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とある病院ー

そこに、一人の女性がいたー。


まだ、それほど年を取ってはいないー

30代ぐらいだろうか。


だが、彼女の身体はボロボロだったー。

高校時代から、性欲に溺れた彼女は、

毎日のようにエッチを繰り返し、

身体が悲鳴を上げるまで酷使し、

挙句の果てには病気になり、

既に助からない状態にまでなってしまっていたー。


しかしー

そんな彼女は、死ぬことすら

恐れていない様子だった。


まるで、他人事のように

傷ついてしまった自分の身体を笑うー。


「うっ…」

そんな彼女が苦しみ出すー。


彼女のことを、心配する人間もいないー


家族もー

友達も

恋人も、

何もかも、彼女は犠牲にし、

性欲に溺れる人生を送った。


医師は、危篤状態になった彼女を見て、

少しだけ同情するー


”この人は、これで幸せだったのだろうかー”


とー。


いや、愚問だ。

人の幸せは、人それぞれ。

この人にとっては、性欲まみれの人生が

幸せだったのかもしれないー


医師はそんな風に思いながら

もう助からない彼女が苦しむ病室へと向かったー。


・・・・・・・・・・・・・・・・


「ふふふふ♪」

彼女は、ほほ笑む。


今日は17歳の誕生日ー。


女子高生の慶山 幸恵(けいやま さちえ)は

部屋のカレンダーを見つめながら嬉しそうに笑みを浮かべる。


学校へ行く準備をする彼女は、とても幸せそうだ。


両親に、幸恵が欲しかった”とあるもの”を

お願いしてある。

毎年恒例の”誕生日プレゼント”に

高校生になった今でも、幸恵は

わくわくせずにはいられなかった。


「いってきま~す!」


学校から飛び出す幸恵。


幸恵は、とても可愛らしい少女で、

学校でも明るく、誰にでも分け隔てなく接するタイプ。

同性の友達も多く、クラスのイケメン男子と

半年前に付き合い始めて、良好な関係が続いている。


”リア充”と言っても良いだろう。


「おっはよ~!」

幸恵の友達が背後から声をかけてくる。


「あ、おはよ~!」

幸恵は嬉しそうに振り返って

挨拶をするー


そして、楽しく雑談をするー。


昨日のテレビの話ー

好きなアイドルグループの話ー

おしゃれの話ー

友達の噂話ー

駅前にできたスイーツ店の話ー


色々な話で盛り上がる。


学校に到着すると、

幸恵はいつものように教室へと向かい、

教室で一息つく。


何の変哲もない一日。


学校の授業をいつも通りこなしていき、

昼休みに友達と談笑するー。


「--ねぇねぇ、山室くんとは、今、どんな感じ?」

幸恵の友達がニヤニヤしながら聞いてくる。


”山室くん”とは幸恵の彼氏のことだ。


「--え~、どんな感じって…?

 変わらず仲良しだよ~」

幸恵が言うと、

友達はほほ笑んだ。


「--あんなことや、こんなことしちゃってるわけ?」


その言葉に、幸恵は顔を赤くする。


「し、してないよ!

 どうしてすぐにそういう発想になるわけ!?」

幸恵が恥ずかしがるのを見て、

友達はクスクスと笑ったー


昼休みも、いつも通りー


ゆらりー。

ーー!?


