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”伸介くんのこと、だいすきー”


「--えへへへ…」

高校生・川辺 伸介(かわべ しんすけ)は、

ニヤニヤしながら画面を見つめていた。


伸介は、最愛の彼女である紗枝(さえ)と

デートの最中なのだ。


幸せな時間を送る伸介ー


けれどー

その手が紗枝に触れることはない。

逆にー紗枝の手が伸介に触れることはない。


なぜならー


彼女の紗枝は生身の人間ではなくー

”二次元の存在”だからだー。


そう、彼女の紗枝とは

恋愛アドベンチャーゲームの中に登場する

架空の彼女ー


伸介は、ゲームの彼女と

話をしているのだった。


最新鋭の恋愛アドベンチャーゲーム

”ラブ・サプリメント”


”あなたに不足している愛を補給します♡”という

キャッチコピーの名のもとに発売された

ゲームソフトで、

10万本を超えるヒットを記録した。


伸介も、ラブ・サプリメントを楽しんでいる人間のひとり。


むしろ、ラブ・サプリメントが

楽しすぎて、

”もうこのまま彼女なんていらないんじゃね?”


などと、思っていたー


彼女も取り換え放題ー


最初の彼女は美琴(みこと)-

飽きてきたからデータを削除して、

次の彼女、理恵子(りえこ)と

付き合い始めたー


そして、理恵子とは喧嘩をしてしまい

うまくいかなくなったために、

データを削除して、

3人目-、今、プレイしている

紗枝と付き合い始めたのだー


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


ある日ー

学校から帰宅した伸介はため息をつく。


そしてー

彼女の紗枝に語り掛ける。


マイクを通じて、

ゲーム内の彼女と会話することができるのも、

このゲームの魅力だ。


「--紗枝はいいよなぁ…」

伸介が呟く


”え?どうしてー?”

紗枝…このゲームの彼女には

人工知能に似た特殊なAIが採用されていて

会話を拾って、そのときそのときに応じた

返事をすることができるー


「--だってさ、紗枝の世界はいっつもいっつも

 幸せな世界だろ?

 俺のいる世界みたいに争いごとばっかり

 じゃないし、面倒なこともないし、

 ずっと生きてられるし」


”どうしたの?だいじょうぶ?”


紗枝がにっこりと笑うー


これは、AIが判断できなかったときの

お決まりの返事のひとつだ。


「--はは…紗枝には分かんないよな

 ゲームのキャラなんだし」

伸介はそう呟いた。


普段は、紗枝との会話をものすごく

楽しんでいる伸介だったが、

この日はなんとなく気持ちが落ち込んでいた。

紗枝に対しても、心ない言葉を

ついつい口にしてしまう。


「---なんて…

 変なこと言ってごめんな」


伸介が言うと、

”ううん、だいじょうぶだよ”と

紗枝は優しく微笑んだー


そしてー

伸介は、寝落ちしたー


ラブ・サプリメントのゲームを起動したままー


眠りについている伸介ー


テレビの画面から不思議な光が

放たれるー。


「---」

眠っている伸介は、

その不思議な出来事に気づくことができなかったー


・・・・・・・・・・


・・・・・・・・・・・・・


「---ふぁぁ…」


翌朝ー

伸介が起き上がると、

そこは、見知らぬ部屋だった。


「--!?」

伸介は唖然とする、”なんだここは?”とー。


一瞬、わけがわからなくなり、

昨日の自分の行動を今一度振り返る伸介。


しかしー

考えてみても、特に自分が昨日、

何か特別なことをした記憶はない。

誰かと旅行中だったわけでもないし、

誰かの家に泊まったわけでもない。

ちゃんと、自分の部屋で眠ったはず。


「---ここは…なんだ?」

伸介は呟いたー


そして、びっくりして振り返るー。

女の声が聞こえた身体。


”ここは、なんだ?”という女の声が

今、確かに聞こえたー。

だが、振り返ってみても誰もいないー


”自分以外にも誰かここにいるのか?”


