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不気味な色に染まる空ー。

常にオーロラが輝いているかのようなー、

そんな空を見上げつつ、内里 麻友(うちざと まゆ)は、

悲しそうな表情を浮かべるー。


「ーーーーーーあ、いたいたー」

そんな麻友に声をかけて来たのは、

麻友の親友でもあり、幼馴染の宮川 奈諸美(みやかわ なおみ)ー。


しかしー

それはー”1年前”までの話ー。


今の奈緒美はーーー1年前までの奈緒美とは、別人ー


「ーーちょっとさ~飲み物買って来てくれない?

 喉、乾いちゃって」


奈緒美がそう言い放つと、麻友は「は、はいー。喜んでー」と、

奈緒美に対して、敬語でそう言いながら頭を下げるー。


「ーーーふんー

 ノロノロしてわたしを待たせたら”罰ゲーム”だからねー?

 ーーあんたは下等生命体…

 そのぐらいしか使い道はないんだから」


奈緒美が邪悪な笑みを浮かべながら、麻友に対してそう言い放つと、

麻友は「はいー…」と、暗い表情で返事をしながら、

そのまま走り出すー。


今から1年ほど前ー…

地球は、突如としてやってきたエイリアンに占領されてしまったー。


1年前ー

人類は未知の文明と接触することになったー。

地球に”宇宙人”がやってきたのだー。

しかし、その宇宙人は友好的な存在ではなかったー。


そして、映画で見るような攻撃的な宇宙人とは違い、

人類に対して”攻撃”を直接的に仕掛けるようなこともしなかったー


彼らはー

人間を”皮”のようにして、まるで”洋服”のように着て、乗っ取るー、

そんな力を持っていて、次々と人間はエイリアンに支配されたー。

身体も、精神も乗っ取られてしまいー、

人類はエイリアンのファッションとしてー、まるで”服”のように

利用されていたー。


エイリアンは、”人類の文明を壊さずに、人間の身体を乗っ取ること”で、

そのまま文明ごと地球を支配しようとしていたのだー。


ほとんど戦わずして支配された人類ー。

麻友の親友・奈緒美もエイリアンに皮にされて乗っ取られてしまいー、

今では別人のようになってしまったー。


それもそのはずー。

身体は”奈緒美”のものでも、中身は”エイリアン”なのだからー…。

奈緒美の記憶を残しつつも、もうそれは奈緒美ではない存在ー。


「ーーーー」

外に出て、自動販売機に向かう麻友ー。


空は、オーロラが出続けているかのような、不気味な色に染まっているー。

昼も、夜もこの状態で、もはやかつてのような青い空はないー。


これは、エイリアンが地球を占領した後に、エイリアンが住みやすいように

地球環境を特殊な装置で変異させたことによるものー。


「ーーー」

麻友が慌てて自動販売機で頼まれたジュースを買おうとしていると、

そこにー、”友人”だった女子の一人、詩織(しおり)が姿を現したー。


「ーーあははー”売れ残り”は毎日大変だねぇ」

同情するどうな言葉を口にする詩織ー。


”売れ残り”とはー、

麻友のような人間のことを言うー。


地球を支配したエイリアン。

しかし、”エイリアンの総数は人類のおよそ半分ほど”で、

全てのエイリアンが人類を乗っ取っても”残り半分”は、残ったのだー。


地球には、まだ麻友のように”正気の人間”がいるー。

エイリアンたちは、数が足りずに乗っ取り切れなかった人間を

”売れ残り”と蔑み、友人や家族の身体を人質に、

”しもべ”として利用し続けているー。


当然、”余った人間”は処分することもできたー。

しかし、このエイリアンたちの目的は人類文明の横取りー。

急に”余り”ー人類の総人口の半分ほどの人間を一気に殺せば、

文明社会は維持できないー。


そのため、正気を保っている人間も、麻友のようにこうして

