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人生のどん底にいた男・克之は、

謎のNPO法人”導きの矢印”によって、

新しい人生を提供されたー。


”人を皮にする力”ー

その力によって、克之は他人の身体を乗っ取り、

自分のものにしたのだー。


しかし、せっかく手に入れた新たな人生も、

克之のトラウマによって失敗ー、

それを見かねた”導きの矢印”の副代表・小野寺は、

克之に対して”お金持ちのお嬢様”・真桜を皮にして

それを提供するー。


そしてー…


★前回はこちら↓★

<皮>やっぱり壊れた心は戻らない①~傷~

「ーーふざけんな!どいつもこいつも、わたしのこと馬鹿にしやがって!」 突然、声を上げて怒りだす女ー。 「ーーえ…ちょ、ちょっと…美咲(みさき)ーどうしたの?」 困惑した様子で、近くにいた友達が声をかけるー。 「うるさい!お前ら、どうせわたしのこと…  わたしのことを笑ってたんだ!!  こっち見て、ニヤニヤ...

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


「ーーーすげぇ…これが俺の部屋ーーー」

お嬢様・真桜の皮を着て、真桜になった克之は

目を輝かせながら自分の部屋を見つめるー


今まで、自分が住んでいた家とはまるで別世界ー。

こんな部屋に住んでいる人間は、ファンタジー世界の住人だけだと

思っていたー。


部屋を見渡しながら、部屋の隅に置かれている鏡を見つめる真桜ー。


「ーー俺がお金持ちのお嬢様ーふふふ…」

その響きだけでも、何だかゾクゾクするー。


自分自身が”お金持ちのお嬢様”

