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海王会と針金組ー

2つの裏組織による抗争は、激化していたー。


長年にわたる緊張状態は、いつしか

両方の組織を蝕み、破滅へと向かわせていたー。


そんな中、海王会と針金組が共同で開発したのが

”憑依薬”だったー。

憑依薬により、自分たちの身体を使うことなく

他人の身体を乗っ取り、抗争を行うー

”代理戦争”が、彼らの中では当たり前になっていたー。


昨日ー

憑依されたごく普通の家庭の母親とOLが、

命の奪い合いを演じたー。

そしてー

針金組の構成員が憑依していた母のほうが

命を落としたのだったー。


「……」

年配刑事の坂田は、

警察署前で騒いでいた子供から

話しを聞いていたー


”お母さんが、悪魔に乗り移られた”と

少年は言うー。


その子によれば、突然、晩御飯中に様子が

おかしくなって、

そのまま家を飛び出してしまったのだというー。


少年が後を追いかけたところ、

川辺でもう一人別の女と乱闘していてー

最後には、母親は、目の前で殺されてしまったとー。


「---この子を頼む」

泣きじゃくる子供を若手刑事の白井に任せると、

坂田は考え込むー


”豹変する女たちによる命の奪い合い”


最近、多発している事件だー。

「悪魔に乗り移られた…か」

年配刑事の坂田は、首を傾げたー


その数時間後ー

昨夜、川辺で乱闘していたOLを発見した警察官たちは

OLを緊急逮捕した。


カラオケボックスで卑猥な言葉を

大声で口にしていたOLは

逮捕後も卑猥な言葉を嬉しそうに

口にしていたー


”完全に正気ではないー”


海王会の幹部・龍五郎に憑依されたOLは、

龍五郎が抜け出す直前に、

その思考を卑猥な言葉で埋め尽くされてしまったー


「--どうして、人の命を奪ったりしたんだ?」

年配刑事・坂田が取り調べを行う。


「--せっくす!」

OLが叫ぶ。


完全に頭がおかしいー

坂田はそう思った。


だがー…


「---…」

坂田は、逮捕したOLの経歴から、

そのような人間ではないことを悟り、

脳の精密検査を受けさせたー


その結果ー


「--これは、見たこともない反応です」


OLの脳波が異常な数値を示しているのだという。


「--そうですね…

 言うならば”外部から”脳をいじられた

 そんな感じすらしますね」

脳神経外科の男は言った。


「脳を、、いじられた…」

坂田は考え込むー


「---角おなしてぇぇ!」

OLがもがきながら叫ぶ。


「--…」

坂田は”誰が何のために”と考えたー


「--!!」

いつも乱闘する人間は”2人”

その事件が起き始めるのと同時にー

あることが起こらなくなったー


それはー

この周辺地域に存在する暴力組織・

海王会と針金組の抗争だー。


女たちが命の奪い合いをするようになってから

それが起きなくなっている。

不自然なほどにー。


両組織とも、おとなしくなってくれたのか、と

考えていたが、もしかするとー。


「--白井…俺は海王会と針金組を調べる」

坂田が言う。


「--海王会と針金組?」

若手刑事の白井が首を傾げた。


「最近は、2つともおとなしくしているはずじゃ」


その言葉に、年配刑事の坂田は首を振った。


「-女性たちの異変に、やつらが関係しているかもしれない」


坂田はそう答えたー


・・・・・・・・・・・・・・・・・


海王会本部ー。


「憑依薬の取引の時間です」

構成員が言う。


海王会幹部の龍五郎は、立ち上がった。


憑依薬は、針金組のほうで生産しているー

海王会は、そのための原材料を調達することで、

双方の組が協力し、憑依薬が供給されているのだー


「---」

針金組の幹部・張野 義春が、

アタッシュケースを持って、海王会の事務所に入ってくる。


「--憑依薬だ」

義春がアタッシュケースを置く。


「--例のモノだ」

海王会幹部の龍五郎も別の

アタッシュケースを机に置く。


”原材料”と”憑依薬”の交換だー


海王会のみが知る独自ルートで

原材料を手に入れて、

それを生産技術を持つ針金組に提供、

針金組は憑依薬を完成させ、

その半分を海王会に提供するー

こうして、”代理戦争”は成り立っている。


海王会が裏切れば、憑依薬を完成される技術がないー。

針金組が裏切れば、憑依薬の原材料を確保できない-。


どっちかが欠けたら憑依薬は完成しないー

その状況により

均衡(バランス)が、保たれていたー。


「---!?」

龍五郎が表情を歪める。


アタッシュケースの中に入っていたのは、

憑依薬ではなくーーー”死”と書かれた紙ー


「---なんのつもりd


龍五郎がそう言いかけたときにはもう遅かった。

針金組の幹部・義春と構成員たちが

一斉に銃を放つー。


「ぐあっ!?」

龍五郎はふらふらと踊らされてー

そのまま床に倒れこんだ。


「--”代理戦争ごっこ”はもう終わりだ」

針金組の幹部・義春が笑うー


憑依薬を使った代理戦争で

針金組は敗北を続けて押されていたー。


追い詰められたものはー

均衡を破るー


針金組はついに、憑依薬の原材料のルートを奪うという

実力行使に出たのだー。


「---!?」

会長室にいた

海王会会長・山之内 湯羽左衛門(やまのうち ゆうざえもん)

