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「ーーふざけんな!どいつもこいつも、わたしのこと馬鹿にしやがって!」

突然、声を上げて怒りだす女ー。


「ーーえ…ちょ、ちょっと…美咲(みさき)ーどうしたの?」

困惑した様子で、近くにいた友達が声をかけるー。


「うるさい!お前ら、どうせわたしのこと…

 わたしのことを笑ってたんだ!!

 こっち見て、ニヤニヤして…!!!」


大声で叫ぶ”美咲”と呼ばれた少女ー。


しかし、周囲は心当たりのない美咲の”ブチギレ”に困惑するー。


確かに、美咲から少し離れた場所で笑いながら話はしていたー。

しかし、美咲のことを笑っていたわけではないし、

美咲の悪口も何も言っていないー。


ただ単に、美咲が”被害妄想”で、突然ブチギレたのだー。


「ーーーなんで…なんで”俺”ばっかりこんな目に…!

 みんなみんな、俺を馬鹿にして!!ふざけんな!!」


美咲が突然、自分のことを”俺”と言いながら叫ぶー。


そしてー、

教室を飛び出すと、美咲はそのまま校舎を飛び出して、

雨にずぶ濡れになりながら、行く当てもなく走り続けたー


「ーーうぅぅぅぅぅぅぅ…」

公園にたどり着くと、びしょ濡れの状態で蹲って泣きじゃくる美咲ー。


そこにー

傘を差したスーツ姿の男がやってくるー。


「ーーー君の”心の傷”を我々は甘く見ていたようですー」

スーツ姿の男が、そう言葉を口にするとー、

「美少女の身体を手に入れれば、新しい人生を送れるとー、

 そう思ったのですがー」と、静かに言葉を口にしたー。


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


数日前ー。


「ーー君は、今日から新しい人生を手に入れることができるー。」

スーツ姿の男が、穏やかな笑みで言葉を口にするー。


「ー”人を皮にする力”ー ほ、本当に、こんなものがー?」

スーツ姿の男の前に立っている、

疲れ果てた様子の男ー尾島 克之(おじま かつゆき)は、

そう言葉を口にするー。


「ーーそうー。”この力”を使えば、君は新しい人生を手に入れることができるー。」

そう言いながら、スーツ姿の男は一人の美少女の写真を

克之に渡すー


「お…俺が…この子にー?」

克之は戸惑いながら、スーツ姿の男を見つめるー。


「そうー君はその人間を着て、その人間の身体を乗っ取りー、

 新しい人生を送ることができるんだよ」

スーツ姿の男は、そう言いながら笑みを浮かべるー。


「ー我々は、君のような人生のどん底にいる人間を助けたいんだー。

 この世は、一度”レール”を外れた人間には厳しいー。

 だが、我々はそんな”レールを外れた人間”を導く、矢印のような

 存在になりたいのですー」


謎のNPO法人・”導きの矢印”ー。

人生のどん底にいた彼は、その”導きの矢印”から

声を掛けられて、今日、この施設にやってきたー。


NPO法人・”導きの矢印”は、

人生のどん底にいる人々に、救いの手を差し伸べ

もう一度、普通の人生を送るためにサポートするー。


人生のどん底にいる人間たちが社会復帰するための

”道しるべ”にー、この先の未来が真っ暗な人々の”矢印”のような

存在になるために設立された団体だー。


そんな彼らに声を掛けられた克之は、

”人を皮にして乗っ取る”ことで、新しい人生を送る、という提案を

受けていたー


「お、俺が、こんな可愛い子に、なれるんですかー?」

克之が震えながらそう言うと、

スーツ姿の男ー…”導きの矢印”副代表・小野寺(おのでら)は、

静かに頷くー。


小笠原から手渡された写真には

近くの高校に通う、永坂 美咲(ながさか みさき)の姿が

映し出されているー。


その可愛い雰囲気に、克之はゴクリと唾を飲み込むー。


彼の人生は散々だったー。

彼は、”心”が壊れ、人生のどん底にいたー。


容姿に恵まれなかった彼は、

小さい頃から”容姿を理由にしたいじめ”を受け続けていたー。


しかしー、

負けず嫌いでもあった克之は、

いじめを受けながらも、必死に必死に勉強を続けー、

”勉学”では、誰にも負けないほどに成長したー。


有名な大学に進学しー、

一流企業に就職したー。


”俺を馬鹿にした奴らを、実績で見返してやる”

