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こんな俺に彼女ができるなんてー。


男子大学生の山田 京太郎(やまだ きょうたろう)は、

自分でも驚いていたー


高校2年になるまで、恋愛などというものとは

全く縁がなかったー。

男子の友達はそこそこいるが、

女子にモテるとか、正直あまり興味もなかったし、

なんだか話すのも恥ずかしいような気がして

女子と話す機会もほとんどなかったー。


だがー

2年生になって初めてクラスが一緒になった女子生徒・

藤枝 優菜(ふじえだ ゆうな)と出会って

全てが変わったー


”好き”


そう言われた時、京太郎は驚いた。


自分が、誰かから告白されることなんて

永遠にないと思っていたー。


けれどー

それは、夢ではなかった。

優菜と付き合い始めてから半年、

優菜は、とても心優しく、そして

京太郎にとっても理想の彼女だったー。


「---そういえばさ~」


昼休みー。

ふたりで廊下を歩きながら

京太郎が口を開く。


「どうして、優菜は俺と付き合おうなんて

 思ったんだ?」


付き合い始めて半年ー

いまだに、優菜が自分なんかを好きに

なってくれたことが信じられないー。


イケメンなわけでもないし

性格も特に良いわけでもなく、普通だ。

趣味もちょっとオタク趣味だったりもするー。


「--え~?」

優菜が笑いながら京太郎のほうを見る。


「--好きだから、じゃ、だめ?」

笑う優菜。


京太郎は恥ずかしくなって

顔をそらした


「よ、よくそんな恥ずかしいこと言えるな~!

 俺は一生言えない!」

京太郎は顔を赤くしながら言うと、

優菜は「だって好きなんだもん~!

好きになるのに理由なんていらないでしょ~」と

ほほ笑んだー


教室に戻ってくる二人ー。

昼休みに、外部から販売に来ているパンを

昇降口まで買いに行って

戻ってきたのだー


ふたりは、楽しく雑談をしているー


「相変わらず仲良しでうらやましいな~、お前たちは!」


そんな二人を冷やかしに近づいてきたのは

友人の渡部 和典(わたべ かずのり)。

優菜とは、小学生の時から

同じ学校らしいー。


「あ、渡部くん。

 渡部くんだって、彼女いるでしょ~?」

笑いながら言う優菜。


「いやいや、いるけどよ、

 あいつわがままだからさ~」

苦笑いしながら言う和典。


京太郎も苦笑いしながら

そんな話を聞くのだったー


・・・


・・・・・・・・


「どうして、優菜は俺と付き合おうなんて

 思ったんだ?」


京太郎が尋ねるー


ペリッ…


優菜がにやりと笑うー


「--お前ならー…

 騙しやすそうだと思ったんだよー」


優菜が、いつもとは違う口調で言う。

可愛い声ー

けれど、脅すような口調ー


優菜の頭が満面の笑みを浮かべたまま

ぱっくりと割れるー


その中からー

恐ろしい形相の男が出てくるー


「---ゆ、、、優菜…?」

京太郎が驚いて、優菜のほうを見る。


優菜は笑ったまま、

まるで昆虫が脱皮して脱ぎ捨てた皮のように、

床に横たわっているー


中から出てきた男がほほ笑んだー


「この女は、2年前、俺に皮にされたんだよ!

 くっくくくくく…」


男は不気味な笑みを浮かべたー


「---う、、嘘だ!」

京太郎が後ずさるー


「お前と付き合おうと思った理由…

 くくく…

 勘違いするな。

 俺はお前と付き合ってるつもりなんかねぇ」


男は、京太郎の耳に顔を近づけると

ゆっくり、静かに、そして脅すように呟いたー


「お・ま・え・は・お・れ・の・お・も・ち・ゃ・だ」


とー。


・・・・・・・・・・・・・・


「うわあああああああああああ!」

京太郎は飛び起きたー


スマホのアラームが鳴っているー


朝ー


「そ、、そうか…夢か…」


京太郎はため息をついたー


夢ー


そう、夢だったのだー。


優菜があんな風に着ぐるみのような

状態で、中に男が入っているなんてありえないー。


くだらない夢を見てしまったー。

京太郎はそんな風に思うー。

”どうして自分を好きになってくれたんだろう?”


そんなことを考えてばかりいるから

こんなくだらない夢を見てしまったのだろうー。


学校に行く準備をしながら

京太郎は考えるー。


「---でも…

 やけに生々しい夢だったな」


そう呟く京太郎の表情は

少し、曇っていたー


「---あれ?お兄ちゃん!寝ぐせひどい~」

妹の千佳(ちか)がクスクス笑いながら言う。


「う、うるせー!」

京太郎は、いつものように妹に言い返すと、

準備を終えて、家の玄関から、外に飛び出したー


・・・・・・・・・・・・・・


「おはよ~!」

優菜がいつものようにやってくる。


「あ、おはよ」

京太郎が返事をする。


優菜のことを見るー


ただの夢には違いないー

けれどー

なんとなく気になってしまうー。


京太郎は優菜のほうを少し見つめると、

ため息をついた。


”優菜が皮になっていて

 別の男が中に入っている夢を見たけど

 そんなことないよね?”


