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夢を見たー。


彼女の明美と、遊園地に行ったときのことー。


去年の12月のことだー


「--来年も、一緒にここに来ようね」

ライトアップされた観覧車の前で、俺は明美と約束したー。


けれどー…。


もう、その約束を果たすことはできないのかもしれないー


現実もー

過ぎ去れば、夢と同じなのかもしれない。


明美との幸せな日々は、夢のように消えてしまったー。


残った現実は、

只、つらく、残酷な現実ー。


笑顔も、約束も、大切な思い出も、

全て、消えてしまったー。


幸せな日々は、

もしかするとー

夢だったのかもしれないー


そんな風に思うことでしか、

過酷な現実を受け入れることはできなかった。


・・・・・・・・・・・・・・


倉本 康成

2年B組生徒。彼女が憑依されてしまう。


藤森 明美

2年B組生徒。お茶目な性格。憑依されてしまい…?


柳沢 零次

2年B組生徒。康成の親友。


篠塚 沙耶香

2年C組生徒。生徒会長。同じ中学の出身。


哀川 裕子

2年B組生徒。陰険なお嬢様


長谷部 勝

2年B組生徒。クラス一のワル。


☆登場人物詳細は↓でどうぞ☆

(\300 と出てるかもですが、このお話を読めている人は

 既にプランご加入頂いている皆様なので、別途料金がかかったりはしませんー!

 念のため! いつもありがとうございます。)

fanbox post: creator/29593080/post/891606

・・・・・・・・・・・・・・


「---ねぇ、冷蔵庫に

 ハートのチョコ入ってたけど、アレなに?」


朝ー

妹の夏帆からそう言われて

康成は思い出した。


「あ、いけね!」


誕生日の日ー

明美が憑依されたあの日に、

親友の零次から渡されたチョコを

冷蔵庫に入れっぱなしにしていたー。


「--も、もう腐ってるかも…」

康成が言うと、

夏帆が言う。


「も~!明美さんからもらったんでしょ?

 彼女さんからのプレゼントをダメにするなんて

 最低だよ!お兄ちゃん!

 わたしが彼女だったら、ぷんすかだよ!」


夏帆の言葉に

康成は苦笑いした。


「あ、いや、そのチョコはさ、

 男からもらったやつだよ」


「え~~~~!」

夏帆が驚き、そしてニヤニヤする。


「--男子にも女子にもモテモテなんて

 お兄ちゃんってばやるぅ~!」


「--ち、ちげーよ!」

康成はそう呟きながら

学校へと向かうー。


「---…わたし……どうしちゃったんだろう…」


昨日、放課後に図書室で

明美と話した時のことを思い出すー


明美はーーー

明らかに動揺していたー


そして


「もっともっと、こいつにお前への憎悪を植え付けてやる!

 もっともっと、悪い女に変えてやる!

