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「ーーー他人と入れ替わることができる糸?」

彼女の相馬 紗理奈(そうま さりな)が不思議そうな表情を

浮かべながらそんな言葉を口にしたー。


「ーーあぁ、じいちゃんの家を整理してたら、見つけてさー

 親もいらないって言ってたから、持って来たんだー」


そう言いながら、彼氏の村中 達志(むらなか たつし)は、

祖父の家から持ってきたという、”赤い糸”を紗理奈に見せるー。


「へ~~~なんだか面白そうー」

興味深そうに”赤い糸”を見つめる紗理奈ー。


紗理奈は都市伝説とか、不思議な現象とか、

そういうものが好きな子でー、

高校時代に”オカルト部”に入部したことをきっかけに出会った子だー。

当時、別々のクラスでお互いに面識もほとんどなかったものの、

部活での活動を通して親しくなっていき、

偶然、大学も同じところに進むと知ってからは、さらに意気投合ー、

今はお互いの両親に許可を取った上で、同棲しながら大学に通っているー。


周囲からは、

とても可愛らしい雰囲気であるものの、

そんな変わった趣味を持つ、不思議な子ー、と思われている紗理奈ー。


先日、達志は少し前に亡くなった自分の祖父の家の後片付けを

手伝いに行き、その際に”紗理奈が好きそうなモノ”である、

この”他人と入れ替わることができる赤い糸”を見つけて、

こうして持って帰って来たのだー。


「ーーまぁ、でも、本当に入れ替わったりはしないと思うけどー」

笑いながら言う達志ー。


「ーでも、案外本当に入れ替わっちゃうかもよ?」

赤い糸を興味深そうに見つめていた紗理奈は、自分の手に早速糸を

巻きつけると「はい!たっくんも!」とそう言葉を口にしながら

微笑むー。


”たっくん”とは、達志のあだ名だー。

高校時代に仲良くなってからはずっと、そう呼ばれているー。


「ーはははー…仕方ないなぁ~」

達志は、実際に入れ替わることなんてないだろう、と思いながら

紗理奈に付き合って、赤い糸を自分の糸に巻き付けたー


そしてーーー

ノリの良い達志は、入れ替わっちゃった演技をしながら、

「ーーわ、わたしたち、入れ替わってる~~~!?」

と、ふざけて声を発したー。


がーーー


「ーーーーえ????」

達志は困惑するー。


今、自分の声”じゃなくて、”紗理奈の声”で

”「ーーわ、わたしたち、入れ替わってる~~~!?」”

と、いう声が聞こえたー。


いやー、それだけではないー

目の前に”自分”がいるー。


驚いたような表情を浮かべながら、

瞬きをしている”自分”がー


「ーーーは????」

達志が思わず視線を下に落とすとー、

そこには自分の身体ではあり得ないはずの胸の膨らみー


そしてー自分が履いていることなど絶対にあり得ないはずの

スカートが目に入ったーー


「ーーーひぇぇぇ!?本当に入れ替わってる!?」

思わず、そう叫んでしまう紗理奈(達志)ー


「ーーす…すごい…何これ…?」

達志になった紗理奈の方も、本当に入れ替わるとは思っていなかったのか、

心底驚いたような表情を浮かべながらそう言葉を口にするー。


お互いに、まさか本当に入れ替わるとは夢にも思っていなかったのか

それぞれ驚きの表情を浮かべていると、

紗理奈(達志)の方が、ハッとした様子で言葉を口にしたー


「あ、ご、ごめんー。まさか本当に入れ替わるなんて思わなくてー」


死んだ祖父の家の中に、

英語で書かれた古びた説明書らしきものと一緒に置かれていた赤い糸。

そこに、確かに”お互いの身体を入れ替える”とは書かれていたものの、

まさか本当にこんな風に身体が入れ替わってしまうとは

夢にも思わなかったー。


「ーーすぐに元に戻すからー待ってて」

紗理奈(達志)は申し訳なさそうにしながら、

入れ替わった時にほどけたと思われる赤い糸を再び指に

巻きつけると、達志になった紗理奈に向かって反対側を手渡すー。


がーー


「ーーーねぇねぇ…せっかくなんだしー

 急いで元に戻る必要もないんじゃない?」

達志(紗理奈)がそんな言葉を口にしたー。


「ーーえっ!?えぇっ!?

