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世界はわたしを中心に回っているー

そう思っていたー。


欲しいものは、パパに頼めば何でも手に入るー

ママとパパは、わたしに何でもしてくれるー。


勉強も出来て、

可愛くてー、

なんでもできるわたし。


でもーーー

わたしにも手に入らないものがあったー。


”繋がり”


こんなに可愛いのにー

こんなにお金持ちなのにー

勉強も、スポーツも、なんでもできるのにー


どうしてー?


わたしが、劣る部分なんて、何ひとつないのにー

あの子には

友達も彼氏もー

周囲に”人”が集まっていたー


わたしが劣るはずなんてないのにー


パパとママに頼んでもー

人望は手に入らないー


けれどー。

そんなあの子は、今やわたしの友達。


やっぱり…

世界は、わたしを中心に回っているー


・・・・・・・・・・・・


倉本 康成

2年B組生徒。彼女が憑依されてしまう。


藤森 明美

2年B組生徒。お茶目な性格。憑依されてしまい…?


柳沢 零次

2年B組生徒。康成の親友。


篠塚 沙耶香

2年C組生徒。生徒会長。同じ中学の出身。


哀川 裕子

2年B組生徒。陰険なお嬢様


間宮 結乃

2年B組生徒。明美と親しかった生徒の一人。大人しい性格。


国松 千穂

2年B組生徒。明美と親しかった生徒の一人。スポーツ大好き。


☆登場人物詳細は↓でどうぞ☆

(いつも書いている注意ですが、

 \300と出ていても、このお話を読めている人は

 既にプランご加入頂いている皆様なので、別途料金がかかったりはしません!)

fanbox post: creator/29593080/post/891606

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


「---憑依?」

クラスメイト達がざわめく。


”明美が憑依された”

その事情を知っているクラスメイトは、

親友の零次、そして明美を心配して、康成を尾行し、

憑依のことを知った、テニス部部長の千穂ー…


康成は、”憑依”などと騒いでも

誰も信じてくれないだろうし、

明美に対する悪影響も考えて、

一部の人間にしかそのことを伝えていなかったー


だがーーー


「お前ら、よ~く、聞け。

 ---明美はーー」


停学から復帰した不良生徒・

長谷部 勝が明美を指さしながら笑うー。


「----”憑依”されたんだー」


とー。


クラスメイト達がざわついている。

明美も表情を歪めているー。


「-ーー憑依された明美は、

 思考や記憶を塗りつぶされたー

 そのせいで、明美は、そんな風になっちまった」


勝がガムを噛みながら笑うー


「---藤森さんが憑依された?」

「--憑依ってなんだよ?」

「長谷部のやつ、頭おかしくなったのか?」


どよめきは止まらないー


勝が静かにしろ!と叫ぶと、ガムを噛みながら続けたー


「-ーー明美の様子が、最近おかしいことには

 みんな気づいてるだろ?

 憑依された影響でー

 明美は、変わっちまった へへ」


「--おい!」

康成が声を上げる。

”憑依”を広めれば混乱を招くだけだー。


「---」

勝が康成の方を睨む。


「--テメェ!俺を呼び出しておいて、チクってやがったのか!?」


勝が停学になる前のことを思い出すー。

屋上で、康成と勝が対峙ー

誤解が晴れて和解したと思ったそのときー

高藤が、先生たちに屋上での出来事を知らせたためにー

先生たちが駆けつけて勝は停学になったー


あの時、勝は”康成がチクった”と誤解したまま

連行されたー


康成は思うー

勝に恨まれていてー

その報復なのではないかと。


屋上で話した時、

”明美が憑依された”ことは言ってしまっているー


「---あははははははははっ」

明美が笑いだす。


「---憑依?なんのこと?

