Home Artists Posts Import Register

Content

生徒会選挙が行われ、

会長に立候補した翔太(綾)は

クラスメイトの守屋智花との争いに勝利し、

無事に生徒会長となったー。


綾(翔太)は”まさか、僕の名前が生徒会長のところに載るなんて”と、

驚きながらも、翔太(綾)のことを祝福するー。


けれどー”自分の名前”が、自分の手から零れ落ちるような、

そんな感覚を覚えて、綾(翔太)は少しだけ寂しそうな

表情を浮かべるのだったー…


☆前回はこちら↓☆

<入れ替わり>僕とわたしの不思議な青春㉞~生徒会長~

2度目の夏休みを過ごす翔太と綾ー。 事情を知る互いの親友と共に、 4人で夏のお祭りに足を運んだ二人は、 お互いに”元に戻りたいという気持ち”と、”元に戻ることへの不安”で 揺れていることを知るー。 途中、綾に執着する転校生・渡海 和之の乱入もあったものの、 2人は、夏休みにたくさんの思い出を作ることが できた...

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


★主な登場人物★


遠藤 翔太(えんどう しょうた)

C組生徒。大人しく、奥手な性格の持ち主。綾と入れ替わってしまう。


星村 綾(ほしむら あや)

C組生徒。可愛らしい雰囲気に、明るい性格の持ち主。翔太と入れ替わってしまう。


神田 哲真(かんだ てつま)

C組生徒。翔太の中学時代からの友人。女子は苦手。


山井 穂乃果(やまい ほのか)

C組生徒。綾の親友。入れ替わりを知ってからも変わらず接してくれている。


栗原 誠一(くりはら せいいち)

C組生徒。学校行事に妙に燃えているお調子者。


★脇役も含めた人物紹介はこちら↓★

<人物紹介>僕とわたしの不思議な青春~登場人物図鑑~

長編入れ替わりモノ 「僕とわたしの不思議な青春」の 登場人物図鑑デス! 連載前に予告として掲載した、 主人公たちのクラス名簿の内容に加え、登場する教員や その他の人物もご紹介しています~! ※ネタバレは控えめ(漫画や小説の最初の方のページに書かれている  人物紹介ぐらいの内容…)デス~!  最初にクラス名...

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


「ーーうぉぉぉぉぉぉ!もうすぐ体育祭だ!」


翔太たちのクラスメイトの一人、栗原 誠一は

嬉しそうにそんな言葉を口にしたー


「ーちょっと!寧々の近くで騒がないでよ!うるさい!」

自分のことを可愛いと思い込んでいて、一人称が自分の名前な

女子生徒・寧々が嫌そうに表情を歪めるー。


「ーーーいやいやいや、1年に1回のお祭りだぜ?

