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新年早々ー、

クラスメイトのお嬢様・神宮寺真莉愛の父親に会うため、

神宮寺邸を訪れた翔太と綾ー。


そこで、趣味人格転移の研究をしているという真莉愛の父・寛治と

情報交換を行った上で、以降、協力を得られることが決まったー。


もちろん、すぐに元に戻れるわけではないし、

現実的に”身体を元に戻す”ということが実現できるかは分からない。

それでも、少しでも”希望”は多い方がいいー。


そんな中、学校は2年目の3学期がスタートしていた…


★前回はこちら↓★

<入れ替わり>僕とわたしの不思議な青春㊶~対面~

入れ替わり生活2年目のクリスマスー。 お互いに不安を抱えながらも、 互いの親友の哲真・穂乃果らと共に楽しいひと時を過ごした二人ー。 しかし、二人とも”入れ替わり生活”の長期化からか、 ”元の自分”として振る舞うことの方に違和感を感じ始めてしまいー、 二人の親友もそのことをどことなく察知し始めていたー。 そん...

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★主な登場人物★


遠藤 翔太(えんどう しょうた)

C組生徒。大人しく、奥手な性格の持ち主。綾と入れ替わってしまう。


星村 綾(ほしむら あや)

C組生徒。可愛らしい雰囲気に、明るい性格の持ち主。翔太と入れ替わってしまう。


神田 哲真(かんだ てつま)

C組生徒。翔太の中学時代からの友人。女子は苦手。


山井 穂乃果(やまい ほのか)

C組生徒。綾の親友。入れ替わりを知ってからも変わらず接してくれている。


藤沢 孝弘(ふじさわ たかひろ)

C組生徒。人生は死ぬまでの暇つぶしであると豪語している。


守屋 智花(もりや ともか)

C組生徒。生徒会選挙の際に翔太(綾)と争って敗北している。


★脇役も含めた人物紹介はこちら↓★

<人物紹介>僕とわたしの不思議な青春~登場人物図鑑~

長編入れ替わりモノ 「僕とわたしの不思議な青春」の 登場人物図鑑デス! 連載前に予告として掲載した、 主人公たちのクラス名簿の内容に加え、登場する教員や その他の人物もご紹介しています~! ※ネタバレは控えめ(漫画や小説の最初の方のページに書かれている  人物紹介ぐらいの内容…)デス~!  最初にクラス名...

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「ーー今日の話し合いはここまで!

