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薄暗いその場所で、彼女は目を覚ましたー


「ーーー……え???」

暗い、冷たい部屋ー。

広々とした部屋であるものの、特に何かが置かれているわけでもなく、

冷たい風だけを、うっすらと感じるー。


「ーーー……ーーわたしーーー…あれ…?」

彼女ー、岡島 安裕香(おかじま あゆか)は、困惑の表情を

浮かべながら周囲を見渡したー。


何が何だか、全く分からないー。

”長い間”寝ていたような、そんな感覚に襲われながら、

ボーッとする頭を必死に回転させて、安裕香は自分の記憶を

整理するー。


”そうだー…わたし、百恵(ももえ)ちゃんと一緒に

 帰ってる途中だったはずー”


安裕香は、そんなことを思い出すー。


そうー、確か友達の百恵と共に大学から

一緒に帰っている最中だったはずー…


それなのに、この場所は一体ー…?


「ーーーえ…」

安裕香は、さらに驚くー。

いつの間にか、自分がボロボロのメイド服を着ているー。


「な…なんで…こ、こんな格好ー…?」

恥ずかしそうに周囲を見渡す安裕香ー。

しかし、薄暗く、ただ広いだけの部屋にはやはり、何も見当たらないー。


そんな風に戸惑っていると、突然、”声”が聞こえて来たー


”ふふふふー

 目が覚めたようねー”


クスクスと笑う女の声ー。

だが、その声に安裕香は表情を歪めるー。


その声に、”聞き覚え”があったからだー。


「ーー…だ…誰…?」

安裕香は戸惑いながら言葉を口にすると、

その女は、安裕香の言葉を無視して言葉を続けたー。


”ーー今、自分がどういう状況なのか分からなくて

 困ってるんでしょ?

 ふふふふふふー”


人を馬鹿にするかのような笑い声ー。

スピーカーを通じて響いてくるその声はーー


「ーーわ…わたしの声…?」

安裕香は、戸惑いながらそう言葉を口にするー。


”ーーーくくくくくくくー…

 何が起きてるのか知りたければー

 そこー”奈落のゴミ捨て場”から、先に進みなさいー。

 そうしたら、何が起きてるのか、教えてあげるー”


クスクスと笑いながら、そう呟く女ー。


安裕香は困惑しながらも立ち上がると、

そのままよろよろと、ライトが照らされた”出口”と思われる方向に

向かっていくー


「ーー!?」

がー

すぐに”ある異変”にも気づくー。


”身体がー…重いー?”


なんだか、身体が重いー

体調がすぐれないー。

一体、何が起きているのか全く分からないー。


そう思いながらも、その広い部屋を突破すると、

研究施設のような雰囲気の廊下に出たー。


”ーーふふふふふーー

 約束通り、今の状況を教えてあげるー”


廊下の壁に設置されたモニターから声が響くー。


そしてーー


「ーーー!?!?!?」

安裕香は、モニターに表示された映像を見て驚くー。


やはりー、

”女の声”の主は、安裕香自身だったのだー。


モニターにバニーガール姿の安裕香が映し出されているー。

だがその表情は、悪意に満ちていて”いつもの自分”とは

まるで別人だー。


”ーー驚いた?

 わたしは、あなた自身ー”


”バニーガール姿の安裕香”の言葉に、安裕香は困惑しながら

「ど…どういうこと…?あ、あなたは誰ー?ここはー?」と、

心配そうに言葉を口にするー。


しかし”バニーガール姿の安裕香”はそれを無視して

言葉を続けるー


”この先には”わたし”が用意した

 たのしいたのしいゲームが用意されているのー

 最高のデスゲームが…!


 ふふふふふふー

 1ステージクリアするごとに、

 ”今の状況”について教えてあげるー”


バニーガール姿の安裕香はそう言い放つと、

安裕香は戸惑いの表情を浮かべながら

質問を返そうとするー。


しかしー、それよりも先に

バニーガール姿の安裕香は言葉を続けたー


”ーーせいぜい死なないように頑張って

 わたしを楽しませてーーー 

 ふっふふふふふふ♡”


”バニーガール姿の安裕香”は興奮した様子で

悪女のような笑い方をすると、そのままそのモニターの映像は消えたー


「ーーー…ど、どういうこと…?」

困惑しながら、安裕香がその先の部屋に向かうとー、

そこはー、”謎の車”が走り回る広い部屋だったー。


反対側には扉が見えるー。


”第1ステージへようこそー

 その部屋には”自動操縦の車たち”が走り回ってるのー。

 轢かれて死なないように、次の部屋に突破できればクリアよー”


