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とある高校。


高校生たちがいつものように

賑やかに下校している。


そんな中、

二人の女子生徒が談笑しながら帰路についていた。


北村 加奈(きたむら かな)と

藤堂 美優(とうどう みゆ)


二人は中学時代から親友の間柄だった。


加奈は、控えめな性格で、クラスで2位の成績を誇る優等生。

生徒会書記でもある。


美優は少し活発な、女子生徒。明るい性格で友達も多い。


「え、本当に?」

美優の言葉に加奈が反応する


「うん、ホラこれ」

美優は最近、彼氏が出来たようだ。


彼氏の写真を加奈に見せる美優。


「え~凄い、結構かっこいいね!」

加奈が笑顔で言う。


加奈は人をねたんだりするタイプではない。

美優の事をまるで自分の事のように、心から祝福してくれる。


「…加奈にも、そのうち良い人が見つかるよ」

美優が笑顔で言うと、


加奈も「そうだといいね」とほほ笑む。


「あ、私、今日はこのあと、バイトがあるから、

 あっち方向なんだ!」

加奈が駅とは違う方向を指さす


「あ、そっか。じゃあ今日はここまでだね。

 また明日!」

美優が手を振ると、加奈も手を振った。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


加奈は、一人、バイト先への道を歩いていると、

突然、後ろから車が凄いスピードで走ってきた。


「!?」

加奈は驚くー

一瞬、自分が引かれてしまうと思ったが、

車は加奈の歩いていた場所とは違う方向に暴走していき、

そして車はそのまま近くの電柱に激突した。


突然のことに加奈は驚く。


「え…え…?何これ・・・?」

加奈がおびえた様子で、恐る恐る車に近づいた。


交通事故ー?

間近でこんな事故を見るのは初めてだ。

一瞬”なにかのドラマの撮影?”と加奈は

怯えながら考えたものの、

カメラマンもいないし、そもそもドラマの撮影で

電柱に車が激突するようなことを

何の規制もなくするはずがない。


その時、パトカーのサイレンの音が聞こえてきた。


加奈はサイレンの方に目をやる


「もしかして、この車…」

直感的にこの車がパトカーから逃げていたのではないかと

悟る。


恐る恐る運転席を覗くと、

そこには血まみれになった男がいた。


男は生きていた。


びくびくと痙攣しながら、

うめき声をあげている謎の男ー


”逃亡犯”-?