 しかも、2学期は文化祭も合唱コンクールもあるし、うぉぉぉぉぉ!」

誠一がさらにそう叫ぶと、

「ー平民の皆さんは、そのような行事でも嬉しいモノなのですねー」

と、転校生のお嬢様・神宮寺 真莉愛がクスクスと笑うー。


相変わらず、本人に悪気はないのだが、言い方が最悪な真莉愛ー。


「ーー神宮寺さんにも、平民の行事の楽しさがきっと分かるぜ!」

真莉愛の嫌な口調にも全くへこむことなく、誠一がそう言うと、

真莉愛は「それはー楽しみですねー」と、クスクスと笑うー。


「ーーー栗原」


「ーーは?」


騒いでいた誠一を、鋭い声が止めたー。


「ーー…授業中だぞ。いい加減に静かにしなさいー」


「ーーー…は……す、すんませんー」

誠一は、しょんぼりした様子で座席に座るー。


そう、今は国語の授業中だったー。

”授業がつまらない”といつも言われている井上先生が

呆れ顔で表情を歪めると、誠一は気まずそうに目を逸らしたー。


・・・・・・・・・・・・・・・・・


「ーーそれにしても、栗原くんっていつも学校行事

 楽しみにしてるよね」


翔太(綾)が、生徒会の書類を見つめながら笑うと、


「あははー…確かにいつも騒がしいよねー」

綾(翔太)は笑いながら、誠一の方を見つめるー。


誠一は、クラスメイトの”人生は暇つぶし”な、孝弘に対して

体育祭のすばらしさを熱弁しているー


「ーーいや、体育祭なんて時間の無駄だろー」


「ーーーいやいやいや、藤沢!お前も一度ぐらい人生に熱くなってみろよ!」


「ーーお前は暑苦しすぎるぞー」


うんざりした様子の孝弘に、さらに熱弁を続ける誠一。



「ーーあはは…」

綾(翔太)は、そんな光景を見つめながら、思わず苦笑いすると

”でも、栗原くんってなんであんなに行事に燃えてるんだろうー?”と、

そんなことを心の中で呟いたー。


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


数日後ー。


「なぁなぁ、誰かクラス対抗リレーの練習しようぜ!」


誠一は、体育祭で行われる”クラス対抗リレー”で何としても

1位になりたいと燃えていたー


がーーー


「ーー寧々はパース!」

寧々が、そう言いながら立ち去っていくー。


誠一はめげずに他の生徒たちにも次々と声をかけていくー。


「ーー今日は、俺の覇王の腕がうずくんだー…早く家に帰らないと

 みんなを傷つけちまうかもー」

中二病の米沢 海斗が、そんな理由で練習を断るー。


「ーーそ、それは仕方ないなー」

納得する誠一。


”納得するんかい!”と、近くにいた笹野翔子が心の中でツッコミを入れるー。


さらに声をかけ続ける誠一。


「ーー倉守さん!」

「ーーボ、ボク?ボクはこれから美術部の活動がー」

美術部の中性的な女子生徒・倉守詩音に断られるー。


「わ、渡辺!」

「ーー僕は試験の勉強だー。運動なんて野蛮なことはしない」

勉強一筋の渡辺大樹にも断られるー。


「霧崎さん!!!」

「ーごめん!あたし、今日、弟たちと映画見に行く約束してて!」

少し前に綾の妹・美桜のいじめ問題解決を手伝ってくれた

霧崎理子も、誘いを断るー。


「ま、丸岡!」

去年、いじめられていた丸岡富雄に声をかける誠一。

しかし、富雄も申し訳なさそうに

「ご、ごめん…今日、僕、湯川さんと…このあと…」

と、昨年の合唱コンクールのことがきっかけで付き合いだした湯川梓と

一緒に買い物に行く用事を口にするー


「く、リア充め!爆発しろ!」

誠一は悔しそうに笑いながら言うと、

「守屋さん!」と、さらに声をかけるー


「チッ」

舌打ちする智花ー


「えぇっ!?」

誠一は真っ青になるー。


生徒会選挙で負けたばかりの”表裏が激しい優等生”智花は、

最近機嫌が悪いー。


「ーーー……え…ぇぇぇ…」

誠一はしょんぼりした様子でもう一度そんな言葉を口にすると、

「畜生!薄情なやつらめ!こうなったら一人で練習してやるぅ!」と、

一人で悔しそうに走りながら、校庭の方に向かって行ったー


「ーーー…あははー…って、わたし、誘われなかったねー」

翔太(綾)が、そう言うと、

綾(翔太)は「星村さんは生徒会の活動がこのあとあるって

知ってるからじゃないかなー?」と、笑うー。


「ーーふふ、そうかもねー

 じゃあ、わたしは生徒会室に行くねー

 今日もお疲れ様ー」

翔太(綾)が、笑いながら手を振ると、

綾(翔太)も、翔太(綾)に手を振り返すー。


もう、”自分”に手を振るのも慣れたー。


そんなことを思いながら、教室の窓から外を見つめると

誠一が一人で全力疾走しているのが見えたー。


「ーーーーー」

綾(翔太)は、少しだけそんな姿を見つめながら、

そのまま教室の外に向かって歩き出したー。


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


「うぉぉおおおおおおおおおおおお!!!」

一人で走り続ける誠一。


