＜入れ替わり＞僕とわたしの不思議な青春㊵～変化～ (Pixiv Fanbox)

入れ替わった状態のまま迎えた2度目の冬休みー。

色々な出来事があった2学期のことを振り返りながら、

今年のクリスマスは

”入れ替わり当事者と、それを知るいつもの4人”で

集まってパーティをすることになったー。

そしてー…

★前回はこちら↓★

＜入れ替わり＞僕とわたしの不思議な青春㊴～恋人～

2度目の合唱コンクールも終わりを迎え、 季節は2年目の冬に突入したー。 2学期の終わりも近付く中ー、 色々な不安を抱えつつも、入れ替わった二人は 学校生活を続けていくー。 そんな中、翔太と小さい頃に親しかったクラスメイト・伊藤　菜々美は 転校生のお嬢様・神宮寺　真莉愛に接触し、 その父親が研究しているとい...

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

★主な登場人物★

遠藤　翔太（えんどう　しょうた）

C組生徒。大人しく、奥手な性格の持ち主。綾と入れ替わってしまう。

星村　綾（ほしむら　あや）

C組生徒。可愛らしい雰囲気に、明るい性格の持ち主。翔太と入れ替わってしまう。

神田　哲真（かんだ　てつま）

C組生徒。翔太の中学時代からの友人。女子は苦手。

山井　穂乃果（やまい　ほのか）

C組生徒。綾の親友。入れ替わりを知ってからも変わらず接してくれている。

伊藤　菜々美（いとう　ななみ）

C組生徒。翔太が小さい頃親しかった相手。弟の死で心を閉ざしている。

星村　美桜（ほしむら　みお）

綾の妹。いつも元気な性格の持ち主。

★脇役も含めた人物紹介はこちら↓★

＜人物紹介＞僕とわたしの不思議な青春～登場人物図鑑～

長編入れ替わりモノ 「僕とわたしの不思議な青春」の 登場人物図鑑デス！ 連載前に予告として掲載した、 主人公たちのクラス名簿の内容に加え、登場する教員や その他の人物もご紹介しています～！ ※ネタバレは控えめ（漫画や小説の最初の方のページに書かれている 　人物紹介ぐらいの内容…）デス～！ 　最初にクラス名...

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

2学期が終わり、迎えたクリスマスイブー。

綾（翔太）と、翔太（綾）、

そして二人の入れ替わりを知る哲真と穂乃果の4人は、

”綾”の家に集まってクリスマスのひと時を楽しんでいたー。

”また、大きくなったねー…美桜ー”

今年から高校に入学した妹・美桜と久しぶりに対面した

翔太（綾）は、内心でそんな風に思うー。

「ーーーーわたしの顔、何かついてます？」

笑いながら自分の顔を指差す美桜ー。

「ーあ、う、ううんー…そ、そういうわけじゃなくてー」

翔太（綾）は、そんな言葉を口にしながら、

少し顔を赤らめるー。

”妹”が、まるで”他人”のようなー…

なんだかー、たくさん話したいのに話せないー

そんな、不思議な距離感になってしまったー。

”入れ替わることで、肉親との距離が生まれるー”