 あはははははははっ!」


明美は、何者かに再び憑依されたー

目の前で…


昨日、下校後にも明美に何度も連絡したが

返事はなかったー


もしもーー

もしも…


康成は嫌な予感を覚えるー


昨日、憑依された明美が言ってた言葉通りならー

明美は…さらに…変わってしまっているかもしれないー


「---」

正門前に到着した康成。


足が震える。

明美のことが心配だー。


だが、逃げるわけにはいかない。


康成は深呼吸してから、

学校の中に足を踏み入れたー


・・・・・・・・・・・・・


教室に康成が入ると、

既に明美は登校していたー


見た目は昨日と変わらない。

茶色に染まった髪、短くなったスカート、

少し濃くなった化粧…

そこにいたのは、

”いつもの明美”ではなかった。


「--え~!そいつウザすぎでしょ!」

明美が、足を組んで行儀悪く座りながら

お嬢様育ちの陰険女子・哀川裕子に対して話しかけている。


豹変した明美はー

裕子と親しくしている。


昨日、図書室で話をした際に、

明美は一瞬、元の自分を取り戻しそうになっていたー。


しかしー

何者かに憑依された明美はー

さらに、変えられてしまったのだろうか。


いったい誰が、明美に憑依をー。


康成は、教室の窓側で

ガムをくちゃくちゃしている不良生徒・

勝のほうを見つめるー


憑依されて変えられた明美は

勝と付き合いだした。

最初に明美が憑依されたあの日も、

勝の写真が図書室に置かれていたー


今のところー、勝が明美に憑依して、

明美を変えてしまったのだと、

康成はそう考えているー。


だがー

そうとは限らない。

こんなことになる前に、明美に何か変わった様子が

なかったかどうか、

明美と親しくしていた子たちに聞いて回ろう…。

康成はそんな風に考えていた。


その時だったー


「あ!ホラ、来たよ」

裕子が明美に対して言う。


明美が「は?」と言いながら、

裕子が指を指したほうを見つめる。


「---?」

裕子は康成のほうを指さしていた。

近づいてくる明美ー。


「ねぇ…」

明美が康成のほうを見るー。


いつものような笑みはそこにはない。


「明美…」

康成は、なんと話していいか分からず、困惑するー


憑依されて変えられてしまった明美ー。

どう接していいか、分からないー。


「---今日の放課後、話があるんだけど」

明美が冷たい口調で言う。


「---…わかった」

康成は、何の話だろう?と思いながら

明美の背後でニヤニヤしている陰険女子たちのほうを見る。


陰険女子のリーダー・裕子の不気味な笑みー。


康成は、明美の話がいい話じゃないと感じ取りながらも

”逃げるわけにはいかない”と、意を決する。


「--生徒会の話し合いが少しだけあるから、

 待っててもらえるかな?」


不満そうな明美。

だが、明美は頷いた。


逃げるわけにはいかないー。

たとえ、どんなになってしまっても、

明美は、康成にとって

大切な彼女であり、幼馴染だからー。


・・・・・・・・・・・・・・


昼休みー


「---きゃはははははは!」

明美が、裕子たちと共にゲラゲラ笑いながら

教室から出ていくー


授業態度も明らかに悪くなっているー


康成は、教室から出ていく明美のほうを見ながら

不安そうな表情を浮かべるー


明美は、あんな子じゃないー。

誰かに”憑依”されて、そして、変えられてしまっているー


「ーー何かあったのか?」

親友の零次が声をかけてきた。


「ん?あぁ…」

康成は元気なく答える。


「---最近、イチャイチャもしなくなっちゃったじゃねぇか…。

 …もしかして、喧嘩でもしたのか?」


ニッと笑う零次。


茶化しているわけではない。

暗い康成を見て、零次なりに励まそうとしているのだ。


「---…」

康成は零次の顔を見る。


零次とは、中学時代からの付き合いだ。

お調子者だが、悪いやつではないし、

頼れる親友だ。


「---零次には、、話しておくか」

康成は呟く。


”明美が憑依されて変えられた”