そう思うだけで、言葉にはできない、とても強烈な興奮を覚えるー


「あ~~~!まるでホテルにいるみたいだ」

ゴージャスなイスに座って、子供のように足をぶらぶらさせて喜ぶー。


「ーーーーー」

ふと、そんな足を見つめながら、色っぽく足を組んでみるー。


”主観視点”で、組まれた足を見てドキドキする真桜ー。


やがて、嬉しそうにイスを姿見の前に持って行くと、

その前で足を組んだり、組み直したりー、

”悪女のように見える足の組み方”を探して見たりして、

一人でゾクゾクするー


そんなことを繰り返していると、やがて部屋の扉がノックされたー。


「ーーーはい」

真桜としてそう答えると、執事の男が「失礼します お嬢様ー」と、

そう言いながら部屋の中へと入ってきたー。


「ーーえ、え~っと」

少しドキドキしながら真桜が戸惑っていると

「ーーお嬢様ー。お食事の支度ができておりますー」と、

執事はそう言葉を口にするー


「あ、はいっ!ありがとうございます!」

そんな真桜の反応に、少し驚いた様子の執事ー。


恐らく、”本来の真桜”は、こんなことでお礼を言ったりは

しないのだろうー。


そう思いながら、執事に案内されて

”まるでレストランのような”テーブルのある部屋にやってくると

真桜は思わず、「すっげぇ…」と、小声で呟くー。


こんなに豪華な食事を毎日食べることができるなんてー。


そう思いながら、真桜は嬉しそうに食事に飛びつくー


「ーーーーーー」

が、食事中、食事の準備をしていると思われるメイドたちが、

ヒソヒソと話をしているのが目に入ったー。


「ーーー!」

真桜は、表情を曇らせるー。


「ーーふふふふふふー」

「やっぱ、あの人おかしいよねー」

メイドのそんな会話が聞こえるー。


途端に、真桜の身体が震えだすー。


克之の”トラウマ”ー。

学校でも、職場でも壮絶ないじめを受けてきた克之ー。

そんな克之は、”どうしても”、こうしてヒソヒソ誰かが

話しているのを見ると

”自分の悪口を言われている”と、思ってしまう状況に陥っていたー。


「ーーーでも、あの人にはあの人なりの理由があるのかもよ?」

「ーーーう~ん…それもそうかもねー」

メイドたちの会話は続くー。


メイドたちはー、”お嬢様”のことは一言も言っていないー。

今、話をしているのはこの屋敷に出入りしている業者の男の話で、

その男が、この屋敷のメイドの一人にしつこくプレゼントを手渡してきたり

している件を話しているだけー。


だがーーー

真桜は冷や汗を流しながら、

さっきまで美味しいと感じていた豪華な食事を食べる手も止めてしまうー

過去のトラウマが呼び起されて、急激に食欲すら失ってしまった真桜ー。


「ーーどうか、されましたか?」

執事が真桜の異変に気付き、心配そうにそう言葉を口にすると

真桜は「あ、あいつらー」と、そう言葉を口にしながら、

離れた場所にいる二人のメイドを指差したー。


”ーーふふふふふふー”

”やっぱ、あんた、おかしいでしょ?”


メイドの二人が、そんな風に言っているようなー

そんな気がしてしまうー。

もちろん、それは幻聴だー。


だが、どうしても、そんな言葉が耳に聞こえてきているような

気がしてしまうー。


「ーーあいつらをつまみ出して!

 あいつら、わたしのことを笑ったの!」

真桜としてそう叫ぶと、執事は少し驚いたような様子を浮かべるー。


その言葉を聞いていたのか、メイドたちも慌てて

「わ、わたしたちはお嬢様のことを笑ってなんてー」と、

釈明の言葉を口にするも、

真桜は怒りの形相で「ーーいいから出て行って!」と、そう叫んだー。


執事が二人のメイドに退出を促すー。


メイド二人が出て行ったあと、深呼吸をして何とか心を

落ち着かせた真桜は、そのまま食事を再開しようとするも、

どうしても食欲が戻らず、それでも無理に食べようとした結果、

ついにその場で吐いてしまったー。


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


”どうですー?調子は?”

NPO法人・”導きの矢印”副代表の小野寺から、

状況を確認する電話がかかってきたー。


「う~ん…まぁ、まぁまぁですねー

 この生活は最高なんですけどー

 メイドたちが俺を笑ってるような気がしてしまってー」


真桜がそう説明すると、

小野寺副代表は笑いながら

”あまり、無理はしすぎないでくださいー

 少しずつ、ゆっくり今の生活に慣れていくといいですよ”と、

そうアドバイスをくれたー。


「ーーあはは…そうですねー。

 何とか頑張って見ます」


真桜は、そう言葉を口にすると

少しだけ笑顔を浮かべながら”明日からまた頑張ろう”と、

気持ちを入れ替えるのだったー。


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


しかしー…

それからも真桜になった克之は、

精神的に不安定な時期が続いたー。


「ーーわたしを…わたしを馬鹿にしてる!