とても不思議でー、

とても切ない感覚ー

「ーあ、お姉ちゃん！そっちをお願い～！」

パーティの準備をしながら、美桜が綾（翔太）に対して

そんな言葉を口にするとー、

「うん、わかった～！こっちはわたしに任せて！」と、

綾（翔太）が、そんな返事をするー。

入れ替わってもうすぐ2年ー。

すっかり、”翔太”や、綾の身体でお姉ちゃんになりー、

すっかりー、”綾（翔太）”と”美桜”は、

姉妹になったー。

「ーーー…大丈夫？

　美桜ちゃんにも、伝えたら？」

親友の穂乃果が、小声で翔太（綾）の近くにやってきて

言葉を口にすると、翔太（綾）は、寂しそうに微笑みながら

首を横に振ったー。

「ーー美桜を、困らせちゃうだけー。

　だから、これでいいのー」

とー。

例えばー…

”綾になった翔太”が、美桜をいじめていたりー、

美桜を困らせるようなことをしているのであれば、

話は別だー。

しかしー…

パーティの準備をしながら笑っている”綾と美桜”を見て、

翔太（綾）は寂しそうにー、けれども安堵の笑みを浮かべるー。

そんな、心配はいらないー。

伝えればー、美桜も”非日常”に巻き込むことになるー。

こんな思いはー、美桜にはさせたくなかったー。

「ーーーそー…。

　綾がそれでいいなら、いいけどー。

　でもーーー…それなら”そんな顔”してちゃダメだよ？」

穂乃果の言葉に、翔太（綾）は、自分が寂しそうな表情を

浮かべていることに改めて気付くと、

「ーーーふふー…そうだね」と、そう言葉を口にしたー。

・・・・・・・・・・・・・・・・・

「メリークリスマス～！」

パーティ用のクラッカーを手に、美桜が嬉しそうに声を出すー。

「ーーへへーーうまそうなものがたくさんー！」

翔太の親友・哲真が嬉しそうに言うー。

「ーーいただきま～す！」

翔太（綾）も、美味しそうな食事を前に嬉しそうに

そう言葉を口にするー。

「ーこのケーキおいしい！」

綾（翔太）が、美味しそうにケーキを食べると、

それを見た翔太（綾）も、「あ、僕にもー！」と、

そんな言葉を口にするー。

「ーーねぇねぇ、遠藤さんとお姉ちゃんは

　もう付き合ってるんだよね？」

ニヤニヤしながら、美桜が、綾（翔太）にそう言葉を口にするー。

「ーーぶっ…！　だ、だから、まだだってば」

綾（翔太）が顔を赤らめながら言うと、

翔太（綾）も苦笑いしながら

「ーーあははー僕たちは、まだー」と、そんな言葉を口にしたー。

「ーーはははははー」

親友の哲真も、笑いながらそんな様子を見守るー。

「ーー久しぶりに美桜ちゃんと会ったけど、やっぱり面白いなぁ～」

綾の親友・穂乃果が笑うー。

「ー綾推しだけじゃなくて、美桜ちゃん推しにもなりそう～！」

穂乃果が揶揄うような言葉を口にすると、

綾（翔太）は「み、美桜に変なことしちゃだめだからねー！？」と、

咄嗟に”姉”として反応したー。

「ーーーあははー」

翔太（綾）が、そんなやり取りを見ながら笑うー。

「ーー！　ふふー、冗談冗談ー」

穂乃果は、そんな言葉を口にしながら

少しだけその表情を曇らせたー。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

楽しいクリスマスイブのひと時は終わりー、

綾（翔太）が「あ、遠藤くんを駅まで送って来るねー」

と、妹の美桜に言うー。

「ーーは～い」

美桜は言いながら、後片付けを終えた部屋で満足そうに

微笑むと、「また来てくださいね～！」と、