なんて、聞くことはできない。

気持ち悪がられるのがオチだろうー


そんなことを思いながら

教室に到着するふたり。


「--お~!見ろよこれ!」

友人の和典が笑いながら何かを手に持っている。


「これ、俺と優菜の中学の卒業アルバムなんだけどさ~」


昨日、自分の部屋の整理をしていた和典は

中学時代の卒業アルバムを見つけて、

懐かしい、と、それを学校に持ってきていたのだったー


「--優菜のやつ、今とずいぶん違うよな~!」

和典が笑いながら言う。


「--え~?どれどれ~」

優菜が笑いながら卒業アルバムを見つめる。


そこにはー

今の長い黒髪の優菜とは違って

短髪で活発そうな少女が写っていた。


「あ~、このときわたし、髪短かったもんね~」

優菜が笑う。


「--へ~、そうなんだ」

京太郎はそう言いながらー

ふと、今朝見た夢の一場面を思い出した。


「この女は、2年前、俺に皮にされたんだよ!

 くっくくくくく…」


2年前ー。

京太郎は表情を曇らせたー


いや、、そんなはずは…。

京太郎は頭に浮かんだ考えを打ち消すー。


「--どうして、髪を伸ばしたんだ?」

京太郎はついついそう尋ねてしまう。


優菜は自分の髪を触りながら

「う~ん、なんかほら、こう、

 高校に入る前にイメージ変えてみよっかな~!って」

と答えた。


”そうだよな”

京太郎は内心で安心するー。

優菜の中に、誰かが潜んでいるなんて

ありえないー。

絶対に。


京太郎は思うー


「どうしたの?」

優菜が京太郎の顔を覗き込みながら言う。


「--あ、いや、なんでもないよ。なんでも!」

京太郎はそう言いながら、

和典の持ってきた卒業アルバムを見つめるー


優菜は、今とは違い、ずいぶん活発そうな子に見えるー。

卒業文集には、運動のことがたくさん綴られていたー


「今と全然イメージ違うなぁ~」

京太郎が笑う。


「--ふふふ」

優菜がほほ笑むー。


「そうそう、急に女の子っぽくなっちゃってさ~!

 幼馴染の俺もドキッとしたぜ」

和典が苦笑いしながら言う。

そして、すぐに付け加えた。


「あ、俺は優菜のこと幼馴染としてしか見てないから

 京太郎から奪ったりしないから心配するなよ!」


京太郎は、その言葉に「心配してないよ、別に」と

苦笑いしながら答える。


心配していないのは本当だー。

和典は、裏表が全くないタイプだ。

仮に優菜が浮気をすれば

そのことをへらへら喋ってくるタイプだろう。


「ーーー…」

優菜が、卒業アルバムを見つめながら

クスッと笑ったー


まるで、過去の自分を馬鹿にするかのようなー

そんな、冷たい笑いに京太郎には見えたー。



放課後ー


優菜と京太郎はいつものように

一緒の道を歩いて家を目指していたー


「-あ、そうだ!今度の土曜日だけど、

 約束、ちゃんと覚えてる?」

優菜が言う。


「え、あ、うん。覚えてるよ」

京太郎はそう答えた


来週の土曜日は優菜の両親が不在で

優菜の家に遊びに行くことになっているー


優菜は京太郎のオタク趣味も受け入れてくれていて、

京太郎の好きなアニメキャラのコスプレ衣装を

バイトをして自分のお金で買って

京太郎の前でその恰好を披露してくれているのだー


今度の土曜日も、それをしてくれるらしいー


夕日が二人を照らす。


「--でもさ、コスプレまでしてくれるなんて

 やっぱ、そこまでしてくれるって

 なんか、悪いような気が~」

京太郎が言うと、

優菜はにっこりと笑ったー


「---だって、京太郎の反応が面白いんだもん!


 まるでー

 お・も・ち・ゃ みたいで♡」


小悪魔のように笑う優菜ー


「お・ま・え・は・お・れ・の・お・も・ち・ゃ・だ」


朝に見た生々しい夢ー

優菜の中から男が出てきた夢で

言われたセリフを思い出す


京太郎は凍り付いたー


「--な~んちゃって!」

優菜はテヘッ、と笑って見せたー。


「わたしも普段できない恰好を楽しんでるし

 お互い様だよ~!

 京太郎だって、わたしのために

 いろいろ頑張ってくれてるでしょ?

 先月だって誕生日のプレゼントもらっちゃったし!」


優菜が優しく笑いながら言うー


夕日に照らされながらー

ふと、優菜の後頭部に、一瞬光るものが見えた気がした。


「---!!」


夢の中で見たチャックー


「---優菜!?」

京太郎はたまらず優菜の後頭部を触るー


だが、そこにチャックはなかったー


「---ちょ、、ちょっと、どうしたの?」

優菜が急に頭を触られて驚くー。


「あ、いや…ごめん…

 なんか、後頭部にごみがついてるように見えて」


京太郎の言葉に、優菜は

「も~!大げさだなぁ~」と、笑いながら答えるのだったー。


いつも優菜と別れる道に差し掛かって、

優菜と手を振って分かれるー。


帰宅する京太郎。


京太郎は、一人考えていたー


ただの夢のはずだ。

なのに、どうしてこんなに気になるのだろうかー。


優菜は優菜だー。

中に男が入っているなんて、

あるわけがないー


「--あ~!くそっ!馬鹿なことを考えるな俺!」

京太郎はそう呟いてー

気を紛らわそうと、好きなアニメを

見始めるのだったー


・・・


・・・・・


にやりと笑みを浮かべるー。


彼女はー

皮にされているのかー


それともー

京太郎の夢は、単なる夢かー。


「ふふふふふ…」

彼女は、静かにほほ笑んだー。



②へ続く


・・・・・・・・・・・・・・


コメント


彼女は本当に”皮”にされているのでしょうか?

それとも、ただの夢なのでしょうかー

続きは近日中に~!


今日もありがとうございました!!

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