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梨乃に続き、江戸時代の侍に憑依されてしまった栄太。


梨乃に憑依した侍・テツが、この世界に飛ばされる直前に

戦っていたという”人斬り”に、憑依されたのではないかと

身構える栄太。


がー…栄太に憑依した侍は”源三”という名の

”人斬りを追っていた方の剣客”だったー。


そうー、梨乃に憑依した方の侍こそ、”人斬り”だったのだー。


テツに身体を完全に支配され、乗っ取られた梨乃を

救出すべく、栄太は源三に身体を貸すことにー…。


★前回はこちら↓★

<憑依>憑依侍③~人斬り~

”テツ”を名乗る江戸時代の侍に憑依されてしまった 隣の座席の生徒・梨乃。 そんな梨乃の事情を知った栄太は、 梨乃と、その中に宿るテツと話し合いながら、 戸惑いの日々を送ることにー。 ”テツ”が言うには、この世界にやってくる直前、 自分は”人斬りの男”と戦っていて、 もしかしたらその男も”現代”に自分と同じように...

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


栄太は、木刀を手に、

近所の森の中で”修行”を続けていたー


「ふぅー…大分馴染んできた」

栄太の身体でそう呟く源三ー。


その言葉に、”すみませんー。僕、運動不足でー”と、

栄太の意識は今一度謝罪の言葉を口にするー


「いや、そんなことはないさー

 それに、アイツも北村 梨乃の身体では全力を発揮することは

 難しいはずだー


 身体の性別も違うわけだし、北村梨乃が、いくら剣道部で

 剣を振るってる子だとは言え、

 すぐに身体が馴染み切るとは思えないー」


栄太の口でそう言葉を口にすると、

”君の身体での戦い方”は、ちゃんと身に着けたー”と、

そんな言葉を付け加えたー。


「ーーー…北村さんの場所は分かるのー?」


「ーーーあぁ。妖刀の気配がするー」


栄太の身体が、一人で栄太と源三、二人分の言葉を口にするー。


「ーーーそろそろ、奴と決着を付けに行こうと思うー。

 君の身体、貸してもらってもいいだろうかー?」


栄太の口で、申し訳なさそうに言う源三ー。


「ーーうんー。

 悔しいけど、僕じゃ支配された北村さんを止めることはできないと思うしー


 どうかー…

 よろしくお願いします」


栄太がそう言葉を口にすると、

源三は「承知したー」と、栄太の口で呟いてから、静かに歩き出したー。


・・・・・・・・・・・・・・・・・


「ーーふふふふふ

 拙者の”闇雲”」


”妖刀”の異常な力が、時空に亀裂を生み、

それが、テツと源三、そして妖刀・闇雲が未来に飛ばされる原因を

作ったー。


テツに完全に支配されてしまった梨乃は、

そんな妖刀・闇雲を手に、左目を赤く光らせながら笑うー。


「ーー闇雲の力が拙者に流れ込んでくるー」

気持ちよさそうに、妖刀の邪気が身体に流れ込むのを感じながら、

梨乃は興奮した様子で息を吐き出すー。


「ーーふふふーー

 そろそろ、誰かを斬るでござるかー」


女忍者のような格好に着替えていた梨乃は、

笑みを浮かべながら、妖刀を手に、外に出るー。


乗っ取られた梨乃がアジトにしているのは、とある山道の一角ー。

江戸時代に、テツと源三が激突した場所だー。


「ーーー”人斬り・梨乃”としての第1歩ー…

 拙者ー… いいえ、ふふー 梨乃、興奮してきたー」


”早く人を斬りたい”