「ーーくそっ…やる気があるのは俺だけかー」

そんなことを呟いていると、

「栗原くんー」と、背後から声がしたー。


「ーーーおっ!ようやくやる気のあるやつがー」

誠一が、そう言葉を口にしながら振り返るとー、

そこにいたのは、綾(翔太)だったー。


「ーーほ、ほ、ふぉしむらさん!?!?!?」

声が裏返って、変な叫び声を上げる誠一。


「ーーえ… あ、あははー…

 一緒に練習しようと思ってー」

綾(翔太)がそう言うと、誠一は「えっ…えっ」と、

挙動不審な動きをし始めるー。


誠一からすると、

”星村 綾”は、いつも優しく微笑んでいる感じの

憧れの女子生徒の一人で、

そんな綾が、練習に付き合ってくれるなどとは夢にも思っていなかったー。


教室でも、ヤケクソで声をかけた智花以外は、

”誠一とそれなりに話す女子”たちばかりで、

綾(翔太)とは普段、そこまで頻繁に話すわけではないし、

なんとなく”俺なんかが星村さんを走らせるなんておこがましい”と、

綾(翔太)に声をかけることはなかったー


「え…ほ、ホントにいいの?俺なんかと走るなんてー」

誠一がそう言うと、

綾(翔太)は少し意外そうな顔をしながらー、

”あーーやっぱり、星村さんの身体だとそんな風に思われるのかなー”と、

苦笑いするー。


未だに、”綾”に対して男子生徒が抱く感情には、戸惑うことがあるー。


普段は事情を知る哲真や、カードゲーム部の幸也、

そういった面々とばかりいるために忘れがちであるものの、

やっぱり、今の翔太は、男子からすると”輝いて見える星村綾”なのかもしれないー


「ーーそんなこと気にしないで!一緒にがんばろ!」

綾(翔太)がそう言うと、誠一は顔を赤らめながら「よ…よし!じゃあ」と、

嬉しそうに走り始めたー。


誠一の練習に付き合って、一緒に走る綾(翔太)ー。


「ーーーはぁ…はぁ…はぁ…」

綾(翔太)は、走りながら、次第に疲れを感じていくー


”あんまり、星村さんの身体を無理させちゃだめだよねー…”

綾(翔太)が、そう思いながらも、一人で練習している誠一を

何となく可哀想に思い、練習を一緒に続けるー。


翔太自身も、運動が得意だったわけではないー。

しかし、綾の身体になってから、”自分の身体よりも”

激しい運動をするときには特に、疲れやすさや

体力の違いを感じるー。


男子と女子の違いを、嫌でも思い知らされる部分のひとつだー。


もちろん”運動が得意ではない翔太”が、”運動が得意な女子”ー

例えば、霧崎理子あたりと入れ替わっていれば、

逆に”僕の身体よりも動きやすい”となったかもしれないー。


しかも、お互いに運動がそんなに得意じゃない者同士の入れ替わり

だったために、綾の身体になって、翔太は体力差を痛感していたー。


「ーーーはぁ…ごめんーちょっと休憩していいかな…?」

綾(翔太)がそう言うと、誠一は「あ…も、もちろんー」と、

少し戸惑いながら言葉を口にしたー。


がー、その直後ー


誠一は顔を赤らめて、バッと目を逸らしたー


「ーーえ…?」

綾(翔太)が、戸惑いながら不思議そうに自分を見つめるとー

汗で体操服が透けて、少し下着が見えてしまっていることに気付くー


「~~~~~~~…!」

綾(翔太)は、顔を赤らめながら、

「ご、ご、ご、ご、ごめん!き、気にしないでー」と、

慌ててそう言葉を口にするー。


自分自身も、ドキッとしてしまいながらも、

慌てて、「じ、ジャージ着たままの方が良かったかなー」と、

そんな言葉を口にしながら、誠一の方を見つめるー。


今は秋ということもあり、まだまだ暑いー。

教室では着ていたジャージをついつい脱いでここに着てしまったのだー。


すぐに鞄からジャージを取り出して、それを着ると、

誠一は「な、なんかーーすんませんー」と、急に敬語まじりで

言葉を口にしたー。


「ーーあ、あははーわ、わたしの不注意だし、気にしないでー」

綾(翔太)はそう言いながらも、

”男子の時は気にしなくても良かった部分だから、ついー”と、

心の中で苦笑いしたー。


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


その日以降もー、翔太(綾)や、哲真ー、

他のクラスメイトたちも、時々、誠一の個人的な

クラス対抗リレーの練習に付き合ってくれるようになったー。


クラス対抗リレーは、この学校ではクラスのほぼ全員が出場する、

正真正銘のクラス同士の対決のため、一人一人の力が

重要になってくるー。


当初、そんなに力を入れていない子も多かったものの、

誠一のあまりにも暑苦しい熱意に負けたのか、時々練習に

付き合ってくれるクラスメイトも増えて来たー。


「ーーへへへーこれで今年はC組が優勝できそうだな!」

満足そうに笑う誠一。


体育祭前日ー。

誠一は、そんな言葉を口にすると、

「明日の体育祭、楽しみだな~~」と、いつも通り、

無邪気な笑顔を浮かべるー。


「ーあんた、またどうせお腹壊すんじゃないの?