 わたしはわたしよ!勝?なに言ってんの?」

明美が勝の方に近づいていくー


「---本当に、そう思うのか?」

勝がフーセンガムを膨らませながら明美のほうを見る。


「---」

明美が、周囲を見るー


陰険女子の裕子や、

憑依される前に明美が親しかった

テニス部部長の千穂、吹奏楽部の結乃らも

明美のほうを心配そうに見ているー


「--なによ…」

明美はクラスメイト全員に向かって呟いた。


「わたしのこと、おかしなやつだと思ってんの!?」

明美が声を荒げる。


「--何よその目!」

明美が、クラスメイトたちに向かって叫ぶー。


「---そういえば、最近、藤森さん、変だよな」

「倉本くんとも別れちゃったし」

「えぇ!?なんか憑依とか興奮するんだけど!」


クラスメイトたちが、明美を

”変なモノを見る目”で見始めるー


康成はこうなることを恐れて

憑依のことを言わなかったー


勝がするどい目つきで教室を見まわすー


「---明美…」

勝は、明美に近づいていくと、

何かを耳打ちしたー。


そして、勝はニヤリと笑うと

そのまま教室から立ち去って行くー


「憑依ってなんだよ」

「藤森さん、やばくね?」

「…だから最近変なのかな」


クラスメイトたちはざわめいたまま。


明美は不愉快そうにクラスメイトたちを睨むと、

舌打ちしてそのまま着席したー


「---…まずいことになったな」

親友の零次がクラスを見渡しながら言う。


「---」

康成は複雑な表情を浮かべているー


「憑依なんてことが噂になれば、必ずこうやって騒ぎになって

 藤森さんが変な目で見られるようになるー…

 だから…みんなに黙ってたんだろ?」


零次の言葉に、康成は頷く。

明美のほうに注目するクラスメイトたちー

下手をすれば明美に対する嫌がらせや

面白がってちょっかいを出すやつまで現れるかもしれないー。


だから、康成は

零次と生徒会長の沙耶香にしか”明美が憑依されたこと”を

伝えなかったー


「--……そういえばさ…昨日、高藤が言ってたんだ」


康成が呟くー

昨日は色々あって零次と少しLINEでやり取りしただけだったが、

高藤が明美に憑依していた犯人だということは

既に伝えてある。


零次の反応が”まるで既に知ってたかのように”

薄いリアクションだったことは、少し引っかかるが、

明美に憑依していたやつは高藤で間違いないし、

高藤に、”憑依するための何か”を渡したのは

女子生徒であることも間違いない。


高藤が”あの女”と言っていたー。


そしてーー


「--高藤に憑依の力を渡した女子がいて、

 高藤がそいつのことを”会長”って言ってたんだ」

康成が零次に伝えると

「--会長!?」と

零次が驚いたー


”高藤が犯人だった”と伝えたときより、

遥かに驚いた様子の零次ー。


「---か、会長って、篠塚さんのことか?」

零次が言う。


「--高藤は、女子の名前をほとんど呼ばないからさ…

 いつも、篠塚さんのことは、たいてい、会長って呼んでた。


 まだ分からないけど…

 篠塚さんが…」


康成は表情を暗くするー


生徒会長の沙耶香は、同じ中学出身で

康成も信頼していた女子だー。

明美とも親しかった。

そんな沙耶香が、黒幕だなんて信じたくないー。


「--は、、はははははは!あの篠塚さんが

 こんなひどいことするわけねーだろ!」


零次が笑いながら言う。


「---あぁ…俺もそう思いたいーでも…

 可能性があるならーーー

 話をしなくちゃいけない」

康成は静かに、そう呟いたー。


・・・・・・・・・・・・・・・・


昼休みー


康成は意を決して、

沙耶香のクラスに向かう。


沙耶香を呼び出すと、

沙耶香は”明美のことなら、場所を変えよ”と提案してきた。


頷く康成。


康成と沙耶香は、生徒会室に向かった。


生徒会室に入り、入り口の扉を閉めると

沙耶香がため息をついた。


「--それで…話って?」

穏やかにほほ笑む沙耶香。


「----…昨日さ、LINEで伝えた通りー

 明美に憑依していたのは高藤だったー」


「ーーそう」

沙耶香が、普段、高藤の座っていた座席を見つめるー。


「--それで…それでさ」

康成はーー言いづらそうに続けた。


「---高藤のやつに憑依の力を与えた女子がいるらしいんだ。

 高藤が言ってたー。

 高藤は、その女子に憑依されて、乗っ取られたまま

 非常階段から飛び降りたー…

 口封じされたんだ」


「----」

沙耶香は康成の方をじっと見つめているー。


「---高藤がさ、憑依される直前に

 言ったんだー…

 