 1年生は、もうすぐスキー教室があると思うので、

 気を付けて楽しんできてくださいー」


今日は、定期的に行われている生徒会の話し合いー。

3学期最初の生徒会通信の作成や、

1年のスキー教室の話し合いなどを行ったー。


その終わりに、生徒会長の翔太(綾)は、そう言葉を口にして、

今日の話し合いを締めくくったー。


「ーーお疲れ様ー」

生徒会選挙の際に翔太(綾)と争ったー。

副会長のA組生徒・花森 茜がそう言葉を口にしながら立ち去っていくー。


ギャルっぽい風貌だが、生活態度は真面目でー、

生徒会副会長に就任してからも、真面目に活動を続けているー。


「ーーそろそろ僕も帰ろうかなー」

”誰も”周囲にいないのに、ついつい”翔太”モードで言葉を口にしながら、

翔太(綾)は生徒会室の片づけを終えると、

そのまま立ち去ろうとしたー。


がー、その時だったー。


「ー!」

翔太(綾)が人の気配を感じて、横を向くと

そこにはクラスメイトの藤沢 孝弘が立っていたー。


”人生は死ぬまでの暇つぶし”と豪語し、タイムパフォーマンス=タイパを

重視するクラスメイトだー。


体格が比較的良く、目つきも若干鋭いためー、

雰囲気的には”怖い”感じが漂っているー。

がー、昨年退学した柳沢祐樹とは違い、素行自体が悪いわけではなく、

”何となく雰囲気が怖い”そんな感じの男子生徒だー。


「ーーー藤沢くんー。

 どうしたの?生徒会室に何か用ー?」

翔太(綾)が、そう確認すると、孝弘は

「いやー。遠藤、お前に用があるー。少し時間あるか?」と、

そう言葉を口にしたー。


放課後なのに、孝弘が校舎に留まっていること自体、珍しいー。


そう思いながらも、翔太(綾)は「ー別に大丈夫だけどー」と、

生徒会室の扉を再び開けると、その中へと入っていき、

孝弘と改めて対面したー。


”前”だったらー、孝弘のような体格のいい男子と

生徒会室で二人きりー、というのは少し怖かったかもしれないー。


けれどー、”遠藤 翔太”として過ごし始めてもうすぐ2年ー。

そういう感情は、あまりなくなったー。

”男子は同性” ”女子は異性”ー

自分の中で、そんな感覚になりつつあるのを感じるー。


「ーーそんな警戒すんなってー。

 別に、遠藤、お前を食おうってわけじゃねぇ」

孝弘はそれだけ言うと、本題を切り出したー。


「ーー実は、生徒会選挙の時にお前と争った守屋のことで

 相談があるんだー」

孝弘はそう言い放つと、翔太(綾)は意外そうに、

「守屋さんのことー?」と、首を傾げるー。


守屋 智花は、

生徒会選挙の際に会長の座を争った女子生徒ー。

”表向きは優等生”だが、裏では腹黒なことばかり考えていて、

生徒会選挙の際には選挙管理員を務めていた後輩の男子・鈴木 一馬に

”翔太の票を削るように”お願いしようとしていたー。


結局、孝弘に”それじゃつまらねぇ”という理由で阻止されて、

生徒会選挙に敗北ー、翔太(綾)が生徒会会長になったのだったー。


しかし、翔太(綾)は、その智花が”不正をしようとしたこと”は

知らないー。


「実は、守屋のやつ、

 あの時、選挙で不正しようとしてたんだ」

孝弘はそう言いながら、生徒会選挙の際に後輩の一馬に頼み込んで

智花が不正をしようとしていたことを告げるー。


「え…えぇ…守屋さんが、そんなことをー?」

翔太(綾)が驚きながら言うと、

孝弘は頷きながら、

「でー、その件で今、少し守屋のやつが揉めててなー」

と、そう言葉を付け加えたー。


「ーー揉めてる?何かあったの?」

翔太(綾)が言うと、孝弘は続けるー。


「その時、不正をお願いしようとした鈴木って後輩から、

 ”秘密をばらされたくなければ、僕と付き合ってくださいー”

 って、しつこく迫られてるみたいでなー」


その言葉に、翔太(綾)は、唖然とするー。


どうやら智花は、不正をお願いしようとした後輩の男子・一馬から、

その時のことをネタに、付き合うことを迫られているようだったー。


「ーでも、どうしてそれを藤沢くんが?」

翔太(綾)が疑問を口にすると、孝弘は言ったー。


「ー守屋のやつの”裏の顔”を知るのは俺ぐらいだからなー。

 アイツ、誰にも相談できず抱え込んでいて、最近、かなり

 追い詰められてるー。

 