翔太（綾）に手を振るー。

「ーーうん」

翔太（綾）は嬉しそうにー、けれども寂しそうに頷くと、

「ーー頑張ってねー。美桜ーーー」と、小声でそう呟いたー。

綾の家を出る4人ー。

綾（翔太）と翔太（綾）が駅に向かうー。

哲真と穂乃果は、”翔太の家”とはまた方角が違うため、

そこで4人は解散したー。

「ーーーーー」

二人で、夜の街を歩く哲真と穂乃果ー。

「ーーーだんだんさー」

穂乃果が、ふとそんな言葉を口にするー

「ーーん？」

歩きながら哲真が穂乃果の方を見ると、

「ーだんだん、二人とも”今の身体”に慣れて来てるよねー」

と、穂乃果はそんな言葉を口にしたー。

「ーーまぁなー

　あいつらももう、入れ替わって2年近くだからなー」

哲真がそう言いながら頷くと、

穂乃果は寂しそうに呟くー。

「ーーーーさっきもさー…

　美桜ちゃん推しになりそう！ってわたしが言ったときー

　綾じゃなくて、あの子の方が、先に反応したでしょー？」

穂乃果が言うー。

さっき”美桜”のことを言った時に

先に反応したのは”翔太（綾）”ではなく、”綾（翔太）”だったー。

”翔太”は、もう、すっかり、自然と”星村　綾”になっているー。

そして、それは綾の方も同じー。

すっかり自然と”遠藤　翔太”になってるー。

哲真は少し戸惑いながら「そうだなー」と、頷くー。

「ーー最近、話してて思うのー。

　綾、”わたしといるとき”は、無理してる気がするってー」

穂乃果が寂しそうに呟くー。

翔太（綾）と話していると、

綾が、”綾であろうと意識して”必死になっているような、

そんな感じがするー。

入れ替わり生活が長引くうちに、

”元の自分”として振る舞うほうが”違和感”になりつつあってー、

”今の自分”として振る舞うほうが”自然”になりつつあるー。

そんな風に感じるー。

「ーーー翔太のやつも同じだよー」

哲真は、そんな言葉を口にするー。

「あいつもー…だいぶ”無理”してるー

　俺と二人の時も、この前、普通に”星村さん”になってたしー」

哲真が少しだけ寂しそうに、自虐的に笑うー。

歩道で輝くイルミネーションを見つめながら、

穂乃果は「そうなんだー」と、そう呟くと、

「ーーーこのままだと、綾が綾じゃなくなっちゃうような気がしてー」と、

”入れ替わった当事者なわけじゃないのに焦ってるー”と、

そんな気持ちを穂乃果は吐き出すー。

「ーーははー…気持ちは分かるぜー？

　でもー…この先どうなったとしても翔太は翔太ー、

　星村さんは星村さん、だろ？

　あの二人から”元々の記憶が消えるわけじゃない”んだからさー。

　俺はー、翔太のやつがたとえこの先ー、

　今までのように振る舞えなくなったとしてもー…

　いつまでも親友でいるつもりだぜー？」

哲真がそう言うと、

穂乃果は寂しそうにイルミネーションを見つめながら微笑んだー。

「ーー綾は綾ー

　うん、そうだねー」

穂乃果は自分に言い聞かせるようにそう言葉を口にすると、

「でもーー」と、静かに言葉を続けるー。

「ーーーやっぱり、寂しいよー」

穂乃果の言葉に、哲真は少しだけ笑うと、

「ーーーだよなー。」と、穂乃果の言葉に対して静かに頷いたー。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

駅に向かって歩く綾（翔太）と翔太（綾）ー

”「ーー来年のクリスマスー…

　”自分の身体”で告白できるように、僕、頑張るー」

「ーーうん。わたしもー。戻れるように頑張る」”