幸恵は周囲を見渡す。


一瞬、世界が歪んだ気がした。


「---?」

幸恵がキョロキョロと少し挙動不審な様子を

見せているのに気づいた友達は

「どうしたの…?」と心配そうに尋ねてくる。


幸恵は「今、なんか…変じゃなかった?」と

不安そうに聞く。


「変って?」

幸恵の友達は何も感じていないようだー。


なんだかー、

この世界がねじれるような、そんな不気味な感触が、

ほんの一瞬だけれども、幸恵を襲ったー


気のせいかもしれない。


「(めまいかな…)」

幸恵は少しだけ不安になりながらそう呟いた。


・・・・・・・・・・・・・・・


ーー放課後。


彼氏の山室に呼び出された幸恵は、

校舎裏で山室と出会うー。


「--ふふふふ…」

やってきた幸恵を見て不気味な笑みを浮かべる彼氏ー。


幸恵は、「え…ど、どうかした?」と苦笑いするー。


彼氏の山室は、ふふふふふふふ、ともう一度

笑って見せると、

顔を赤くしながら叫んだ。


「じ、人生初の、彼女へのプレゼントだ~!」

山室はそれだけ叫ぶと、幸恵にプレゼントを

渡して、そのまま走り去っていくー


幸恵の彼氏・山室は、幸恵が人生初めての彼女で、

幸恵と付き合い始めてから、幸恵の誕生日は

今日が初めてだった。

つまり、山室にとっての人生初の彼女へのプレゼントなのだ。


恥ずかしがり屋の山室は、幸恵にプレゼントを渡すだけ渡して

風のように去って行ったー。


手渡された小包を見てほほ笑む幸恵。


「もう、山室くんったら」

照れ屋な彼氏のことを思い、

にっこりとほほ笑む幸恵ー


そのまま幸恵は帰宅して、

家族と楽しいひと時を過ごすー


誕生日プレゼントをもらい、

両親に囲まれて

美味しい料理を食べるー


「ーあ、そだ!」

楽しい誕生日パーティを終えて、充実の1日を過ごした

幸恵は、部屋に戻って

机の上においてある雑誌のアンケートはがきを見つけて

「これ、ポストに出してこよーっと!」と笑顔でほほ笑んだー。


幸恵がいつも読んでいる雑誌の

アンケートはがき。

人気のファッショングッズが当たる…かもしれないので

幸恵はいつもこれを出している。


「お母さん!ポストにはがき出してくるー!」


幸恵は家から飛び出したー


ポストを目指してー


そしてー

世界が、激しく歪んだー


歪む、世界ー


「---!?!?!?」

驚く幸恵ー


そしてー…


・・・・・・・・・・・・・・・・・・


穏やかな朝ー。


「ふふふふ♪」

幸恵は、ほほ笑む。


今日は17歳の誕生日ー。

部屋のカレンダーを見つめながら嬉しそうに笑みを浮かべる。


学校へ行く準備をする彼女は、とても幸せそうだ。


「いってきま~す!」

学校から飛び出す幸恵。


「おっはよ~!」

幸恵の友達が背後から声をかけてくる。


「あ、おはよ~!」

幸恵は嬉しそうに振り返って

挨拶をするー


そして、楽しく雑談をするー。


昨日のテレビの話ー

好きなアイドルグループの話ー

おしゃれの話ー

友達の噂話ー

駅前にできたスイーツ店の話ー


色々な話で盛り上がる。


今日は幸恵のーーーー

”4983回目”の17歳の誕生日ー。

彼女は、気づいていないー

同じ日を、既に4983回繰り返していることにー

彼女の時間は、進まないー。


なぜならー。


あの日ー

17歳の誕生日の日の夜ー

郵便ポストにハガキを出しに行った幸恵はーーー


その途中に何者かに”憑依”されて乗っ取られてしまったからだー。


あの日から、幸恵は豹変したー。


乗っ取られた幸恵本人の意識はーーー

心の奥底に封じ込められて、

夢を見続けているー

乗っ取られる前のー”最後の1日”を、何度も何度もー


乗っ取られた幸恵の脳が、防衛反応により、

幸恵の精神が壊れてしまわないように、

永遠に最後の1日を繰り返し再生し続けているー。


1日1回ー

幸恵は17歳の誕生日を繰り返しているー

そして、今日が4983回目ー。

幸恵が時々「歪み」を感じるのは、

幸恵を乗っ取っている人間が

幸恵の身体でイッているからー。


そしてー

これが、最後ー


幸恵は、もう17歳の誕生日から解放される。

4983回繰り返した、同じ日から、解放されるー


なぜならー


幸恵の身体はボロボロだったー。

憑依されたあの日ー

高校時代から、性欲に溺れた彼女は、

毎日のようにエッチを繰り返し、

身体が悲鳴を上げるまで酷使し、

挙句の果てには病気になり、

既に助からない状態にまでなってしまっていたー。


そう、この日、幸恵は死ぬー。

身体が死ねば、憑依されて乗っ取られたままの

幸恵の潜在意識ー

夢を見続けている幸恵の意識も、消えるー


「--今日が、峠だな」

医師は呟いたー


そして、その日の夜、幸恵の容態は、

急変したー


「--うっ…あぁ♡ あっ♡」

薄れゆく意識の中でも、幸恵に憑依している男は

幸恵の身体をもてあそんでいたー


男にとっては”どうでもいい”のだー。

なぜなら、幸恵が死んでも、自分は、

幸恵の身体からぬけて、

また違う女を乗っ取るからだー。


医師が”違和感”を感じたのはそのためだー

幸恵は死を恐れていないー


それは、いつでも”次の身体”を奪えるからー


「うっ…あ…あぁ…」

幸恵の顔色から生気が失われていくー


担当の医師が幸恵の病室に

駆け込んでくるー


”もう、こんな女も終わりだな…

 楽しかったぜ?エロまみれの日々ー”


