Home Artists Posts Import Register

Content

仕事人間の将司は、美月と入れ替わってしまってからも、

”とにかく職場に戻ること”で頭がいっぱいだったー。


しかし、美月の身体のまま、職場に入ることもできず、

二人は近隣の病院へと向かうことにー。

その結果、検査で未知の現象が確認された二人は、ひとまず検査入院という

形で、その日は病院で一晩を過ごしたー。


がー、その翌朝ー、

目を覚ました将司は、自分が元に戻っていることに喜び、

早速職場へと向かうのだったー…


しかしー、後から目を覚ました美月は

”まだ元に戻っていない”と言いだしてー…?


★前回はこちら↓★

<入れ替わり>早く職場に戻らないと③~翌朝~

仕事人間の将司は、取引先に向かう途中に階段から転落ー、 美月と入れ替わってしまったー。 その身体のまま、取引先へのお詫びを終えたものの、 今度は”どうしても会社に戻らないと”と言いだす美月(将司)ー。 しかし、女子大生・美月の姿では、 当然、会社内に入れてもらえるはずもなく…? ☆前回はこちら↓☆ ・・・・・...

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


意気揚々と職場にやってきた将司は、

「昨日は、本当にご迷惑をおかけしました」と、

部署の人間たちに頭を下げるー。


「ーー松山くんにも、迷惑をかけてしまって悪かったなー」

将司は、後輩の京平にそう言葉を口にするー。


京平には、昨日会社の入口の前で散々”入れ替わってしまった”だの

何だの言って、迷惑をかけてしまったー


「ーはは、全くですよー。

 でも、どうして元に戻れたんですか?

 実は最初から入れ替わってなんかなくて、頭でも打って

 おかしくなってたってやつですかー?」


京平が、そんな言葉を遠慮なく口にすると、

将司は「はははー…いや、でも、昨日、入れ替わってたのは

本当なんだー」と、そう言葉を返したー。


昨日は、確かに入れ替わっていたー。

それなのに、今朝は急に元に戻っていたー。

その理由は分からないー。


ただー、昨日、病院で寝るまでに

元に戻るための方法を探して色々試してはみたものの、

”寝る”ことは試さなかったー。

もしかしたら”寝れば”すぐに元に戻ることができたのかもしれないー。


そんなことを思いつつ、将司は「昨日の分の仕事も片付けないと」と、

いつものように熱心に仕事を始めるー。


がー、その時だったー。


♪~~

電話が鳴っているのに気づき、将司がスマホを確認すると、

そこには病院の名前が表示されていたー。


「ーあれ?病院からだー」


「ーーまさか柿谷さん、抜け出して来たんじゃないでしょうね~?」

京平が揶揄うようにして言うと、

「いや、先生ともちゃんと話したけどなー…」と、戸惑いながら

電話に出たー。


すると、電話相手は昨日の担当医の久保田医師だったー。


”ー柿谷さんーすみませんー

 実は、杉森 美月さんがまだ”元に戻っていない”と

 言ってましてー”


久保田医師の言葉に、将司は「はい?」と、首を傾げるー。


”ーえぇ、ですからー、

 杉森美月さんは”僕は柿谷だ”と、そう言っていましてー”


久保田医師のそんな言葉に、将司は思わず笑ってしまったー。


「ーーははは、そんなことあるわけないじゃないですかー

 僕は間違いなく、柿谷将司ですよー。

 ちゃんと記憶もありますー。」


将司はそれだけ言うと、

久保田医師の電話を奪い取ったのか、女のー…

美月の声が聞こえて来たー。


”ーーちょっと!どういうつもりですか!

 僕の身体で勝手に会社に行くなんて!”


美月のそんな言葉に、

将司は「はぁ…?いえー、もう、元に戻ってますよねー?」と、

困惑しながら言葉を口にするー


”も、戻ってるわけないでしょう!?僕が柿谷将司なんだから!

 いったい、どういうつもりですか!”


将司を名乗る美月が、そんな言葉を口にするー。


しかし、将司は戸惑いの表情を浮かべながら

「ーいやいやいやいやいやいや、そんなわけないでしょう?」と、

そうツッコミを入れるー。


自分は、間違いなく柿谷将司だー。

で、あれば、美月は美月のはずだー。


「ーーー僕は間違いなく柿谷将司です。

 朝、起きたら自分の身体に戻ってたんですー。

 だったらー、杉森さんが”僕”だなんておかしいじゃないですか?」


将司がそう言いながら

”僕が二人になったとでも言うんですか?”と、

そう呟くー


”い、いえ…それはー…で、でも!僕だって

 間違いなく柿谷将司なんです!”

