<憑依>代理戦争②~破滅への道~(完) (Pixiv Fanbox)
Content
海王会と針金組ー
2つの裏組織による抗争は、激化していたー。
長年にわたる緊張状態は、いつしか
両方の組織を蝕み、破滅へと向かわせていたー。
そんな中、海王会と針金組が共同で開発したのが
”憑依薬”だったー。
憑依薬により、自分たちの身体を使うことなく
他人の身体を乗っ取り、抗争を行うー
”代理戦争”が、彼らの中では当たり前になっていたー。
昨日ー
憑依されたごく普通の家庭の母親とOLが、
命の奪い合いを演じたー。
そしてー
針金組の構成員が憑依していた母のほうが
命を落としたのだったー。
「……」
年配刑事の坂田は、
警察署前で騒いでいた子供から
話しを聞いていたー
”お母さんが、悪魔に乗り移られた”と
少年は言うー。
その子によれば、突然、晩御飯中に様子が
おかしくなって、
そのまま家を飛び出してしまったのだというー。
少年が後を追いかけたところ、
川辺でもう一人別の女と乱闘していてー
最後には、母親は、目の前で殺されてしまったとー。
「---この子を頼む」
泣きじゃくる子供を若手刑事の白井に任せると、
坂田は考え込むー
”豹変する女たちによる命の奪い合い”
最近、多発している事件だー。
「悪魔に乗り移られた…か」
年配刑事の坂田は、首を傾げたー
その数時間後ー
昨夜、川辺で乱闘していたOLを発見した警察官たちは
OLを緊急逮捕した。
カラオケボックスで卑猥な言葉を
大声で口にしていたOLは
逮捕後も卑猥な言葉を嬉しそうに
口にしていたー
”完全に正気ではないー”
海王会の幹部・龍五郎に憑依されたOLは、
龍五郎が抜け出す直前に、
その思考を卑猥な言葉で埋め尽くされてしまったー
「--どうして、人の命を奪ったりしたんだ?」
年配刑事・坂田が取り調べを行う。
「--せっくす!」
OLが叫ぶ。
完全に頭がおかしいー
坂田はそう思った。
だがー…
「---…」
坂田は、逮捕したOLの経歴から、
そのような人間ではないことを悟り、
脳の精密検査を受けさせたー
その結果ー
「--これは、見たこともない反応です」
OLの脳波が異常な数値を示しているのだという。
「--そうですね…
言うならば”外部から”脳をいじられた
そんな感じすらしますね」
脳神経外科の男は言った。
「脳を、、いじられた…」
坂田は考え込むー
「---角おなしてぇぇ!」
OLがもがきながら叫ぶ。
「--…」
坂田は”誰が何のために”と考えたー
「--!!」
いつも乱闘する人間は”2人”
その事件が起き始めるのと同時にー
あることが起こらなくなったー
それはー
この周辺地域に存在する暴力組織・
海王会と針金組の抗争だー。
女たちが命の奪い合いをするようになってから
それが起きなくなっている。
不自然なほどにー。
両組織とも、おとなしくなってくれたのか、と
考えていたが、もしかするとー。
「--白井…俺は海王会と針金組を調べる」
坂田が言う。
「--海王会と針金組?」
若手刑事の白井が首を傾げた。
「最近は、2つともおとなしくしているはずじゃ」
その言葉に、年配刑事の坂田は首を振った。
「-女性たちの異変に、やつらが関係しているかもしれない」
坂田はそう答えたー
・・・・・・・・・・・・・・・・・
海王会本部ー。
「憑依薬の取引の時間です」
構成員が言う。
海王会幹部の龍五郎は、立ち上がった。
憑依薬は、針金組のほうで生産しているー
海王会は、そのための原材料を調達することで、
双方の組が協力し、憑依薬が供給されているのだー
「---」
針金組の幹部・張野 義春が、
アタッシュケースを持って、海王会の事務所に入ってくる。
「--憑依薬だ」
義春がアタッシュケースを置く。
「--例のモノだ」
海王会幹部の龍五郎も別の
アタッシュケースを机に置く。
”原材料”と”憑依薬”の交換だー
海王会のみが知る独自ルートで
原材料を手に入れて、
それを生産技術を持つ針金組に提供、
針金組は憑依薬を完成させ、
その半分を海王会に提供するー
こうして、”代理戦争”は成り立っている。
海王会が裏切れば、憑依薬を完成される技術がないー。
針金組が裏切れば、憑依薬の原材料を確保できない-。
どっちかが欠けたら憑依薬は完成しないー
その状況により
均衡(バランス)が、保たれていたー。
「---!?」
龍五郎が表情を歪める。
アタッシュケースの中に入っていたのは、
憑依薬ではなくーーー”死”と書かれた紙ー
「---なんのつもりd
龍五郎がそう言いかけたときにはもう遅かった。
針金組の幹部・義春と構成員たちが
一斉に銃を放つー。
「ぐあっ!?」
龍五郎はふらふらと踊らされてー
そのまま床に倒れこんだ。
「--”代理戦争ごっこ”はもう終わりだ」
針金組の幹部・義春が笑うー
憑依薬を使った代理戦争で
針金組は敗北を続けて押されていたー。
追い詰められたものはー
均衡を破るー
針金組はついに、憑依薬の原材料のルートを奪うという
実力行使に出たのだー。
「---!?」
会長室にいた
海王会会長・山之内 湯羽左衛門(やまのうち ゆうざえもん)
が目を見開くー
開いた扉からなだれ込んでくる
針金組の構成員たちー
”代理戦争”のことしか考えなくなっていた
海王会の本部は手薄だったー。
あっという間に海王会会長は始末されて、
近場の海にドラム缶詰めにされて
放り投げられてしまったー。
針金組はー
最初から”これ”を狙っていたー
顔を針金だらけのマスクで隠した
針金組の組長は笑う。
憑依薬を開発しー
代理戦争で油断させー
海王組を壊滅させー
憑依薬で裏社会を統べるー
それが、針金組の目標だー。
・・・・・・・・・・・・・・
「----…」
年配刑事の坂田は針金組と海王会を
それぞれ見張っていたー
そして、海王会本部の異変に気付く。
裏口から針金組組員が入っていったため、
海王会本部内で起きた争いにまでは
気付かなかったが、生き残った構成員たちの
異様は動きから、
”何かが起きた”ことを悟るー
そしてー
「--!?!?」
どこか怪しい足取りで街中を歩く女性の列を坂田は見つける。
「なんだ…?」
坂田は、その女性たちを追跡するー
制服のままの女子高生やー
ランドセルを背負った少女ー
30代と思われる女性ー
十人近くの女性が、ニヤニヤしながら歩いているー
「へへへ…憑依って最高だよな~!」
ランドセルを背負った少女が叫ぶ。
「--!?」
尾行していた坂田は表情を歪める。
”憑依ー?”
