<皮>皮の夢②~夢か、現か~(完) (Pixiv Fanbox)
Content
「---」
京太郎は、彼女の優菜に呼び出されていたー。
ネオンが輝くビルの屋上ー
他のビルのライトが、2人を照らすその場所で、
優菜は静かにほほ笑んだー
「--京太郎」
優菜のほほ笑みは、どこか寂しげだったー。
ビルの屋上に吹き付ける風ー。
優菜の髪が風でなびくー
「--優菜…」
京太郎はどうしてこんな場所に呼び出されたのか、
不安になりながら優菜のほうを見る。
「お前と付き合おうと思った理由…
くくく…
勘違いするな。
俺はお前と付き合ってるつもりなんかねぇ」
あの日の夢を思い出すー
優菜が皮のようにぱっくりと割れて
中から男が出てきたあの光景をー。
そんなはずはないー
あんなことは、あり得ないー。
京太郎は、反対側のビルの光を見つめながら
目を細めるー
優菜が、いじわるそうな笑みを浮かべて
口を開いた。
「--わたし…実はね…」
優菜の口元が歪むー
ぱっくりと優菜が割れるー
「実は…高校入学直前に
着られちゃったのぉ~!
あっははははははは~♡」
中から邪悪な男が姿を現したー
「--!!!」
京太郎は驚くー
やっぱりー
あれは夢なんかじゃー
「うわあああああああああああ!!!!」
京太郎は飛び起きたー
「--うるさい!何よ急に!」
隣の部屋の妹・千佳が駆け込んでくる。
京太郎は周囲を見渡す。
自分の部屋と
ちょっと口うるさい妹。
いつも通りだー
また、夢を見てしまったー。
「---はぁ…」
京太郎は思わずため息をついた。
大体、夜のビルの屋上に呼び出されるなんて
シチュエーション、あるはずがないー
明らかに夢だったのにー
京太郎は、夢を夢と気づくことのできない
自分が嫌になりながら、学校に向かう準備をするー。
”夢、だよな…?”
2回も、彼女の優菜が皮にされている夢を見たー
それにー
友人の和典が、
優菜は、中学生の時と別人のように変わったと
言っていたのも気になるー。
気にしすぎかー。
京太郎はそう思う。
人間は、気にしていることを何度も
夢に見ることがある。
京太郎は、ここ数日、ずっと優菜の皮のことを
考えているー
それで、2度目の夢を見たのだと信じたいー
けれどー、
けれど、もしも、もしも本当に
優菜が皮にされているのだとしたら?
「---聞くか」
京太郎が呟く
「え?」
まだ近くにいた妹の千佳が首をかしげる。
「--え?あ、いや、なんでもないよ」
京太郎はそう言うと、意を決して学校に向かうのだったー
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
昼休みー
京太郎は、いつものように優菜と雑談をしていたー
優菜はいつも通りだー。
だがー
中学のときは、スポーツ万能な子だったのだと
友人の和典は言っていたし、
今の優菜にその面影はない。
どうして、優菜はそんなに急に変わったのかー
少し、不安になる。
京太郎は決意するー
優菜と、放課後に話をしよう。
優菜に直接聞いてみようー。
こういう夢を見たって付け加えてー。
もしも、優菜に笑われたら
別にそれはそれで構わないし、
笑ってほしい。
でもー
もしも、
夢が正夢だったらー
優菜の中から男が出てきたらー
優菜のために、京太郎は現実と向き合う覚悟していたー
「---ゆ、、」
「--優菜!」
別のクラスメイトの声がした。
共通の友人で、優菜の幼馴染の和典だ。
「--放課後、話があるんだけど」
「え?話?別にいいけど?」
優菜と和典が話をしている。
先を越されたー
京太郎はなんとなく、
”放課後いいか?”と言いだすことができず、
そのまま黙ってしまったー。
・・・・・・・・・・・・・
放課後ー
そういえば-
和典が今日はよそよそしいー
京太郎を避けるかのような行動をとっている。
「--じゃあ、今日はわたし、一緒に帰れないから
また明日ね」
優菜が京太郎にほほ笑みながら言うー。
そして、教室から廊下に出ていく優菜ー
なんとなく、胸騒ぎがした。
京太郎は、優菜と手を振って優菜を見送るとー
そのまま優菜の後を尾行したー
学校から外に出る優菜。
優菜は周囲をキョロキョロするような仕草を見せた。
途中で、優菜はスマホを手にしたー
”----おれ あぁ、そうして”
小声でしゃべって手早くスマホを切る優菜。
「---おれ…?」
京太郎は不安になりながら
優菜を尾行する。
優菜が鋭い目つきで振り返る。
「--っぶね…」
京太郎はとっさに物影に隠れた。
「---…」
優菜はそのまま歩いていく。
そしてー
見晴らしの良い高台にやってきたー
日が暮れ始めるー。
”俺さ…”
京太郎が物影に隠れるー
先に待っていた男の声がする。
優菜の幼馴染・和典の声だー。
「---」
京太郎は、二人の姿を確認するー
暗くなり始めて、高台から見える建物がー
光を放ち始めていたー
夢はービルの屋上だったが
なんとなく、その光が夢と重なって見えた。
「--俺さ…」
和典が優菜のほうを見て話を始める。
”あいつ…まさか”