伸介は”誘拐”という言葉を

頭に思い浮かべる。

自分はもしかしたら、誘拐されてしまったのかも

しれない、と思いながら

ふらふらと立ち上がる伸介ー


サラっと手に何かが触れたー


「え…」

長くてきれいな黒髪ー


下を向くと、そこには

自分にはなかったはずのふくらみがー


「のわああああああ!?」

伸介は驚くー


そしてー

自分の声が”女の声”になっていることに気が付く。


「こ…これは…!?」

近くにあった鏡を手に取るとー

そこには、伸介の彼女ー

ゲーム、ラブ・サプリメントのキャラクターである

紗枝の姿が写し出されていた。


「な、、なんだこれはぁぁぁぁ!?」

伸介は思わず叫んだ。


ラブ・サプリメントの紗枝になっているー


「ってか、この部屋…」

伸介が周囲を見渡すと、

そこには、ラブ・サプリメントのゲームでおなじみの

紗枝の部屋の光景が広がっていた。


「(え…ま、まじかよ…?

 こ、これ、どういうことだよ)」


伸介は混乱する。

自分が紗枝になってしまっているー


自分が、ゲームの世界に吸い込まれてしまったのだろうかー。


「--いやいやいや」

可愛い声を出しながら首を振る伸介。


いくら何でも、ゲームの世界に自分が吸い込まれる、という話は

無理がありすぎる。


そんなこと、あり得ない。


と、なれば考えられることはひとつ、

”これは”夢”だー。


”ザンネンだけど、夢じゃないみたい”


「--!?」

紗枝になってしまった伸介のもとに、

伸介の声が響き渡るー


”どうやら、わたしと伸介くんは、入れ替わっちゃったみたい”


声が聞こえてくるー。

その声は、確かに伸介の声だ。


「--お、、俺の声…?い、、いったい…?」

紗枝(伸介)が慌てて周囲を見つめながら言うと

再び声が聞こえたー。


”わたしは…紗枝。…

 わたしが伸介くんの身体になってるの”


伸介(紗枝)はそう説明したー


「え…じ、じゃあ、俺がゲームの世界に来て

 紗枝になってしまって、

 紗枝が、現実世界に行って、

 俺の身体に・・・?」


”そうみたい”

伸介(紗枝)はそう答えるー


紗枝(伸介)は、その姿を確認することができない。

おそらく、ゲームの画面を見ながらマイクを使って

話しかけているのだと思うが、

”聞く側”はこんな気分なのか、と紗枝(伸介)は思う。


部屋の上からー

いいや、世界全体にマイクで話している

プレイヤーの声が聞こえてくる感じだ。


「ーーい、、いやいやいやいや

 そんなことありえないだろ!

 な、何のドッキリだよ これ?」

紗枝の声で伸介が言う。


ゲームキャラとは言え、人工知能のような

技術が搭載されており、特殊な技術で

言葉も自由自在のため、

紗枝の身体になってしまっても

伸介は思考したり、行動したり

人間とあまり変わらないように

行動することができた


”どっきりじゃないの…

 わたしも驚いてる”


伸介(紗枝)が

語り掛けてくる。

今、自分はどんな表情をしているのだろうかー

不安になる。


「そ…そんな…」

紗枝(伸介)は唖然とする。


ふと、自分の身体を見つめる紗枝(伸介)


「(いや…待てよせっかくだしこの身体で

 少し遊んでから元に…)」


”エッチなことは、考えないでね”

伸介(紗枝)の声が響いた。


「--え!?あ、ええ?」

紗枝(伸介)は顔を真っ赤にしながら言う。


”ふーん…

 こんな風に吹き出しで考えてることが

 表示されるのね”

伸介(紗枝)の声が響くー


「--し、、しまった!」

紗枝(伸介)はは表情を歪めたー


ゲーム内のオプションで

”吹き出しモード”にしていたのを忘れていた。


紗枝が考えていることが

時々、ヒントとして画面上に吹き出しで

現れるモードのことだ。


「---あ、、、ご、、ごめんなさい」

紗枝(伸介)は苦笑いしながら謝るー


”別にいいけど…

 …でも、伸介くんの世界ってすごいね。


 声だけ聞こえてくるから何なのかと

 思ってたけど…

 まさかこんな世界だなんて…”