 この家庭教師をクビにして!」


教えてもらっている最中に

”鼻で笑われた”と感じた真桜は、執事に向かってそう叫ぶー。


「ーーーよくもわたしのこと笑ったわねー

 クビにしてあげる!」

真桜は、廊下でコソコソ話をしていたメイド二人に

そう言葉を口にするー。


メイドたちはただ、屋敷内の掃除の打ち合わせを小声で

しているだけだったが、真桜を乗っ取っている克之には

”歩いてきた自分が笑われている”ように思えたー。


「ーーお、お嬢様…?わ、わたしたち、お嬢様のことを

 笑ってなんかー」


メイドたちが戸惑いながら、そう言葉を口にするー


「ーーうるさい!出てって!」

真桜は、聞く耳を持たなかったー。


急に、明るくなったと思ったら

急に悩んだり、急に怒りだしたりー。


屋敷に仕えるメイドたちの間にも、

”お嬢様は精神的に参っている”と、そんな情報が

流れ始めたー。


やがて、真桜は部屋に引き籠るようになり、

部屋の中で夢中になって”お嬢様”の身体を弄んだー。


女の身体は、最高に気持ち良かったー

男のそれとは違う、言葉には言い表しがたい喜びだー。

それを、何度も何度も味わうように堪能しながらー、

運ばれてきた豪華な食事を食べて、寝るー。


そんな生活を繰り返すー。


メイドたちとも、執事ともほとんど顔を合わせずに

とにかく、自分の部屋に籠る日々ー。


だがーーーー


「ーーーくそっ!何なんだよ!くそっ!」

そんな生活を続けていた真桜は、

あっという間に髪が傷み、肌が荒れ、

体重も激増していたー。


精神的に参っているせいだろうかー。

お菓子の暴飲暴食を繰り返していた真桜は、

一気に体重が激増ー、

すっかりとぽっちゃりしたお嬢様に変わり果てていたー。


「ーーーそんな目でわたしを見るな!」

真桜は、”目が合っただけで”、そう激怒するようになったー。


真桜が”あいつをクビにして!”と叫ばなくても、

次々とメイドや使用人たちが辞めていきー、

ついに、屋敷には真桜と、メイド一人、そして執事だけになってしまったー。


「ーーーー……」

ガクガクと震えながら鏡を見つめる真桜ー。


体重はさらに増え、

肌もボロボロー、

ストレスからか、表情も歪み、

脱毛まで起きているー。


「ーーくそっ…なんだ、なんだこれは…!くそっ!」

たまらず、後頭部のあたりを触りながら、

”皮”を脱ごうとするー。


だがーー

”皮”を脱ぐことはできないー。


「くそっ!こんなの俺の望んだ人生じゃない!

 くそくそくそくそくそぉぉぉぉぉ!」


鬼のような形相で怒りの声を上げるー。


「ーーお…お嬢様ー!?」

唯一残っていたメイドが、真桜の部屋から

奇声が聞こえたことに驚くー。


「ー俺を笑いに来たのか!?」

もはやー、”真桜”として振る舞う精神的余裕もなくなって、

メイドの胸倉をつかむと、

「俺を笑いに来たんだろ!?なぁ!?」と、

怒鳴り声を上げるー。


”真桜のことが心配で”、ずっと屋敷に残っていた

最後の一人のメイドは、泣きながらそんな真桜の方を見つめるー。


だがー、真桜はそれでも”容赦ない口撃”を続けてー、

ついにメイドはその場から逃げ出し、

そのまま戻って来ることはなかったー。


・・・・・・・・・・・・・・・・・


「ーーーー…お嬢様ー。」

執事が部屋に入って来るー。


「ーお前も、出ていくんだろ?

 ーーだったら出て行けよ!」

真桜がそう叫ぶと、「いえ、お客様ですー」と、

執事はそう言葉を口にしたー。


「ーーー!」

真桜が、ボロボロの顔で振り返ると、

そこにはNPO法人・”導きの矢印”の副代表・小野寺が立っていたー。


「ーーーーーど、どうしてここにー!?」

真桜が言うと、小野寺副代表は少しだけ笑ったー。


「ー”君の状況”は、この執事から聞いていましたー。

 ”もう限界のようだと”報告を受けて、

 今日、ここにやってきました。」


小野寺副代表は言うー。


彼が言うには、

”導きの矢印”によって、”皮”にした人間を与えられ、

新たな人生をスタートさせた人間が、ちゃんと生活できているかどうか、

身の周りに”協力者”を配置しているらしいー。

”乗っ取られる人間”の周囲の人間に報酬などと引き換えに

協力を依頼する形を取っているようだー。


今回の場合は、真桜の執事である男に報酬と引き換えに

経過観察をお願いしていた、と小野寺副代表は説明したー。

つまり、執事は最初から”お嬢様”が”お嬢様ではなくなっていること”を

知っていたのだろうー。


「ーーーやっぱ、俺はもうだめだ…

 学校だけじゃなくて、こういう場所でも、

 メイドたちが俺のことを笑ってるように思ってしまうんだー…

 