が目を見開くー


開いた扉からなだれ込んでくる

針金組の構成員たちー


”代理戦争”のことしか考えなくなっていた

海王会の本部は手薄だったー。


あっという間に海王会会長は始末されて、

近場の海にドラム缶詰めにされて

放り投げられてしまったー。


針金組はー

最初から”これ”を狙っていたー


顔を針金だらけのマスクで隠した

針金組の組長は笑う。


憑依薬を開発しー

代理戦争で油断させー

海王組を壊滅させー

憑依薬で裏社会を統べるー


それが、針金組の目標だー。


・・・・・・・・・・・・・・


「----…」

年配刑事の坂田は針金組と海王会を

それぞれ見張っていたー


そして、海王会本部の異変に気付く。

裏口から針金組組員が入っていったため、

海王会本部内で起きた争いにまでは

気付かなかったが、生き残った構成員たちの

異様は動きから、

”何かが起きた”ことを悟るー


そしてー


「--!?!?」

どこか怪しい足取りで街中を歩く女性の列を坂田は見つける。


「なんだ…?」

坂田は、その女性たちを追跡するー


制服のままの女子高生やー

ランドセルを背負った少女ー

30代と思われる女性ー

十人近くの女性が、ニヤニヤしながら歩いているー


「へへへ…憑依って最高だよな~!」

ランドセルを背負った少女が叫ぶ。


「--!?」

尾行していた坂田は表情を歪める。


”憑依ー?”


イヤな予感がするー


坂田が尾行していくと、

女たちは、針金組本部の中に入っていくー


一般女性が、裏社会の組織の本部に

入っていくなどおかしいー


「--…」

坂田は、針金組本部に踏み込むことを決意するー


「-警察だ!」

坂田は警察手帳を示しながら

針金組本部に突入するー


すると、そこではー

女たちが喘ぎながら自分の身体を

もてあそんでいる光景が広がっていたー


「な、、何をしているんだ!?」

坂田が驚くー


しかもー

針金組の構成員たちが

本部内で倒れているー


「これはいったい…?」

坂田が驚くー


女たちが針金組構成員の命を奪い

針金組本部を乗っ取ったとでもいうのか?


「--ようこそ」

背後から声がして、坂田が振り返る。

するとそこには、針金だからけのマスクをかぶって

顔を隠した”針金組組長”の姿があった。


「---どうです?」

組長は機械音声のような声で笑う。


「-ーー憑依の力は?」


ー憑依


年配刑事の坂田は叫ぶ。


「憑依とはなんだ!」

とー。


言葉の意味は坂田も知っている。

だがー

”何が起きているのか”は分からなかったー


「--そこにいるエロい女たちはー

 ここに倒れている男たちに乗っ取られてるんですよ」

組長は笑う。


本部内で構成員の男たちが倒れているのはー

今、エッチなことをしている女たちに憑依しているからだー


「--な、、なんだと!?」

坂田がキスをしている女子高生と若い女性のほうを見るー

一人は、自分の下着を頭に被って笑っているー


「--憑依薬を使えば

 他人の身体を意のままに操ることができるんですよ」

組長がくくく、と笑う。


「ふ、ふざけるな!そんなこと許されるわけがない!」

坂田は叫ぶー


他人に憑依してその身体をもてあそぶー。

最近、起きていた女性同士の命の奪い合いは、

この憑依薬によるものだと坂田は確信した。


「-ーー最近起きている

 女性同士の殺し合いは、お前たちの仕業か?」


その言葉に、針金組組長は笑ったー。

組員に憑依されているパーティドレスの女を

抱き寄せると、針金組組長は続ける。


「えぇ、まぁ。

 でも、もうそれも終わりましたよ。


 海王会は、先ほど、始末しました」


針金組組長が笑うー


「これからは、我々が憑依薬で

 この町の女どもをしゃぶりつくして

 支配してやりますよ」


その言葉に、坂田が銃を構えるー


針金組組長のマスクに銃を向ける坂田ー。


「そんなことはさせないー」


しかしー


「くくく…邪魔者が消えれば

 憑依薬を知るのは我々だけー。


 海王会から原材料のデータも手に入れましたし

 あとはあなたを消せばー

 この町は、我々のモノー」


パァン!


坂田が銃を発砲したー。

針金組組長のマスクが吹き飛ぶー


「---!!」

その下から出てきたのはー

後輩刑事の白井だったー


「白井…おまえ!」

坂田が驚くー


「ははっ、ばれちゃいましたか。

 私が針金組組長です。

 くくくくく…」


白井は笑うと、

”先輩、今までお世話になりました”と

真顔で呟いて、

容赦なく坂田に発砲したー


倒れた坂田を見つめて

針金組組長の白井は笑みを浮かべた。


「警察ごっこ、楽しかったですよぉ」


とー。


・・・・・・・・・・・・・


その日からー

その町では、奇行に走る女性の数が

爆増したー。


針金組を疑うものも当然いたが、

そういう人間は”憑依されて、自殺させられたー”


やがてー

その町は、針金組の手中に

完全に収められてしまったのだったー



おわり


・・・・・・・・・・・・・・


コメント


悪用を考える組織が

憑依薬を手に入れてしまったら大変ですネ…!


お読み下さりありがとうございました!!


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Comments

音調津

他人の身体を使って戦うという内容は昔遊んでいたクソゲーの『マインドジャック』を彷彿とさせますね、面白かったです🌸

無名

マインドジャック…!! 前に聞いたやつかな…!(笑)

音調津

そうですそうです~あれも他人の身体使って戦いますし~死ぬときは死ぬので笑