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 「解放してあげる…」

怜奈がニヤニヤしながら呟く。


そしてー怜奈は突然うずくまった。


それと同時に、卓也を拘束していた

クモの糸のようなものが、力を失うー。


「!?」

卓也が驚いていると、

怜奈が突然、苦しそうな声をあげる


さっきまでの、余裕の笑みが嘘かのように

怜奈が苦しんでいる。


「お、、おい怜奈!」

卓也は慌てて叫んだ。


怜奈は、苦しそうに顔を上げるー。


その表情はー

さっきまでの、虫に乗っ取られた怜奈の表情ではなく、

いつもの怜奈の表情だった。


しかしー

苦しそうな息をしている


「はぁ…はぁ…

 な、、、痛いよ……何これ・・・あれ…わたし・・・?」


血を流す怜奈が痛そうに腹部を抑える。


「お、、おい!しっっかりしろ!」

卓也は大声で叫ぶ。


そして、怜奈に駆け寄る。


「……つ、、塚本君…??」

怜奈が苦しそうに言う。


怜奈の瞳が震えている。


卓也は、怜奈を乗っ取っていた昆虫が、

怜奈を解放したのだと悟るー。


怜奈からしてみれば、

意識が飛んでいて、目を覚ましたら

急にこんな状態でーー

まったくわけがわからないはずだ。


卓也は、怜奈をパニックにさせないように、と

まず、自分が取り乱さないようにしながら

冷静に声を出す。


「大丈夫か?」

ーーと。


卓也が言うと、怜奈が首を振った


「大丈夫じゃない……

 苦しいよ……。

 助けて塚本君…」


怜奈は涙を流しているー。

虫の女王とやらに憑依された怜奈は

さっき、解放される直前に

自分で笑いながら自分を刺したー

見たこともないような量の血が

怜奈の身体から出ているー。


このままじゃ、怜奈の命が…。


卓也は「い、今、救急車を呼ぶから!」と

叫んでスマホを手にする。


”この状況をどうやって説明する?”

卓也はそんな風に不安を感じながらも

”そんなことを考えるのは後だ!”と

急いで救急車を呼ぼうとする。


何があろうと、

まず、怜奈を助けなくてはならない。


しかしー


「えっ……誰なの!」

苦しそうな怜奈が突然声を上げた。


「どうした!怜奈!」

卓也が叫ぶと、怜奈がうつろな目で答える


「あ、、頭の中で声が……

 死にたくなければ私が助けてあげるって声が…」


怜奈の言葉を聞き、卓也は思うー

怜奈の中にいるクィーンだ。


「おい!怜奈!耳を貸すな!

 俺が助ける!だから…だから落ち着け!」

卓也が叫ぶー。


怜奈がクィーンとやらの言いなりになってしまったら…


「…わたし・・・死にたくないよ…」

怜奈は涙を流しながら続けて言うー。


「私を助けて下さい!私を!!

 お願い!!お願い!!

 あ、、、ああああああああああ!」


怜奈が頭を抱えてうずくまってしまった。


「ダメだ!耳を貸すな!」

卓也は叫ぶ。


「今、いま、救急車を呼ぶからー」

卓也が再びスマホに視線を戻し

救急車を呼ぼうとするー


…怜奈が黙り込む。

苦しそうな声も、聞こえてこない…。


卓也は嫌な予感を感じながら振り返るー。


怜奈はー

ゆっくりと顔を上げた。


「…終了…」

怜奈がほほ笑む。


先ほどまでとは異なる様子だ。


「れ…怜奈・・・?」

卓也は恐る恐る尋ねた。


「ザンネンでした~

 もうこの女の心は消えちゃったよ?

 私に全てをゆだねたから…。」


血を流しながら怜奈は笑う。


「ど…どういうことだ!」


「助かりたい一心で私に全てをゆだねたの。

 この女の心はもう、ワタシと合体した。

 もう、この世には存在しない」

怜奈が顔を近づけて言う。


「お、、、ふざけるな!貴様!」

卓也が怒鳴りつけると怜奈は笑った。


「嘘はついてないから…。」

そういうと、怜奈は口から、蜘蛛の糸のようなものを

吐き出すと、さっき、自分で包丁を刺した場所を

その糸で覆い…傷を全て治療した。


「ホラ、、ちゃ~んと助けたよ。

 この体をね」

怜奈は笑みを浮かべた


「……そ、、そんな…そんな」

卓也の目からは涙が流れてきた。


大事な怜奈が・・・消えてしまった


「じゃ…そろそろ行くから。

 アンタはそこで、絶望を味わいなさい」

そういうと、怜奈は再び髪を整えて玄関の方へと向かっていった。


「ま…待て!待ってくれ!」

卓也が怜奈の方に向かって走っていくー


だがー

怜奈は乱暴に卓也を突き飛ばした。


「汚い人間が!私に触れるな!」


吹き飛ばされる卓也。

倒れた卓也を見下しながら怜奈が呟く。


「---私はこれから人間たちに復讐する。

 お前ら人間は”怜奈”におびえて生きることになるのよ

 ハハハ、あはははははは!」


怜奈は狂ったように笑いながら玄関から出て行ってしまった


「れい…な…」

卓也の心は壊れた…。


あれからーーー


何日が経過しただろうか。


卓也の心はもう…。


怜奈を失ってしまった。

いや、奪われてしまった。


卓也はもう…何も考えられなかった。


それからしばらくしてーー

各地で昆虫が凶暴化し、人を襲い始めた。


怜奈の仕業だろうか…。


…だが、もうそんなことはどうでもいい。

俺は、、、疲れたーーー。


卓也は、怜奈が消えてしまったあの日からー

ずっと、、そのまま部屋で、まるで廃人のように

蹲っていたー


⑤へ続く


・・・・・・・・・・・・・・・・・・


コメント


リメイク版第4話でした!

原作はここで終了で、後日談がもう1話あるのですが、

リメイク版では、その後日談を⑤として、

一緒にすることにしました~!

続きはまた来週デス!


※原作が短いので、いつも通り

 こちらの作品は100円プランでも読めるようになっています。

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