京太郎は不安に思うー
優菜と和典は幼馴染ということもあり、
仲が良い。
ただ、優菜はいつも京太郎を優先してくれるし
和典は京太郎とも親しくなって
あくまでも”幼馴染の間柄”を二人とも強調していたー
時々不安になることもあったが
優菜が優しさでその不安をかき消してくれていたー
「---」
和典が、優菜のほうをじーっと見つめる。
”おいおいおいおいおい、皮もきついけど
浮気もきついって”
京太郎は、そんな風に思いながら
ふたりを見つめるー
だがー
和典の口から出た言葉はー
「--親父の都合で、転校することになったんだ」
だったー。
「え…」
優菜が言う。
「--ほら、優菜とは小さいころからの付き合いだから
早めに伝えておこうと思ってー。」
和典が言うと、
優菜は
「--そっか」と少し寂しそうに返事をした。
「--昔はよく二人で遊んだよな…」
「--そうね」
和典と優菜が夜景を見つめながら言う。
「--まぁ…優菜には、
京太郎がいるから大丈夫だろ。
それに、京太郎のやつ、俺が優菜と話してると
すっごく不安そうにしてるからさ…
俺がいなくなってちょうどいいかもしれない」
和典が自虐的に笑っている。
「うん…
京太郎は心配性だから…
でも、和典のことは本当に
男子として見てないし、
わたしは京太郎一筋だからー」
優菜が笑いながら言うと、和典は
「ー男子として見てない、は
さすがに失礼だぞ~!」と
苦笑いしながら答えた。
そしてー
優菜に向かって和典は言う。
「-京太郎のこと、大事にしてやれよ。
二人のこと、応援してるから」
その言葉に、優菜は苦笑いする
「なんで、わたしだけを呼び出したの?
京太郎にも言えばいいじゃない?」
とー。
「だって、、、ほら、、恥ずかしいじゃんか」
そんな二人の会話を聞きながら
京太郎は、
”疑ってごめんなさい”と
心の中で呟いて、
そのまま、二人の前に姿を現さずに
その場から立ち去ったー
「----」
優菜がちらっと後ろを見る。
「どうした?」
和典が不思議そうに言う。
「---…ううん、なんでもない」
クスッと笑うと、優菜は夜景のほうを見つめたー
和典と別れた優菜は
スマホを手にする
「--え?カフェ”オレ”なかったの?
あぁ、うん、じゃあそれでいいと思うよ」
優菜の電話相手は弟だったー
京太郎が聞いたのは
”カフェオレ”の”オレ”の部分ー。
優菜が自分のことを俺と言ったわけではなかったー
・・・・
・・・・・・
後日ー
「--なぁにそれ」
優菜は笑ったー
笑ってくれたー
京太郎の心配は、杞憂だったー
夢は、ただの夢ー
「わたしが、皮?
も~!なんて夢見てるのよ!」
優菜が笑いながら
京太郎の肩を叩く。
「--ほら!」
京太郎に背を向ける優菜
「え?なになに?」
京太郎が不思議そうに言うと、
優菜は自分の後頭部を指さしながら
「夢で見たっていうチャック、
確認してもいいよ~?
そんなものないから~!」と
笑いながら言った。
「ええええ!?優菜の髪に触れるなんて」
「--ほ~ら!」
優菜は京太郎の手を掴んで
髪の中を触らせた。
「-なんにも、ないでしょ?」
にっこりと笑う優菜に
「疑ってごめん」と京太郎は苦笑いしたー
中学卒業後に、優菜は
高校に入るタイミングでイメージチェンジしようと決心して
髪を伸ばし、女の子っぽいふるまいやおしゃれを
するようになったのだというー。
友達が”そんなんじゃモテないよ~”と、からかってきて
負けず嫌いの優菜は、イメチェンしたのだという。
「--でも、今は、京太郎に出会えてよかったし
イメージ変えてよかったって思ってるよ」
優菜がほほ笑む。
「-だってほら、中学生の頃のわたしのままじゃ、
京太郎、逃げていきそうだもん!」
そんな優菜に対して
京太郎は「確かに、がつがつ来られたら逃げるかもなぁ」と
苦笑いしたー
・・・・・・・・・・・・・・・・
”皮”はただの夢だったー
京太郎は、心のもやもやもすっかり晴れて
晴れ晴れとした気分だったー
和典の想いに応えるためにも
優菜を大事にしなくちゃなー。
京太郎はそんな風に思いながら
眠りについたー
ペリ…
「---くふ…♡」
京太郎の部屋に、誰かが入ってくるー
熟睡している京太郎ー
「---ふふふふふ♡」
部屋に入ってきたのはー
妹の千佳ー
千佳の頭がぱっくりと割れてー
中から、男が出てくるー
男は不気味笑った後に
千佳の皮をかぶるー
そして、囁いたー
「---まさか、偶然、”皮”の夢を見るなんて…ネ?
でも、お兄ちゃんの彼女じゃなくて
皮にされてるのは わ・た・しー♡
通学路で見かけたお前の妹、めっちゃ可愛くて
エロかったからさぁ…
ひひひひひ♡
これからもよろしくね…お兄ちゃん♡」
とー。
おわり
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コメント
身近な人が皮にされているかもしれない…?と
疑ってしまう主人公のお話でした~!
最後まで「どっちなのかな~?」を
お楽しみ頂けていれば何よりデス~!
今日もありがとうございました!!