そんな衝動に飢えながら、片目を赤く光らせた梨乃が、

獲物を探すー。


そしてーーー


「ーみーつけた…」

山中にキノコ狩りにやってきていた老婆を見つけると、

梨乃は嬉しそうに、その老婆に駆け寄っていくー。


容赦なく、妖刀・闇雲を抜くと、老婆に向かって

笑い声を上げながら近づいていく梨乃ー。


「ーーひっ!?」

老婆が梨乃に気付いて怯えた表情を浮かべるー。


がー…

その時だったー


「やめろ!」

背後から声がして、梨乃が立ち止まるー。


「ーーーーーー…ーーーその声はー」

梨乃はニヤリと笑みを浮かべながら振り返ると、

目を赤く光らせながら、「ーーあぁ~…栄太殿ー」と、

梨乃は笑うー


「い、今のうちに逃げて下さい!」

栄太が、自分の口で老婆に向かってそう叫ぶと、

老婆は「は、はいー…」と、慌てた様子で立ち去っていくー。


梨乃は苛立った様子で「ーわたしが人を斬るの、邪魔しないでくれる?」と、

梨乃のフリをして、そう言葉を口にしたー


がーー


「ーーテツよ。これ以上の狼藉は許さぬー」

栄太の表情がガラリと変わり、木刀を手にするー。


「ーーははーーー…いつぞや、聞いたセリフだなー」

江戸時代での決戦時にも言われた言葉を思い出しながら、

梨乃は闇雲を手にして笑うー。


”ーーき、北村さんは、大丈夫だよねー?”

栄太が心配そうに言うと、

「ー”心”を斬るー。問題ないー」と、源三は栄太の身体で

そう言葉を口にしたー。


”ーーーーー”

栄太は、女忍者のような格好をして、

片目を赤く光らせている梨乃の方を見つめるー


”北村さんー…”

変わり果ててしまった梨乃の姿に、心を痛める栄太ー。


「ーーー今度こそ、拙者と貴様の決着の時だー!」

梨乃は嬉しそうに笑いながら、”闇雲”を手に斬りかかって来るー。


梨乃とは思えないぐらいに激しい動きに、

押されていく栄太ー。


「くっー」

栄太が表情を歪めるー


「ークククー この身体は拙者にとってちょうどいい身体でござるよー

 動きもいいしー


 何よりーー」


梨乃は、栄太の反撃を跳躍して回避すると、バク転をしながら

距離を取って、笑みを浮かべたー


「何よりーきもちいいー」

胸を揉みながら邪悪な笑みを浮かべる梨乃ー。


「ーーーふ、ふざけるな…!」

栄太が思わず、自分の口で怒りを露わにするー。


「ーー…案ずるなー必ず救出する」

栄太の口で、源三がそう呟くと、

再び二人の攻防が続くー。


しかしー、梨乃が手にしているのは”本物の剣”

