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バレンタインデー前日ー。


「ーーーーーーー」

明日のバレンタインデーの話をしている

島崎 園香(しまざき そのか)の方を見つめながら、

クラスメイトの綾瀬 竜一(あやせ りゅういち)は、表情を歪めていたー。


竜一は、園香に密かな行為を抱いている男子生徒ー。

が、大人しい性格で、園香のような明るい子とは”真逆”の世界にいる存在ー。


そして、竜一はバレンタインデーが大っ嫌いだったー。

バレンタインデーなんてなくなってしまえばいいー。

そんな風に思っていたー。


そんな竜一は、

さっき、校舎の裏庭で偶然拾った”気持ち悪いミミズ”を、

園香の鞄の中にこっそりと投げ込んだー。


”ちょっとしたイタズラ”のつもりだったー。


自分が密かに片思いしている子が、

他の男子のためにチョコを作る姿を想像したら、

何となく嫉妬のような感情が膨れ上がってー、

ちょっとだけ、嫌がらせをしてみたくなったー。


ただ、それだけのつもりだったー。


竜一は、まだ知らないー。

その行動が”恐ろしい事態”を招くとはーー


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

「ーーーーー♪~~~」


明日のことを思い浮かべつつ、帰宅した園香は、

明日のバレンタインデーのために、チョコ作りの準備をしていたー。


明日は、片思いをしているクラスの男子・

小野坂 昭夫(おのさか あきお)に

本命のチョコを渡すつもりだったー。


そのための本命チョコと、

クラスの友達や、仲の良い男子たちに渡すつもりの

義理チョコや友チョコを、それぞれ作る準備をしていたー。


がー

そんな園香の足元に”不気味なミミズのような虫”が迫っていたー。


学校で、竜一が園香の鞄の中に入れた

”学校の裏庭で拾った気持ち悪いミミズのような虫”だー。


だがーその虫はーーー

”人間に寄生し、その人間を乗っ取る寄生虫ー”だったー…


少し前に、別種の寄生虫が突然変異したことで

生まれた新種の寄生虫だー。


そんな危険な寄生虫がーーー

バレンタインチョコ作りを始めた園香の足元に迫っていたー。


そしてーーー


「ーーー…え?」

園香は、自分の足元に”気持ち悪いミミズのような虫”が

蠢いていることに気付いて、

「ーな、なにこの子…?」と、表情を歪めたー


がーー

次の瞬間ー、”寄生虫”は、突然、飛び跳ねて、

園香のスカートの中に入り込んだー


「ーー!?!?」

驚く園香ー


その直後ーーー

アソコから、寄生虫が”中”へと入り込んだー


「ーーひぐっ…!?」

園香の身体がビクンと震えて、

その場に座り込むー


「あっ… あっ… うっ…ぁ…」

園香はピクピク震えながら白目を剥いて、

口からは唾液を垂れ流し始めるー


うめき声を何度も何度もあげながら

苦しそうにする園香ー。


「ーーー姉さんー?」

そんな、姉・園香の声を聞いて、偶然通りがかった

弟の正明(まさあき)が、不思議そうに声をかけるー。


がー、

台所側のほうを向いて、膝をついていた園香の

顔は、弟の正明からは見えなかったー


「ーーー姉さん、大丈夫?」

正明が今一度声をかけるー。


するとー、園香は

白目のまま、涎を垂らしながら言葉を口にしたー


「ーーー大丈夫ー。ちょっと材料、床に落としちゃってー」

白目でー、涎を垂らしたままそう呟く園香ー。


しかし、正明からは園香が背を向けているために、

それは見えなかったー


ピクッ ピクッと震える園香ー。


「ーはは、ならよかったー。」

正明は、姉・園香の異変に気付かず、自分の部屋に戻ってしまうー。


「ーーーー」

やがてー、園香はその後もしばらく痙攣しながら、

白目から、普通の目に戻るとー、

「ーー記憶の、読み込み開始ー…」と、

虚ろな目のまま、ロボットのように呟いたー


「記憶の読み取り中ー」

「記憶の読み取り中ー」

「記憶の読み取り中ー」

ロボットのように呟く園香ー


園香に寄生し、園香の肉体を支配した寄生虫が、

園香の記憶を、脳から吸収し始めていたーー


記憶の読み取りが進むと共に、

園香が人間らしい表情を取り戻していくー。


そしてーーー


「ー記憶の、読み取り完了ー」

園香はニヤッと笑みを浮かべると、

「ーー明日は、バレンタインデーね… ふふ」

と、言葉を口にするー


「ーーー”仲間”を増やすには、ちょうどいいかもー」

園香はそう言うと、”自分の体内”で、寄生虫を繁殖させてー、

それを”口”から吐き出したー


「ーふふ…」

口から吐き出した寄生虫を手に、園香は笑みを浮かべると、

それを”隠し味”にしたチョコを作り始めたー。


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


翌日ー

バレンタインデー当日ー。


園香は、笑みを浮かべながら学校にやってきていたー。


いつもより、少し短いスカートに、

少し濃いメイクー。


園香の”記憶”から、

その方が”男”を刺激することを理解した寄生虫はー、

園香を”妖艶な雰囲気”へと変えていたー


「おはよ~~~」

園香は笑みを浮かべながら教室に顔を出すとー、

友達に、何食わぬ顔で”手作りのチョコ”を配り始めたー。


「ーーーーあ、園香!今年も可愛いチョコだね~!」

「え~~すごい~!!!」

「ー園香、いつもバレンタイン気合入ってるよね~!」


受け取った友達から、そんな言葉を告げられるー


「ーー家に帰ってから食べてね」


園香は穏やかに笑いながら、

”その中には、わたしの”子”が隠し味に入ってるからー”と、

心の中で呟くー


”それを食べれば、みんなも”わたし”の仲間ー”

ニヤリと笑みを浮かべながら、園香は友達に一通り

チョコを配り終えるー。


偶然、バレンタインデーの前日に”人間の身体”を手に入れた寄生虫ー。


寄生虫は”仲間を増やす”ために

このバレンタインデーを利用しようとしていたー。


”手作りの食べ物”を手渡しても、疑われない機会ー

それが、バレンタインデーだー。

そんなバレンタインチョコの中に”隠し味”として

”寄生虫”を潜ませているー


「ーーーククククー…わたしの仲間がたくさん増えるねー」

そんな光景を想像し、ワクワクしながら園香は

不気味な笑みを浮かべるー。


バレンタインデーを”楽しむ”園香ー。

けれど、その”楽しみ方”は、昨日までとはまるで違う方向に

向いていたー。


純粋な気持ちで、バレンタインデーを楽しもうとしていた園香は

もういないー。

”愚かな人間たち”が、自らの仲間になることを楽しみにしている園香しかー、

そこにはもう、いないー。


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


昼休みー


園香は、”昨日までの園香”が好きだった男子生徒・

小野坂 昭夫を呼び出していたー


”ーこの人間のことが好きだったみたいだなー”