 去年もお腹壊してなかったっけー?」

気の強い女子生徒・高倉美咲がそんなツッコミを入れると、

誠一は「うるせー!今年は大丈夫だよ!」と、そう反論するー。


そんな様子を見ながら、

翔太(綾)と綾(翔太)は笑うー。


「栗原くんって、本当にいつも楽しそうだよねー」

翔太(綾)が言うと、綾(翔太)も少し笑いながら

「ちょっと騒がしいけどー」と、冗談っぽく言葉を口にするー。


そんな会話をしていると、誠一が

他の生徒たちがほとんどいなくなったのを見計らって、

綾(翔太)たちの方に駆け寄ってくると、

「星村さんとー、遠藤も、本当にありがとな!」

と、綾(翔太)と翔太(綾)の二人に感謝の言葉を口にするー。


練習を始めた初日に練習に付き合ってくれた綾(翔太)ー。

それがきっかけで手伝ってくれるようになった翔太(綾)ー。

そして、その輪は広がり、体育祭前にたくさんのクラスメイトが

誠一に多少は付き合ってくれたー。


きっかけを作ってくれた二人に、誠一はとても感謝していたー。


「そういえば栗原くんって、いつも学校行事、すごい張り切ってるよねー」

綾(翔太)が、ふとそんな言葉を口にすると、

誠一は少しだけ笑うー。


「ーーーへへへー当たり前だろー

 こんな楽しいことは他にないんだからー」


誠一は”体育”が好きなわけではないー。

昨年から体育祭だろうと、文化祭だろうと、合唱コンクールだろうと、

とにかく学校行事をとても楽しそうにしているー。


窓の外を見つめる誠一。

明日の体育祭が行われる校庭を、目を輝かせながら見つめているー。


そしてー、ふいに言葉を口にするー。


「みんなにはうるせぇ奴だって思われてるのは

 分かってるけど、

 俺、こういうの、本当楽しいんだよー。

 バカみたいって言われるかもだけどな」


誠一はそれだけ言うと、少しだけ笑うー。


「俺の家、母子家庭でさー。

 とにかく、経済的に苦しくて、

 小さい頃から、旅行も、遊園地も、水族館も、動物園も

 どこも行ったことなかったしー

 

