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地獄の空間ー”奈落”ー。


エイリアンたちに反逆した人間たちが幽閉される地下世界ー。


しかし、麻友は、

友達を、家族を救うためにその奈落を脱出する決意をしたー。


麻友よりも前に奈落に幽閉されていた男・祥平や協力者と共に

”奈落脱出計画”を実行に移す麻友ー。


奈落の支配者であるアイドル・美琴が地上に出かけている

今この時がチャンスー。


脱出計画の行方はー…?


★前回はこちら↓★

<皮>エイリアン・KYOTO④~絶望~

”奈落”ーー そう呼ばれる地獄の空間に移送されてしまった麻友ー。 エイリアンたちに従い、 保身を図って来た麻友ー。 しかし麻友は、先輩の優美香に罪を擦り付けられた結果、 エイリアンたちに”反逆者”扱いされてしまい、”奈落”へと 送られてしまったのだー。 ”奈落”で、地獄のような苦しみを味わう麻友ー。 がー、そん...

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


「下等生物どもがー…愚かな真似をー」


”奈落”の支配者・美琴の側近である女・莉々が、

麻友たちの”脱走計画”に気付き、リフトのある部屋に姿を現したー。


不気味な蛇を巻きつけた状態の莉々ー。

もちろん、この”莉々”も、エイリアンがやってくる前までは

普通の人間だったー。

しかし、今はエイリアンに”皮”にされて、身も心も乗っ取られているー。


乗っ取られた当時は”普通の女子大生”でー、

とても優しい穏やかな子だった莉々ー。

けれど、今はもうその面影はないー。


「ーーそ… そんな… ぅ…」

麻友は、脱出目前で見つかってしまったことに、

絶望の表情を浮かべるー。


そしてーー

エイリアンたちが用意した人間を苦しめるためだけの薬・デスミンの

影響下にある麻友は激痛と吐き気で、その場に嘔吐してしまうー。


”ーーーよしー…これも狙い通りー”

だが、脱出計画を企てた男・祥平は心の中でそう呟いたー。


”俺は、絶対にー諦めないからなー”

祥平は、エイリアンが来る前では”普通の男子高校生”だったー。

彼女と共に、幸せな日々を送っていたー。


けれどー

その彼女を乗っ取られ、友達も、家族でさえも奪われたー。


絶対にエイリアンたちを許さないし、諦めないー。


この部屋のリフトを動かすには、”エイリアンの認証”が必要だー。

見つからずに壁を破壊しただけでは出ることができないー。

”追撃”が来ることを祥平は計算に入れていたのだー


「オェッ…」

祥平はデスミンの苦痛に耐えながら、莉々の方を見つめるー。


「ー下等生物ごときがー…

 地獄の苦しみを味合わせてやるー」


かつては優しい笑顔を浮かべていたであろう莉々の顔ー。

そんな莉々が怒りの形相で迫って来るー。


がーーー


「ーーーこれでも…喰らえ!」

祥平が、苦痛に耐えながら”デスミン”の注射器を手に、

それを”莉々”の首筋に突き立てるー。


「ーーーな」

莉々が驚きの表情を浮かべると同時に、

”人間の身体”を使っているエイリアンは、莉々の身体で

麻友たちと同じ”苦痛”を味わい、悲鳴を上げるー。


奈落の主であるアイドル・美琴を乗っ取っているエイリアンは

自分で自分にデスミンを投与して苦痛を喜んでいたものの、

それは”美琴”が特別変態なだけで、

人間の身体の状態で、デスミンを投与されれば、

通常は激痛に苦しむー。


莉々は床を転がりまわり、身体に巻き付けていた蛇を

自分の身体で押しつぶしながら、この世のおわりのような

悲鳴を上げるー。


”奈落”での生活の中で、廃棄されたデスミンの注射器を

汚物の中からすくい上げ、ずっと隠し持っていたー

”切り札”としてー。


「ーーー…みんなは早く…リフトにー」

祥平は激痛で顔を真っ赤にしながら、莉々の方を見るー。


”莉々”の頭がぱっくりと開きー、

”中”からエイリアンが出て来るー。

”デスミン”の苦痛に耐えかねたエイリアンが莉々の身体を捨てて、

外に出て来たのだー。


”エイリアンは強敵だが、1体なら倒せない相手ではないー”