安裕香は”自分の声”を聞きながら

「な、何なのこれ…? ねぇ…何これ!!!」

と、不安そうに叫ぶー。


だがー、自動操縦の3台の車が、容赦なく自分の方に向かってくるのを

見て、安裕香は慌てて走り出したー。


悲鳴を上げながら車から逃げる安裕香ー。


そんな”映像”を見つめながらー、

”男”は笑みを浮かべたー。


「ーーーークククククーーー…

 ”使い終わった人間”で楽しむー…

 これぞ、再利用ー」


謎の犯罪組織”ジオ・デビルズ”ー。

彼らは”人を洗脳する技術”を持っていたー。

その技術を使い、”少数精鋭”で暗躍する組織だー。


安裕香は下校中にその組織に”洗脳”されー、

”3年間”も組織の意のままに悪事をこなして来たー。


洗脳された安裕香は、人殺しに色仕掛けー、脅迫ー、密輸ー

あらゆる罪に手を染めていたー。

さらには、”ジオ・デビルズ”の者たちを自らの身体で

満足させるようなことも日常的にしていたー。


がー、3年間にわたる酷使で安裕香の身体も消耗し、

”ジオ・デビルズ 行動計画会議”によって廃棄が決定、

安裕香は洗脳を解除され、”奈落のゴミ捨て場”と呼ばれる

この場所に放り投げられたのだったー。


そしてーーー


この男ー

ジオ・デビルズに所属する”黒蛇(くろへび)”と呼ばれる男は、

廃棄が決定し、正気に戻った人間をいたぶり、遊ぶ趣味を

持っていたー。


「ーーー第1ステージを突破したか。お見事ー」

モニターで、安裕香が暴走する車のステージを突破したことを

確認すると、あらかじめ”録音”していた映像を

安裕香が今いる廊下のモニターに表示させるー

先程から、安裕香が質問しても無視するように話を進めていくのは、

”バニーガール姿の安裕香”の映像と音声は

録画・録音されたものだからだー。


”ーー第1ステージ突破おめでとうー。

 思ったよりもやるわねー。

 ご褒美に、”今”がいつだが教えてあげるー”


”バニーガール姿の安裕香”の映像が

再生されるー。


これはーー

”洗脳を解除する前”に、洗脳された安裕香に命令して、

撮影した映像だー。

つまり、”少し前の安裕香自身”ー。


しかし、正気に戻った安裕香にその時の記憶はなく、

”バニーガール姿の安裕香”が何なのか、安裕香には分からないー。


「ーーえ…」

安裕香が困惑の表情を浮かべるー


”2027.4.8”

モニターにそう表示されるー


”今は2027年ー

 どう?驚いたー?

 ”わたし”の記憶だと、今は2024年でしょ?

 ふふふふふー


 でもねぇ…残念ー!

 今は2027年なの! ふふふふふふー”


バニーガール姿の安裕香ー、

洗脳されている当時の安裕香の映像が再生されるー。


安裕香は震えながら

「ど、どういうことですか!?今は2024年でしょ!?」と、

涙目で叫ぶも、相手は”録画映像”ー。

その質問には反応せずー、

”じゃあー、次のステージも頑張って”と、そんな冷たい言葉が

聞こえて来たー。


安裕香は、涙目のまま”次のステージ”へと向かうー。


”第2ステージはカラスの庭よー。

 ふふふー無事に抜け出せるように頑張って”


その言葉と共に、”カラスを刺激する不気味な音”が響き渡り、

その部屋にいるカラスたちが一斉に狂暴化するー。


悲鳴を上げながら走り出す安裕香ー。



「ークククククー」

その映像を見つめながら”黒蛇”は笑うー。


訳も分からないまま、カラスたちに襲われてー、

それでも必死に生き抜こうとしている安裕香ー。


”昨日”までー、

命令のままにバニーガールの格好をして、

”明日の自分”を、あざ笑う映像を共に撮影していたというのにー。


昨日までの”洗脳された安裕香”と、”今日の安裕香”の

ギャップを感じながら、”黒蛇”は笑うー。


”はぁ…はぁ…はぁ…はぁ…”


狂暴化したカラスだらけの部屋をなんとか突破した安裕香ー。


そんな安裕香の様子をモニター越しに見つめながら

”黒蛇”は笑みを浮かべると、

”昨日”、洗脳した安裕香と共に撮影した”録画映像”を、

安裕香が今いる通路のモニターに流し始めるー。


”あっはははははー…

 第2ステージも突破したみたいねー。

 じゃあー、また一つ、教えてあげるー。


洗脳された安裕香の”録画映像”が再生されー、

安裕香は困惑の表情を浮かべるー。


”ーーわたしは安裕香ーーー

 正真正銘、あなた自身ー

 姿が同じ別人じゃなくて、わたしは安裕香ー。”


映像の中の安裕香がクスクスと笑うー。


「ーーど…どういうことー…

 な、何が起きてるのー?」


震える安裕香ー。


しかし、映像は録画映像ー。

安裕香が何を言おうと、”昨日”撮影された通りに

映像は流れ続けるー。


”ーこの格好、素敵でしょ?”