園香の記憶をも支配した寄生虫は、そんなことを内心で思いながら、

昭夫に「あのー…小野坂くんー」と、

昭夫に”手作りのチョコ”を手渡すー。


そのチョコの中には、もちろん

”乗っ取られた園香の身体の中”で生まれた寄生虫の子が

潜んでいるー。


「ーーー手紙も、読んでねー」

クスッと笑う園香ー。


”乗っ取られる前の園香”が、一生懸命考えて、

昭夫に対して書いた手紙ー。

園香を乗っ取った寄生虫は”あえて”それをそのまま昭夫に渡したー


「ーーありがとう。家でゆっくり読むよ」

昭夫が笑みを浮かべるー。


手紙の中で昭夫への想いを伝える言葉を

書き連ねていた園香ー。


けれどー、”今の園香”にとってそんなことはどうでもいいー。

ただー、”人間の男”は、告白の手紙がセットになっている方が、

より”チョコを食べてくれる可能性が高い”と、そう感じたー。


だから、手紙はそのまま渡したー


”好きな人に思いを伝える手紙”ではなく、

”子の寄生に成功する可能性を少しでもあげるためのツールとしての手紙”をー。


「ーーーふふ」

園香は、笑みを浮かべると、”あとはー”と、

あるクラスメイトのことを思い浮かべながら、ニヤリと微笑んだー。


・・・・・・・・・・・・・・・・・・


放課後ー


園香から”大事な話があるの”と呼び出されていた

クラスメイト・綾瀬 竜一は戸惑いの表情を浮かべていたー。


昨日、偶然見つけた”寄生虫”を寄生虫だとは知らず、

嫌がらせで園香の鞄に入れた男子生徒だー。


その竜一が、園香に呼び出されていたー。


「(も、もしかして、昨日のキモいミミズ入れたの俺だってバレたー?)」

竜一は、そんなことを思いながら、

園香に呼び出された空き教室にやってくるー。


すると、待っていた園香が「あっ!綾瀬くん」と、

嬉しそうに微笑んだー


ドキッとする竜一。

怒っている様子ではないー。

むしろ、とても嬉しそうだー。


それにー今日の”島崎さん”は何だかいつもよりもさらにかわいいー…

そんな、気がするー。


「ーーあ、あの、話ってー?」

緊張した様子で竜一が確認の言葉を口にするー。


すると、園香は笑みを浮かべながら

「ーー綾瀬くん、本当にありがとうー」と、

そんな言葉を口にしたー。


「ーーえ?」

竜一は首を傾げるー。


「ーーーお…俺、何かしたっけ…?」

竜一は、嫌な予感を覚えるー。

やっぱり昨日、あの”気持ち悪いミミズみたいなやつ”を鞄に

入れたのが竜一だと気付いていて、園香は嫌味を言っているのではないかと、

そんな風に思ったのだー。


がー

園香は、ハート型の美味しそうなチョコを手にすると、

「ー今の”わたし”があるのは、綾瀬くんのおかげー。

 だからこれ、感謝の気持ちー」

と、手作りのチョコを手渡して来たー


「ーーえ……」

竜一は戸惑うー。

が、チョコを見て”え…?これもしかして本命チョコー?”と、

少し浮かれながら思わず照れくさそうに笑うー。


「ーーーーー…し、島崎さんー…え…」

竜一は、顔を赤らめながらチョコを手にすると、

「ーーー綾瀬くんには、ほんと~に、感謝してるんだよ?」

と、園香はそんな言葉を口にしたー。


園香に寄生している寄生虫は、

”昨日、竜一が園香の鞄の中に入れた寄生虫”ー。

当然、”竜一が拾い、竜一が園香の鞄の中に入れた”ことは、

覚えているー。


”まぁ、もちろんお前は、助けようとしてそうしたんじゃないんだろうけどー”

園香は内心でそう呟くー。


人間を乗っ取り、人間の記憶を読み取り、人間を理解した今ー、

この綾瀬竜一が、寄生虫である自分を助けようとしたのではなく、

園香への嫌がらせをしようとして、あんなことをしたことは

理解しているー。