という事実を、康成は必要以上に

広めるつもりはなかったー


”誰”が、明美に憑依したのかわからない以上、

うかつに動くわけにはいかないからだー。


だが、零次ならー。

零次なら信用できる。


「---実は…」

康成は、小声で零次に対して

今まで起きたことを話した。

明美が、憑依されてしまい、

思考も記憶も塗り替えられてしまったことをー


「憑依ィ!?」

話を聞き終えた零次が大声で叫ぶ。


教室にいた何人かがびっくりして零次と康成のほうを見る。


「おい!声がでかい!」

康成が「しっ」というポーズをすると、

零次は「すまねぇすまねぇ」と呟くー


「でも…憑依なんて、そんなこと…」

零次はそこまで呟くと、

康成のほうを見てため息をついて、笑ったー


「---でも、きっと、本当なんだよな」

零次は言うー


「ーーーお前のその顔…

 嘘ついてる顔じゃないもんな」


とー。


「---……零次…」

康成はそう呟いた直後に、って、と叫ぶ。


「表情だけで嘘かどうかわかるのかよ!?」

とー。


零次はふざけた調子で

「あぁ、俺はお前のファンだからな」と冗談を口にしたー


・・・・・・・・・・・


零次は”何か分かったらお前にすぐ言うよ”と

約束してくれたー


やっぱりー

零次はいざというときには頼りになる友だ。


そんな風に思いながら康成は廊下を歩く。


明美が憑依される前に

何かおかしなことや、トラブルがなかったかどうかー。


それを聞くために。

明美は友達が多いほうだったが

特に親しくしていたクラスメイトは2人。


間宮 結乃(まみや ゆの)と

国松 千穂(くにまつ ちほ)。


結乃は、おとなしい性格の女子で、

吹奏楽部所属。昼休みは音楽室で

間近に迫った文化祭の練習をしているはずだー。


千穂は、結乃とは正反対のスポーツ少女。

考えるよりも行動するタイプで、

テニス部の部長だ。おそらくグラウンドにいるはず。


この二人なら、憑依される直前の

明美に何か異変があったなら、

知っているかもしれないー


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


♪~~~


音楽室。

ベートーベンのクラシック音楽をピアノで

演奏しているツインテールの女子生徒。


明美と親しいクラスメイトの一人・結乃だ。

テストの成績でも結乃は、クラス2位の実力者。


そこに、康成がやってきたー。


「---あ、」

演奏の邪魔をしたことに気まずさを感じながら

康成が頭を下げる。


吹奏楽部の部長・小野坂 亮介(おのさか りょうすけ)が、

康成に気づく。

続いて、結乃も康成に気づいた。


「--あ、、邪魔してごめん。

 ちょっと、、聞きたいことがあるんだけど、いいかな?」

康成が言うと、結乃は「え?わたし?」と不思議そうにしながら頷いた。


「---」

康成が吹奏楽部部長・亮介のほうを見ると、

亮介は”聞かれたくない話か?”と

なんとなく空気を読んで、

「僕は失礼するよ」とだけ言うと、

そのまま音楽室の外に向かって歩いて行ったー。


・・・


音楽室から出た亮介が、

後ろを振り返り、康成のほうをしばらく見つめると、

そのまま亮介は立ち去って行くー


音楽室には結乃と康成ふたり。


「ちょっと、先にメモしておかないといけないことがあるから」

とー

結乃がハート型のメモ用紙に

吹奏楽部の活動内容を何やらメモしている。


「--ゲッ」

康成は、嫌なことを思い出してしまったー


親友・零次からもらったハート形のチョコのことをー


「ハートがトラウマになりそうだぜ」


「え?」

結乃が、康成の独り言に反応する。


「あぁ、ごめんごめん。それで…」

康成は、明美に何かおかしな様子がなかったかどうか、

結乃に尋ねる。


結乃は、ピアノの前で考える仕草をしたものの、

思い当たることはないようだった。


「---それより」

結乃が康成のほうを見る。


「---わたしのほうこそ、

 その、、気になるんだけど…?」

と、結乃が言う。


「-最近、哀川さんたちとばかりいっしょにいるし、

 長谷部くんと付き合いだしたって話だし…

 …その、何かあったの?」


結乃の言葉に、

康成は「あぁ、いや、ちょっとね」と誤魔化して

「急に邪魔しちゃってごめんな!」と、足早に

音楽室を後にしたー。


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


グラウンドー。


明美と親しかったもう一人のクラスメイト・千穂にも

同じように話を聞いた。


「え~~?う~ん、

 明美の変わったところ~???

 う~ん、う~ん、う~~~~ん」


テニスラケットをぶんぶん素振りしながら

千穂が考えているー


(いつも国松さんって騒がしいよな…

 じっとしてられないタイプっていうか

 常に身体動かしている感じだよな…)


康成は、千穂が何かを思い出すのに期待しながら

千穂の反応を待つ。


「あっ!!!」

千穂が手を叩いた。


「---そういえば、明美、この前、

 告白されたって言ってたよ!」

千穂が叫ぶ。


「--告白? 俺のこと?」

康成が言うと、

千穂は「ううん!最近の話!

倉本くんと明美が付き合い始めたあとね!」と笑う。


「--確か、ほら、あいつ!

 いつもガムくちゃくちゃやってるやつ!

 あの不良くんがね、明美に告白したんだよ~!

 笑っちゃうよね!」


千穂が一人ゲラゲラ笑う。


「--長谷部のやつが、明美に告白した?それで?」

康成は、そんな話、明美から聞いたことはなかったー。


「え~?決まってんじゃん!明美、即決で振ったみたいだよ!

 だって、倉本くんと付き合ってるんだし、

 明美が浮気するわけないでしょ!」


千穂がテニスラケットを振り回しながら笑う。


「--あれ???でもぉ…

 最近、明美、変だよねぇ?」

千穂が、単純な頭で考えだす。


「---ありがとう!」

康成は走り出したー


”やっぱ、あいつだー”

康成は、不良生徒・長谷部 勝の姿を思い浮かべるー


明美に振られたあいつが、腹いせに

明美に憑依して、

明美の思考を塗り替えて、彼女にしたんだー…!


廊下を走る康成ー

そこに、偶然、勝がやってきた。


ガムをくちゃくちゃしながら康成のほうをニヤニヤと見る。


「---お前が…お前が明美を…!」


「--あ?」

勝が、ガムを噛みながら笑う。


「---明美を元に戻せ…!」

康成が勝を睨む。


「--…はぁ?元に…?