 で、でも、紗理奈の身体を勝手に使うわけにはーー」


「ーーー別にいいよ」


紗理奈(達志)の言葉を遮るようにして

あっさりとそう言い放つ達志(紗理奈)ーー


「え…えぇっ!?」


「ーーわたしが”いいよ””って言ってるんだからー

 ”勝手に使う”わけじゃないでしょ??

 だから、安心してー


 だってすごくない!?

 わたし、男になってるんだよ!?

 こんな経験、絶対に普通はできないし!」


達志になった紗理奈は、心底興奮した様子でそう言うと、

腕をぶんぶん振って見たりー、

「あ~~この髪が短い時の感覚~懐かしい~!」と、

ロングヘアーの紗理奈の身体とは全く違う髪の長さに喜んだり、

「あ~~~!子供の頃を思い出すぅ~!」と、

胸の膨らみがない身体に、新鮮味を感じているのか

「なんか、すごっ!」と、はしゃぎながらそう言葉を口にしたー


心底嬉しそうな達志(紗理奈)を見つめながら

紗理奈(達志)が「はははー…楽しそうで何より」と、

そう言葉を口にすると、

「たっくんも、せっかくなんだし、色々試してみたら?」と、

笑いながら達志(紗理奈)が言葉を口にしたー


「ーーえ…いや、でもー…」

紗理奈(達志)が遠慮していると、

「別にいいよー。ほら、”自分の”胸を揉む感触とか、男子は分からないでしょ?

 せっかくなんだし、経験しちゃいなよ!」

と、達志(紗理奈)が笑うー。


紗理奈は特別、Hなタイプの子ではないものの

好奇心旺盛で、こういった未知の経験にはとても強い興味を示すー。


「ーーーえぇぇぇ…」

紗理奈(達志)は戸惑うー。


恋人同士として”そういうこと”は経験したことはあるー。

けれど、”紗理奈自身になってー”と、なると

話は変わって来るー。

なんだか、妙にいけないことをしているような、

そんな気持ちになってしまうー。


「ーーーーーそ、そんなに戸惑わなくても~!

 せっかくだから、わたしは色々触っちゃうよ!」

達志(紗理奈)は、そんなことを言いながら

ズボンの上から、男の身体にしかないソレを触って、

「わっ!なんか変な感覚!何これ!?」と、

自分の身体では決して味わうことのできない感触を

味わっているー。


「ーーは…はははー」

紗理奈(達志)は戸惑いながら、

そんな”自分”の姿を見つめるー。


自分自身が嬉しそうにアレを触っている姿を見ると、

何だか、言葉には言い表しがたい変な感覚に陥りそうになるー。


「ーねぇねぇ、たっくんも絶対、色々試した方がいいよ!