祥平は、それを知っているー。

かつて、”彼女を乗っ取っていたエイリアン”を殺したことがあるからー。


「うあああああああああああああ!」

身体の激痛に耐えながら、祥平は隣の部屋の壁を破壊した際の

がれきを手に、エイリアンの頭を何度も何度も殴打するー。


予想外の反撃に”莉々”を乗っ取っていたエイリアンは

体液をまき散らしながらその場に倒れ込むー。


デスミンの効果で、未だに嘔吐が止まらない祥平ー。

それでも倒したエイリアンを引きずりー、リフトの認証装置の前に

持ってくると、エイリアンの顔面を無理やり叩きつけたー


”認証”

そんな表示が出るー。


「これで、外に出れる」

祥平が青ざめながら言うと、その場に力なく倒れるー。

デスミンの激痛の中、無理した祥平はもう限界だったー。


「ーだ、大丈夫ー…?」

麻友が不安そうに祥平に駆け寄るー。


他の2人も、リフトに乗り込むもーーー

残りの2人は、”デスミンD”による激痛に耐え切れず、

リフトのある部屋で倒れ込み、一人は失神ー、

もう一人は激しく痙攣して、青ざめていたー。


「ー宮園(みやぞの)!大島(おおしま)!」

リフトに乗り込んでいた男の一人が叫ぶー。


しかしー、痙攣していた大島と呼ばれた男が、

力を振り絞って叫び返すー。


「俺たちは…ダメだ……お前たちだけでも…いけっ!」

とー。


「ーーで、でもー」

激痛に耐えながら言葉を返す麻友ー。


「いいから……いけぇ…!!!」

そんな会話をしているうちに、リフトのある部屋に

奈落の支配者・美琴のもう一人の側近、鎧の男が部屋に入って来てーー


”巨大な斧”で、失神している宮園を叩き割ったー


「ーひっ!?」

麻友が悲鳴を上げるー。


「いけえええええええええええええ!!」

倒れていた大島が、最後の力を振り絞って、鎧の男に突進するー。


「ーーーーー……く」

祥平が、倒れ込みながらリフトのスイッチを押すとー、

リフトは地上に向かって動き始めたー。


麻友と祥平を含む、脱出に成功した4人は激しく嘔吐しながら、

地上に到着するのを待つー。


そしてー、地上にリフトは到着したー。

やはり、不気味な色の空はそのままー


「ーー船はあっちだー!」

生き残りのうちの一人・茂木(もぎ)が言うー。

奈落に幽閉される前に彼が残した船がこの先にあるー。

それに乗って、無人島に避難するー。


それが、祥平たちの脱出計画ー。

祥平たち4人は、船のある場所に向かって走り始めたー


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


”姫ー。4名の下等生物が脱走しましたー”

鎧の男が、地上で行われているエイリアンたちの”会議”に

出席していた奈落の主であるアイドル・美琴にそう報告していたー


美琴は側近に自分のことを”姫”と呼ばせているー。


「ーーはぁぁぁぁぁぁぁ~~~~~~~~??????

 逃げられた??????