生かしたまま、”下等生命体”として利用し続けていたのだー。

人間社会を維持するためだけの歯車としてー。


「し、詩織ちゃんー」

麻友が悲しそうにそう言うと、

優しそうな雰囲気の詩織が、笑みを浮かべながら言ったー


「ーーお前ら”売れ残り”は、働いて働いて働いてー

 我々のために尽くし続けるんだー

 これから先も、ずっとー」


詩織は笑いながら、麻友の髪を引っ張ると、

「ーー気安く”詩織ちゃん”なんて呼ぶんじゃねぇぞー」と、

恐ろしい口調で言葉を口にするー


「ーーも、申し訳ありませんー詩織さまー…」

麻友は泣きながらそう言葉を口にすると、

詩織は、たった今、麻友が購入したジュースを取り上げると、

それを開けて、麻友の頭にそれをかけ始めたー


邪悪な笑みを浮かべる詩織ー


「地球の支配者は、我々だーーー

 お前たちは、ただの道具ー」


詩織はそう言い放つと、中身のなくなったジュースの缶を

放り投げると「拾って片付けとけ」と、嫌味全開で呟きー

そのまま立ち去っていくー。


この世界は、エイリアンに支配さあれたー。

麻友のような”売れ残り”の人々にも、もはや人権と呼べるものは

存在しないー。


ここ、”キョウト”もー、

”トーキョー”もー、

いや、ニューヨークも、ロンドンも、パリもー、

どこも、この状態だー。


もう、人類の安息の地は存在しないー。


「ーーー…麻友!」

ジュースを買い直して、慌てて廊下を走っていた麻友を

呼び止める男子生徒ー


彼は、麻友の”幼馴染”の男子ー、浜岡 彰吾(はまおか しょうご)ー。


「ーー麻友…そんなに濡れて…どうしたんだ?」

彰吾がそう言うと、麻友は「ごめんーいかないとー」と、

そう言葉を口にするー。


「行くって、どこにー?そんな濡れたままじゃー」

彰吾がなおも心配そうに言葉を口にするー。


がー


「放っておいてよ!奈緒美さまが待ってるんだから…!」

涙目で麻友がそう言い放つー。


エイリアンに支配された世界ー

そうなってから、麻友は”エイリアンたちに尽くすこと”で

何とか生き延びて来たー


”反逆者”は”奈落”と呼ばれる地獄のような地下に送られるー。

だからーー…こうするしか道はないー。

麻友はもう”抗うこと”を諦めていたー。


「ーーーな、奈緒美さまって…

 そんな呼び方する必要なんて、ないだろ!」


彰吾が悔しそうに叫ぶー。


この彰吾は麻友と同じ”売れ残り”の一人ー。

しかし、麻友とは違い、”エイリアンたちをいつかぶっ飛ばしてやる”と、

そんな考えを持っているー。


「ーーーいいから!

 わたしは、もう、こうするしかないの!」

麻友は涙目のまま彰吾を振り払うと、

彰吾は悔しそうに「麻友をあんな風に悲しませてー…許さねぇ」と、

エイリアンたちに対する怒りの炎を燃やしたー


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


「ーー来年の文化祭も、楽しみだね!」


高校生活最初の文化祭ー。

親友でもあり、幼馴染の奈緒美は、そんな言葉を口にしていたー。


「ーうんー来年は、食べ物系やってみたいなぁ~」

穏やかな性格の麻友がそう言うと、

奈緒美は「今年は他のクラスに食べ物が多かったからね~」と、

苦笑いするー。


穏やかな性格の麻友ー。

元気な性格の奈緒美ー。


二人の性格は正反対ー。

けれど、二人はとっても仲良しだったー。


それは、これからもー

ずっと続くと、そう思っていたー。


けれどー

1年前、エイリアンがやってきてしばらくした後ーーー

麻友が”エイリアン”に狙われたーーー


その時、奈緒美は麻友を突き飛ばして、

エイリアンの前に立ちはだかり、叫んだー


「麻友だけは見逃してあげて!