 なんか、もうー、未知の領域って感じですごいから!」

と、達志(紗理奈)が、心底嬉しそうに言うー。


「ーーあははー…未知の世界かぁ」

紗理奈(達志)は、そう言いながら、

ゴクリと唾を飲み込んでから、胸を触るー。


「ーーーー…」

少し胸を揉んだだけで、恥ずかしさからだろうかー、

顔が真っ赤になっていくのが分かるー。


”触る”のと”触られる”のではまるで違うー。

女子の場合、他の子のを触ることもできるし、

触られることもできるけれどー、

男子の場合は、”触られる”という経験はできないー。


「ーー…ーえ、ーーー…こ、こんな感じなんだー」

紗理奈(達志)は、恥ずかしそうに驚いた様子で

そう言葉を口にすると、

達志(紗理奈)は笑いながら、

「やっぱり、異性の身体ってなんか不思議だね!」と、

好奇心を隠しきれない、という様子でそんな言葉を口にしたー。


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


結局ー、

昨日は、存分に入れ替わり状態を楽しんで元に戻った二人ー。


「やっぱり、自分の身体に戻ると、

 旅行から家に帰って来た~!みたいな安心感があるね!」

紗理奈はそんな風に言っていたー。


達志自身も、同じように思いながら

昨日のことを思い出しつつ、大学に行く準備をしていると、

紗理奈が突然、とんでもない提案をし始めたー


「ーーーねぇねぇ、今日だけ”身体を交換”した状態で

 大学に行かないー?」


紗理奈の突然の言葉に、達志は「え…!?えぇっ!?」と、

困惑の表情を浮かべるー。


「ーーわたしがたっくんとして1日大学で過ごして、

 たっくんがわたしとして1日過ごすの!

 なんか、面白そうじゃない?」


紗理奈の言葉に、達志は「た、確かに面白そうだけどー」と、

苦笑いしながら「でも、俺、紗理奈になりきれる自信、ないよ?」と、

そんな言葉を口にするー。


入れ替わった状態で大学に向かうということは、

当然、相手のフリをしなければならないー。

しかし、達志には”紗理奈”として振る舞い切れる自信はなかったー。


「ーーそこはお互い連絡を取り合いながら!

 ね?1日だけ!お願い!」

紗理奈が楽しそうにそんな言葉を口にするー。


「う、う~~~~ん?」

困惑の表情を浮かべながら、紗理奈から目を逸らしつつ、

考え込む達志ー。


幸い、今日はお互い大して大事な予定も大学ではないし、

確かにお互いに相手のことはよく知ってはいるー。


”相手の立場で大学に行く”ということを、

体験してみたい気持ちがない、と言えば嘘になるのも事実だー。


「ーーー」

色々なことを考えながら、達志はようやく顔を上げると、

「ーじ、じゃあ、今日1日だけ、やってみるかー?」と、

そう言葉を口にすると、紗理奈は「さすがたっくん!」と、

嬉しそうにそれに応じたー。


昨日と同じように”入れ替わりの糸”を使って

互いの身体を入れ替える二人ー…


やがて、身体が入れ替わると、二人はお互いを見つめながら

「また、入れ替わったー…」と、改めて驚きの言葉を口にしたー。


慣れない準備にドタバタしつつも、

互いに相手に手助けしてもらいながら、

大学に行く準備をするー。


「ーこんな感じでいいのかー?」

メイクを終えた紗理奈(達志)が、鏡を見つめながら、

達志(紗理奈)にそう確認するー。


「あ、うん!いい感じいい感じー!」

達志(紗理奈)がそう言うと、

「あ!ーそうだ紗理奈!俺の身体では髭剃りしないと!」と、

そんな言葉を口にするー。


「ひげ?あ、そ、そうだったねーうんうん!」

達志(紗理奈)が慌てた様子で、紗理奈(達志)に確認しながら

準備を進めるー。


今後は、紗理奈(達志)が、髪型のことで色々相談しながら

やがて、二人はしっかりと準備を終えるとー、

そのまま、大学に向かうべく、家の戸締りを始めたー。


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


大学にやってきた二人はー

”またお昼にー”と、約束して別々の場所へと向かうー。


「ーーーーーー」

紗理奈(達志)は、少し恥ずかしそうにしながら、

周囲を見渡すー。


”ーなんか、スカートって落ち着かないよなー

 いけないものを履いてる気分になるー”


