。


明美とばったり鉢合わせする。


「あ!お兄ちゃん!」

夏帆が嬉しそうに笑う。


「---アンタの忘れ物、夏帆ちゃんに渡しといたから」

明美が愛想なく言う。


康成が夏帆の手に握られているオルゴールを見つめる。


「---そっか~。机に入れっぱなしだったのかな!

 ありがとな、明美」

康成は、笑いながら言う。


”本当は、盗まれた”ことは分かっているー

でも、明美は返してくれたー


だから、康成は明美のことを責めなかったー。


「----……ふん」

明美はそのまま立ち去ろうとする。


「---あ!そうだ!明美さ~ん!」

夏帆が手を振りながら言う。


「今度、前に約束したお菓子作り教えてくださいネ~!」

夏帆の言葉に、明美が立ち止るーー


「---」

なんで、こんなわたしに

優しくしてくれるのーー…

そんな風に思いながらーーー


「--俺からもお願いするよ!明美!

 俺は、、俺と夏帆は、いつでも待ってるから!」

康成が優しく声をかけてくるー。


「---」

明美は振り返って康成と夏帆を見つめるー


「---ーーお人よしの、馬鹿兄妹!」

それだけ言うと、少しだけほほ笑んで、

明美は立ち去って行ったー。


「----」

康成は、明美が立っていた場所に

一滴だけ水滴が落ちていることに気づくー。


「---明美…」

康成は悲しそうに呟いたー


大丈夫ー

必ず…またいつか

笑い合える日が来るからー


「ねぇ、お兄ちゃん」

夏帆が康成に声をかける。


「人からもらった誕生日プレゼント学校に

 忘れるなんて、ほんと、だらしないんだから!」


「---あぁぁ、ごめん!」


明美のオルゴールを康成に手渡しながら

夏帆は、頬を膨らませながら、笑ったー。


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


ーー病室ー


意識を取り戻さないままの高藤が

眠っているー


そこにーーー

女子生徒がやって来るー。


お見舞いに来たのはー

陰険なお嬢様生徒・哀川裕子ー。


裕子は、少しだけ笑みを浮かべるとー

意識のない高藤の方に近づいていったー。


⑭へ続く


・・・・・・・・・・・・・・・・・


コメント


終盤に向けて

しっかり伏線回収もありますよ~☆!

憑依とは関係ない人たちの意味深な行動の理由も

ちゃんと明らかになっていくので、お楽しみにデス~


今日もありがとうございました~!

(Fanbox)


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