 だからー…会長のお前に、何とかして貰えないかって思ってなー」


孝弘はそこまで言うと、

「俺みたいなやつがその鈴木ってやつに文句を言いに行ったら

 ただの脅しになっちまうし、余計に奴も逆上するかもしれねぇー

 でもー、遠藤、お前みたいな真面目でしっかり者ならー」

と、そう言葉を付け加えたー。


「ーーーーーー」

翔太(綾)は戸惑いの表情を浮かべるー。


”何とか”できるだろうかー。

ーとは言え、綾の性格上、このまま放置することもできないのは

確かだったー。


「ーうんー。分かったー。でもーー…

 僕に解決できるかは分からないけどー、それでもいい?」

翔太(綾)がそう言うと、

孝弘は少し笑いながら「そりゃまぁ、どうにもできなきゃ仕方ねぇさ」と、

それだけ言葉を口にしたー。


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


翌日ー


「ーーー二人とも、朗報ですわ」


朝ー、

転校生のお嬢様・神宮寺 真莉愛に呼び出された

綾(翔太)と翔太(綾)ー。


「二人の脳には、特に異常なしー。

 健康そのものだったそうですわー」

真莉愛が、父・神宮寺 寛治からの伝言を伝えるー


冬休みの際に、”人格転移”の研究をしている真莉愛の父の元を訪れ、

協力して貰えることになった二人ー。

その際に検査した脳波など、色々な結果が出て、

”特に異常なし”と、いうことのようだったー。


「ーーー…ホッとしたようなー、しないようなー」

綾(翔太)が苦笑いするー。


”異常なし”ということは、確かに嬉しいことかもしれないー。

しかし、逆に言えば”元に戻る手がかりは何もない”に等しいー。


「ーー確かに、手がかりなしってことだもんねー」

翔太(綾)が苦笑いすると、

真莉愛はポンッと手を叩きながら笑ったー。


「ーお父様はそう簡単にあきらめませんわー。

 だから二人とも、安心なさいー」


その言葉に、二人は改めてお礼の言葉を口にするー。


また何か分かったり、綾と翔太自身の力が必要になった時には、

真莉愛から伝える、ということで、その場は解散したー。


「ーーー」

教室に向かいながら、

翔太(綾)は、ふと昨日のことを思い出すー。


”とりあえずー、守屋さんと話をしなくちゃー”


そう思いながら、教室に戻ると

翔太(綾)は「守屋さんー」と、智花に声をかけるー。


「ーー”会長”ー何か用?」

本を読んでいた智花は、皮肉っぽくそう言ったー。


翔太(綾)が、生徒会選挙に勝利してからは、

翔太(綾)のことを”会長”と呼ぶようになった智花ー。

副会長の茜とは違い、智花の場合は、皮肉が込められているのかもしれないー。


「ーー今日の放課後、少しお話しできるかな?」

翔太(綾)のそんな言葉に、智花は表情を歪めながら

「ーー今日は忙しいから無理ー。でも、明日なら」と、

そう返事をしたー。


「ーありがとうー。それじゃ明日ー」

翔太(綾)がそう言いながら自分の座席に戻ると、

翔太の親友・哲真が心配そうに「何かあったのか?」と、

そんな言葉を口にしたー。


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


その日の放課後ー。


「ー何だか今日は元気ないねー。

 どうかした?」


同じ美術部に所属するクラスメイト・倉守 詩音が

翔太(綾)に話しかけて来るー。

2学期に前部長が引退したため、現在は詩音が部長だー。


相変わらず中性的な雰囲気であるものの、

”家族の件”が解決したことで、前より女子らしい振る舞いも増えた気がするー。


「ーーあ、うんー。大丈夫ー。ごめんねー」

翔太(綾)がそう言うと、

詩音は笑うー。


「ーーあははー。どうせボクの時みたいに、

 また何かを抱えてるんでしょ?」

とー。


「ーーえ…あははははー」

翔太(綾)は笑って誤魔化すー。


クラスメイトの智花が”不正”をしようとしていたことを

言いふらす趣味は”綾”にはなかったー。

だから、哲真にも、詩音にも今回の件は言えないー。


「ー遠藤くんは、遠藤くんらしくやれば大丈夫だよー。

 ボクの時も、あんなに本心でぶつかってきてくれたんだからー」


詩音が、”親に男として生きること”を強要されていた件で、

翔太(綾)に説得されたことを思い出しながら微笑むー。


「ーーーあの時、ボクは嬉しかったー。

 きっと、遠藤くんの想いは、”今抱えてること”でも、

 伝わるさー。」


詩音はそれだけ言うと、

にこっと笑って、そのまま翔太(綾)の前から立ち去っていくー。


「ーーー」

そんな詩音の後ろ姿を見つめながら、翔太(綾)は、

”ありがとうー倉守さん”と、そう心の中で呟いたー。


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


”ーそっかー…気を付けてー”


綾(翔太)にLINEで、今回の件を伝えるー。

必要以上に智花のことを広めたくはなかったが

”お互いに相手の身体を借りている者同士”では隠し事はしない、と

綾は決めていたー。


”わたしも手伝おうかー?”

綾(翔太)からそんなメッセージが届くー。


”ーーありがとう。でも、大丈夫。わたし一人でー。”

翔太(綾)はそう返信すると、

ここ最近は、こうしたメッセージのやり取りでも、

”綾(翔太)”が”わたし”と言っていることが多いことに気付くー。


「ーーーー」

翔太(綾)は、LINEの履歴をふと確認するー。


すると、自分も時々、無意識に”僕”を使っていることに気付いたー。


”遠藤くんとの会話なら、隠す必要もないのにー”