そんな風にも思っていたー。


「ーーーー…」

大学を卒業したころの自分の写真を見つめる克之ー。


その隣には、彼女の深見 由夢(ふかみ ゆめ)の姿も映っているー。

容姿に恵まれない彼だったが、圧倒的な成績と、

周囲に対する優しい性格は”それ”を超越しー、

大学に進学したころには、それなりに友達もでき、

ついには人生で初めての彼女もできたのだー。


だがー、彼の人生はそこから転落が始まったー。


一流企業に就職し、これから頑張って行こう、とそう思っていた矢先ー

その部署の上司に目をつけられてしまい、

壮絶な”職場いじめ”が始まったのだー。


理由は、分からないー。

”容姿”かー、あるいは”仕事ができる新人”に、上司が嫉妬したのかー。


来る日も、来る日も職場でいじめを受け続けー、

やがて克之は耐え切れずに休職したー。


がーーー…

その頃からだっただろうかー。

同居していた彼女の由夢が、怪しい行動をとるようになったー。


由夢は、休職した克之に見切りをつけて、

大学時代先輩だった男と、浮気をし始めていたのだー。

相手は、”イケメン”の先輩ー。


やがてー、そのことに気付き、追求した克之ー。

がー、由夢は悪びれる様子もなく、克之に対して”逆ギレ”したー


”あんた、自分の顔を鏡で見たらどう?”

由夢は、そんなことまで言って来たー。


結局、由夢は出ていき、会社もクビになったー。

壮絶ないじめと浮気が原因で、精神的におかしくなり、

心療内科にも通いながら、再就職を目指した克之ー。


なんとか、再就職先を見つけて再就職に成功したもののー、

そこは”壮絶なブラック企業”だったー。

それでも、無理に頑張り続けた克之は仕事中に倒れてしまい、

緊急搬送ー、

会社からは散々に罵倒されて、そのままクビにされてしまったー。


そして、今に至るー。


NPO法人・”導きの矢印”が、克之に対して

”人生の再出発”への道しるべを示して来たのだー。


「ーーで、でも、俺がこの子を乗っ取ったらー、

 この子は、どうなるんです?」


克之がそんな不安を口にするー。


すると、スーツ姿の男ー

NPO法人副代表の小野寺は少しだけ笑いながら言葉を口にしたー。


「ーこの子の肉体と精神は、君に支配されー、

 この子の自我は精神の奥底に封印される状態になりますー。


 がーーー…”皮”にする相手は、

 我々がある基準を元に選定していますー。

 本人に罪はない場合もありますがー、

 ”それなりの罪”が、乗っ取られる側にある、と、

 そうお考えくださいー。」


小野寺副代表の言葉に、克之は表情を歪めるー。


「ーー君は、生まれてから容姿に恵まれず、厳しい人生を送ってきた

 ようですねー?


 ですがー、この永坂 美咲を乗っ取ればー、

 もう、容姿に悩む必要などないー。


 それにー、また、新たな人生を送ることができるー。


 どうですー?

 ”新たな一歩”を踏み出す勇気はありますか?」


副代表の小野寺の言葉に、

克之は表情を歪めるー。


分かっているー

”露骨に怪しい”と、いうことはー。


だが、既に人生のどん底にいる克之には、

他の選択肢はなかったのかもしれないー。


「ーーー…お願いしますー。俺にー、俺に新たな人生を下さいー」

克之が、そう決意して言葉を口にすると、

副代表の小野寺は静かに笑みを浮かべたー。


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


がーーー

その結果が、これだったー。


ずぶ濡れの美咲が、悔しそうに言葉を口にするー


「ーー俺ー……変われなかったー」

美咲が歯ぎしりをしながらそう言うと、

小野寺副代表は傘を差したまま、表情を曇らせるー。


「ークラスのやつらが、ヒソヒソ話してるだけで、

 ”俺が悪口”言われてるように思ってしまうんだー。


 分かってるー。

 あの子たちは、別に俺のこと話しちゃいないってー


 でもー」


美咲は、濡れながら、

ぼたぼたと垂れる雨水を見つめつつ、そう言葉を口にするー。


”美咲”を乗っ取り、美少女になった克之ー。


もう、昔のように”いじめられる”こともないだろうしー、

陰口を叩かれることもないだろうー。


だがー、

”過去のトラウマー”

心に受けた傷は、そう簡単には消えなかったー。


クラスの女子たちが、ヒソヒソ話しているのを見て、

”自分が馬鹿にされている”と、どうしてもそう思ってしまいー、

過去のトラウマが呼び起されて、教室で発狂してしまったのだー。


「ーーー…今の君は、とってもかわいいー。

 自信を持てば、大丈夫ですー」


小野寺副代表がそう言い放つー。


がーー


「ーーもうだめだー…

 俺は、俺は学校が怖いんだー


 こんなんじゃー…どんな身体を手に入れたって、俺はーーー」


美咲の身体で泣きながら顔を上げるー。


そんな美咲の様子を見て、小野寺副代表は少しだけため息をつくと、

やがて、言葉を口にしたー。


「ーーー分かりましたー。

 君の心の傷を、我々は少し甘く見ていたようですー。


 がー、ご安心をー。

 君に適した身体を、必ず選定して見せます」


小野寺副代表はそこまで言うと、

少しだけ笑いながら

言葉を続けたー。


「ーそんなに濡れていると、”風邪”を引きますよ?