対するこちらは木刀ー。

そもそも不利なのは明らかだったー。


それでも、栄太の身体に”馴染んだ”源三は、

梨乃の攻撃を回避し続けるー


「ーーチッ… はぁ…はぁ…はぁ」

梨乃が息を上げ始めるー。


思った以上に、梨乃の身体の体力の消耗が激しいー。


梨乃は元々、華奢な体格だしー、

あくまでも”剣道”の範囲内で運動神経が良いだけー。


”梨乃の身体能力以上”の動きと、

妖刀による負担で、梨乃の身体は思った以上に疲労していたー


「ーーどうした?テツよー」

栄太がそう呟くー。

梨乃は歯ぎしりをしながら、赤く光る片目を栄太に向けるー


「くそっ…はぁっ…はぁっ この身体ー…

 思ったより使えぬでござるー」

梨乃は悔しそうにそう呟くー。


そんな様子を見て、栄太は木刀を手に、

目を閉じ、何かを念じ始めたー。


源三が使う流派の秘儀ー

”相手の心を斬る”ーそんな技を使うべくー、

気を整えるー。


この技であれば、梨乃の身体から、テツを引きずりだすことができるかも

しれないと、源三は栄太に説明したーーー


再び襲い掛かって来る梨乃ー。

その技を叩きこもうとする栄太ー。


がーーー


ニヤッ…

梨乃が、邪悪な笑みを浮かべー、

そしてーーー


栄太の急所を思い切り蹴りつけて来たー


「ぐっ…!?」

不意打ちに表情を歪める栄太ー。


「ーーーぐ…ぁ…」

想像以上の痛みに苦しみの表情を浮かべる栄太を見て、

梨乃はにやりと笑うー。


「ーーふふー”今の拙者”には、ない弱点でござるよー」

梨乃はそう言いながら、剣を手に、栄太に近付いてくるー。


「ーーーふふふふ…松山くんー

 梨乃が、殺してあげるね♡」


梨乃のフリをしながら、人斬り・テツはニヤリと笑うー。


やっと血が見れるー。

テツの意思に従って、梨乃の身体も激しく興奮しているー。


顔を赤らめながら、抑えきれない喜びに

口元を歪めー、梨乃は剣を振るおうとしたーーー


しかしーー


「ーーー……!?」

梨乃の手が、栄太に剣を振るう直前で、突然止まったー


「ーーーな…????」

表情を歪める梨乃ー


「ーー!?」

顔を上げた栄太も、驚いているー。


「ーーーー…わ……たしの……か…らだー……」

梨乃が苦しそうに呟くー


「ーーーすき、、、には…さ、せない…」

梨乃がやっとの思いでそう呟いたのを見て、

栄太は確信するー


「き、北村さん!」

そう叫ぶ栄太ーー


が、すぐに梨乃は「邪魔をするなぁ!!!」と、

目を真っ赤に光らせると、

再び、剣を振り上げようとしたーーー


しかしーーー


「ーー稼いでくれた時間、無駄にはしないー」

栄太は木刀を掴み直すと、

源三は栄太の口で叫んだー


「人斬り・テツー。

 これで、終わりだー!」


木刀を手に、”心を斬る”奥義ー、”心斬”を繰り出す栄太ー。


「ぐあああああああああああっ!?!?」

梨乃が吹き飛ばされて、そのまま妖刀・闇雲は、

山道の斜面の方に転がっていくー。


梨乃は仰向けに倒れたままー。


そしてーーー…


「ーーーぁ……」

梨乃の身体から、霊体のようなものが飛び出すー。


”あ、あれはー…?”

栄太の意識が心の中でそう呟くと、

「人斬りのテツだー」と、源三は栄太の口でそう言葉を口にするー


鋭い目つきの、殺気みなぎる男ー…

霊体ながら、その顔がうっすらと見え、

栄太本人は気圧されるー。


「ーー貴様に、拙者を斬れるものかー…!

 また新しい身体を見つけて、拙者はー」


テツの霊体がそんな言葉を発するー


しかしーーー


「ーーーー…逃がさんー」

木刀を手に、栄太の身体を使って源三は気を整えるー。


「ー木刀ごときで、霊と化した拙者を斬れるものか!」

テツが叫ぶー。


「ーーー斬る!」

テツの言葉よりも大きく叫んだ栄太の身体を使う源三はーー

そのまま、テツの霊体に迫りーーー、

テツの”霊”を斬ったーー


「ーーぐっ…ぐあああああああああああああああっっっ…!」

テツの霊体から、煙のようなものが噴き出しー、

そしてー、小さな雫となって消えていくーーー


「ーー…!!」

栄太は、自分の身体の主導権を取り戻すと、

倒れたままの梨乃に駆け寄りながら、「き、北村さん!」と、

そう叫ぶー。


「ーーーーー……ま、松山くんー…」

幸いー、梨乃は気を失っていただけで、そう言葉を口にすると、

よろよろと立ち上がるー。


「ーー…っ…」

梨乃が、恥ずかしそうに自分の女忍者のような格好を見つめると、

「ーあ、ご、ごめんー」と、栄太は目を逸らすー。


そんな二人の様子を見ながら、栄太に憑依している源三は、

安堵の表情を浮かべるー。


あとはーーー


”闇雲”を破壊するのみー。

源三はそう思いながら、フッと笑うー。


”妖刀の闇の力で、遠い未来に飛ばされてしまったー

 もう、元の時代に戻るのは難しいだろうー。

 だが、しかしー…”


源三は、自分の最後の役割が”闇雲”を破壊することだと、

そう思いながら、栄太の口で、栄太と梨乃に感謝の言葉を述べるー。


「巻き込んですまなかったー」


そう言うと、栄太自身が自分の口で呟くー。


「ーこれから、どうするのー?」

とー。


そんな問いに、源三は答えたー。


”俺は、やらなければいけないことがあるー。

 これで、君たちとはお別れだー”