意味もなくソワソワしながら周囲を見渡す紗理奈(達志)ー。


しかし、やがてだんだんと気持ち的にも落ち着いて来たのか、

紗理奈から聞いた通り、1限目を受けるまでの時間を潰すー。


「ーーーーあ」

紗理奈(達志)は、ふと自販機の前でスマホを

いじっている男子大学生の姿を見つめると、

うっかりといつものように声をかけてしまったー


「ーお~!高橋(たかはし)」

紗理奈(達志)は、自分が紗理奈であることを

もううっかり忘れて、そんな声の掛け方をしてしまうー。


しかしー、自分の口から出たのは、”紗理奈”の声ー。

当然のことながら、すぐに”自分のミス”に気付かされるー。


「ーーーあっ!」


「ーーえ!?」

しかし、時既に遅く、達志の友人である

高橋 公則(たかはし まさのり)は、驚いた表情を

浮かべながら、紗理奈(達志)の方を見つめたー。


「ーーーあーーーた、高橋ー、くんー」

慌てて、紗理奈(達志)は、自分が紗理奈であったことを

思い出し、そう言い直すと、公則は

「そ、相馬さんー」と、紗理奈の名前を口にしたー。


達志の友人である公則は、当然、達志の彼女である紗理奈のことも

知っているし、面識もあるー。

しかし、紗理奈と公則自身は別に特別な関係でもなんでもないために、

いきなり声を掛けられて、戸惑っている様子だったー。


「ーーーあーーえ、えっと、飲み物を買おうと思ってー」

紗理奈(達志)は、苦笑いしながらそう言うと、

公則は「あ、ーど、どうぞどうぞー」と、自販機の前に立っていた

自分が邪魔になっていることに気付いて、慌ててその場から

退くー。


(え~っと、俺は普段これを飲むけどー

 確か、紗理奈はこれ苦手って言ってたからー、

 今飲んでもきっとおいしくないんだよなー?)


そんなことを思いながら、何を買うか考える紗理奈(達志)ー


昨日の入れ替わりで”味覚の違い”も経験したー。

普段自分が好きなものでも美味しく感じなかったり、

その逆もあったー。


普段の感覚で飲み物を買えば、失敗するかもしれないー。


そう思いつつ、紗理奈(達志)は、

無難なお茶を選ぶと、ボタンを押したー


がーー


「あれ…出て来ないー」

紗理奈(達志)は表情を歪めるー


”また”だー。

前も一度この自動販売機で飲み物が出て来なくて

面倒なことになったことがあるー。


その時も、友人の公則は一緒にいて、

ゲラゲラと笑っていたー。


確かー

”自販機にシカトされてやがる!”とか、そんなことを言っていたー。


がーーー


「ーー相馬さんー。もしかして、出て来ないのかー?」

公則が心配そうに声をかけて来るー。


紗理奈(達志)は「あ、おーー…う、うんー」と、頷くと、

公則は心配そうに「ちょっといいかな?」などと、

自動販売機を色々と確認し始めるー。

ボタンをもう一度押して見たり、返却のところをいじったりー。


「ーーわ、笑わないのー?」

つい、紗理奈(達志)がそんな言葉を口にすると、

公則は恥ずかしそうに「ひ、人の不幸を笑ったりしないよー」と、

一生懸命自販機の確認を続けるー。


そんな光景を見て、紗理奈(達志)はー

”いや、お前、俺が同じ状況になったとき、滅茶苦茶笑ってたじゃん”と、

そう心の中でツッコミを入れたー。


やがてー…

「ーーーー出て来ないなぁ… あ、そうだー

 俺がおごるよー」

と、公則はそう言いながら、隣の自販機から同じようなお茶を

購入して手渡してくるー


「ーえっ!?えっ!?そんなに優しかったっけー!?」

思わず、変なことを口にしてしまう紗理奈(達志)ー


が、公則は「ははー…達志から何を聞いてるか知らないけど、

俺は親切なんだぜ?」と、冗談めいた口調で言うー。


「あ、ありがとうー」


そんな言葉を口にしながら、紗理奈(達志)はお茶を受け取るー。


戸惑いながらも、最初の授業に向かう紗理奈(達志)ー


”紗理奈になったことによる周囲の反応の変化”

それを、本格的に知ることになるのは、

まだ少し先の話だったー…。



②へ続く


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


コメント


入れ替わったことによる周囲の反応の変化や、

日常を描くお話デス~!☆


早速、友人の変化に戸惑っている達志くん…!


次回もぜひ見届けて下さいネ~!


今日もありがとうございました~!☆

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