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「ーー今日はなんだか嬉しそうだねー!

 何かあったの?」


三枝 姫梨(さえぐさ ひめり)が、

嬉しそうにしている彼氏の今岡 康博(いまおか やすひろ)に、

そう言葉を掛けると、康博は「え?そうかなぁ?」と、

ご機嫌そうに笑いながら言葉を口にするー。


姫梨は、そんな康博を見て

「どうして嬉しそうなのか、当ててあげよっか?」と、

そんな言葉を口にするー。


「ーーえ~?」

康博が笑いながら、姫梨のほうを見ると、

姫梨は「ーーこれの発売日!」と、

康博がいつも楽しみにしている漫画の単行本の最新刊が

表示されたスマホを康博に見せつけたー


「ーーははー、ホント、姫梨は何でもお見通しだなぁ」

そう言いながら、康博は「ーーだって今回の巻はさー!」

などと、興奮した様子でその漫画について語り始めたー。


キャラクターの名前を具体的に出されても、

正直、姫梨には何のことだか分からなかったものの、

彼氏の康博がとても楽しそうにしているのを見て、

微笑ましく思いながら、その話を聞くー。


今日もー、大学での穏やかな1日が過ぎていくー。


姫梨と康博は共に幼馴染同士の間柄ー。

大学で偶然再会して意気投合、

最初は昔と変わらず、”幼馴染”として仲良くしていたものの、

康博の方が”姫梨、昔と違って可愛すぎてーもう、なんか、彼女にしたい!”と、

そんな告白をしてきてー、

そのまま二人は恋人同士となったー。


二人とも、一人暮らしをしていることから、

よくお互いの家に行き来するほど、互いのことを信頼しているー。


今までも、これからも、

そんな二人の間柄は続いていくはずだったー。


しかしー…


「ーーあんな奴、やめとけってー」


偶然、大学内ですれ違った

姫梨と同じサークルに所属する”先輩”ー

越前(えちぜん)が、そんな言葉を口にするー


「ーーーーー…はぁ…越前先輩ー」

姫梨はため息をつきながら、越前先輩のほうを見つめるー


眼鏡をかけた癖毛が特徴的な男子大学生だー。


「ーー何度そう言われても、わたしは康博と別れるつもりは

 ありませんからー」

姫梨がそれだけ言って立ち去ろうとすると、

越前先輩は口を開いたー


「ーーーーあんな奴より、俺の方が絶対ー、

 三枝さんを幸せにできるんだー!だからー」


その言葉に、姫梨は「ごめんない先輩ー。」と、頭を下げると、

「何を言われても、わたしは彼と別れるつもりはありません」と、

それだけ言い切って、そのまま越前先輩の前から立ち去っていくー。


そんな姫梨の後ろ姿を見つめながら、悔しそうに歯ぎしりをする

越前先輩ー。


「ーーーーー…俺の方が、君を幸せにできるんだー…

 でもー…分かってもらえないのならー…」


越前先輩はそう呟くと、静かに笑みを浮かべたー。


・・・・・・・・・・・・・・・・・・


帰宅した姫梨はため息をつくー。


”はぁ…越前先輩のこと、康博にも相談した方がいいかなぁ…”


そんなことを思いながら、

高校時代からの親友である幸恵(さちえ)に

LINEで愚痴を呟く姫梨ー。


”はははーその先輩も、姫梨のことが好きなんじゃないー?”

面白がるかのように、返事を返してくる幸恵ー


”笑い事じゃないのに~~~”

拗ねた顔のスタンプをつけながら、そう返事を返すと、

”あははー、ごめんごめん”と、幸恵は謝りながら

”でも、あまりしつこいようなら、彼氏くんにも相談した方がいいかもね”

と、幸恵はそうメッセージを返して来たー。


「う~ん…」

幸恵とのやり取りを終えて、しばらく考え込む姫梨ー。


がー、やがて、

”ずっと悩んでても仕方ないよね”と、

そう思いながら、立ち上がったその時だったー。


「ーーーー!」

姫梨は表情を歪めるー。


目の前に”黒いモヤモヤ”が出現したのだー。


「ーー…えっ…!?」

普通なら、目の前にあるはずがない不気味な黒い物体を前に、

姫梨は、そんな声を上げるー


が、それと同時に、黒い物体は姫梨の方に飛び掛かって来てー、

そのまま姫梨の意識は途切れたー。



”ーーーえ…”

途切れたはずの意識が回復するー。


「ーーへへ…へへへへへへへ」

”笑い声”が聞こえるー


”え…????な…何なの?”

姫梨は戸惑うー。

部屋の中に”女の笑い声”が聞こえているー。


”ど…どういうことー…?わたしの部屋に誰かいるのー?”

そんな言葉を発しようとするも、何故か自分は

声を発することができないー。


やがてーー


「ーークククククー…これが憑依かー」


そんな”女”の声が聞こえたー。


視線が勝手に動き、自分の手をー

そして、上から見下ろした胸を見つめるとー、

やがて、自分の手が勝手に胸を揉み始めたー。


”ーーーえ… な…なに…これ?”