 違うと分かってても、どうしてもー…」


ギリッと歯軋りをする真桜ー。

その結果が、これだー。


「ーー誰も、君のことを笑ってなどいませんでしたよー


 …ーと、言っても

 頭では理解していても、過去のトラウマから

 そう感じてしまうのかもしれませんがー」


小野寺副代表はそう言うと、執事に対して、

「ー彼は一度”回収”しますー。

 彼女の身体の”利用者”は、また別で選定しますので、

 しばらくは管理をお願いします」と、そんな言葉を口にすると、

「ーまた、君のために”新たな皮”を用意しますー」と、

そう言葉を口にするー。


「ーその身体はボロボロですが、

 ”脱げば”、またやり直せるー。

 今度こそ、君が満足できる身体を用意しますー。

 もう一度、挑戦してみませんか?」


小野寺副代表の言葉に、

真桜は表情を歪めるー。


「ーーなんで…なんであんたは俺のために、そこまでー?

 あんたも俺みたいなやつのことを笑ってるんじゃないのかー?」


と、そう言葉を口にする真桜ー。


「ーとんでもないー。

 我々はただ、レールから外れた人たちをこうして”救済”しているだけですー。

 君のことも、心の底から救済したいー」


小野寺副代表はそう言い放つと、

「ーどうですか?もう一度、挑戦してみませんか?

 今度こそ、君が穏やかに過ごせる”身体”を選定します」

と、そう言葉を口にしたー。


”このNPO法人は何なのかー”

”こんなことをして何のメリットがあるのかー”

”そもそも、前回の女子高生といい、このお嬢様といい

 乗っ取られる側にはどんな事情があるのだろうかー”


色々な考えが頭の中を巡るー。


だがー、真桜を着ている克之は

「ーーもう一度、もう一度お願いしますー」と、

辛い気持ちを吐き出すかのようにそう言葉を口にすると、

小野寺副代表は「分かりましたー。まずはその”お嬢様”を脱ぎましょう」と、

そう言葉を口にしたー。


・・・・・・・・・・・・・・・・・・


「ーー高部 加恋(たかべ かれん)さんー」


”導きの矢印”本部に戻ると、小野寺副代表は

そう言いながら、スクリーンに写真を表示したー。


とても可愛い感じの女性だー。


「ー彼女は、大学卒業後、”一人暮らし”で、遊び続けていますー。

 と、言うのも、彼女は就活をしていた頃に、たまたま買った

 宝くじが当選して、数億円の資産を持っていますー」


小野寺副代表の言葉に、

克之は「は…はぁ…?そんな運のいい子がいるものなのかー?」と、

言葉を口にするー。


「えぇ。世の中には驚くべき幸運を持つ人もいれば

 君のように、同情してしまうほど悲運の人もいますからね」

小野寺副代表はそう言葉を口にすると、

「ですが、彼女は自殺未遂を起こしましてねー。

 結果、我々が”皮”にして、君たちのような

 どん底にいる人に”提供”する素材となりましたー」

と、そう説明したー。


どうやら、宝くじ当選後に、疑心暗鬼になって

精神的におかしくなってしまい、自殺未遂を引き起こし、

昏睡状態に陥って、目を覚まさなくなってしまったようだったー。


「ーー彼女の身体であれば、働く必要もなく

 遊んで暮らせるでしょうー。

 当然、人付き合いをする必要もありませんー。

 

 君は、自分の好きなように生きることができるー。」


その言葉に、克之は静かに頷くー。


”この子の身体ならー”

そう思いながら、克之は”3つめの皮”の提供を受けー、

また、新たな人生を歩みだすのだったー。


今度こそ、理想の人生を手に入れられると信じてー。



③へ続く


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


コメント


今度こそ、平穏な人生を手に入れることは

できるのでしょうか~?☆


続きはまた次回デス~!☆


今日もお読み下さりありがとうございました~!

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