 いったん、我々の本部へと戻りましょう」


小野寺副代表の言葉に、

すっかりずぶ濡れになって、下着も透けた状態の制服姿で

立ち上がると、美咲は「ーーーーあぁ…」と、だけ呟いて

そのまま”導きの矢印”の本部へと、小野寺副代表と共に移動を始めたー。


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


「ーー学校にそこまで恐怖心があるとは、

 我々のリサーチ不足でしたー。

 

 ですがーーー

 で、あれば、学校に行かずに済み、

 なおかつ容姿にも恵まれ、家庭環境にも恵まれている身体を

 選べばいいー」


小野寺副代表はそう言いながらパソコンを操作すると、

画面に、”お嬢様”らしき可愛らしい子の写真を表示したー。


「ーー天田 真桜(あまだ まお)さんー

 彼の父親は、簡単に言えば”大金持ち”でしてねー」


小野寺副代表の言葉に、美咲を皮を着た状態のままの

克之は言葉を口にするー。


「彼女は高校卒業後は、家庭教師をつけていて学校には通っていませんー。

 将来的にはある夢があって、それを目指しているようですがー、

 君が天田 真桜になれば、別にその夢を受け継ぐ必要はないし、

 仮に働かなくても、十分な資金が彼女にはあるー。


 どうです?学校にも行かずに済み、

 美貌も、地位も手に入るー。


 これであれば、新しい人生を歩むことができるのでは?」


小野寺副代表の言葉に、美咲の姿のまま、克之は静かに頷くー。


「確かにー、それならーさっきみたいな失敗もしないかもー」

美咲はそう呟きながら、学校で発狂した時のことを思い出すー。


「ーーそれでは、決まりですねー。

 では、その”皮”を脱いでいただけますか?」


小野寺副代表の言葉に、美咲は頷きながらも、

「脱ぐって、どうやって?」と、言葉を口にするー。


小野寺副代表は「失敬ー。皮を脱ぐのは初めてでしたね」と、

そう言うと、美咲の背後に立ち、

「少々、最初は変な感覚かもですけど、我慢してください」と、

それだけ言葉を口にしてから

美咲の後頭部をガシッと掴みー、

そのまま、まるで何かを開くかのように開いていくー。


ベリッ、と変な音と

今まで感じたことのない感触を覚える克之ー。


ペラペラになった美咲を手に、小野寺副代表は

「まぁ、こんな感じですー。慣れてくれば自分で脱げるようになりますよ」と、

笑うと、

「ー次の”皮”は、明日までに用意します。

 また明日ここに来ていただくかー、我々の本部には

 宿泊用の部屋もあるので、そこに泊まって頂いても結構ですー」

と、説明を口にしたー。


脱いだ”美咲”の皮を、そのまま大きなビニール袋に入れる

小野寺副代表ー。


「そ、その子は?」

克之がそう言うと、小野寺副代表は少しだけ笑ったー。


「ーーー君のように、人生のどん底にいる人間は一人ではありませんー

 また、別の人間に”着て”もらうだけですよー」


その言葉と共に、小野寺副代表は頭を下げ、

そのまま立ち去って行ったー。


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


翌日ー。


「ーーお、俺がお嬢様ー… すげぇ…」


お嬢様・真桜の身体を乗っ取った克之は、

驚いた表情で鏡を見つめていたー。


「ーーわたしは今日から、お金持ちのお嬢様ですわ!


 ーーーなんてー」


脳内イメージのお嬢様っぽい振る舞いをして、

一人でドキドキする真桜ー。


「ーふふ 完璧ですよー。

 彼女の家の位置と、生活する際に必要な情報を集めておきましたー。

 後で、目を通しておいてください」


小野寺副代表はそれだけ言うと、

真桜になった克之に資料を渡すー。


「ーー何から何まで、本当にありがとうございましたー」

長い髪を揺らしながら、頭を下げる真桜ー。


「いえ。礼には及びませんー。

 これが我々”導きの矢印”の仕事ですからー」


その言葉に、真桜は少しだけ笑うと、

「ーー最初は、胡散臭いと思ってたけどー

 こうして、新しい人生をくれて、感謝してます」と、

改めてお礼を口にするー。


「ーはは、それは何よりー。」

小野寺副代表のそんな言葉に、

真桜は冗談めいた口調で「今も胡散臭いとは思ってますけどー」

と、言葉を付け加えると、

小野寺副代表は苦笑しながら

「冗談を言えるぐらいに、前向きになったのであれば良かったー」と、

そう言葉を口にしたー。


「ーーありがとうございましたー」


今日から、お金持ちのお嬢様・真桜としての人生をスタートさせるー。


だがーーーー…

”心の傷”は、克之自身が思っている以上に、深かったー。


一度壊れた心は、そう簡単には元に戻らないー。

克之は、それを思い知らされることになるー…。



②へ続く


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


コメント


新しい身体を手に入れて、

新しい人生へ…★

けれど、なかなかうまくいかないお話デス~!!


次回以降もぜひ楽しんでくださいネ~!


今日もお読み下さりありがとうございました~!☆

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