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「---はぁ…はぁ…はぁ…」

夜の河原ー。


罵声が響き渡っている

田舎で、人通りの少ない河原。


2人の人間が、殴る、蹴るを繰り返し、

激しく争っている。


「くそが!」

一人がナイフを取り出し、もう一人に襲い掛かる。


もう一人が必死にナイフを掴み、

自分の身を守るー

そして、バック転をすると、

スタンガンのようなものを手につかみ、

もう一人の人物を襲い始めたー


髪を振り乱し、

激しくにらみ合う二人ー


スタンガンを持ったほうが、

もう一人に電流を浴びせるー


電流を浴びたほうの人物が悲鳴をあげるー。


だがー

電流を浴びながらも必死にその人物は

持っていたナイフをー

相手の首筋に突き立てた。


スタンガンを持った方の人物が

驚いた表情を浮かべて、そのままその場に倒れたー。


スタンガンがむなしく音を立てて転がり落ちる。


「--ふん、今回も海王会(かいおうかい)の

 勝利だな」


唾を吐き捨てるとー

”少女”はにやりとほほ笑んだー


・・・・・・・・・・・・・・・・・


翌日ー


警察が駆けつけるー

そこには、ツインテールの少女の遺体があったー。


スタンガンを持っていた方の人物はー

可愛らしい少女だったー


「廣澤 楓(ひろさわ かえで)さんです。

 身元確認が取れました」

刑事の一人が言う。


「--昨日、捜索願が出ていたコだな」

年配の刑事が言うー。


楓は、高校3年生で、

真面目で優しく、家族との関係も良好で

学校でも普通に友達と話していた。

素行不良の様子はなかったー


「--それとー」

若い刑事は、情報提供された写真を

年配刑事に見せる。


「昨日の同じぐらいの時刻に、

血まみれで逃亡する女の姿が目撃されています」


写真を見た年配の刑事は呟く。


「また決闘かー」


とー。


写真には、女子大生ぐらいの年齢の

女性が写し出されていたー。

昨夜、楓と乱闘していた女だ。


「--……」

年配の刑事は変わり果てた姿の楓を見る。


最近は、同様の事件が何件も起きているー

しかもー

加害者も被害者も

”こんなことするはずがない”人間たちばかりー


現代人は、表に出さないストレスを

日ごろから抱えている、ということだろうか。


それとも…。


「---逃亡した女の身元が判明しました」

別の刑事がやってくるー


近くの大学に通う

一人暮らしの女子大生、

甲斐田 奈緒(かいた なお)。


「ーーよし、すぐに指名手配しろ」

年配の刑事がそう指示をするー


だがー

奈緒は、すぐに見つかったー

近くの路地裏で、

一人、路上角オナをしていた奈緒は

そのまま取り押さえられて、警察に連行されたー


・・・・・・・・・・・・・・・・・


裏社会の抗争は、激化していたー


とある地方で、昔から抗争を続けている2つの組織ー。


海王会(かいおうかい)と、

針金組(はりがねぐみ)ー。

既に、2つの組織は多数の犠牲者や負傷者を出していたー。


が、海王会と針金組の戦いの決着はつかずー

年々、構成員が減っていくという問題に直面していた。


裏組織への取り締まりは、時代の流れと共に

次第に厳しいものとなり、

海王会も針金組も、どちらも厳しい経済状況になっていたー。

そんな世界に飛び込む人間は

年々減少していたー。


残るわずかな人員を抗争で失うわけにはいかないー

とは言え、海王会も針金組も争いを

やめるつもりはなかった。

お互いが、手を握るなんてありえない。


昭和、平成、令和と続いてきた抗争はー、

自分たちの勝利で終わらせるー。


そしてー

”抗争”は進化したー。

海王会も針金組も抗争に”肉体”を

使わなくなったのだー。

裏社会の人間が減れば、

最終的には海王会も針金組も、

自らの首を絞めることになり、壊滅するー


そんな両組織が共同で開発したのがー

”憑依薬”だったー。


そうー

彼らは”代理戦争”によって

抗争を起こすようになっていたー。


海王組も針金組も人員不足に

頭を悩ませていたー

しかし、抗争は避けられない。


そこで、共同開発により

憑依薬を開発し、

”他人の身体を乗っ取って”

自分たちの代理として戦わせることにした。


昨夜乱闘した楓と奈緒のふたりは、

それぞれ他人に憑依されていたのだ。


奈緒に憑依していたのは

海王会の幹部・海山 龍五郎(うみやま りゅうごろう)


楓に憑依していたのは

針金組の幹部・張野 義春(はりの よしはる)-。


龍五郎と義春が直初対決すれば、

昨日の結果と同じになった場合、義春は命を落としていたー

だが、憑依薬で他人の身体を乗っ取り、

争いをすることでー

龍五郎も、義春も自分の身体を傷つけることなくー

抗争を終えることができたー。


他人の身体など、彼らにとっては

どうでもよいことなのだー。


「--今回は、我々の勝ちのようだね」

海王会の会長が、針金組の組長と

ネットを通じて話をしている。


針金組組長は、

針金だらけのマスクを身に着けていて

その姿をさらすことはないー。


異様な風貌の組長が

悔しそうに舌打ちをする。


「--わかった…

 あの地区からは手を引こう」

機械音声のような声を出す

針金組組長。


”代理戦争”の結果は絶対だ。

海王会も針金組も自分たちが

乗っ取った身体のほうがまけた場合はー

おとなしく手を引くー。


そういうルールだ。


「ククク…最後に笑うのは、我々だ」

海王会会長は、笑みを浮かべると

通信を終了したー


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


「--どうして、決闘なんかしたんだ!」


取調室ー

若い警察官が、

逮捕された女子大生の奈緒の

取り調べを行っていた。


「---どうしてって~~~?