去年のクリスマスー

二人で交わした会話を思い出すー。

「結局ー、”自分の身体”でーー言えなかった」

綾（翔太）が残念そうに笑うと、

翔太（綾）は「ふふー…まだ来年もあるでしょ？」と、

少しだけ寂しそうに笑うー。

しかしー

二人の心境には、

去年とは決定的に違うことがあったー。

去年のこの時期ー、

二人は”必ず元に戻る”と、そんな固い決意を”まだ”抱いていたー。

でも、今はーーー

”元に戻ること”に対して、複雑な感情を抱いているー。

二人とも、あまりにも長く”相手の身体”で

生活しすぎてしまったのかもしれないー。

「ーーーーー」

寂し気な空気が流れるー。

「ーあ、そうだー。

　ーーさっき、渡しそびれちゃったけどー、

　はい、これー」

綾（翔太）が、”クリスマスプレゼント”を取り出して、

翔太（綾）に渡すー。

「ーーわ！ありがとうー！」

翔太（綾）が嬉しそうに笑うー。

”自分へのプレゼント”ー

元に戻った時、”クリスマスプレゼント”は、どうなるのだろうー。

そんな、”細かいこと”も考えずにはいられないー。

だからーーー

綾（翔太）は”今”楽しめるものを用意したー。

「ーーー”僕の口”に合いそうなお菓子の詰め合わせだけどー

　きっと、僕の身体だから、美味しいと思うー」

綾（翔太）が苦笑いしながら呟くー。

”翔太”が、美味しいと感じていたお菓子の詰め合わせー。

今、”翔太”の身体を使っている綾には、きっとおいしく感じられると思うー。

そんな思いを込めて、プレゼントを用意したー。

「ーありがとう！遠藤くん！」

嬉しそうにしながら、翔太（綾）はプレゼントを受け取るー。

「ーーはい、わたしからも、これ！」

翔太（綾）も、プレゼントを用意していたらしく、

それを取り出すと、綾（翔太）にそれを手渡したー。

どうやら、”翔太”が好きなカードゲームの新商品の詰め合わせのようだー。」

「ーーあ！すごい！ありがとう！」

嬉しそうにカードを見つめる綾（翔太）ー。

輝くイルミネーションの中ー

高校生活2年目のクリスマスが終わるー。

”告白は、自分の身体でー”

去年のクリスマスの”約束”を果たせる日は、来るのだろうかー。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

数日後ー

綾（翔太）の元にクラスメイトの伊藤　菜々美から連絡が入ったー。

菜々美は、翔太が小さい頃親しかった子で、

現在、心を閉ざしている”理由”は、文化祭の時に聞いたけれど、

今もなお、”解決”していない状態だったー。

その菜々美からの電話に、少し驚く綾（翔太）ー

「ーわたしに話って？」

綾（翔太）がそう言葉を口にすると、

”ーー今は学校じゃないんだから、星村さんのフリしなくていいよ”と、

菜々美が電話の向こうから指摘して来るー

”菜々美”は入れ替わりのことを知っているー。

がー、”つい”「綾モード」で喋ってしまったー

「ーーーえ…あ、あぁ、うんー

　ほら、今、家だから家族に聞こえるかもだしー」

綾（翔太）はそんな言葉を口にするー。

ーーー嘘だー。

菜々美が入れ替わりのことを知っていることも

当然分かってたー。

でもーー

”自然と”星村　綾として喋ってしまったー

”ーーまぁいいやー…

　それでー…遠藤くんー。

　二人が”元に戻れるかもしれない可能性”を見つけたんだけど”

菜々美の言葉に、

綾（翔太）は「えっ…！？も、元にー！？」と、戸惑うー。

”ーそう…あくまで”可能性”だから、

　今すぐに戻れるわけじゃないけど、

　可能性は色々あった方がいいでしょ？”

相変わらず、あまり感情を感じさせない菜々美の声ー。

昔の菜々美を知ってるからこそ、綾（翔太）は、

その声に違和感を感じながらも、言葉と続けるー。

「ーやっぱり、伊藤さんは優しいねー。

　わたしたちのために、ありがとうー」

綾（翔太）がそう言うと、

菜々美は”その話し方、やめない？”と、言おうと思ったものの、

”家族に聞かれる可能性もある”と、綾（翔太）が言っていたのを

思い出して思いとどまったー。

”ーーーー…そんなんじゃないけどー…”

菜々美はそれだけ言うと、その”可能性”について説明し始めるー。

その”可能性”とはー、

転校生・神宮寺　真莉愛の父親ー…

神宮寺　寛治が個人的に”娯楽”として研究している”人格転移”ー。

お金持ちのお嬢様・真莉愛の父親、神宮寺　寛治は、

”神宮寺コーポレーション”という大企業の社長ー。

そんな彼は、”個人的に”色々な研究を行っていて、

その一つが”人格転移”なのだと言うー。

その話を聞いた菜々美は、神宮寺　真莉愛を通じて、

先日、真莉愛の父親と会い、話も聞いたー。

翔太たちの知らない場所で、菜々美も色々と動いているのだー。

”ーーもちろん、人格転移なんて簡単にできるはずもないし、

　あくまでも研究しているだけみたいだけどー、

　でもー…遠藤くんと、星村さんのような

　”実際に入れ替わった二人”がいれば、もしかしたらー、

　二人が元に戻る方法も見つかるかもしれないー

　ーーって、そう思ったのー”