「--はは…そりゃどうも」

紗枝(伸介)は苦笑いしながら言う。


そして、呟いた。


「--元に戻る方法にはどうしたらいいんだ?」

紗枝(伸介)の言葉に、

伸介(紗枝)は答えたー。


”わたしにも、わからないー”


とー。


こんなこと今まで経験してこなかったし、

わたしは、その世界が現実だと思ってたからー


伸介(紗枝)はそう続けた。


「--だってさ、紗枝の世界はいっつもいっつも

 幸せな世界だろ?

 俺のいる世界みたいに争いごとばっかり

 じゃないし、面倒なこともないし、

 ずっと生きてられるし」


伸介は自分の言葉を思い出したー


待てよー?

この世界と現実とで入れ替わって

俺が紗枝ちゃんになれたのは

すっげぇラッキーなんじゃないか?


と、そう思い始めた


「---そ、そっか。

 じゃあ、しばらく様子見だなー」


紗枝(伸介)はそう呟くと

「あ、そうだ!俺も学校行かないといけないからさ、

 なんとか行ってもらえるかな?

 どうせ友達なんていないから、

 てきとーにやってれば誰も気づかないよ」


紗枝(伸介)の言葉に

伸介(紗枝)は

”こっちにも学校ってあるんだ…”と

少し明るい声で答えた。


紗枝(伸介)は

学校の場所や学校に行くために必要なことを

伸介になった紗枝に教えた。


そうしながら紗枝(伸介)はふと思うー。


”こっちからだと意外と何も分からないんだな…”


とー。


紗枝(伸介)からは伸介(紗枝)の声しか

聞くことができない。

ゲームをプレイしている人間からは

彼女の姿が見えるものの

彼女側からは彼氏…プレイヤーの姿は

見えないのだ。


しかも、こっち…ゲーム側は

心まで見透かされてしまうー


「こっちはこっちで苦労してるんだな」


”え…?”


「いいや、なんでもない」


そしてー

紗枝(伸介)が説明を終えると

伸介(紗枝)は”がんばってみる”と

学校に行くことを承諾してくれたー。


”じゃあ、行ってきます”

伸介(紗枝)の声が聞こえる。


「行ってらっしゃい」

紗枝(伸介)はにっこりとほほ笑んだー


伸介(紗枝)の声が聞こえなくなる。


「よっしゃあ!」

紗枝(伸介)は叫んだ。


せっかくのチャンスだー

女子高校生ライフを楽しもうー


今なら見られてもいないはずだし、

紗枝ちゃんの身体を存分に

楽しむことだってできる


「えっへへへへへ♡」

イヤらしい声と笑みを浮かべる紗枝(伸介)


「まずはせっかくだからおっぱ


・・・・・・・・・・・・・・・・・・


「ーーじゃあ、行ってきます」

伸介になった紗枝は、

テレビ画面に映る紗枝(伸介)に向かって

マイクで話しかけた。


”いってらっしゃい”

テレビから紗枝(伸介)の声が聞こえるー

紗枝(伸介)の顔もテレビに映し出されているー。


”わたし、こんな風に見られてたんだぁ…”

そんな風に思いながら、

伸介になった紗枝は、伸介から説明された通り、

出かける前にゲーム機の電源を落とした。


”まずはせっかくだからおっぱ”


ブチー


電源を切るー


「---あ…」

伸介(紗枝)は苦笑いした。


「何か言ってる途中だったけど…

 大丈夫だよね?」


伸介(紗枝)はそう呟くと、

言われたとおりに学校に向かうのだったー



②へ続くー


・・・・・・・・・・・・


コメント


まさかの現実の彼氏と

ゲームの彼女の入れ替わりデス!


ゲームの世界に行っちゃうと、

どんな風に感じるのかを

真剣に想像しながら

書いてみました(笑)


…恋愛アドベンチャーのゲームは

やったことがないので

こんな内容の恋愛ゲームないよ!

という突っ込みは許してください~笑


今日もありがとうございました!!!

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