そう思いながらも、翔太(綾)は、言葉にしがたい不安を振り払い、

そのまま、智花の待つ教室へと向かったー。


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


「ーーー守屋さんー。生徒会選挙の時の話なんだけどー」

翔太(綾)が話を切り出すー。


表情を歪める智花ー。


「ー僕が勝ちそうになったら、僕の票を減らしてほしいって

 後輩の鈴木くんにお願いしたって言うのは、本当ー?」

翔太(綾)のその言葉に、

智花は「何のことー?」と、表情を歪めるー。


「ーーー…そのせいで、今、その鈴木くんから

 しつこく付き合ってほしいって言われてるのも、本当?」


翔太(綾)がそこまで言うと、

智花は、大人しそうな表情を突然歪めて舌打ちをしたー。


「ーあの暇つぶし野郎ー」

ボソッと呟く智花ー。


孝弘が、翔太(綾)に伝えたことを悟ったようだー。


「ーーーー守屋さんー…どうして、そんなことをー?」

翔太(綾)は言うー。


智花と、後輩の一馬のトラブルを解決するには、

まず、智花自身からちゃんと話を聞く必要がある、とそう思い、

今日、ここに智花を呼び出したのだったー。


「ーーーーーーーふふふ… ふふふふふふ」

智花は自虐的に笑うと、

「ーーわたし、みんなが思ってるような優等生じゃないの」と、

開き直った態度で言葉を口にするー。


「ー表では優等生を演じてるけど、

 裏じゃ、どうしようもない黒い心の塊ー。それがわたしなの!

 

 生徒会の時もそうー。

 遠藤くんが、会長になるのが気に入らなくてー、

 わたしが会長になりたくて、あんたを蹴落とそうとしたー。


 ただ、それだけー。理由なんてないー」


智花は、そう言葉を口にするー。

”自分の醜悪な本性”が、智花は嫌いだったー。

けれども、小さい頃にクラスメイトの眼鏡を壊してしまい、

それを隠して、他人に擦り付けることに成功してからー、

”優等生の振る舞いをしていれば、疑われることもない”と、

どんどん腹黒い性格になっていってしまったー。


自分で、自分にブレーキをかけられないほどにー。


「ーーー守屋さんー」

翔太(綾)は少しだけ悲しそうにしながら、

智花を見つめるー。


智花の手が、いや、身体が小刻みに震えているのに気づくー

開き直っているように見えて、智花は今の状況に怯えていたー。


”本性がバレたことー”

そして、後輩の一馬にしつこく迫られていることにー。


元々、眼鏡の件も”怒られたくない”という恐怖から、黙っていた智花ー。

本来の智花は、とても臆病でー、

”人から嫌われたくない”一心で、

見栄えばかり気にするー…そんな性格の持ち主ー。


「ーーーわたしのこと、バラすならバラせば?

 わたしは優等生でもなんでもない偽善者だからー!」


智花が自暴自棄な様子で言うー。


が、翔太(綾)は、首を静かに振ったー。


「生徒会選挙のことは、それは良くないことだけどー、

 守屋さんは、偽善者なんかないと思うー。」


とー。


その言葉に、智花はクスッと笑うー。


「ー普段のわたしは”偽物”ー

 本当のわたしは、こういう腐った人間なのー

 分かる?」


そう言い放つ智花ー。


だがーー

智花は、高校入学から、いやー、

恐らくもっと前からー、

”優等生”を演じ続けて来たのだー。


たとえ、”腹黒な智花”が本来の姿だとしてもーーー…

”何年も演じ続けることの意味”を、

翔太(綾)は知っているー。


「ーーー偽物なんかじゃないよー。

 普段の守屋さんも、ちょっと悪いことを考えちゃう守屋さんもー、

 どっちも、守屋さんだよー」


翔太(綾)は、そう言い放つー。


”綾”には分かるー。


”表向き”の顔をずっとずっと演じ続ければー、

最初はウソでも、やがて、それは本物になっていくー。


”綾”だって、そうー。


最初は”遠藤 翔太”のフリを意識的にしてきたー。

でも、入れ替わってもうすぐ2年ー。

今は”遠藤 翔太”のフリではなく、”遠藤 翔太”になりつつあるー。

そんな感覚を覚えているー。


もちろん、自分が”星村 綾”であることも忘れてはいないー。


自分は遠藤 翔太であり、星村 綾でもあるー。

これだけ長く”2つの自分”が存在すればー、

どっちももう、”嘘”なんかじゃないー。


どっちも”わたし”でありー、どっちも偽物なんかじゃないー。


何年も、何年も演じていればー、

やがてそれも”自分”になるー。


「ーーー…あんたに何が分かるのー」

智花が不満そうに言い放つー。


けれどーー

翔太(綾)は真っすぐと智花を見つめたー。


「ーー僕には分かるよー。

 ”2つの自分”を使い分ける苦しみも、思いもー!」


形は違えどー、

翔太(綾)と、智花は同じー。


”2つの自分”を、使い分けているー。


だからこそー、

その気持ちがよく、分かるーーー


「ーー僕だって、本当の自分が時々分からなくなるよー!