菜々美の言葉に、綾（翔太）は、

戸惑いの表情を浮かべながらスマホを握りしめるー。

”ーーーもちろん、遠藤くんたちのことはまだ言ってないから、

　どうするかは二人で決めてー。

　もし、神宮寺さんのお父さんに話をするとなると、

　神宮寺さんのお父さんと、たぶんー…神宮寺さん本人にも

　入れ替わりのことは気付かれることになるからー…

　そこも含めて、二人で話し合って決めてー。”

菜々美の言葉をそこまで聞くと、

綾（翔太）は「本当にありがとうー」と、そう言葉を口にしたー。

”ーーーーー”

菜々美は、少しだけ間を置くと、少しだけ躊躇いがちに言葉を続けるー。

”ーーわたしは、遠藤くんに元に戻ってほしいからー”

とー。

「ーーえ？」

綾（翔太）が、聞き返すー。

”ーーーううんー。答えが決まったら、教えてー。

　わたしが神宮寺さん側に、話ができるようにセッティングするから”

菜々美の言葉に、綾（翔太）は「ありがとうー。星村さんと話し合ってみる」

と、そう言葉を口にしたー。

「ーーー」

電話を終える綾（翔太）ー

そういえば、伊藤さんは昔からまるでお姉さんのような感じでー

行動力の塊でもあったー。

今もやっぱり、そこも変わっていないー。

そんなことを思いつつ、綾（翔太）は呟くー。

「ーーもしかしたらー…

　もうすぐーこの家にいられなくなるのかもねー」

少しだけ、寂しそうにー。

けれどもー、元に戻りたい気持ちもあってー、

胸が張り裂けそうになりながらー…。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

年末ー。

「ーーそうだったんだー…

　伊藤さんは、わたしたちのこと、知ってたんだねー」

綾（翔太）は翔太（綾）に菜々美から言われたことを

相談していたー。

ファミレスで軽く食事をしながら、話を続ける二人ー。

「ーうんー。僕から言ったわけじゃないんだけどー、

　伊藤さんの方が気付いたからー」

綾（翔太）が苦笑いすると、

翔太（綾）は真剣な表情で、神宮寺　真莉愛の父親の

力を借りるかどうか、考えるー。

二人で色々なことを相談するー。

しかしー、翔太も綾も、

”自分が元に戻りたいと思っているのか”も、

ハッキリと分からなくなりつつあったのは、事実だったー。

真莉愛の父親に相談すれば、

神宮寺　真莉愛と、その父親に”入れ替わり”のことを知られる

ことにはなるー。

しかし、真莉愛は”平民の皆さん”などと、世間知らずゆえの

とんでもない発言を日々繰り返してはいるものの、

性格的には至って真面目な感じで、

今年1年、クラスメイトとして見ていて、

嘘をつくようなタイプではなく、約束はしっかり守ってくれるいう

感じはするー。

入れ替わりのことを話しても、それを言いふらすようなタイプでは

ない、とは思うー。

真莉愛の父親の方は分からないけれども、

綾（翔太）は”伊藤さんが実際に会って僕たちに話を持ち掛けて来た

ということはー、きっと、大丈夫なんだと思うー”と、

そんな自信を内心で抱いていたー。

菜々美には、小さい頃の関りから強い信頼があるー。

その菜々美が”相談を勧めている”のだから、きっと大丈夫だとー。

色々と二人で考えた結果ー、

綾（翔太）と翔太（綾）は決断するー。

「ーー話だけでも、聞いてみよっかー」

翔太（綾）の言葉に、綾（翔太）も頷くー。

あくまでも”真莉愛の父親が趣味で人格転移の研究をしている”