 え~~~~~!最悪ぅぅぅ~~~~!!!!」


会議中に報告を受けて足をバタバタとさせながら

怒りをあらわにする美琴ー。


怒り狂った美琴は、自分の後頭部をペリッと脱ぎ捨てて

頭だけ”エイリアン本体”を出した状態のまま、

じたばたと触手のようなものを暴れさせるー


やがてー、美琴の皮を再びちゃんと着ると、

「あ~~~~むっかつくぅぅぅぅ!クズのくせに!!」と、

何度も何度も可愛らしい声で叫びながら机を叩くー。


「ーーどうかしたのか?」

会議が行われている部屋の”奥”にいた

”エイリアンの王”が、そう言葉を口にすると、

美琴は「わたしの管理している”奈落”で、問題が起きましたー」と、

そう言葉を口にしながら、会議から途中で抜ける許可を求めるー。


「ーーよかろう。直ちに対処せよ」

”王”のその言葉に、美琴は頭を下げると、そのまま

怒りの形相で会議室を後にしたー。


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


船のところにたどり着き、祥平、麻友、

そして残りの二人は船を動かす準備を始めるー。


やがて、船のエンジンもかかり、漁師である男・茂木は

嬉しそうに「これで逃げられるぜ」と、そう言葉を口にしたー。


デスミンDの効果も抜けて来た4人ー。

あとは、無人島にたどり着き、そこを拠点に

エイリアンたちへの反撃作戦を企てるー。


がーーー

船を動かす準備を終えたそのタイミングで、

祥平は少し寂しそうな表情を浮かべながら微笑んだー。


「ーーー…俺はここに残るー…」

祥平の言葉に、先に乗り込んでいた二人と麻友が

困惑の表情を浮かべるー


「ーー俺には、助けなくちゃいけない人がいるんだー…

 だからーー…一緒にはいけないー。

 ごめんー」


祥平は悲しそうにそんな言葉を口にするー。


元々、無人島への避難を言い出したのは祥平ではなく、

漁師の男・茂木だー。

祥平は奈落から脱出に成功したら、一人、”トーキョー”に戻って

エイリアンに乗っ取られたままの家族や彼女を

助け出そうと、そう考えていたー。


「ーーーー…」

麻友は、そんな祥平を見て「ーごめんなさいー…わたしもー」

と、そう言葉を口にするー。


「ーーえ…?」

祥平と、残りの二人が戸惑うー。


しかし、麻友は決意の表情で言葉を口にしたー。


「ーーわたしもーーー…

 わたしの身代わりになってエイリアンに乗っ取られた

 大事な子がいるんですー。

 その子を置いてはー…いけないからー…」


麻友が悲しそうに言うー。


”エイリアンたちに従って、生きる道”を一度は選んだ麻友ー。

しかし、”奈落”に放り込まれた経験を経て、

麻友も変わったー。


絶対にー、絶対にー


”「麻友だけは見逃してあげて!

 わたしはどうなってもいいから!」”


身代わりになってエイリアンに乗っ取られた奈緒美だけでもー

そしてー、お姉ちゃんだけでもー、

助けたいー。


麻友のそんな言葉に、祥平も残りの二人も頷くー。


残りの二人は「ーー死ぬなよ」と、だけ言葉を口にして

予定通り船で出発ー、無人島を拠点に

エイリアンたちへの反撃の機会を伺うため、そのまま去っていくー。


「ーーーーわたしは”キョウト”に戻ります」

麻友がそう言うと、祥平は「”奈落”があるのは”シズオカ”だから、

少し遠いけど、大丈夫か?」と心配そうに呟くー。


「ーー”電車”は動いてますからー。」

麻友が笑うー。


エイリアンたちの目的は”文明ごとそのまま支配する”ことー。

そのため、公共交通機関も未だに動いているー。


働かされているのは主にー、”売れ残り”である人間たちだがー。


「ーーーははーそっかー」

祥平はそれだけ言うと、

「俺は”トーキョー”で、助けを待っているみんながいるからー

 ここでお別れかなー」

と、そう言葉を口にしたー。


「ーーはいー。お元気でー」

麻友がそう言うと、祥平は苦笑いしながら

不気味な色に染まったままの空を見上げると、

「そういえばー言ってなかったけどー」と、

苦笑いしながら、

自分も麻友と同じ年代だということを告げたー。


「ーーーずっと敬語だったから、絶対年上だと思われてるんだろうなぁって」

祥平が少し恥ずかしそうに言うと、麻友は笑いながら

「ーーあははー…思ってました」

と、そんな言葉を口にしたー。


そのまま別れの挨拶を交わし、

祥平は”トーキョー”へー、

そして麻友は”キョウト”へと、それぞれ歩み始めたー。


大切な人たちを、それぞれ救うためー。


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


「ーーもうすぐ島だ!」


祥平たちと別れ、船で無人島を目指していた

漁師の茂木と、脱出に成功したもう一人の男・山田(やまだ)


しかしーーー

上空にヘリコプターの音が響き渡るー。


「ーハロー!脱走したクズのみんな~!!こんにちは~!