加奈の頭の中に、そんな言葉が浮かぶ。

直感的に身の危険を感じる加奈。


血まみれの男が、

加奈の方をじっと見る。


そしてー

今にも死にそうな声で、男が声を出した。


「俺は……まだおわれねぇ」


「きゃあ!」

突然 声を出した男に加奈は怯えて後ずさる


「おびえんなよ…なぁ…

 俺は…まだ、、、死にたくね……ぇ」


男は加奈の方をじっと睨む。


男の手にはナイフー


加奈は恐怖でがたがたと震えてー

足がすくんで、動けなくなってしまうー


だがー

加奈にとって幸いだった…というべきだろうかー。

男はそのまま目を閉じて、少し痙攣すると

そのまま動かなくなった。


「え…え…?」

加奈は涙ぐんだ表情で男を見る。


男は死んでしまったのだろうか。

加奈が男を不安げに見つめたその時だった。


突然男が目を開き、その目が赤く光った気がした。


…加奈は驚いて、目をそらし、もう一度男の方を見たが、

その時にはもう、何の異常も無くなっていた。


「今の…?」

加奈はそう呟くと、

不思議と目の前の光景が気にならなくっていた。


「あ、そうだ バイトバイト」

そう言うと、加奈はバイト先に走り出した。


目の前で人が死んだー。

だがー

なぜか加奈はそのことが全く気にならなくなっていたー


さっきまで震えていたのが

嘘かのように、加奈はバイト先に向かいー

いつものように、バイトをこなすのだった。


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


「お疲れ様」

バイト先の閉店時間。


店長の笹川(ささかわ)にねぎらいの言葉を

かけられて、加奈はいつものように仕事を終えた。


「…お疲れ様でした~!」


愛想の良い加奈は先輩・後輩問わず

人気がある。


「加奈ちゃんがいて、本当に助かるよ」

バイト先のプレイボーイ・石田が言う。


何かと加奈にアプローチをかけてくるが、

加奈はいつも笑みを浮かべて上手く回避している


加奈は笑顔でいつものように、石田の戯言を流す。


だがー

次の瞬間、加奈は呟くー


「面倒くさ…」


とー。

軽く舌打ちしながら…。


「え?」

目の前の石田がきょとんとした顔をする


「え??」

加奈自身も今、自分が何を言ったかわからないという様子で

首をかしげた


「あれ…?今、わたし…?」

加奈は微妙に違和感を感じた。

一瞬意識が飛んだ気がしたのだ。


疲れているのだろうか。


「今日はちょっと疲れているように見えるけど、大丈夫?」

店長の笹川が心配そうに聞く。

笹川は”優しそうなおじさん”という感じの店長だ。


「あ、はい、だ、大丈夫です!ごめんなさい」

加奈はそう言って笑みを浮かべながら

頭を下げたー


そうだー

目の前で人が死んだ場面を見たのだからー、

少しは疲れても仕方がないー


帰宅した加奈は、ただいま~と

母親と父親に声をかける。


そしてー

加奈を出迎えてくれた飼い猫の”しずく”を

抱き寄せると、にゃーと鳴くしずくの頭を

優しく撫でで上げた。


「ただいま、しずく♪」

加奈は嬉しそうに猫を抱きしめる。


加奈は、飼い猫のしずくをとても大事にしていたー。

しずくが、疲れている自分の心を癒してくれるー。


いつものように、プライベートの時間を過ごしー

自宅で眠りについた加奈は夢を見た


「俺はまだ死ねねぇ…」

あの男だ。

事故を起こして血まみれになっていたあの男。


「俺は…生きる…」

男が頭の中に直接語りかけてくる気がする

そして男が加奈の方に向かって歩いてきた。


男が加奈に”入り込む”ような不気味な感覚ー。


「いやっ!」

加奈はベッドから飛び起きた。


「はぁ…はぁ…夢…」

加奈は冷や汗をかいていた。

怖い夢は今までにも何度も見ている。


だが、今のは…。

なんとも言えない”不気味な”夢だったー。


リビングに降りるとー

昨日の、犯罪者のニュースが流れていたー


”逃亡中の倉持 幸雄(くらもち ゆきお)容疑者はー

 昨日、警察官の静止を振り切り、車で逃亡ー

 逃亡中に事故を起こしー”


そのニュースに気づくことなく、

加奈は、ぼーっとした様子で

洗面台に向かっていくー


”なんだか、今日はすっきりしないー”


加奈は、悪夢を見たからかな…と、考えながら

学校に向かう支度をするー


「---」

黙々と準備をする加奈。


いつもと同じー

だんだん平常心を取り戻してきた。


「にゃー」

しずくが加奈の近くにやってくる。


「おはよ~」

加奈はやさしく声をかけると、しずくを抱き寄せた。


そして、少しの間なでなですると、

加奈は自分の部屋に戻って制服に着替えようとする。


加奈になついているしずくが、加奈についてくる。


「♪~」

そんなしずくのことを優しい表情で見つめながら

加奈は着替え終えて

学校に向かう準備をする。


「にゃー!」

しずくが、加奈の方を見て突然何か反応を起こした。


「---にゃ…!?」

何かに気づいたかのような、反応。


「にゃああああ!」

猫のしずくが、加奈に露骨に敵意を向けている。


まるでー

何かに”警戒”するかのようにー


「-----」

加奈は、そんなしずくを見つめながら、学校に

向かう準備を終えて、学校に向かおうとする。


しずくと目が遭うー。


なぜだか、急にイラっとした。


「そんな目でわたしを見ないで」

加奈の表情から笑顔が消えている。


「にゃあああああ…」

しずくは、まるで目の前に”敵”がいるかのように

警戒モードに入っている。


「-----邪魔よ!」

加奈は部屋の入口付近にいたしずくを

手で払いのけると、そのまま学校へと向かうのだったー。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


登校すると、美優が手を振りながら近づいてきた


「あ、美優おはよう」

加奈が笑顔であいさつすると、

美優はねぇねぇ聞いてよ、と

彼氏の話をし始めた。



加奈は笑顔でいつものように話を聞いていた。


しかし…。


ウザッ…


加奈は内心でそう思った。


そしてすぐに思う


「え??今、私、美優のこと…?」


今までそんな風に思ったことはなかった。

美優は自慢話が多いけれども、加奈にとって大切な親友だったし、

悪いように思ったことなんて一度も。


そんな加奈をよそに、自慢話を続ける美優。


しかし加奈の意思とは裏腹に、

加奈は次第にイライラしてきた。


”どうしちゃったの私?疲れてるのかな…”


加奈はそんな風に思っていたが、

次第にイライラが抑えられなくなって口にした。


”こんなこと言っちゃいけない”と思いながらも

それを抑え込むことができなかった。


「ねぇ…そんなに私に自慢したいの?彼氏のこと?」


加奈が、自分でも驚くような低い声を出したー。

怒りが、にじみ出ている。


目の前の美優が驚く。


「え、、ご、ごめん。そんなつもりじゃ…」


その言葉を聞き、加奈も自分で驚く


「え…あ、、あれ?今、私・・・?」

混乱する加奈に美優が言う


「ごめんね、不愉快な思いさせちゃって、

 私、先に教室に行ってるね!」


美優はよそよそしく立ち去って行った。


「え、美優!

 ご、、ごめんね本当に!」

去っていく美優に加奈は叫んだ。


「何で…私・・・?」

加奈は動揺する。


しかしー

またすぐに”負の感情”が沸き上がってきたー


「…うっざ…」

舌打ちする加奈。


その表情からは、”不安”は消えていた。


そしてー

クスリと笑う。


「そうだ…

 美優から彼氏奪ったら美優どんな顔するかな~~?」


そう呟くと、不安げな表情の消えた加奈は美優の後を追い、

教室へと歩き出した。


加奈は気づいていないー

”自分に異変”が起き始めていることにー


凶悪犯罪者の”死にたくない”という

強い思念がーー

加奈に憑依し、

少しずつ加奈と混ざり合っていることにー、

この時の加奈はまだ気づいていなかったー。



②へ続く


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


コメント


先週まで、毎週木曜日は

「ムスメの身代金X」を書いていましたが

先週、完結したので

また別作品のリメイクを書き始めましたー!


今回の”混ざり合う意志”も、ムスメの身代金と

同じような時期に書いた作品ですネ!


当時とは一味違う、大幅リメイクで

書いていきたいと思います~☆!


今日もお読み下さりありがとうございました!

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