 ”会長”ってー」


康成が言うー

沙耶香が康成のほうをじっと見つめるーーー


「---ーー」

少し沈黙したあと、沙耶香は口を開いたー


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


別の空き教室ではー

勝に呼び出された明美が

面倒くさそうにやってきていた。


勝が、明美を呼び出したのだー


ガムを噛みながら

「おう、待ってたぜ」と笑う勝。


「なに?勝?」

嬉しそうにほほ笑む明美。


明美は憑依された際に

”勝が好き”と刷り込まれていて、

今も勝のことが大好きだー。


「----…俺のこと、どうして好きになったんだ?」

勝が言う。


「---…え?」

突然の質問に明美が首を傾げる。


「前に、俺が明美に告白したとき、

 お前は俺を振った。

 なのになんで、急に俺のこと好きになったんだ?」

勝はガムを噛みながらさらに続ける。


明美は

目を泳がせるー

勝のことが大好きだー


でもーー

自分でも、理由が分からないー


「--え、、え…ふふ、、いいじゃない別に

 好きになるのに理由なんていらないでしょ?」

明美が笑みを浮かべながら言う。


「---…どうして、倉本のやつのこと、

 嫌いになったんだ?」


勝はガムを噛みながら鋭い目つきで

明美を見つめるー


「どうしてって?アイツがウザイからよ!

 うざくて、うざくて、たまらないから!」

明美が声を荒げる。


「--どうして、ウザイんだ?」

勝が続けたー


「---どうして???決まってるじゃない…!」

明美が勝のほうを見るー


康成のことが嫌いになった理由ー

明美は必死に頭の中でそれを考えるー


しかしーーー


「---あ、、あれ…?」

明美が混乱しながら落ち着かない様子で勝を見る。


「----…憑依されて、変えられたー…

 倉本のやつがそう言ってたー。」

勝が言う。


「---違う!」

明美が叫んだ。


「--違う!とにかくわたしは、勝が好きなの!!

 あんなやつ、死ねばいいのよ!」


康成の姿を浮かべながら叫ぶ明美ー


「--本当に、それでいいのか?」

勝が明美の方に近づいて

ガムを噛みながら明美を見つめるー


「--は?」

明美が不快そうに舌打ちする。


「本当に、俺が彼氏でいいのか?

 あんなにあいつのこと好きだったのに。

 本当にそれでいいのか?」


「---は???は???意味わかんない」

明美が、首を振りながら勝から離れるー


どうしてーー?


どうして、わたしは康成を嫌いになったのー?

どうして、わたしは勝を好きになったのー?

理由が、、分からないーー


「うあああああああああああああああああ!!!」

明美が発狂したかのように、頭を抱えて叫ぶー。


「-…わたしは、、わたしは、、、

 真面目に生きてるのが馬鹿らしくなっただけ!!

 わたしは、憑依なんてされてない!!!」


明美が声を荒げるー


塗り替えられた思考と記憶ー

でも、全部ではないー

明美は、”つじつまの合わない記憶”で

頭が完全に混乱し始めていたー。


「---わ、、わたしのこと、、そうやっておかしな目で見て…!

 そうやって…わたしを、わたしを馬鹿にして!!」

明美が泣きそうになりながら叫ぶー


「----お別れだ」

勝が呟いた。


「---え…」

明美が唖然とする。

この世の終わりのような表情を浮かべてー


「--俺は」

勝が、明美に壁ドンして、明美を睨むー


「俺が好きだったのはーー

 今の明美じゃないー。

 誰かに憑依されて

 ねじ曲がった性格になっちまった、お前じゃない」


勝はフーセンガムを膨らましながら明美を睨むー


自分なんて、相手にされない。

そんなことわかってたー

それでも勝は、

”真面目でお茶目で、可愛らしいー”

そんな、明美に惹かれて告白したー

結果は分かってた。

だから、それでもよかったー


今の明美はーー

明美じゃない。

最初は、告白されて喜んだがー

”外見だけ明美”ーじゃ、意味がない。

勝が好きだったのは”元の明美”であって

”憑依されて変えられた明美”じゃないー


「--じゃあな」

勝はそれだけ言うと、

空き教室から外に出ていこうとする。


「ま、、待って勝…!

 わ、、わたしを、わたしを捨てないで!」

明美が泣き叫ぶー


「---目を覚ませ。ーーー

 俺が言えるのは、それだけだ」

勝はそう言うと、ごみ箱にガムを吐き捨てて

空き教室から立ち去って行ったー


「---う…うあああああああああああああああああ!!!」

一人残された明美が髪を振り乱しながら暴れ出す。


「---ああああっ!!ふざけんな!ふざけんな!!