自分が、自分の胸を”勝手に”揉んでいるー


「ーふへへへへー 

 すごいー… これが憑依ー

 この身体は、全部、思いのままだー!」


嬉しそうにそう叫ぶのはー…

さっきから、姫梨の部屋で嬉しそうに笑っていたのはー

他でもない、”姫梨自身”だったー。


鏡に、姫梨の顔が映るー


欲望に歪んだ、邪悪な笑みを浮かべながらー。


姫梨は、そんな鏡に映る自分に気付くと、

「ーーふふふ…今日からわたしが姫梨ー… なんちゃってー♡」と、

一人で嬉しそうに囁いたー。


”え…う…嘘… なんで…?どうして身体が動かないのー?”

”わたしの身体を勝手に動かしているのはー…誰なのー!?”


そんな声を上げる姫梨ー。


だがー、姫梨の声は、言葉として発されずー、

姫梨の口からは変わりに、下品な笑い声が漏れ出しているー。


”ちょ、ちょっと!やめてよ!わたしの身体を返して!”


そう叫ぶ姫梨ー。


しかし、姫梨の身体はお構いなしに、暴走を続けるー。

勝手に服を脱ぎー、下着を見つめながら涎を垂らしー

「最高だー」などと、呟く姫梨ー


”返してよ!!ねぇってば!!!”


勝手に”わたし”の身体が動くー

そんな恐怖に、必死に叫ぶ姫梨ー


そしてーーーー


♪~~~~~~~~~~~~~~~


「ーー!?!?!?!?!?」

姫梨がガバッと起き上がると、

そこはー”自分の部屋”だったー。


「ーーー…!」

慌てて、手や首を動かして見せる姫梨ー。


幸い、身体は自由に動くようだー。


時計を見つめながら、

姫梨は「ゆ…夢ー…?」と、困惑の表情を浮かべるー。


「ーーー」

大きくため息を吐き出す姫梨ー。


昨日は、確かに家のことは終えて、のんびりしている時間だったー。

もしかしたら、そのまま寝落ちしてしまったのかもしれないー。


そう、思いながら姫梨は今一度、自分を落ち着かせようと

深呼吸をすると、家の中を見渡すー。


何も、おかしなところはないー。


「ーーはぁ…変な夢、見ちゃったなぁ…」

姫梨はそう呟きながら、やれやれ、という様子で首を横に振るー。


自分が憑依されて、乗っ取られる夢ー。

とんでもない夢を見てしまったー。

妙に生々しい、頭に焼き付くような夢ー。


しかし、いつまでも夢を引きずっていても仕方がないー。


そう考えつつ、姫梨は、大学に向かう準備を、

いつもの朝と同じように始めたー。


一見すると、”いつも通り”の部屋ー。

しかし、その部屋の絨毯の端っこには、

”夢”だと思っている光景の中で、姫梨が涎を垂らした場所にー、

シミのようなものが残されていたー…。


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


大学での昼休みー。


姫梨は、小さくため息をつくー。

一緒にお昼の時間を過ごしていた彼氏・康博が

心配そうに「ん?どうかしたー?」と、言葉を口にすると、

姫梨は「あ、ううんー…大したことじゃないんだけどー」と、

笑いながら、「変な夢、見ちゃってー」と、そう言葉を口にしたー。


「ー夢?」

康博は不思議そうにしながら、昼食のそばを口に運ぶー。


「ーーうんー…

 そのー黒い幽霊みたいなものがわたしの中に入って来てー…

 身体の自由が効かなくなっちゃう夢ー…

 夢の中で、必死に身体を取り戻そうとしたんだけどー

 どうすることもできなくて、色々されちゃってー」


姫梨は表情を曇らせながらそう言葉を口にすると、

康博は「え…?色々ってー?」とそんな言葉を口にするー


姫梨は、恥ずかしそうにしながら、

「そのー……Hなこととかー」と、そう言葉を口にすると、

康博はすぐに「あ、いや、なんかごめんー」と、申し訳なさそうに

しながら、「ーーでも、時々変な夢って見るよな」と、笑いながら言葉を口にするー


「ーー俺も小さい頃から結構変な夢を見るよー。


 そうだなー

 最近は、巨大ハンバーガーに俺が食われちゃう夢とか、

 1円玉がヤバい数、降ってきてそのまま埋もれちゃう夢とか、

 3050年にタイムスリップしちゃう話とかー、

 あとは、土星が地球に突っ込んでくるやつとかー」


元気づけようとしてくれているのだろうかー

康博がそんな言葉を口にすると、

姫梨も笑いながら「あははーなにそれーー」と、

康博の見た変な夢の数々を笑うー。


「ーまぁ、夢なんて大した意味もないし、

 気にしなくてもいいんじゃないかー?」


康博がそう言うと、姫梨は

少しだけ元気が出たような気がしてー、

「うんーそうだねー」と、優しく微笑んだー。



「ーーーーーー」

そんな二人の姿を、食堂の少し離れた場所から見つめる

越前先輩ー。


越前先輩は、不満そうに眼鏡をいじると、

舌打ちをしながら、そのまま食堂を後にしたー。


・・・・・・・・・・・・・・・・


その日の夜ー。


「ーーーククククククー…」


”女の声”で、姫梨は目を覚ますー


”えーーー…?”