だがー、

結果的に、竜一のそういう行動のおかげで、自分は

この島崎 園香を乗っ取ることができたのだー。


「ーーーねぇ、今、食べて?」

園香は嬉しそうに言葉を口にするー


”恩人”でもあるコイツが”支配”されて”仲間”になる様は

目の前で見たいー。


「ーーーえ…い、今ー?」

竜一は照れくさそうにしながら

「これは、家に帰ってから大切に食べるよ」と、笑うー。


がー


「ーー今、食べてよ。”支配”されるところが見たいんだから」

満面の笑みのまま、そう呟く園香ー


「し、支配ー?」

竜一の表情から笑顔が消えるー。


「ーー食えよ」

園香はニコニコしながらそう言葉を発するー。


人間の記憶や、心を理解してもー

寄生虫は寄生虫ー。

感情と、言葉の使い方にはまだ、不完全な部分があるー


「ーーーえ…」

竜一は、そんな園香の言葉に不安を抱きながらも

「じ、じゃあ…た、食べるよー」と、チョコを慌てて開封すると

「い、いただきますー」と、そんな言葉を口にしてーー

”寄生虫入りのチョコ”を、その場で口にしたー。


「ーーー…!?」

見た目は良いのに、”かなり微妙”な味ー

しかも、中から何だか動くものがーー…


「ーーー!?!?」

竜一は慌ててチョコを吐き出そうとするー。


もちろん、吐き出そうとしても無駄だー。

一度口に入った寄生虫はそのまま体内に入り込んでいくー。


しかしー


「ーーー吐くなよー。飲めー

 わたしの”子”をー」


園香は優しい口調でそう言うと、竜一の口を塞ぐー。


もがく竜一…。

その中は竜一が動けないように、強引にキスをして、

その口を塞ぎー、そのまま逃げられないようにするとー、

やがて、寄生虫は竜一の喉の奥へと入り込んでいくー


激しく咳き込む竜一。


「ーー…し、島崎…さ、んー?」

遠のく意識の中、竜一がそう言葉を発すると、

園香は笑みを浮かべるー


そしてー

園香の耳から”ミミズのような見た目の寄生虫”が顔を出したー


それを見た竜一は驚くー。


「ーお前のおかげで、この人間の身体が手に入ったー

 ありがとうー」


嬉しそうに微笑む園香ー。


”あぁ、俺はなんてことをしてしまったんだー”

竜一は、最後に、そう思ったー。


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


この世界ではー

少しずつ、寄生虫による支配が進んでいるー。


翌日ー。

園香の”チョコ”により、クラスの半分以上が支配されたー。


残り数名は、チョコを何らかの理由で食べなかった生徒たちだー。


だがーー


「ーーあの子とあの子は、まだ支配できてないーか…」

園香は笑みを浮かべながら

”チョコを食べなかった生徒たち”を見つめるー。


「ーーーまぁーーいくらでも仲間を増やす方法はあるしー」

園香はそう言葉を口にすると、

今日も”仲間”を増やすことだけを考えながら、

不気味な笑みを浮かべるのだったー…



おわり


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


コメント


今日はバレンタインデーですネ~☆!


連載中のお話も色々ありますが、

このお話は今日書かないと、バレンタインデーが先に過ぎちゃうので、

このお話を書きました~笑☆


私はいつも、ついつい変なチョコを作りたくなってしまうので、

そこから思いついた(寄生虫入りのチョコ)お話でした~☆!


…あ、さすがに私も寄生虫入りのチョコは作りません~!笑


お読み下さりありがとうございました~~!

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