と、将司を名乗る美月は、再び反論してきた。


「ーーー……い、いやーそれは…あり得ない」

将司はそう言うと、「久保田先生に代わって貰えますか?」と、

将司を名乗る美月にそう言いながら、何とか電話を代わって貰うー。


「ー久保田先生ー。仕事が終わったらそちらに一度向かうので、

 それまでお待ちいただけますか?」


将司が困惑した表情でそう言うと、担当医の久保田は”分かりました”と、

そう言葉を口にしながら、電話を終えるー。


「ーーー…どうかしたんですか?」

後輩の京平が心配そうに呟くと、

将司はため息をつきながら、

「なんか…入れ替わった相手の大学生の子、まだ元に戻ってないって

 そう言っててー」と、そう説明するー。


「ーははは、まさかー。

 いやー…実は柿谷さん、”自分を柿谷さんだと思い込んだJD”なのかも

 しれませんよ?」

笑う京平ー


将司は一瞬、「え?」と、思いながら頭の中で自分のことを

今一度、冷静に考えてみたものの、すぐに「ないない」と、

その言葉を否定するー。


「ー大体、僕が杉森さんなら、こんな風に普通に仕事できるわけないだろ?」

将司が笑いながらそう言うと、

京平は「確かにー。それもそうですねー」と、そんな言葉を口にしたー。


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


夜ー

病院にやってきた将司は、将司を名乗る美月から、

「ーふざけないでください!」と、迫られていたー。


「ー僕の身体を奪って、僕の仕事も奪うつもりなんですよね!?」

将司を名乗る美月が、そんな言葉を口にするー。

見た目は可愛らしい女子大生だが、振る舞いは将司そのものー。

中年のおじさんのような仕草がそこら中に見えるー。

これが”演技”なのだとしたら、大したものだー。


「ーいや、いや、待ってくださいー。

 僕がもし、”杉森美月”だったとして、

 どうして、中年のおじさんの身体を奪おうとするんですかー?」


将司がそう言い放つー。


「年齢もだいぶ違って、人生10年以上損するし、

 大学生活を失って一気に社会人になっちゃいますし、

 僕が、”わたし”だったとして、そんなことするメリットないですよね?」


将司の言葉に、将司だと言い張る美月は不満そうに

「それは…そうですけどー…

 でも、僕も柿谷将司なんですけど」と、そう呟くー。


「ーーー本当にー?」

将司は戸惑いながら確認するー。


「本当ですよー。じゃあ、社員番号から会社のパソコンの

 パスワードまで、全部言えばいいですか?」

将司だと主張する美月はそう言うと、

小声で、将司に耳打ちしながら、会社のパスワードや

”将司本人”でしか知り得ないことを言い始めたー。


「ーーー…た、確かに合ってるー」

将司は戸惑うー。


がー、「ーじ、じゃあ、でも、”杉森美月”は、どこにー?」

と、将司は言うー。


将司の身体にも将司が、

美月の身体にも将司がいるとなると、

”美月”の中身はどこに行ってしまったのかー。


それを聞いていた久保田先生は、口を挟むー。


「柿谷さんーもう一度”脳”の検査、させていただいても?」

とー。


将司は「早く帰って来週のプレゼンの準備をしたいのですがー」と

言いながらも、不安そうにこちらを見ている、将司を名乗る美月を見て

ため息をついてから「仕方ないですねー」と、

そんな言葉を口にしたー。


脳の検査を再び行う二人ー。


するとー、

二人の結果には、明確な差が出たー。


それを見つめながら、久保田医師は呟くー。


「安心しなさいー。

 柿谷さんと、杉森さんは元に戻っているー」


その言葉に、将司は「ほら!僕の言った通りだった」と、

嬉しそうに笑うー。


が、一方で将司だと言い張る美月は不安そうに表情を歪めたー。


「ーで、でも、じ、じゃあ、僕はー

 杉森美月だって言うのですかー?」

美月のそんな言葉に、久保田医師は頷くー。


「ーーで、でも!

 今だって、この身体にドキドキしてますし、

 胸を見ても、他人の身体だと思ってドキドキしてますよ!?

