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「あ~あ…女になりてぇなぁ」

浅沼 圭太(あさぬま けいた)は、スマホを

いじりながらそう思っていたー


なぜ、人間は

生まれてくる性別を選ぶことができないのだろうか。

人気のゲーム・ソケットモンスターだって、

自分の好きなバージョンを選んで買うことができるし

ゲームを始めるときに

男の子になることも、女の子になることもできない。


なのに、人間は違う。

男か、女か、選ぶことができないー


「くっそ~!

 おしゃれもしたかったし、

 恋愛もしたかったし、

 女子会とかもしてみたかったなぁ~」


圭太はそう呟きながら

ベットに横たわったー


圭太は昔から、女の子に憧れていたー

性的な意味ー、だけではない。

エッチなことをしたいー、というよりかは

女の子として、普通に生活をしてみたい。


そんな想いが強かった。


ごく普通におしゃれをしたり、

ごく普通にスイーツを食べたり、

恋愛をしたりー

そういうことをしてみたいー


けれどー

圭太は男だった。

しかも、容姿に恵まれなかった。


そんなことはできないー


永遠に。


女装をしてみたいと思ったこともあったが、

女装が好きならばともかく、

彼は女装をしたいのではない。

女の子になりたいのだ。

女装をしただけでは、本物の女子にはなれないー


彼は、そう思って

女装の道も諦めたのだったー


しかしー


「---!?」

なんとなくツイッターを眺めていた圭太は

あるものを見つけた。


少し前に自分の会社を売りに出して

今は新しい会社を経営している

後沢 長作(うしろざわ ちょうさく)という

人物のツイートがたまたま目に入ったのだー


「な、、なんだと…!?」

そのツイートを見て、圭太は驚愕したー。


”女体化お年玉

 応募方法はフォロー&リツイート!”


そう書かれていたのだ。


「じょ、女体化!?」

圭太は慌ててそのツイートを見る。


正直、後沢社長に興味はなかったのだが、

女体化となれば話は別だ。


TSFモノが載っている小説サイトだとか

漫画だとか、フィクションの中だけの

話だと思っていたー

朝、目覚めたら見知らぬ美少女になっていますように、と

毎日祈りながら眠る日々を送っても、

圭太は、男のままだったー


しかしー

これはーーー?


「--女体化お年玉ってなんだなんだ!?」

圭太は我を失って後沢社長のツイートを見つめる。


そしてー

圭太は迷わず後沢社長をフォローして、

リツイートした。


本当かどうかは分からないー。

けれどー

彼のような、社会的影響力が強い人が

”女体化できます”などと大々的に宣言して

”嘘でしたテヘペロ”なんてことは

許されないだろうし、

本人もそれは分かっているはずー。


そのうえで、後沢社長がそういうことを

ツイートしているということはー、

つまり”本当に女体化できる”ということなのかもしれないー


その日から、

圭太は毎日のように後沢社長のツイッターを

見に行くようになったー


社長が新しいツイートをする。


『仮に、女性になれたら、

 あなたの暮らしや仕事はどうなりそうですか?』


そうツイートされている。


「うおおおおおおおおお!」

圭太は叫んだ。


「社長ぉおおおおおおおおおお!」

圭太は、もしも自分が女になれたらー?を

頭の中で想像してみるー


おしゃれをしてー

スイーツを食べてー

友達と楽しく過ごしてー

恋愛してー


「んふふふふふ…ふふふふふふふふ!」

リツイート数はどんどん増えていくー


1000名にしか当たらないものに対して

既にそのリツイート数は数十万に到達している。


「くそっ!女体化するのは俺だ!」

圭太は叫ぶ。


その日からー

圭太は自分が女になったら?ばかりを

想像して生活するようになった。

キモイとばかり言われて

意味もなくさげすまれる日々は

もうすぐ終わるー。


女性として、人生を

エンジョイする日々は、目の前まで迫っているー


数日後ー

女体化お年玉の応募期間が終了した。

これから、数日間の集計期間に

入るのだという。


”ベーシック・レディ”の

社会実験なのだと

後沢社長はツイートしている。


「--すげぇ!すげぇよ!」

圭太はひとり、はしゃぐ。

なりたい性別になることができるー

金持ちの考えることは

半端じゃない、と圭太はニヤニヤしながら

そのツイートを見つめるー


「へへへ…」

圭太は、応募者数の多さという現実から

目を背けて、自分が当選すると思い込み、

可愛い洋服や化粧品、

女子になったら行きたい場所を調べるための

雑誌なども購入したー


大学生になった今でも、友達はいない。

女体化したあとに、

どのような風に手続きをするのか?

などの心配はあるが、

仮に自分が”浅沼 圭太”でいられなくなったと

しても、未練はない。


「--ってか、名前はどうするんだ?」

圭太は思う。


戸籍上も変わるのだろうか。

それとも、圭太という名前のまま過ごすことになるのだろうか。


いいやー

どっちにしろ、女の子としての名前は必要だ。


圭太はニヤニヤしながら

候補の名前を考える

香をつけるか?いや、あえて子か?