というだけー。

すぐに元に戻れるわけではなく”可能性のひとつ”でしかないー。

ただ、可能性があるのであればー

やっぱり、それを膨らませておくことは大事なことかもしれないー。

元に戻ることを諦めた途端ー、

自分は、自分でなくなるー

そんな気がするー。

「ーーーじゃあ、あとで伊藤さんに連絡してみるねー」

綾（翔太）がそう言うと、

翔太（綾）は「うんー。ありがとうー」と、

少し複雑そうに、そんな言葉を口にしたー。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

”年明け後の1月4日か5日なら会えるみたい”

後日ー

菜々美からそう連絡が返って来たー。

綾（翔太）は、そのメッセージを見て

色々な感情を抱きながら、

”うんーありがとう”と、返事を送るー。

そしてー、翔太（綾）と相談した上で、

1月4日に、真莉愛の父親と会うことを決めたー。

1年生の春から始まった

この不思議な青春が終わりを迎える日は

刻一刻と迫っているのかもしれないー

”夢”で見たようにーーー

”入れ替わっていた間”に得たものを失うー。

そんなことにならないことを祈りながら

綾（翔太）は意を決して、時計を見つめたー

今日は大晦日ー。

”今年”はおわりー、

また、”新年”を迎えたー。

㊶へ続く

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

★2-Cの日常★

年末のある日ー。

綾（翔太）は、

同じカードゲーム部に所属し、クラスメイトでもある

イケメン男子・足立　幸也と、

親友の哲真と共にカードショップを訪れていたー。

ちょうど、菜々美からの相談を、翔太（綾）に話した翌日のことー。

当然、入れ替わりのことをずっと悩んでいるわけにもいかず、

二人にはプライベートな時間もあるー。

今日は、翔太（綾）は、美術部の倉守　詩音と共に

美術展に行っていると聞いたー。

「ーーーわ！すごい！ねぇねぇ神田くん！これ当たった！」

綾（翔太）が嬉しそうに言うと、

哲真は「おっ！すごいじゃん！」と、そんな言葉を口にするー。

「ーははは、星村さんはホントに運がいいなぁ」

幸也も笑いながら、そんな綾（翔太）を見つめると、

「あ、そうだ！せっかくだし、俺の新しいデッキと1戦どうかな？」と、

カードショップのデュエルスペースを指差しながら、

そう言葉を口にするー

「ーあ！うん！わたしもこのカード試してみたい！」

と、嬉しそうに綾（翔太）が、幸也と共に

デュエルスペースに向かうー。

”ーーははは、カードショップにいる時は、翔太っぽさを感じるよなー”

哲真は、内心で入れ替わる前と同じように無邪気に楽しそうに

している綾（翔太）を見つめるー。

がーー

”ーーーー”

綾（翔太）が、落ち着いた雰囲気とは言え”ネイル”をしているのを見て、

少しだけ表情を歪めるー。

クリスマスの日ー、綾の親友である穂乃果も言っていたー。

だんだんとーー

翔太が翔太ではなくなりー、

綾が綾ではなくなっているーー

そんな実感は、哲真の中にもあるー。

けれどーーー

「ーーーーへへーどっちが勝つか俺は見届けてやるとするかなー」

哲真は決めたー

この先”翔太”がどうなろうと、自分は”親友”として、

支えていこうー

とー。

きっと、”翔太”も、変に気遣われるように

その方がやりやすいだろうからー…

哲真は

そう、心の中で改めて決意するのだったー。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

コメント

ついに第40話を迎えました～！★

戻る？戻らない？の話が出ていますが

ちゃんと3年生編も同じ長さで存在するので

安心してくださいネ～笑

戻るのかどうかはネタバレになるので、

口を閉じておきます～笑☆

今日もお読み下さりありがとうございました～～！