 ふざけんな!!」


狂ったように叫びながら、明美は何度も何度も

壁を殴りつけたー


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


生徒会室ー


生徒会長の沙耶香は口を開いた。


「----もうさ…やめよう」

沙耶香が言うー。


「やめる?」

康成が首を傾げた。


「---もう、明美のことはあきらめた方がいいよ。

 もう、無理だよ。

 だって、あんな風に…

 全然別人みたくなっちゃってー…」


沙耶香の言葉に康成は反論するー


「---諦めるなんて、できるわけないだろ!」

とー。


明美は苦しんでいるー

変えられてしまった自分にー

苦しんでいるー


一番苦しいのは本人だー。

だから、ここであきらめるわけにはいかない。


「---…明美のことばっかり…」

沙耶香が吐き捨てるように呟く。


そして、しばらく沈黙したあとに、沙耶香は続けた。


「高藤くんが”会長”って言ってたのだとしても、

 それはわたしじゃない」


沙耶香は、康成の質問に答えたー。


「-----本当に?」

康成は沙耶香を見つめるー。


「-----疑うの?」

沙耶香が康成を見つめ返す。


「---ごめん。俺だって疑いたくない…

 でも……」


康成の言葉に、沙耶香は少しだけ

笑みを浮かべて続けたー。


「---わかってる。

 わたしが、倉本くんの立場なら

 きっとわたしを疑うー。


 でも、信じて。

 わたしじゃない。

 高藤くんの言ってた”会長”って言うのは

 わたしじゃない」


沙耶香は、康成の方を見つめながらそう告げたー。


「-----…わかった」

康成は頷く。


「--信じるよ…。

 疑って、ごめんな」


康成はそれだけ言うと、生徒会室から立ち去ろうとする。


「---倉本くん」

沙耶香が生徒会室から出ようとする康成を呼び止めた。


「諦めたほうがいいなんて言ってごめん」

沙耶香の言葉に、康成は振り返ると

「--俺のほうこそ、疑ってごめん」と、頭を下げて

そのまま生徒会室から立ち去って行ったー。


一人残された沙耶香はーー

大きくため息をついたー


・・・・・・・・・・・・・


「--」

教室に戻った康成はため息をつくー。


「---会長」


「---会長…篠塚さんのことか?」


「---い


憑依されて、飛び降りさせられる直前の

高藤は、何を言おうとしていたのかー。


最後に”い”と言ったのは確実だー。


けれどー

何を言おうとしたのかわからない。


”い”から始まる名前の女子は

クラスだと、井澤 萌愛(いざわ もえ)という子一人。

オカルト好きのちょっと不気味な子で、

明美への憑依の件に関係あるとは思えない。


他のクラスにも「い」から始まる女子はいるが、

接点が、何もないー。


「----はぁ…はぁ…」


ーー!?