 それなのにー!」

美月がそう言うと、久保田医師は「大丈夫ー」と、

そう言葉を口にしたー。


「ーーお二人とも、昨夜、睡眠をとったことで、

 お互いの魂があるべき身体戻ったー


 ただ、昨日1日、”脳”は、他人の意識に使われて

 動いていたので、まだ”切り替え”が上手く行ってなくて、

 杉森さんの脳は、まだ昨日の状態ー

 …自分を、柿谷将司だと思い込んでしまっている状態ー…

 と、いうことだねー。


 ”柿谷さん”の身体の方が、たまたま早く”脳”が正常に戻っただけで、

 杉森さんの身体も、明日にはちゃんと自分が”杉森美月”だと

 認識できるようになっているはずだからー、

 心配しなくていいー」


久保田医師は、そう説明したー。

まだ、昨日入れ替わっていた影響で、脳が混乱していて、

将司の方は早く回復したものの、

美月は時間がかかっているのだとー。


「ーーそ…そうですかー…じ、じゃあ、僕は杉森美月ってことー?」

美月の言葉に、久保田医師は「その通り」と、頷いたー。


「ーーー明日ー、いや、遅くとも明後日には、

 ちゃんと脳が、”自分は杉森美月”だと正しく認識するから

 心配はいらないー。

 今日は、不安だろうけど、大丈夫だー。」


久保田医師はそう言うと、

今度は美月ではなく、将司が不安そうに口を挟んだー。


「ーーあの…彼女は、僕の会社のパスワードとかまで

 覚えているようですがー、それはー」

将司が不安そうにそう呟くー


”美月のこと”を心配したのではなく、

会社のパスワードや、仕事上の内容が漏れることを

恐れての言葉だー。


「ーーあぁーそれも”脳”がちゃんと自己を認識すれば、

 なくなるよー。

 

 柿谷さんー

 あなたに”杉森さんの記憶”は残ってませんよねー?


 杉森さんの脳も、ちゃんと正常な状態に戻れば

 自分が杉森美月だと認識して、

 記憶も元通りー。

 あなたが、杉森さんの身体を使っていた時に、

 杉森さんの身体に染みついた”記憶”はちゃんと消えるー

 だから、大丈夫」


久保田医師の言葉に、将司はまだ不安そうな顔をするー。


美月の中から”将司”の記憶が消える前に、パスワードなどを

メモされて悪用されたら、と、そう思っているのだー。


「ーーそこまで心配なら、パスワードとかは念のため

 変えておくと良いのでは?」


久保田医師が面倒臭そうに言うと、

将司は「分かりましたー」と、

そのまま引き下がったー。


「ーーでは、僕はこれで」

将司がそう言葉を口にしながら、

美月の方を見つめると、

改めて、将司は頭を下げたー。


「元はと言えば、僕が階段で転落したせいでこんなことにー。

 申し訳、ありませんでしたー」

とー。


仕事に戻りたそうにしながらも、礼儀は果たす将司ー。

美月は少し不満そうにしながらも、

「今、謝られても、僕が僕に謝られてる気がして、あまり

 しっくりこないです」と、そう言葉を口にしたー。


そしてー、将司はそのまま病院から立ち去り、

日常へと戻っていくー。


美月は”脳が正常化”するまで入院することになり、

その日は再び、病院で一晩を過ごしたー。


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


翌朝ー


「ーーーー…」

美月は、目を覚まして鏡を見つめると、

「ーーあ…」と、驚いたような表情を浮かべるー。


「ーーーー…よかったー」

安堵の表情を浮かべる美月ー。


美月は、そのままゆっくりと久保田医師のいるところに向かうと、

「先生ー今、大丈夫ですか?」と、声をかけたー。


「あぁ、もちろんー」

久保田医師が、美月を見つめながらそう応じると、

美月は「ちゃんとー、元に戻ったみたいですー」と、

静かに微笑んだー。


「ーそうか。よかったー。

 別の人間に君の身体が1日だけとは言え、使われていた状態に

 脳も戸惑っていたんだー。

 寝ている間は、脳の整理が行われるからねー。

 君の脳も、やっと正常に戻ったってことだー」


久保田医師はそう言うと、美月は自分の身体を見つめながら

「戻れて本当によかったですー」と、

そう呟いたー。


美月も無事に退院ー、

美月は大学生活に戻り、将司は引き続き仕事人間な日々を

送っているー。


全ては、元通りー。


それから、1か月が経過したー。


「ーーーーーー」

美月が、少しソワソワした様子で周囲を見渡すー。


「ーどうしたの?」

美月と一緒に歩いていた友人が、そんな美月の様子を見て

首を傾げると、美月は苦笑いしたー。


「ーーえ? 