 クリスマスも、誕生日も俺の家ではないからー


 だからーー

 楽しいんだーこういうの。」


誠一はそんな言葉を口にするー


栗原誠一の家庭は、母子家庭ー。

幼少期から経済的に苦しく、”遊びに行く”という経験が

家庭では一切なかったー。

母はいつもいつも誠一に謝罪の言葉を口にしていたー。


けれど、誠一はそんな母を恨んだことは一度もなかったー。


そしてー、そんな母親を前に

小さい頃から誠一は、

いつも自分に謝って来る”母親”を元気づけようと、

”どんな時でも明るく”振る舞うようになったー。


自分が落ち込んでちゃいけないー、と

どんな時でも、明るく振る舞ったー。

それが、今の誠一の、いつもお調子者な性格を作り上げたきっかけー。


高校に入学してからは、バイトもして、

生活費の助けになるように、自分のお小遣いはほぼ0の状態で、

全てのお金を自分の学費の補填や、生活費に充てているー


クリスマスも、何もかも”自分の家庭”にはなかったけれど、

それでも誠一は、母親のことを恨んでなどいないー。

自分を、ここまで育ててくれたのだからー。

それだけで、十分だと誠一はそう思っているー。


「ーーー栗原くんー…」

そんな、誠一の家庭の事情を聞いて、

綾(翔太)が寂しそうに言葉を口にすると、

「ーまぁまぁ、別に暗い話じゃないんだー。

 俺はちゃんとここまでやってこれたんだし、

 俺は今、滅茶苦茶楽しいんだからさー。

 明日は体育祭、その次は文化祭、それに合唱コンもあるしー」

と、嬉しそうに笑うー。


そんな誠一の言葉に、綾(翔太)と、翔太(綾)も、

少しだけホッとした表情を浮かべると、

「ーー明日は、一緒に頑張ろうねー」と、そんな言葉を口にしたー。


「ーーあぁ!二人のカップルパワーにも期待してるからな!」

誠一がそんな風に言うと、

綾(翔太)と翔太(綾)は「えぇっ!?」と声を上げて、

恥ずかしそうに顔を見合わせるー。


「ーーあ???え?違うの?」

誠一がきょとんとした表情で、二人を見るー


「ーー僕たち、付き合ってるわけじゃー」

翔太(綾)がすぐにそう言葉を口にすると、

誠一は「えぇぇっ!?マジかよ!?」と、驚きながら

「ーー俺以外にも、二人が付き合ってると思ってるやつ、

 普通にいるぜ!?」と、そう言葉を口にしたー


「えっ…えぇぇ~!?」

綾(翔太)も驚きながら、

翔太(綾)の方を見つめるー


そうー

”僕たちは”

”まだ”