康成が振り返ると、

髪がぼさぼさの状態の明美が

教室に入ってきた。


勝に振られて暴れまくった明美が

教室に戻ってきたのだ。


「--あ、明美~!」

陰険女子の裕子が明美に声をかける。


「どけ!」

明美が乱暴に裕子を突き飛ばすと、

自分の座席に座り込んで、

明美は机をガンガンと叩きだしたー


「---明美…」

康成は、明美の変わり果てた姿を見て

心を痛ませるー


「---俺が…俺が必ず助けるから…」

康成の視線に気づくこともなく、明美は

机を何度も何度も叩くと

「どいつもこいつも、なんなのよ!」と

ヒステリックにわめき散らして

そのまま机に突っ伏して泣き出してしまったー。


「---……」


明美が、壊れていくー


「--約束いっぱいしておけば、

 康成といっぱい遊びにいけるでしょ?」


明美の笑顔を思い出すー


机で一人泣き続ける明美にー

今の康成は声をかけてあげることもできないーー。


「---康成…」

親友の零次が心配そうに康成のことを見つめるー。


康成は、泣き続ける明美のほうを

悲しそうな表情で見つめ続けたー


・・・・・・・・・・・・・・


放課後ー


康成は、オカルト好きの井澤 萌愛に話を聞いたー。

だが、やはり何も知らない感じだった。

明美の憑依と関係があるとは思えないー。


「くそっ…」


康成を恨む人間かー。

それとも康成と明美が一緒にいることが気になる人間かー。


「----……」

康成が廊下を歩いていると、

前から不良生徒の勝がやってきた。


久しぶりに登校してきたのに、

勝は授業には出ていなかったー。


「---」

康成は、勝が自分のことを恨んで、

明美の憑依のことをわざとばらしたのだと、

そう考えているー。


「---おい」

すれ違う直前、勝が康成を呼び止めた。


「---なんだよ」

康成が言うと、勝は口を開いた。


「---明美と別れた。」

勝の言葉に、康成は「は?」と声を上げたー。


憑依されて、変えられた明美と付き合っていた勝からの

予期せぬ言葉ー。


「---…俺が今日、学校に出てきたのは

 ”これ”を出すためだ」

勝が、紙を見せてくるー。


”退学届”と書かれた紙をー


「今日で俺は、この学校を辞めるからよ…

 もう、お前に会うこともねぇ」


驚く康成に、勝は続けたー


「----俺は昔、親父によく殴られてた。

 理不尽なクソ親父にな…

 俺はそんな親父に殴られても殴られても

 立ち向かったー

 勝ち目なんかねぇってのに」


勝がガムを噛みながら言うー。


「--屋上で、明美明美わめきながら

 俺に殴られても殴られても

 立ち向かってくるお前を見てたらよー…


 ちょっとだけ昔のことを思い出したんだ。

 ガキの頃の俺をな…」


康成の方を見つめながら、

勝は、さらに口を開くー


「---いつの間にか俺は…

 俺が憎くて憎くて仕方がない

 クソ親父と”同じ側”になっちまってた…」


勝の言葉に、

康成は、勝が自分を恨んでいないことを悟るー。


「----…って、俺の話になんか興味ねぇよな」

勝はそう言うと、

康成を睨んだ。


「ーーお前は甘すぎる」


「-は?」

康成が”どういう意味だよ”と聞くと、勝は答える。


勝が、朝、憑依のことを言いふらしー、

昼休みに明美を振って、明美と憑依のことを話したのはー

勝なりに”明美を元に戻そうと”して起こした行動だった、と。

優しすぎて、甘い康成には”できない”方法を

勝が代わりにやったのだと。


「---…」

康成は、”それが逆に明美を苦しめることになっている”ような

気がしてならなかったー


だが、勝のようなやり方もー

必要なのかもしれないー


「俺のためにーー」

康成が口を開くー


「---勘違いするな」

勝は康成を睨みながら言う。


「--お前のためじゃねぇ。

 明美のためだー。

 

 俺は明美が好きだったー。

 ”いつもの明美”が、な。

 今の明美は、憑依されて変えられちまった別人だー。

 

 だからーー

 元に戻したいと思った…それだけだ」


そう言うと、勝は職員室のほうに向かって歩いていくー。

退学届を提出するためにー


「---倉本」

勝が背を向けたまま立ち止る。


「---明美は、お前の女だー。

 幸せにしてやれよー」


勝はそれだけ言うと、振り返ることを二度とせず、

そのまま康成の前から立ち去ったー。


退学届を提出した勝は、そのまま退学となり、

二度と学校に姿を現すことはなかったー。


・・・・・・・・・・・・・・・・・


夜ー


「----…」

明美は、部屋で頭を抱えていたー


”どうして、康成のことを嫌いになったのー?”

”どうして、勝のことを好きになったのー?”

”憑依ってーーー??”


真面目に生きてきた自分が、

どうしてこんなに何もかも”馬鹿らしい”と感じるのかー


明美は、鏡を見ながら

すっかり変わり果てた自分の姿を見つめるー


「---………」


しばらく自分の姿を見つめた明美が叫ぶ。


「あ~~~~!もう、、、うっざい!!!!

 どうにでもなれ!」


自暴自棄になった明美は、

部屋でイライラしながらモノを放り投げたー


・・・・・・・・・・・・・・・・・


翌日ーーーー


明美が登校すると、

クラスメイトたちが、明美に冷たい視線を浴びせたー


すっかり”おかしな女”扱いされているー。


「-----チッ」

明美がイライラした様子で着席するー


”無様な姿ね…”

明美の姿を見ていた女子の一人が笑うー


”もっと

 もっともっと

 落ちぶれろーーー

 

 明美ーーーー

 あんたさえいなければーーー


 みんなの目の前でー

 落ちぶれて、すべてを失いー

 地獄にーーー

 落ちるのよーーーー”


高藤に憑依薬を渡した女子は、

明美の姿を遠くから見つめながら

邪悪な笑みを浮かべたーーーー


⑬へ続く


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


コメント


第1話が3月7日だったので

ちょうど1か月ぐらいになりますネ~!


憑依モノの長編形式のお話を書くのは

初めてなので、新鮮な気持ちデス!


最後までしっかりと頑張りますー!


今日もありがとうございました!!

(Fanbox)


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