 わたしはどうなってもいいから!」


とー。


奈緒美は、麻友を庇い、自分がエイリアンの犠牲になろうとしたのだー


「な、奈緒美ちゃん!」

泣きながら麻友が奈緒美を助けようとするー。


しかしー、奈緒美は”目の前で”エイリアンに皮にされてー、

そして、支配されてしまったー


「ーーわたしたちー、ずっと、友達だからねーーー」

奈緒美は最後に、目から涙をこぼしながらそう言っていたーーー


けれどーーー


「ー遅いんだよ!使えない下等生物!」

ジュースが遅かったことに、乗っ取られている奈緒美は激怒し、

ジュースの缶を麻友の顔に投げつけて来るー。


「ご、ごめんなさいー…」

悲しそうに声を振り絞る麻友ー。


「ーーーあんたを助けてあげたのは、

 ”わたし”だってこと、忘れたわけじゃないよねー?」

奈緒美が、意地悪そうな笑みを浮かべながら、そう言い放つー。


麻友は震えながら奈緒美の方を見つめるー。


”わたしを助けてくれたのは”あなた”じゃないー”

麻友は、そう思いながらも、それを口にすることはできずに頷くー。


助けてくれたのは、奈緒美だー。

”奈緒美を乗っ取っているエイリアン”じゃないー。

しかし、それを言えば”また”奈緒美たちの弾圧が始まるー。


「ーーーわたし、あんたのこと”恨んでる”からー。

 あんただけが、そうやって無事に過ごしてる姿を見るとー、

 滅茶苦茶腹が立つのー。

 心の底から、怒りが噴き上がって来る感じー」


奈緒美を乗っ取っているエイリアンは、

まるで、”奈緒美”がそう思っているかのように、言葉を口にするー。


「ーーーごめん…なさいー」

麻友が、謝罪の言葉を口にするー。


奈緒美本人の意思じゃないー。

そうは分かっていても、奈緒美の顔、奈緒美の身体、奈緒美の声で

そう言われてしまうと、辛くなってしまうー。


奈緒美を着ているエイリアンは、奈緒美の記憶まで

全てを受け継いでいるー。


”実は、奈緒美ちゃんは本当はわたしのことを恨んでるんじゃないかー”

と、そう思ってしまうー。


「ーーあんたはさ、”わたしのおかげ”で、

 売れ残りのままでいることができてるんだからー

 わたしに一生感謝して、尽くし続けなくちゃー」


ニヤリと笑う奈緒美ー。


「ーーーーーはいーーー」

暗い表情でそう返事をする麻友ー。


「ーじゃあ、今日はお疲れ様ー

 そろそろ帰りなさいー」

奈緒美は笑みを浮かべながらそう言い放つと、

そのまま、他の乗っ取られている生徒たちと共に

談笑を始めるー。


もちろんー、

談笑している生徒たちはみんな、エイリアンに支配された人間たちだー。


不気味な空を見上げながら、校舎の外に出る麻友ー。


そんな麻友を見つけて、幼馴染の男子・彰吾は叫ぶー。

彰吾も、麻友・奈緒美の二人のことは小さい頃から知っているー。


だからこそ、今の状況には怒りを感じずにはいられなかったー。


「ーー麻友ー…やっぱりこのままじゃダメだよー。

 俺、”エイリアンたちに反撃を企てている”人たちを知ってるんだー

 麻友も一緒にー」


小声でそう言葉を口にする彰吾ー。


けれどー

麻友は首を横に振ったー。


「ーわたしは、エイリアンたちに従うよー…

 だってー、もう、それしかないでしょ?

 土下座してでも、わたしは…わたしは生きるのー」


麻友は、”諦めて”いたー。

エイリアンたちに従い”下等生命体”として生きる道ー、

それを選んでいたー。


「ーーーふ…ふざけるなよ…!

 麻友は、どんな時でも諦めるような子じゃなかっただろ!」

彰吾がそう叫ぶー。


が、麻友は自虐的に笑ったー。


「ーーーだって、無理に決まってるよー…

 そこら中、エイリアンだらけー。

 それにー、彰吾くんだって知ってるでしょ!?


 ”監視員”だっているんだから、

 わたしたちにはもう、こうやって生きるしかないの!」


麻友が悲しそうに、感情的になって言うー。


”監視員”とはー

”本当はエイリアンに乗っ取られているのに、乗っ取られていないフリ”を

している人間のことー。


エイリアンに乗っ取られていない人間=売れ残りのフリをしながら、

人間たちが反逆を企てていないかどうか、目を光らせている存在ー。


その”監視員”の存在が、正気を保っている人間の反撃を

困難なものにしているー。


何故ならー、

今、目の前にいる”彰吾”だって本当は乗っ取られていて、

もしも今、麻友が”一緒にエイリアンと戦おう”と言った瞬間に

反逆者扱いー、”奈落送り”の可能性もあるからだー。


「ーーんなことは分かってるー。

 でも、監視員も見てりゃ分かる!

