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2度目の夏休みを過ごす翔太と綾ー。


事情を知る互いの親友と共に、

4人で夏のお祭りに足を運んだ二人は、

お互いに”元に戻りたいという気持ち”と、”元に戻ることへの不安”で

揺れていることを知るー。


途中、綾に執着する転校生・渡海 和之の乱入もあったものの、

2人は、夏休みにたくさんの思い出を作ることが

できたのだったー。


そして、夏休みは明け、2度目の2学期が始まった…。


☆前回はこちら↓☆

<入れ替わり>僕とわたしの不思議な青春㉝~花火~

2度目の夏休みに突入したー。 1学期が終わる前に約束していた通り、 翔太と綾は、入れ替わりの事情を知る互いの友人、哲真と穂乃果の2人と共に 4人で夏のお祭りを楽しむことにー。 そんな中、綾(翔太)は、最近よく自分が見る”夢”について、 言葉を口にし始めるー。 しかしー…その様子を 翔太たちのクラスメイトの一人...

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


★主な登場人物★


遠藤 翔太(えんどう しょうた)

C組生徒。大人しく、奥手な性格の持ち主。綾と入れ替わってしまう。


星村 綾(ほしむら あや)

C組生徒。可愛らしい雰囲気に、明るい性格の持ち主。翔太と入れ替わってしまう。


神田 哲真(かんだ てつま)

C組生徒。翔太の中学時代からの友人。女子は苦手。


山井 穂乃果(やまい ほのか)

C組生徒。綾の親友。入れ替わりを知ってからも変わらず接してくれている。


守屋 智花(もりや ともか)

C組生徒。表裏の激しい優等生。裏では腹黒なことばかり考えている。


藤沢 孝弘(ふじさわ たかひろ)

C組生徒。”人生は死ぬまでの暇つぶし”と豪語している。


★脇役も含めた人物紹介はこちら↓★

<人物紹介>僕とわたしの不思議な青春~登場人物図鑑~

長編入れ替わりモノ 「僕とわたしの不思議な青春」の 登場人物図鑑デス! 連載前に予告として掲載した、 主人公たちのクラス名簿の内容に加え、登場する教員や その他の人物もご紹介しています~! ※ネタバレは控えめ(漫画や小説の最初の方のページに書かれている  人物紹介ぐらいの内容…)デス~!  最初にクラス名...

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


「ーー遠藤くんー」

翔太(綾)に声を掛けられた綾(翔太)は、

周囲を見渡しながら「あ、星村さんー。どうしたのー?」と、

そう返事をするー。


”周囲に人がいそう”な時は、”翔太”のことを”星村さん”と呼ぶわけには

いかないー。

まだ、入れ替わりのことを知るのは、翔太と綾を除けば三人だけ。

あまり広がれば収拾がつかなくなる可能性もあるし、

秘密は守らなくてはいけないー。


「ーーそのー今度の生徒会選挙だけどー」

翔太(綾)がそう言葉を口にすると、

綾(翔太)は「生徒会選挙?」と、不思議そうに首を傾げるー。


確かに、2学期早々、生徒会の選挙があるー。

新しい生徒会長、副会長、書記などを決める行事だー。


それが、どうかしたのだろうかー。

そう思っていると、翔太(綾)は言葉を口にしたー。


「ー生徒会会長に立候補してもいいかな!?

 ーーー…遠藤くんの身体でーー」


とー。


「ーーーーーえっ!? えぇっ!?」

綾(翔太)は、突然の言葉に、驚きの表情を浮かべると、

翔太(綾)のほうを見つめたー。


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


「ーあはは、そういえば綾、中学の頃も、

 生徒会選挙に立候補してたもんねー。」


昼休みー。

そのことを、綾の親友・穂乃果に相談すると、

穂乃果はそんな言葉を口にしたー。


どうやら”綾”は、中学時代に生徒会長をやりたかったものの、

できなかったことが心残りで、

今回、もう一度挑戦して見たくなったー…ということのようだったー。


ただ、今は”翔太”の身体を使っている状態ー。

ギリギリまでどうするか悩んだ挙句、翔太に相談したのだったー。


「ーーほ、穂乃果ちゃんはどう思うー?」

翔太(綾)が、恥ずかしそうにそう言うと、

穂乃果は「いいんじゃないー。遠藤も真面目な見た目だしー、

中身は綾なんだし、何にも問題ないでしょ」と、

そう言葉を口にしたー。


綾(翔太)は、そんな会話を聞きながら、

「でも、まさか”僕”が生徒会長なんてなぁ…」と、

苦笑いするー。


もしも綾が”翔太の身体”で生徒会長になれば、

”生徒会長 遠藤 翔太”などと、生徒会だよりに載ったりすることになるー


「ーーなんか、恥ずかしいというかー」

綾(翔太)は笑いながらもー、

「星村さんが、立候補するなら僕も全力で応援するよー」と、

そう言葉を口にするー。


べつに、自分の身体で生徒会長に立候補されても、特に問題はないー。

仮に、”途中”で元に戻ったとしても、それはその時考えて行けばいいし、

悪いことをするわけでもないからー、断る理由はなかったー。


「ーーごめんねー。ワガママ言って」

翔太(綾)が少し申し訳なさそうにそう呟くと、

綾(翔太)は「ううんー。全然ー。部活だってお互いに好きなことを

やってるんだしー、”入れ替わりのせい”で僕も、星村さんも

我慢するようなことがあっちゃいけないからー」と、

そんな言葉を口にしたー。


「わたしも全力で応援するからね!」

穂乃果も、笑いながら翔太(綾)に向かって、そんなエールを送ったー。


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


「ーーーーえ…」

翔太たちのクラスメイト・守屋 智花は、

生徒会に立候補した生徒の一覧を見つめながら

表情を歪めたー。


表向き”優等生”で、とにかく周囲からの”評判”を気にする

智花は今年、”生徒会長”に立候補をいち早く決めー、

立候補受付初日に手続きを済ませ、生徒会長に立候補していたー。


がーー

生徒会長に立候補した生徒3名の名前を見て、

智花は表情を歪めていたー。


”守屋 智花”