 わかんな~~い!」

奈緒は足をバタバタさせながら笑うー


「こいつ…!」

頭に血が上る若い警官に代わり、

年配の刑事が口にするー


「---……

 きみ、自分の名前は分かるか?」


年配の刑事が、ふとそう口にした。


奈緒は、一瞬表情を歪めたあとに、

足をばたばたさせながら

「きゃはははははは!」と笑い始めたー


調べによれば、

奈緒という子は大学でも、口数が少なく

おとなしい子だったのだという


まるで”人が変わったかのような”

そんな奈緒の様子に、年配刑事は

首を傾げたー


今までも、何人か、こういう事件の

容疑者を逮捕したことがあるが、

いずれも、要領を得ないのだー。

まるで”何かにそうされているかのようにー”


「----」

若い刑事が奈緒のほうをじっと見つめているー


手詰まり、というところだろうかー


取調室から出た年配の刑事・坂田(さかた)は、

若手の刑事・白井(しらい)に対して

「精神鑑定の準備を」と促したー


「なにかーー

 なにかがおかしいーー」


まるで、

人間として理性を破壊されてしまっているかのようなー、

年配刑事・坂田は、奈緒の様子に違和感を

隠すことができなかったー


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


「---憑依薬…実に素晴らしい」

海王会の幹部・龍五郎が言うー。


昨日、龍五郎が憑依していた奈緒という女は

憑依から抜け出す前に、

思考を改変したー。


憑依後に騒がれたりすると面倒くさいー。

正気を取り戻した後に

”その間の記憶がない”などと騒がれると

警察が憑依薬にたどり着く可能性がある。


だから、そうなってしまわないように

海王会も針金組も憑依を終えた人間から

抜け出す前に、思考を改変するのだー

憑依薬には、乗っ取った相手の思考を改変する力もある。


その力でー

奈緒の思考を狂わせたー

何事に対して無気力で不真面目で笑ってばかりいるー。

過去の記憶も無茶苦茶ー

そんな女に変えておいたー


一般人が犠牲になろうと、関係ないー

海王会も、針金組も

一般人を巻き込むことに何も感じない、

恐ろしい存在だったー。


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


2つの勢力の争いは、

”海王会”が有利に進めていた。


”針金組”は、押され気味ー。


「---おらぁ!」

この日も”憑依された身体”同士の戦いが

行われているー


この日も、女性ふたりー。


夫と子供一人で暮らす人妻が

ゲラゲラ笑いながらもう一人の女の首を絞めているー


もう一人の、仕事帰りのOLのような恰好をした女がもがくー


別に憑依対象は男性でも良いのだが、

憑依する人間の趣味なのか、

たいていの場合、決闘は女性同士で行われることが多いー


ワイヤーで首を絞めていた人妻が、

体制を崩すー。

OLが反撃に出て、人妻の持っていたワイヤーを奪い、

人妻の首を絞めていくー


もがく人妻ー

「あ…あぁあああ…がっ!」

表情を鬼のように歪めているー

人妻にはー針金組の構成員が憑依しているー


そして、OLには海王会の構成員ー。


「---お母さん!」


その時だったー


河原に、針金組に憑依されている母親の息子が

やってきたのだ。


もがく母親ー


「--お、、お母さん!や、、やめてよ!」

子供が、OLのほうを見て叫ぶー


だがーOLも人妻も、子供を相手にしないー


やがてー

子供の目の前で、憑依された母親は

びくびく震えながら、体液を吐き出しながら

その場に崩れ落ちたー


OLが笑いながら立ち去っていくー


「お、、お母さん!お母さん!」

まだ5年生の息子が、泣き叫んだー


・・・・・・・・・・・・・・・・・・


針金組本部ー


針金マスクで顔を隠した組長が笑うー


「また、負けたかー」

と。


幹部の義春が頭を下げる。


「まぁ、良い。

 そろそろやつらに思い知らせるときだ」


組長は不敵に笑みを浮かべたー


”憑依薬”の開発は”表向き、共同”で

行ったー


だが、実際には針金組が、憑依薬の基礎を

作り上げたと言ってもいいー


と、なればー


「くくくくく」

針金組組長は、マスクの下で

不気味に笑い始めたー


・・・・・


・・・・・・・・・


年配刑事・坂田が警察署から出るー


警察署の前で警官と子供が

何やら騒いでいる。


「お母さんが、お母さんが、悪魔に乗り移られたんだ!」

子供が叫んでいる。


「--どうしたんですか?」

一緒に歩いていた若手刑事の白井が呟く。


「ちょっと、待っててくれ」

坂田はそう言うと、

その子供のほうに歩いて行った。


「悪魔とは…、どういうことかな?」

年配刑事の坂田がそう言うと、

昨日憑依されて命を落とした母親の息子は

坂田のほうを見て叫んだ。


「悪魔がお母さんに乗り移って…」


そこまで言うと、

その子は泣き崩れてしまった。


「あくまー…?」

年配刑事の坂田は嫌な予感を感じながら

子供の話を詳しく聞くことを決意するのだったー



②へ続く

・・・・・・・・・・・・・・・・


コメント


他人の身体なら、どうなってもいいや…な考えの

二大組織…

ぶるぶるですネ…!


続きは近日中に~!



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