 B組の梓(あずさ)ちゃんは”監視員”だし、

 先輩の一人もー…」


彰吾がそう言い放つー。


だが、それでも麻友は首を横に振ったー


「ーー無理だよー

 ここ京都だけじゃないー

 東京だって、北海道だって、九州だってー

 日本の外だって、どこもエイリアンのもの!


 もう、わたしたちにはどうすることもできないの!」


麻友がそう言うと、彰吾は悲しそうに言うー。


「ーーー…麻友…変わっちまったなー」

心底悲しそうな言葉ー。


エイリアンに占領された世界ー

残った正気の人間たちも、変わってしまったー。


「ーーー……仕方ないでしょー…

 もうーーー…無理なんだから」


麻友はそう呟くと、そのまま立ち去っていくー。


「ーーーー」

一人残された彰吾がため息をつくと、

そこに、”B組の梓”がやってきたー。


エイリアンに皮にされて乗っ取られているのに、

”そうじゃないフリ”をしている監視員だー。


「ーーーねぇねぇ、今、何話してたの?」

梓が笑いながら言うー。


「ーーん~?…

 もう、俺たちには従う道しかないんだなぁって、

 そんな話さー」


彰吾が苦笑いしながら言うー。


”梓が監視員だと知っている”からこその嘘ー。


「ーあはははー

 うんー…そうだよねー。

 エイリアンには敵うわけないもんー…」


梓が残念そうにしながらも、少しだけ笑みを浮かべるー。


こうして”味方”のフリをしながら、

探りを入れるのが、監視員の役割だー。


「ーーーあ~あ……この世界、どうなっちゃうのかなぁ~」

そう言いながら笑う梓ー。


彰吾は、そんな梓の後ろ姿を見つめながら思うー


”俺は絶対ー、諦めないぞー”

とー。


不気味な色に染まる空ー

その空がかつてのように青く染まることは、

もうないー。


彰吾と別れて、帰宅した麻友はため息をつくー。


「ーただいまー」

麻友は悲しそうにそう呟くと、

そのまま家の中に入っていくー。


両親は”もう”いないー。

母親はエイリアンに乗っ取られ、

父親は母親を取り戻そうとして”奈落”送りになったー。


唯一残っているのは、

麻友の姉・美姫(みき)のみー。


けれどーー

その美姫も、エイリアンに既に乗っ取られているー。


ラバースーツ姿で顔を出した美姫は、

酒を飲みながら「ーおせぇよー下等生命体ー」と、不満そうに呟くと

「さっさと、家のことをしろよ!」と、乱暴に麻友に対して

そう言葉を口にしたー


学校でも、家でも、心休まる時はないー。


それでもー

麻友は、生きたかったー。


例え、エイリアンに魂を売ってでもー


生きて、生きて、生きてさえいればー

何かー奇跡が起きるかもしれないー


そう、信じているからー…。



②へ続く


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


コメント


エイリアンに占領された世界が舞台のお話デス~!


2023年に執筆した作品、

「エイリアン・TOKYO」と同じ世界のお話ですネ~!

(※↑を読んでなくても大丈夫なように、書いているので

 安心してください~!)


エイリアンTOKYOの時は、占領されてから半年の東京、

今回のエイリアンKYOTOは、占領されてから1年後の京都を

舞台にしています~!☆


☆↓TOKYOはこちら☆

<皮>エイリアン・TOKYO①~占領~

「ーーおはようございます」 一見すると、普通の学校ー。 だがー 窓の外から広がる光景は、不気味なネオンが輝きー 空にはオーロラのようなものが見えるー・ 男子高校生・川島 祥平(かわしま しょうへい)は そんな外の景色を見つめながら、表情を歪めたー 「ーーーーーー」 だが、隣の座席に座る幼馴染・神月 純恋...


この絶望の世界で、今回登場している人々が

どんな運命を辿って行くのか、ぜひ見届けて下さいネ~!


今日もありがとうございました~!

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