 美琴ちゃんだよ♡!」


ヘリコプターからアイドル・美琴の声が響き渡るー。


会議が行われていたビルのヘリポートから、

”脱走した下等生物”を追ってここまでやってきたヘリー。


祥平たちの脱走計画では、

無人島にたどり着けば、エイリアンたちの手がそこまで

及ぶ可能性は限りなく低く、

そこで反撃のチャンスを伺えるー…

そのはずだったー。


だが、想像以上に早く、美琴が会議を抜け出し、

追跡してきたー


「やべぇ!急げ!」

山田が、漁師の茂木に向かって叫ぶー。


しかしー


美琴はアイドルの衣装のまま、

ヘリから顔を出してロケットランチャーを構えるー。


「ーーわたし、花火だいすきなの!ふふっ♡」

美琴は、そう言いながらウインクすると、

ロケットランチャーを茂木たちが乗る船に向かって

容赦なく放ったー


爆発する船ー


「ー死ね!死ね!死ね!あはははははっ!あはははっ!」

美琴がムキになって、さらにロケットランチャーを何度か放つと、

そのまま満足そうに「ー花火サイコー!!!」と、叫びながら、

操縦士に指示をして、その場から飛び去って行ったー。


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


”キョウト”ーー


「ーーーー…あんたーーー」

麻友の幼馴染でもあり、親友でもある奈緒美が驚くー。


友達の詩織も、表情を歪めているー。


「ーーー…”奈落”に送られたはずじゃー?」

奈緒美のそんな言葉に、電車を使い、

”キョウト”まで戻ってきた麻友は

「ーわたしはーー、みんなの側にいたいのー。

 たとえ、どんな形になってもー」

と、強い口調でそう言い放つー。


近くにいればー、

いつか必ず、奈緒美たちを助けるチャンスもやってくるはずだからー


「まさかお前ー”奈落”を抜け出してきたんじゃー?」

詩織が鬼のような形相で麻友に近付くー。


がーー

奈緒美は笑ったー


「ーあはははは!わたしのために”奈落”を脱走してきたのー?

 あははっ!

 下等生物の癖にやるじゃんー」


奈緒美はそう言いながら拍手すると、

「必死こいて抵抗する虫けらーわたしは好きだよ?」と、

邪悪な笑みを浮かべながら笑ったー


そしてーーーー


「ーーいいよー。また”友達”になってあげるー

 あんたみたいな面白い玩具はーーー

 手元に置いておいたほうが楽しいからね」


奈緒美がニヤッと笑うと、

麻友は、真っすぐ奈緒美の方を見つめ返してー、

”絶対に助けるからー”と、

心の中でそう呟いたー。


家で酒に溺れている”姉”の美姫も含めてー、

大切な人だけでも絶対に助け出すー。


麻友はそう決意して、奈緒美の方を決意の眼差しで見つめたー


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


”奈落”に戻ってきたアイドル・美琴は

怒り狂っていたー。


船に乗っていたのは脱走した4名のうちの2名ー。

残りの2人は、

一人は”トーキョー”に戻って以降、消息を絶っていて、

身を隠しているようだー。

そしてもう一人はーーー


”麻友ちゃんの反逆は”勘違い”だったみたいー

 だから、”奈落”に送る必要はなくなったー”


モニター越しに”奈緒美”が”美琴”にそう言い放つー。


奈緒美は”奈落から脱走までしてきた麻友”を気に入り、

手元でいたぶり、弄ぶことを決めて

”麻友”は奈落送りの必要なし、と美琴に報告してきたー


「ーーーふ…ふざけんなよ…!

 その下等生物はわたしの顔に泥を塗ってー…!」


美琴が鬼のような形相で叫ぶー。


がー、奈緒美は

”麻友を奈落送りにするかどうかはわたしが決める。以上”

と、淡々と呟いて、そのまま通信を終了したー。


「ーーーっっ…

 あぁああああああああああああああああ!

 ああああああ!!!くそがっ!」


アイドル衣装と髪を乱しながら怒り狂う美琴ー。


「ーおい!デスミンを持ってこい!」

美琴は乱暴な口調でそう言うと、自分にデスミンを注射して

激痛を味わいながら、一人笑い始めるー。


「ー許さないーーーぜったい…ぜったいゆるさなぁい…」

美琴は目を血走らせながら、一人、そう呟いたー。



エイリアンに支配された地球ー

この世界に、希望などないー。


けれどー、

もしも大切な人だけでも助けることができるのならー。



大きな希望はない。


けれど、小さな希望であれば、

まだこの世界に残されているのかもしれないー。



おわり


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


コメント


エイリアンKYOTOの最終回でした~!☆


「エイリアン・TOKYO」の時は描けなかった

この世界の一部分も描くことができました~!☆


でも、この状況から、地球上のエイリアンを完全に

追い払うことは無理そうなので、

やっぱり平和を取り戻す~!なんてことは

難しそうですネ~…!


お読み下さりありがとうございました~~!

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