姫梨は、困惑すると同時に、

すぐに”嫌な予感”を感じたー。


そして、その予感はすぐに確信に変わるー。


またーーー

”憑依”される夢ー!?


しかもー、今度はーーー


「ーーあぁぁ…似合うー似合うよーククー」

姫梨は、笑みを浮かべながら、

バニーガールの格好をして、鏡の前で

自分の身体をイヤらしい手つきで触りながら、

笑みを浮かべていたー


”な…何してるの…!?ちょ、ちょっと!?”

姫梨の意識が叫ぶー。


が、”姫梨の身体”は、昨日と同じく勝手に動きー、

バニーガールの格好のまま、足を指でなぞるようにして、

笑みを浮かべているー。


やがて、鏡の前で普段の姫梨が

絶対にしないようなセクシーなポーズの数々を繰り返しー、

姫梨は嬉しそうに笑うー。


「ーーふふふふふー…ホント、最高だー」

姫梨は興奮したような声を出しながら、

バニーガール姿の自分を抱きしめるー


”やめてってば!そんな格好しないでよ!!!”

姫梨が必死に叫ぶーー


しかしーー

次第に意識は薄れー、

気付いた時には”朝”だったー


「ーーはぁ…はぁ…はぁ…」

冷や汗をかきながら、目を覚ました姫梨は

カラカラになった喉を潤すために、

冷蔵庫の方に向かい、飲み物を口に含むー。


ひと息ついた姫梨は慌てて、

”バニーガールの服”が、家の中にないかどうかを探すー。


だがー…

それは、見つかることはなかったー


一瞬、”現実なのではないか”と、不安になったものの、

バニーガールの服が家の中にないということは、

やはり、あれは”夢”なのだと姫梨は思うー。


けれどー、妙に生々しい夢ー。


「ーーーー…」

自分が、バニーガールの格好をして嬉しそうにしていた姿を

思い出して、恐怖を感じた姫梨は、

その日ー、再び大学で康博にそのことを相談したー


「ーーえ…?また夢を見たー…?」

昨日は冗談めいた口調で話を聞いていた康博も、

今日は少し驚いた様子だったー。


「ーうん。今度は何かー…コスプレもさせられててー」

姫梨のその言葉に、康博は少しだけ顔を赤らめながら、

「こ、コスプレ…?」と、戸惑いの言葉を口にするー。


「ーなんか…最近そういう”憑依”されるような

 怖い映画を見たとか?」


康博がそう言葉を口にするー。

しかし、最近、その手の映画や漫画などを見た記憶はないー。


姫梨がそう伝えると、康博は「そっかー」と、

そう言葉を口にしたー。


「ーーでも、何でー…」

康博がそう呟きながら考え込むー。


姫梨が不安そうな表情を浮かべていると、

「まぁー…」と、康博はそう言葉を口にしながら、

「ー続けて同じような夢を見ることもあるって言えばあるからー…

 そういうことなんじゃないかなー」と、そう言葉を口にしたー。


「ーーーう、うんー…

 夢の中でしてたコスプレー…

 わたしの家にはない服だし、起きた後、探して見たけど

 やっぱりなかったからー…


 夢だとは思うんだけどー」


姫梨がそう言葉を口にするとー、

康博は少しだけ安堵したような表情を浮かべながら

「ーあまり考えすぎない方がいいかもなー」と、笑うー


「ほら、悩みごととかあると、それが夢に出て来たりするじゃん?

 憑依の夢も、悩んでるとまた見たりするかもしれないしー」


康博にそう言われて、姫梨は「確かにそうかも!」と、笑うと、

意識的に”夢”のことを考えないようにしながら、

その日1日を過ごし始めるー。



がーーー


それは、”夢”などではないー

 

その日の夜もー”憑依”された姫梨は

笑みを浮かべながら起き上がると、

姫梨本人が”気付かない場所”から、隠したコスプレの衣装を

取り出すー。


「ーーー……」

そしてー、チャイナドレスを身に着けると、

姫梨は嬉しそうに、イスに片足を乗せながら

撫でまわすように、自分の太腿を触り始めたー…。


②へ続く


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


コメント


長編以外の今月最初のお話は憑依のお話デス~!☆


今のところ、登場人物たちは”夢”だと思ってますケド、

当然、夢オチではなく

ちゃんと憑依されています~☆笑


この先どうなっていくのかは、次回以降を

楽しみにしていて下さいネ~!


今日もありがとうございました~~!

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