 何言ってるか知らねぇけどよ、

 もう明美は俺の彼女だぜ。

 元・カ・レさん」

勝が挑発的にそう言うと、康成の肩をポンポンと叩く。


康成は勝の手を掴んだー


驚く勝。


「---俺はまだ明美と別れてなんかいないー」

康成は怒りの形相で言葉を吐き出すー


そうー

明美から振られてないし、

今でも康成は明美のことが好きだー


勝手に、終わらせるな!と勝を睨む康成。


「----……クク」

勝は笑うと、康成の手を振りほどいた。


そして、フーセンガムを膨らませると、それを

破裂させてから、康成に向かって言い放った。


「--せいぜい、がんばりな。」

とー。


「--おい待て!」

立ち去って行く勝。


昼休みの終了を告げるチャイムが鳴る。


「くそっ!」

康成は、舌打ちして、教室へと戻るのだったー


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


放課後ー


生徒会長であり、明美と親しい、

沙耶香にも、事情を説明した。

零次と同じく、同じ中学出身で、

信頼できる相手の一人としてー。


沙耶香は、驚きつつも、康成の話を信じてくれた。

そして、康成を支えてくれる約束をしてくれたー。


生徒会室で文化祭の話し合いを終えるー


康成は、明美の待つ場所に向かうために、

跡片付けを生徒会長の沙耶香に任せて

生徒会室から飛び出した。


生徒会室に残っていた

リア充を憎む生徒会書記・高藤がふと呟く。


「会長ってさ、

 なんか最近、楽しそうだよな」


沙耶香を見つめながら、そう言う高藤。


そんな高藤の言葉に、

沙耶香は「え?」と言いながらも

少しだけほほ笑んだー


・・・・・・・・・・・・・・・・・


明美に指定されたグラウンドの端にやってくる康成。

明美が面倒臭そうにガムを噛みながら待っていたー


「明美…」

康成は、明美のそんな姿を見たくない、と思いつつも

明美のほうに向かう。


明美は「遅いんだけど」と舌打ちしながら

ガムをその場に吐き捨てたー


「---…そういうの、よくないよ」

康成が言うと、

明美は「うざい!黙ってて」と吐き捨てるようにして言った。


「---…で、話って」

康成は取り乱さないようにしながら

明美のほうを見つめる。


明美が悪いんじゃないー

明美は、憑依されて、変えられてるだけなんだー


そう、自分に言い聞かせながら。


「---わたしと、別れて」

明美が冷たい声で言う。


「え…」

康成はショックを隠せないー


明美の本心じゃないー

本心であるはずがないー


「--あ、、明美!なぁ、聞いてくれ!

 明美は、明美は、その、憑依されて…

 その…なんていえばいいのかな・・・

 思考を、思考を変えられてるんだ!」

康成が叫ぶ。


明美は「はぁ!?」と声を荒げる。


「--え、、えっと、ほら!

 操られてるっていうか…


 し、信じられないかもだけど、

 本当なんだ!

 明美…!信じてくれ!」


康成が叫ぶ。


憑依されて思考を変えられてしまった明美に

なんていえばいいのか分からない。


「---明美、、正気に戻ってくれ!頼む!」


パン!


「--!?!?」


明美がーー

康成の頬をビンタしたーー


「ーーふざけないで!

 正気に戻れ!?

 馬鹿にすんのもいい加減にしろ!」


明美が声を荒げる。


「操られてるとか、憑依とか、正気じゃないとか、

 あんた、頭おかしいんじゃないの!?」


明美が叫ぶー


康成の言っていることは正しいー


けれど、思考を完全に変えられて

しまった明美には、その自覚がないー


明美は、康成を睨んだ。


「あんたなんて、大っ嫌い」


それだけ言うと、明美は

不機嫌な様子でそのまま立ち去ってしまうー


「-----…明美…」

康成は、その場に膝をついたーー


自分は、明美に何もしてあげられないー

自分は、無力だーーーー


・・・


・・・・・・


校舎3階の窓から、

その様子をこっそり見つめている男子生徒がいた。


「くくく…苦しめ…

 いい顔だ…」


男子生徒は、ショックを受けて放心状態の康成を

見つめると、楽しそうに笑みを浮かべたー。


立ち去って行く明美の姿も窓から見つめるー


「---あぁ…いい…

 すっかり悪女になっちゃって…」


不気味な笑みを浮かべるー。


やがてー

その教室から外に出ていく男子生徒。


廊下を歩いていると、

廊下の反対側から女子生徒がやってきたー。


すれ違いざまに立ち止まる女子生徒。


「ねぇ、なんで、憑依のこと、あいつに教えたの?

 教えない予定だったでしょ?」

女子生徒が呟くー


「--へへ…明美ちゃんに憑依してるとき、

 ノリでつい言っちゃったんだよ。

 その方が、面白いと思ってさ」


男子生徒のほうが言うと、

女子生徒がイライラした様子で

手に持っているボールペンでカチカチカチカチと音を

立てた後に、口を開いた。


「---勝手な行動はしないで。いい?」


それだけ言うと、女子生徒はそのまま立ち去って行くー


「はいはい…」

明美に憑依していた男子生徒はそう呟くと、

再び廊下を歩き始めたー。



⑤へ続く


・・・・・・・・・・・・・・・・・・


コメント


憑依された影響で変わってしまった彼女を

取り戻すことはできるのでしょうか~?


続きはまた近日中に~!


今日もありがとうございました!!

(Fanbox)


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