その言葉に、栄太と梨乃は、少しだけ表情を曇らせながらも、

それぞれ、源三にお礼をの言葉を口にしたー。


”ー達者でなー”

源三は、そう呟くと、栄太の身体から抜け出したー。


ひとつーー

”嘘”をついたー。


栄太から抜けた源三は、

崖下に落ちた”闇雲”を発見するとー、

”闇雲”に憑依するー。


そしてー、”自ら自壊”して、妖刀を破壊する決意をしー、

申し訳なさそうに呟くー


”ーーー俺も”悪党”なんだよなー”

とー。


江戸時代ー、彼は”世を渡り歩く剣客”だったー。

だがー、彼はー、

悪党を煽り、自らがその悪党を成敗することで、

住民たちから”お礼”を受け取るという悪事を繰り返している男だったー。


”テツ”の件も、そうー。

力を追い求める”テツ”の噂を聞いた源三は

テツにわざと”妖刀の噂”を流し、

それを手にして暴走したテツを、自ら成敗することで、

住民たちから英雄扱いされようと画策していたのだー。


がー、妖刀を手に入れて人斬りになったテツに、

源三は”大切な人”…恋人を斬られてしまったー。


その時、初めて源三は

”悪党を煽り” ”自らその悪党を成敗して、感謝される”という

自作自演にも似た自分の行為を反省したー。


そしてー、責任を感じた源三は、

自らの命に代えても、妖刀を手にしたテツを止め、

妖刀自身を破壊しようとしていたのだったー。


そしてー、この世界にやってきて、

この世界の人々の暮らしを見ているうちに、改めて己の行いを恥じたー。


”こんなにも輝かしい未来が待っているのだと”

彼はそう思ったー。


”俺にできる償いはーこれだけだー”

そう言葉を口にすると、妖刀・闇雲に憑依した源三は、

自らの魂を犠牲に、妖刀・闇雲を砕いたーーー


砕け散る妖刀ー。


源三は、薄れゆく意識の中で、

どこか満足したかのような感情を抱きー、

そのまま消えて行ったー…。


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


数日後ー


「ーこの前は、ありがとうー」

学校に復帰した梨乃からお礼を言われる栄太ー。


「え…あ、いや、全然ー。

 僕じゃなくて、僕に憑依した侍の人が頑張っただけだしー」

栄太がそう言うと、

梨乃は改めて「でも、ありがとうー」と、そう言葉を口にしたー。


テツから解放された梨乃は、

無事に学校に復帰し、日常を取り戻していたー。



ただーーー


帰宅した梨乃は、台所に置かれている包丁を見つめるー


「ーーーーーーー」


最近、何だか妙に気分が高揚することがあるー。


そんな風に思う梨乃ー。


不思議そうに包丁を見つめる梨乃の片目が赤く光るー。

そしてー、梨乃自身も無意識のうちに、

梨乃は邪悪な笑みを浮かべながら、囁いたー。


「血が、見たいー」

とー。


テツは、確かに消えたー。

けれど、憑依されている間に、

テツを狂わせた妖刀・闇雲を”梨乃”は手にしてしまったー。


妖刀を手にした梨乃には、

妖刀の邪気が宿ってしまっていたー。


この時代に飛ばされてきた妖刀を手にしたのは、

梨乃を支配したテツだー。


しかし、”身体”は梨乃の身体ー。

テツから解放されてもなお、梨乃は、妖刀に魅入られたままに

なってしまっていたー。


妖刀も、テツも、もうこの世に存在しないー。

けれどー、妖刀を手にした時に、

梨乃に宿った”邪気”は、消えないー。


「ーーーーふふ」

包丁から目を逸らすと、梨乃は自分が妙に興奮しているのを感じながら、

「ーなんだか…いい気分ー」と、

静かにそう呟いたー。



おわり


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


コメント


憑依侍の最終回でした~!☆


憑依されている間に、

勝手にされていたことが原因で、

解放されたあとにも影響が残っている状態…☆

いつか、大変なことになってしまいそうですネ~…!


お読み下さりありがとうございました~~!☆

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