付き合っていないー。


去年のクリスマスの約束ー。

”告白は自分の身体で”を、まだ果たせていないー。


もちろんー

告白の返事がYesかどうかは分からないけれどー。


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


翌日ー


体育祭は無事に終わったー。

クラス対抗リレーでは練習の成果だろうかー。

念願の1位ー……


…ではなく、2位だったものの、

誠一はとても満足そうに「みんなありがとな!」と、

そう言葉を口にしたー


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


体育祭が終わり、元の日常へと戻るー。


今日も、誠一は授業が終わると、

次の行事ー…

文化祭のことをワクワクしながら話し始めるー。


「どうせ、また腹痛起こすんでしょ?」

気の強い女子・美咲がそう言うと、

誠一は「体育祭では平気だったし!」と、そう呟くー。


誠一がよく行事の日にお腹を壊すのはー

”楽しみにしすぎて、緊張するのと、前日夜にワクワクしすぎて

 眠れなくなるから”だと、誠一は言っていたー。


そんな誠一を見つめながら綾(翔太)が、

少しだけ笑うと、

ネガティブな暗いオーラの漂う数学の先生・黒川星奈先生が

「あなたはーいつも元気ねー」

と、誠一に言葉を掛けるー


「ーーやべっ!?また授業中だったー…」

誠一は、授業中であることを忘れて話し込んでいたことを

反省しながら、黒川先生に向かって

「先生もたまには明るく行きましょうよー」と、

いつものようにふざけた口調で言葉を口にしたー。


「ーーーーーー」

黒川先生は、そんな誠一に対して、いつものように

とても薄い反応をすると、誠一は「リアクション薄っ!」と、

困惑の表情を浮かべながら、苦笑いするのだったー


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


2年目の文化祭が近付くー。


文化祭実行委員を選ぶその日ー、

綾(翔太)は、”星村さんは生徒会長になって、色々頑張ってるんだしー

僕も何かやらないとー”と、そんな気持ちから、

文化祭実行委員に立候補したー。


「ーーーーーー」

そんな、綾(翔太)が立候補したのを見て、

綾に執着する転校生・渡海 和之は笑みを浮かべながら手を上げるー。


「ーー!」

綾(翔太)が表情を歪めるー。

”文化祭実行委員同士”は、何かと一緒に行動する機会もあるー。


まさか、和之が立候補してくるとは想像していなかったし、

うかつだったー。


「ーーーじゃあ、文化祭実行委員は星村さんと、渡海くんにー」

担任の若松先生がそう言葉を口に仕掛けると、

綾(翔太)の隣の座席に座っている須藤 渉と、

翔太の親友である哲真が手を挙げたー。


2人とも”和之が綾に執着していること”を知っていて、

綾と和之が一緒になるのを防ごうと、立候補したのだー。


「ーーチッ」

舌打ちする和之ー。


「ーーー(渡海と、翔太と一緒にするわけにはいかないからなー)」

哲真がそんなことを思いながら、綾(翔太)を見つめるー。


「ーー(渡海と星村さんを一緒にするのは、あんま良くない気がするー」

渉は、心の中でそう呟くー。


「じゃあ、男子はジャンケンでー」

若松先生がそう言うと、和之、渉、哲真の三人はジャンケンをすることになったー


そしてーーー


「ーーククーーー」

和之が笑みを浮かべるー


「やっぱ僕はー星村さんと運命の赤い糸で結ばれてるんだー…」

ニヤッと笑う和之ー。


「ーーー!!」

ジャンケンで買ったのは、渡海和之ー。

このままでは、綾(翔太)と和之が一緒にー…


かと言って、綾(翔太)が今更立候補を取り消すこともできずー、

翔太(綾)は”男子”であるため、どうすることもできないー。

事情を知る綾の親友・穂乃果は部活の方でスケジュールがあって

実行委員をやるのは難しいー。


そんな時だったー


「ーわたしも、やりたいですー」


「ー!?」

和之が表情を歪めるー。


翔太が小さい頃、仲良しだった女子生徒・伊藤 菜々美が、

突然、実行委員に立候補したー


菜々美は”自分で”翔太らの入れ替わりに気付きー、

この前、綾(翔太)にそのことを指摘したばかりー。


入れ替わった二人以外で入れ替わりを知っている”3人目”だー。


しかし、哲真や穂乃果らと繋がることなく、

入れ替わりのことを知りつつも、特に接点を持とうとはしていないー。


そんな菜々美が立候補して、綾(翔太)とジャンケンになるー。


教室の前にやってくると、菜々美は小声で「グーを出すから」と、

呟くー


綾(翔太)は「え?」と、言葉を返すと、

菜々美は「チョキを出しなさい」と、だけ小声で呟いたー


そしてーーー

言われた通りにした綾(翔太)は、ジャンケンに負けてーー

”自然な形”で、実行委員から外れることに成功したー。


「ーー伊藤さんー…」

綾(翔太)は座席に戻っていく菜々美を見つめるー。


”綾と一緒になろうとしたのに”目論見が外れた和之は

悔しそうに歯ぎしりをしながら、綾(翔太)の方を

睨みつけていたー…


㊱へ続く


・・・・・・・・・・・・・・・・・


☆2-Cの日常☆


”行事なんて下らない”


相変わらず、勉強一筋の渡辺 大樹は

そう思いながら

今日も勉強に打ち込んでいたー。


中間テストもあるし、期末テストもあるー。

人生とは、勉強に勉強を重ねるものだー。


それに、父親からの期待を裏切るわけにもいかないー。


「ーーーーー」

体育祭にも関心を示さず、文化祭にも関心を示さない大樹ー。


そんな大樹に対して、

クラスメイトの、いつも穏やかな女子生徒・野坂 優菜が

声をかけて来るー。


「ーいつも、頑張っててすごいよねー…渡辺くんはー」

そんな優菜の言葉に、大樹は表情を変えることもなく、

「僕は、他のやつらとは違うからなー」

と、他人を見下すような言葉を口にするー


「ーーーーー」

優菜は、そんな大樹を見つめながら、

少しだけ考えつつ、言葉を続けるー。


「ーーーーでも、”そういう言い方”は良くないんじゃないかなー」

とー。


優菜にそう指摘された大樹は、

少しだけ表情を歪めるー。


大樹は、成績は確かにいいし、授業態度も良いー。

がー、性格が壊滅的に悪いー。


それを指摘する人間も、呆れられていて、ほとんどいないー。


「ーーーーー」

それ故に、改めて、優菜のような真面目な生徒に指摘されたことは

少しだけ大樹の心に響いたようだったー


「ーーー余計なお世話だ」

大樹はそれだけ言うと、優菜は少しだけ苦笑いしながら

「ーー邪魔してごめんねー。勉強頑張ってー」と、

そう言葉を口にして立ち去っていくー。


優菜が立ち去ったあと、大樹は教室の出口の方を見つめると、

少しだけ、表情を曇らせながら「僕は間違っていないー」と、

静かにそう言葉を口にしたー。


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


コメント


やっぱり2学期は行事が多いイメージデス~!☆

(学校によって違うとは思いますケド…)


作中の2年目でも、それぞれの学校行事も

絡めつつお話を進めていくのデス…☆


今日もありがとうございました~~!

Files

Comments

No comments found for this post.