 でもーー、

 どっちかが”偽物”なんじゃないー、

 どっちの”僕”も、本物なんだー!


 守屋さんだってそうだよー!

 表の顔も、裏の顔も、どっちも偽物なんかじゃなくて、

 守屋さんなんだよー!」


翔太(綾)は、自分の中の不安もぶつけるかのように、

そう叫んだー。


「ーーー…ーーー」

智花は、翔太(綾)を見つめるー。


翔太(綾)の真っすぐな瞳にー、

智花は表情を歪めるー。


「ーーーーー……ーーーーーー」

しばらく、沈黙していたものの、やがて智花は言葉を口にしたー。


「ーーーーーー…変なやつー」

とー。


翔太(綾)は少し不安そうな表情を浮かべながらも、

「ーーーあははー…そうかもねー」と、少しだけ笑うー。


「ーーーーーーー…」

智花は、また少しだけ考えると、

「ー生徒会選挙のことは、ごめんなさいー」と、謝罪の言葉を口にするー。


「ーーー…うんー。」

翔太(綾)は微笑むー。


生徒会選挙の件だけは”やってはいけないこと”だー。

それだけは、智花にも分かってほしかったー。

がー、その想いは、智花に伝わったようだったー。


「ーーー少し、気持ち、楽になったかもー」

智花がそう言葉を口にするー。

”誰にも吐き出せない”裏の顔を、吐き出して楽になったような、

そんな表情だったー。


「ーーあはは…ならよかったー」

翔太(綾)が安堵の表情を浮かべるー。


そんな翔太(綾)を見つめながら、

智花は少しだけ笑ったー。


「ーーーー…でも、これからもわたしー、

 みんなのこと、心の中では何て言ってるか分からないよ?」


と、少しだけ冗談めいた口調でー。


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


「ーーー守屋さんと、鈴木くんで”不正”をしようとしてたって

 聞いたんだけどー」


後日ー。

翔太(綾)は、生徒会選挙の際に智花から、

”不正”を依頼され、そのことをネタに、自分と付き合うように

強要している1年の生徒・鈴木 一馬の元を訪れたー。


「え…、ぼ、僕ですかー?」

一馬が表情を変えるー。


「ーうんー。でも、守屋さんももう謝ってるしー、

 鈴木くんも反省してるなら、

 これ以上、僕も大事にしたくないからー…」


翔太(綾)がそう言い放つー。


”智花”のことを言えば、”一馬”も無事では済まないー。


そう思わせることで、何とか穏便に済ませようとしたのだー。


「ーーぼ、ぼ、僕はそのー……」

一馬が戸惑いながら言うと、

翔太(綾)は「ーー僕も、これ以上騒ぎにしたくないんだー。

だから、二度とそういうことはしないって約束してくれる?」と、

そう言葉を告げるー。


「ーーは…はいー…分かりましたー」

一馬は、”智花のことを言えば、自分も無事で済まない”と

理解したのか、それ以降、智花に絡んでくることは

なくなったのだったー。


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数日後ー。


「ーー悪かったなー」

”人生は暇つぶし”なクラスメイト・藤沢 孝弘がー

そう言葉を口にするー。


今日は、智花を救ってくれたお礼として

孝弘が、ファミレスで奢ってくれていたー


「ー全然ー 僕、大したことしてないしー」

パフェを美味しそうに食べながら翔太(綾)は笑うー。


「ーでも、何とか穏便に済んだみたいでよかったー」

翔太(綾)がそう言うと、孝弘は「そうだなー」と、そう頷くー。


「ーそれより、藤沢くんが守屋さんの心配するなんて

 なんか意外だったなぁ…」

翔太(綾)がそう言うと、

孝弘は「ーーん?あぁ…まぁ、守屋は見てて面白いからなー

暇つぶしになる」と、注文したポテトを口にしながら言葉を口にするー


「ーあははーあくまでも”暇つぶし”なんだね」

翔太(綾)が言うと、孝弘は

「決まってるだろー。今、お前に奢ってるのも、お礼と暇つぶしだしな」と、

そう言葉を口にしたー。


「ーーあはははー」

翔太(綾)は笑いながら、

”守屋さんのこと、何かと気にかけてるみたいだし、もしかしてー”と、

心の中で思ったものの、それ以上は言わなかったー。