幸恵に憑依している男は

”そろそろ限界だな”とほほ笑むー

この身体が死ぬまで、この身体にいても

いいのだが、

いつも、男は死ぬ直前に身体から

抜け出しているー


”念のため”だ。


死んだ瞬間にその身体にいると

もしかしたら自分もまきこまれるかもしれない。


だから、いつもー

死の少し前には、身体から抜け出す。


”じゃあなー”

幸恵に憑依し続けていた男は、にやりと笑みを

浮かべると、幸恵の身体から抜け出す準備を始めるのだった。


・・・・・・・・・・・・・


4983回目の、17歳の誕生日ー

幸恵は、自分が憑依される直前の1日を

永遠に繰り返していたー


「♪~」

誕生日パーティを終えた幸恵はほほ笑む。


楽しい1日が終わる。


明日からまた頑張ろう、そう思えたー。

”明日”なんて2度と来ないのにー。

ずっとずっとずっと、この1日を繰り返しているだけなのにー。


「ーあ、そだ!」

机の上においてある雑誌のアンケートはがきを見つけて

「これ、ポストに出してこよーっと!」と笑顔でほほ笑む幸恵。


これも、4983回目だ。


「お母さん!ポストにはがき出してくるー!」

幸恵は家から飛び出したー


ポストを目指してー


そしてー

世界が、激しく歪んだー


いつも以上に、

激しくー


歪む、世界ー


「---!?!?!?」

驚く幸恵ー


身体が急激に重くなるー

苦しくなるー

自分が消え飛んでしまいそうなほどの衝撃に襲われる。


そしてー


「-----あぅっぁぁ!」

身体が激しく震えたー


”じゃあなー”

男が、幸恵の身体から抜け出したのだー


男が抜け出したことによってー

幸恵の意識が表面に出てきたー


繰り返され続けた17歳の誕生日は終わったー。


そしてー

10年以上の月日が経過していることを

知る間もなくー


「-----!?!?

 あああぁぁっ あぁああああああ!!!」

現実に戻ってきた幸恵は

急激に苦しみに襲われたー


何が起きているのかもわからないまま。


「--お母さん…え、、、あ……

 みんな、、ど、、、こ…」


幸恵が目を見開いてぶるぶると震えるー

自分は郵便ポストを目指していたはずー


なのにー

何が、起きたのー?


「----あ…」

幸恵は目から涙をこぼしながらー

そのまま動かなくなった。


医師が残念そうに目を瞑るー。


幸恵の最後をみとった人間は

病院の関係者だけだー


憑依されてからの10年以上で、

幸恵は家族からも、友達からも、彼氏からも

見放されてしまったー


幸恵は、何が起きたのかもわからないままー

永遠の眠りについたー


”……へへ”

幸恵に憑依していた男は、静かにほほ笑んだー


乗っ取られた側の人間のことなど、

彼にとってはどうでもよいことだったー


”さて…次の身体を探すかなー”


動かなくなった幸恵を見つめながら

男の霊体は、夜の闇へと姿を消したー



おわり


・・・・・・・・・・・・・・・・・


コメント


ダークで、変わったテイストの憑依モノでしたー!

1年以上前に、ネタは思いついていて、

書こうと思っていたのですが

お蔵入りになっていた作品デスー!


今回、FANBOXでも作品を書いているんだし、

せっかくなので皆様にもお届けしようかな~ということで

1年以上も私の頭の中で眠っていた作品を

ようやく表に出すことができました!


好き嫌いはかなり別れそうな作品ですが

お読み下さりありがとうございました!!


あ、ちなみに金曜日はいつも夕方更新が多いですが

今日は仕事の都合で、日付が変わってすぐに

更新しました☆!

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