イヤな予感がするー
坂田が尾行していくと、
女たちは、針金組本部の中に入っていくー
一般女性が、裏社会の組織の本部に
入っていくなどおかしいー
「--…」
坂田は、針金組本部に踏み込むことを決意するー
「-警察だ!」
坂田は警察手帳を示しながら
針金組本部に突入するー
すると、そこではー
女たちが喘ぎながら自分の身体を
もてあそんでいる光景が広がっていたー
「な、、何をしているんだ!?」
坂田が驚くー
しかもー
針金組の構成員たちが
本部内で倒れているー
「これはいったい…?」
坂田が驚くー
女たちが針金組構成員の命を奪い
針金組本部を乗っ取ったとでもいうのか?
「--ようこそ」
背後から声がして、坂田が振り返る。
するとそこには、針金だからけのマスクをかぶって
顔を隠した”針金組組長”の姿があった。
「---どうです?」
組長は機械音声のような声で笑う。
「-ーー憑依の力は?」
ー憑依
年配刑事の坂田は叫ぶ。
「憑依とはなんだ!」
とー。
言葉の意味は坂田も知っている。
だがー
”何が起きているのか”は分からなかったー
「--そこにいるエロい女たちはー
ここに倒れている男たちに乗っ取られてるんですよ」
組長は笑う。
本部内で構成員の男たちが倒れているのはー
今、エッチなことをしている女たちに憑依しているからだー
「--な、、なんだと!?」
坂田がキスをしている女子高生と若い女性のほうを見るー
一人は、自分の下着を頭に被って笑っているー
「--憑依薬を使えば
他人の身体を意のままに操ることができるんですよ」
組長がくくく、と笑う。
「ふ、ふざけるな!そんなこと許されるわけがない!」
坂田は叫ぶー
他人に憑依してその身体をもてあそぶー。
最近、起きていた女性同士の命の奪い合いは、
この憑依薬によるものだと坂田は確信した。
「-ーー最近起きている
女性同士の殺し合いは、お前たちの仕業か?」
その言葉に、針金組組長は笑ったー。
組員に憑依されているパーティドレスの女を
抱き寄せると、針金組組長は続ける。
「えぇ、まぁ。
でも、もうそれも終わりましたよ。
海王会は、先ほど、始末しました」
針金組組長が笑うー
「これからは、我々が憑依薬で
この町の女どもをしゃぶりつくして
支配してやりますよ」
その言葉に、坂田が銃を構えるー
針金組組長のマスクに銃を向ける坂田ー。
「そんなことはさせないー」
しかしー
「くくく…邪魔者が消えれば
憑依薬を知るのは我々だけー。
海王会から原材料のデータも手に入れましたし
あとはあなたを消せばー
この町は、我々のモノー」
パァン!
坂田が銃を発砲したー。
針金組組長のマスクが吹き飛ぶー
「---!!」
その下から出てきたのはー
後輩刑事の白井だったー
「白井…おまえ!」
坂田が驚くー
「ははっ、ばれちゃいましたか。
私が針金組組長です。
くくくくく…」
白井は笑うと、
”先輩、今までお世話になりました”と
真顔で呟いて、
容赦なく坂田に発砲したー
倒れた坂田を見つめて
針金組組長の白井は笑みを浮かべた。
「警察ごっこ、楽しかったですよぉ」
とー。
・・・・・・・・・・・・・
その日からー
その町では、奇行に走る女性の数が
爆増したー。
針金組を疑うものも当然いたが、
そういう人間は”憑依されて、自殺させられたー”
やがてー
その町は、針金組の手中に
完全に収められてしまったのだったー
おわり
・・・・・・・・・・・・・・
コメント
悪用を考える組織が
憑依薬を手に入れてしまったら大変ですネ…!
お読み下さりありがとうございました!!