「ーところでー」

翔太(綾)が、写真を撮ったり、美味しそうにパフェを

食べている姿を見ていた孝弘は、ふと口を開いたー。


「ーーお前、なんか女子みたいだなーそういうところー」


冗談めいた口調の孝弘ー


「えっ!? え… あぁーー、あははははー」

翔太(綾)は、少しドキッとしながらも

”ま、まぁ…中身はその通りなんだけどー”と、

心の中で苦笑いしたー。


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


「ー綾ちゃんは、今年のバレンタインどうするん?」

綾(翔太)の前の座席にいる笹野 翔子が

楽しそうに言葉を口にするー


「え~?どうしよっかな~?」

綾(翔太)も楽しそうにバレンタインの話をしているー。


そんな姿を遠目で見ながら、

翔太の親友・哲真は、

「アイツ、すっかり女子って感じだよなぁ」

と、苦笑いするー。


「ーーまぁ、でも、悩んでるよりはいいんじゃない?

 綾の方も、すっかり普段は男子って感じだしー」

綾の親友・穂乃果は、そう言葉を口にしながらも

「まぁ、”綾推し”のわたしとしては複雑ではあるけど」と、

そんな言葉を呟くー。


「ーーはは、まぁー」

哲真は、バレンタインデーの話で盛り上がっている綾(翔太)を見つめながら

「ーー前より、二人とも笑顔が増えたかもなー」と、

そんな言葉を口にしたー


「ーーーーーーーーーーー」


しかしーー

その二人以外にも、綾(翔太)を見つめている者がいたー。


「ーーーーー星村さんーーーー」

ギリッと歯軋りをする転校生の男子・渡海 和之ー。


綾に執着している和之は、夏休み中のお祭り以降、

比較的おとなしくしていたもののー、”綾”のことを諦めたわけではなかったー。


「ーー星村さんからの本命チョコー…楽しみだな…ふふー」

何を根拠にしているのかー、

綾から本命チョコを貰えると思い込んでいる和之は、

そんな風に言葉を呟きながら、不気味な笑みを浮かべたー。


㊸へ続く


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


★2-Cの日常★


「どうしたら、福井さんみたいに自分に自信を持てるのかなー…?」


ある日ー。

たまたま帰りに偶然鉢合わせした

湯川 梓は、自分のことを”可愛い”と思い込んでいる

一人称が自分の名前の女子生徒・福井 寧々に

向かってそんな言葉を口にしたー。


梓は、とても可愛らしい風貌なものの、

超ネガティブな女子生徒ー。

合唱コンクールの際にピアノの腕前を披露して、

前より少し自信はつけたものの、やっぱりネガティブなのは変わらないー。


「ーーえ~~?寧々みたいに自信を持ちたい?」

寧々が笑いながらそう呟くー。


”ーーーーー”

寧々は、ふと頭の中で梓が”寧々”みたいになったシーンを想像するー


”梓、可愛いでしょ?ふふっ”

梓のそんな脳内イメージを再生する寧々ー。


「ーーーーーーーー」

寧々は、普段の大人しい梓とは真逆の脳内イメージを再生して、

表情を少しだけ曇らせると、言葉を口にしたー


「ーー梓ちゃんはーーーー

 寧々みたいにならない方がいいよ~」


寧々は、脳内イメージの自信に満ち溢れたイメージを

振り払うかのようにそう呟くー。


「ーー梓ちゃんには、梓ちゃんのいいところがあるし、

 寧々みたいになる必要ないもん!」

寧々のそんな言葉に、

梓は少しだけ照れくさそうにしながらも

「そ、そっかー」と、そんな言葉を口にしたー。


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


コメント


もうすぐ3年生編に突入しますネ~☆

2年生編(?)の物語はあと2話デス~~!☆


もちろん、次の学年の物語もそのまま続くので、

楽しんでくださいネ~!


今日もありがとうございました~!


★関連話★

(※こんな話あったの?いつだっけ?という場合の参考にして下さいネ~)


生徒会選挙 ⇒第34話

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