菜もいいな。恵も悪くない。


自分の新しい名前を考えながら

圭太はニヤニヤする。


女の子としての自分の名前を

友達の女子に呼ばれて

笑顔で振りかえって手を振るー


そんなことを、してみたいー

そして、その夢はもうすぐかなうー


もうすぐ叶うはずなのだー


数日後ー

ツイッターのダイレクトメッセージの部分が、

「1」と表示されていたー

ネット上でも、あまり友達が多くない圭太は、

ガッツポーズした。


「キターーーーー!!!」

自分にDMを送ってくる要件のある人間なんて

そうそういない。


今、このタイミングで自分にDMを送ってくるとすれば、

その相手は一人しかいないのだ。


そうー

後沢長作社長だ。


ドキドキしながら、

彼はー

ダイレクトメッセージの画面を開いた。


すると、そこにはーーー


”当選おめでとうございます。

 後沢です”


というメッセージが表示されていた。


「ふぉおおおおおおおおおおおおおおおおっ!」

彼は、文字通り飛び跳ねるようにして

喜んだー

人生で一番幸せな瞬間と言えるかもしれないー


「え??マジ?まじまじ?」

圭太は、画面を確認する。


こういうキャンペーンでは偽物が湧くことも

あるらしいー

相手が本物の後沢社長ではない可能性もある。


そう思いなおして確認したもののー

相手はまぎれもない、本物の後沢社長だったー


”女体化、できます!”


ダイレクトメッセージにはそう書かれていた。


「うおおおおおおおおおおおおおおお!!

 嘘じゃないんだよな?

 夢じゃないんだよな!?」

圭太は自分の頭を壁に思わず叩きつけた。


そして「いってぇ~!」と叫ぶー。


夢じゃないー

現実だー!


圭太は後沢社長からの

メッセージを一句たりとも見逃さずに

全て読んだー。


そしてー

必要事項を入力して返事を送るー

明日の朝には、女体化が完了するとのことだったー


『仮に、女性になれたら、

 あなたの暮らしや仕事はどうなりそうですか?』


後沢社長のツイートを思い出す。


変わる…変わる…

変わる!!変わるぞぉ!!!

何もかも!


圭太は叫ぶー

自分はまだ大学生だから

仕事は変わらないがー

女性になることができたら

全てが変わる。


そして圭太は今、そのチャンスを

強運でつかみ取ったのだー


圭太は”男として”の最後の夜を過ごすと、

ドキドキしながら眠りについたー


さらば男よー。


そう呟きながらー


・・・


・・・・・・・・・


翌日ー


圭太は目を覚ましたー


「う…ん」

寝ぼけた状態で時計を確認する圭太ー


そして、自分の手を見つけて

圭太は叫んだ。


「うあああああああああああああああああ!!!!」


圭太の手ではなくー

そこには、色白な、綺麗な手があったー


「やったぁああああああああああああああ!」

声も、自分のモゴモゴした声ではなくー

可愛らしい女性の声になっているー


綺麗な髪ー

膨らんだ胸ー


圭太が望んでいたものが、

圭太の長年の夢が、

ついに叶った瞬間だったー


胸があるー。


「あわわわわ…」

圭太は顔を赤らめながらほほ笑むー


よく考えたら、

ランニングシャツにトランクスという姿で

昨日は寝たんだった、と思いながら

あらかじめ購入しておいた可愛らしい洋服に

着替えるー


女装ーではない、

女の子として、女の子の服を着ているのだ。


「んふふふふ~やったぁ!」

女の子っぽい仕草をしながら喜ぶ圭太ー。


そうだー

名前ー

名前はどうしようー


いいや、その前に、鏡で自分のチェックだ。


嬉しそうに歌を歌いながら

圭太は鏡の前に行くー


「おはよう!わたし!」

嬉しそうにそう口にする圭太ー


だがー


「-------…!!!!!」

圭太は、鏡を見て表情を歪めたー


「----ぎゃああああああああああああ!!

 ブスだぁあああああああああ!」


圭太は悲鳴を上げたー


元々の自分の顔が

女になったかのようなー

そんな顔ー


顔がお世辞にも良いとは言えない感じだった

圭太はー

女体化したところで、

”かわいい”を手にすることはできなかったのだー


「---あ…あぁああ…」


圭太は、その場に膝をついたー。


大学でもー

プライベートでもー

結局友達は増えないー

女になることはできたけれど、

結局、彼は”かわいい”を手にすることは

できなかったのだー


いくら可愛くなろうと努力してもー

容姿に恵まれなかった人間には

それが難しいことを圭太は思い知るー

結局、何も変わらない。

それでも、友達を作ることはできたかもしれないー

整形やおしゃれの選択肢もあるのかもしれないー


けどー女体化しても

彼はもともと難のある性格の持ち主ー

見た目がなんであろうと、性格が

悪ければー

人は、寄ってこないー。


そしてーお金がなければ

変わることもできないー


「…身体が女になるだけじゃ…

 周囲の環境ってのは変わらないんだな…」

圭太は悲しそうにそう呟くー。


後沢社長のツイートを見つめるー

『仮に、女性になれたら、

 あなたの暮らしや仕事はどうなりそうですか?』


・・・。


女体化した圭太は自虐的にほほ笑んだ。


「何も、変わらなかったよー」


とー



おわり


・・・・・・・・・・・・・・・・・


コメント


ツイッターでたまに見かける

話題の?お年玉企画を題材にした

女体化小説でした!


当たった時の流れとか、

応募の流れとかは

私は当たったことないですし

応募したこともないので

実際と違うところもあるかもしれせんが、

フィクションなので許してくださいネ!


お読み下さりありがとうございましたー!

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