 あ、うんー

 なんか時々、”大学に行かなきゃ”みたいな感覚になって

 ソワソワしちゃうことがあってー」


美月のそんな言葉に、友達は笑いながら

「え~~~?今日は休みだし、行っても意味ないでしょ~?」と、

そう言葉を口にするー。


「ーう~ん、まぁ、そうなんだけど

 なんかたまに、大学とかバイト先に行かないといけないような

 気がしちゃって~」


美月が照れくさそうに笑うと、

友達は呆れた様子で「ーそういう考え方、将来、社畜になっちゃうよ!」と、

叱りつけるような様子で、言葉を口にしたー。


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


今日も、仕事帰りの将司は、

ふと、”楽しそうに歩く大学生”を見つめるー。


「ーーーーー」

将司は、なんだか”自分が少し前まであの場所にいたような”

不思議な感覚に陥るー。


だが、すぐに首を横に振ると、

「しまった!やり忘れがあったー…職場に戻らないと!」と

慌てた様子で、職場に向かって走り出すのだったー


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


最初に、検査をした際には、

二人とも”二人分の脳波”が確認されたー

恐らく”元々、身体(脳)に記憶された記憶”と、

入れ替わったことにより”魂が持ってきた記憶”の2つが

混在していたことによる反応だと、

久保田医師は考えていたー


一方、その翌日に検査した時には、

”将司”の方の脳には2つあった反応が一つになっていて、

”美月”の方の脳には2つのうち、一つの反応が”薄く”なっていたー。


それを見た久保田医師は悟ったー。


”入れ替わった二人は、相手の身体で、そのまま相手そのものに

 なり始めているー”


とー。


入れ替わった際に、将司も美月も”自分の記憶”を持った状態で

相手の身体に入ったー。

入れ替わり直後は、まだ身体に馴染んでいない状態で、

その身体の脳に記憶されていた記憶は読むことが出来ずー、

入れ替わった際に”自分が持っていた記憶”だけがある状態だったー。


がー…”睡眠中”に、脳は色々な情報の整理を行うー。


そんな状況でー、

”外部から入り込んだ記憶”を、まるで”病原体”と同じように、

排除する動きが脳の中で始まりー、

結果ー…”将司になった美月”から、美月の記憶が消えー、将司そのものにー。

美月になった将司から、将司の記憶が消え、美月そのものになってしまったー。


入れ替わりの翌朝、美月(将司)だけが”僕が将司だ”と言っていたのは、

性格的な問題か、あるいは年齢的な問題か、

将司の自我の方が強かったらしく”美月の身体に飲み込まれて美月になる”のに

時間がかかっていたのだろうー。


一方、将司になった美月は、一晩で完全に将司の記憶に飲み込まれて、

自分が美月であることを完全に忘れてしまったー。


入れ替わり2日目ー、”二人とも自分が将司”だと主張する状況を前に、

脳の再検査を行い、久保田先生はそれを悟ったー。


だが、久保田先生は二人に嘘をついたー


”二人とも元に戻っていて、脳がまだ混乱している状態”だとー。


”二人は本当は元に戻れてなくて、相手の記憶に飲み込まれそうになっている”

とは、言わなかったー。


それを言ってもどうすることもできなかったし、

美月(将司)が、暴れ出したり、パニックになる可能性があったためだー。


そして二人は今ー、

将司(美月)は、自分を将司だと思い込みー、

美月(将司)は、自分を美月だと思い込み、

生活を続けているー。


恐らく、もう二人は元の自分を思い出すことはできないー


けれどーーー


「ーーこれが、あの二人のためだー」

久保田医師はそう呟きながら、

「に、してもー”入れ替わり”なんて本当に起きるんだなー」と、

心底驚いた様子で、そう呟くのだったー。



おわり


・・・・・・・・・・・・・・・


コメント


最終回でした~!☆


元に戻った…と思ったら、

相手そのものになってしまう結末でした~…☆!


でも、二人とも気付かないままなら、

それはそれで、不幸に感じることはないかもしれませんネ…!


お読み下さりありがとうございました☆!

Files

Comments

No comments found for this post.