バニーガールの服を自慢するかのように言い放つ

映像の中の安裕香ー。


「ーーーい、いったい誰なの…?」

安裕香は震えながら、そう言葉を口にするー。


だが、映像の中の”洗脳された安裕香”は

淡々と次の部屋に進むように促して来たー。


仕方がなく、安裕香もそれに従うー。


”ここは霧の間ー。

 でも、気を付けてね?

 落とし穴とか、色々なトラップがあるからー


 引っかかったら、死んじゃうよ?


 うっふふふふふふ♡”


スピーカーから、昨日録音された

”洗脳された安裕香”の声が響き渡るー。


しかし、安裕香からすればそんなことは知りようがないー。


友達との下校中に訳も分からないまま目を覚ましー、

今、分かっているのは、

何故か3年が経過していて”2027年”であることー、

そして、モニターやスピーカーを通して語り掛けて来る女は、

”わたし”を名乗っていて、別人ではないと主張していることー…


「ーーー…」

霧の中を進んでいく安裕香ー。

慎重に、慎重に、トラップに引っかからないように

霧の中を進んでいくー。


がーーー


「ーげほっ… げほっげほっ!」

突然、苦しくなって安裕香は咳き込んでしまうー。


「ーーど、毒ー…?」

困惑しながら、安裕香はその方角を進むのをやめて、別の方角に進むー。


辛うじて、霧の部屋の出口を見つけた安裕香は

すぐにそこに飛び込んで、第3ステージ”霧の部屋”を突破したー。


「げほっ…げほ…」

なおも咳き込む安裕香ー。


そしてーー


「ーー!?!?!?」

自分の手に付着した赤い液体を見て、安裕香は目を見開くー。


”吐血”ー

咳き込んだ時に、軽く血を吐いたようだー。


「ーーー…!?」

霧の部屋で”毒”でも吸ったのかもしれないー。


そう思いながら、心配そうにしていると、

その様子をカメラで確認した男ー”黒蛇”が、

事前に録画しておいた映像の一つを再生したー。


”ーふふふふー 体調は大丈夫?”

昨日撮影しておいた”洗脳された安裕香”の映像が

流れ始めるー。


”ーーーご褒美にまた一つ、教えてあげるー”

そんな言葉に、安裕香は苦しそうにしながらその言葉を聞くー。


”わたしねー…”病気”なのー

 ふふふふふー

 3年間も、身体を酷使してきたから、わたしの身体は

 ボロボロになっちゃってー

 ふふふふふふー”


モニターの中の安裕香が笑うー。


「ーび…病気ー…?ど、どういうことー?」

安裕香が今にも泣きそうな表情で言葉を口にするー。


”ーーふふふふふふー…

 ーー苦しくても、前に進むしか方法はないー”


モニターの中の安裕香があざ笑うようにして呟くー。


安裕香は口元の血を拭うと、戸惑いながらも、

”早く…助けを求めなくちゃー”と、そのまま前に進むー。


その様子をモニターで見つけていた”黒蛇”は笑みを浮かべるー


「ククククーなかなか頑張るじゃないかー。

 前に廃棄した女は、絶望してカラスのところで死んだからなー

 

 お前は、なかなか楽しませてくれるようだー」


黒蛇は満足そうにそう言葉を口にすると、

”第4ステージ”である”鉄球部屋”を進む安裕香の姿を見て微笑むー。



そしてーーーー


「ーーーそろそろ”第5ステージ”の準備をー」

黒蛇がそう言い放つと、背後からチャイナドレス姿の女が

姿を現したー。


「ーーーーわたしの出番ですねー」

その女はー、安裕香の友人・百恵だったー。

安裕香が意識が途切れる直前に”一緒に下校していた”子ー。


当然ー、その時、”ジオ・デビルズ”に洗脳されて連れ去られたのは

安裕香だけではないー。

友達の百恵も一緒に連れ去られて”洗脳”され、悪事に使われていたー。


ただー、百恵の方は安裕香とは違い、まだ健康であるため

”廃棄”されず、組織のために使われているー。


「ーーあぁ、そうだー。

 お前の”元友人”にトドメを刺してやれー」

”黒蛇”がそう言い放つと、

百恵は嬉しそうに笑いながら、

モニターの方を見つめたー


「ーー安裕香ー 今、わたしが楽にしてあげるねー」

ナイフを手に、それを舐めながらクスクスと笑うと、

百恵は静かにその部屋を出て、安裕香がやってくるであろう

”第5ステージ”の場所に向かって歩き始めたー…



②へ続く


・・・・・・・・・・・・・・・・・・


コメント


洗脳から解放されたあと…

何も状況が分からないまま脱出を目指す

物語デス~!★


操られていた頃の自分の映像に

煽られながら、脱出を目指すのは、

なんだか怖いですネ~笑


続きはまた次回デス~!

お読み下さりありがとうございました~!

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