”花森 茜”

”遠藤 翔太”


「ーーー遠藤ってー…うちのクラスのあの子ー…?」

智花は、困惑の表情を浮かべるー。


確かに、明るい感じの子だがー、

そういうタイプの子には見えなかったー。

いつも”星村さん”と一緒にいる男子生徒ー…というだけのイメージ。


”入れ替わりを知らない”智花からすれば、

”翔太”の印象は、明るく、女子相手でも普通に話すことができる男子

というイメージ…。

本来の”翔太”が抱かれる印象とは真逆の印象を抱いているー。


それもそのはずー。

智花が翔太や綾を知ったのは昨年の春ー。

つまり、二人と同じクラスになって、すぐに二人が入れ替わったため

”元の二人”のことを知らないのだー。


智花の中では”翔太”は女子でも男子でも話しかける優しい明るい感じの男子ー、

”綾”は穏やかで優しく、少し恥ずかしがり屋のなぜかカードゲーム好きの女子、

そんなイメージを持っているー。


「ーーま、遠藤くんみたいな”雑魚”なら余裕でしょー

 問題は、花森さんの方かな」


智花は笑みを浮かべながら”A組”の女子生徒・花森 茜の名前を見つめるー。


茜は”真面目なギャル”ーとでも言えばいいのだろうかー。

見た目も言動も派手なものの、とても真面目で成績優秀ー

そんな感じの子だー。


「ーーまぁ…わたしが負けるはずないけどー」

智花は自信満々にそう言葉を口にすると、

近くに茜の姿があるのに気づき、

「あー、花森さんー お手柔らかにお願いしますー」と

”表の顔”で、笑顔を作りながら、そんな挨拶を交わすー。


そしてーー

智花は、翔太(綾)の所にも足を運ぶと、

「ー遠藤くんも立候補したんだね」と、

穏やかな笑みを浮かべながら、声をかけるー。


「ーーうん!守屋さんも、お互い頑張ろう!」

翔太(綾)のそんな言葉に、

智花は微笑みながら「お手柔らかにー」と、

そう言葉を口にしたーー


”ーーーあんたみたいな”雑魚”ー眼中にないからー”

そう、思いながらー…。


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


生徒会選挙当日が近付き、

色々な選挙活動をする翔太(綾)ー。


「僕は、僕にできる限りの力で

 この学校を、この学校で生活する皆さんの生活が

 少しでも良いモノになるように、全力で活動していきたいと、

 そう思っていますー。」


生徒会立候補者の”演説”が体育館で行われていたー


翔太(綾)が、”綾”持ち前の明るさで、

堂々と声を発するー


”僕にはできないなぁ…”

壇上の下から、綾(翔太)はそんなことを思いながら

感心した様子で、翔太(綾)を見つめるー


綾と入れ替わって、多少、人と接する”スキル”も

上がった気はするー。

それでもやっぱり自分は、あんな風に

生徒会長に立候補して、堂々とすることはできないー。


「ーーー…」

翔太(綾)は、一通り”よくある挨拶”を終えると、

自分のクラスメイトたちが座っているほうを見かけたー。


”ーー相手は可愛い子二人なんだから、

 綾が、その身体で勝つためには”ユーモア”を交えるしかないよ!

 

 ほらー、別に”イケメン”でもないんだしさー”


直前に、穂乃果にそんなアドバイスをされたことを思い出すー。


それを聞いていた綾(翔太)は思わず苦笑いしながらー、

「でもまぁ、そうかもしれないねー」などと言っていたー。


智花も、A組の茜も、”かなりかわいい”部類の女子生徒だー。

正直、見た目で負ける気はするー。

学生時代の生徒会選挙は、少なからず”人気投票”みたくなってしまう

一面があるのは否めないー。


翔太(綾)は、そんなことを思い出しながら、

笑顔を浮かべると、


「正直、ーー三人の候補者の中では、

 ビジュアル的に負けちゃうと思いますしーー、

 可愛い子に投票しようと思ってる皆さんもいると思いますしー、

 立候補者の氏名もほらー」


翔太(綾)は、そんな冗談を交えながら、

立候補者の名前が書かれたボードを指差すー。


「ー僕がなぜか一番下ですしー

 誰から見ても僕はおまけっぽい扱いかもしれないですけどー」


そんな、自虐ネタのようなネタに、

体育館の中には笑いが少し起きるー。


「でも、僕は本気で生徒会長になりたいと思ってますし、

 どうかー。少しでも”こいつにやらせてあげよう”と思う方はー

 投票をお願いしますー」


翔太(綾)はそう言葉を口にすると、

拍手を浴びながら自分の挨拶を終えて、着席するー。


「ーーーーー(こいつー…)」

智花は、二つ離れた座席から、翔太(綾)のほうを見つめるー。


壇上から、体育館に並んでいる生徒たちを見つめるー。

それなりに、笑いが起きているー。


翔太(綾)は、生徒会選挙の期間が始まってから、

とにかく”ユーモア”を交えて、支持を集め始めているー。

それも、”ふざけすぎ”と思われないような絶妙なバランスを保ちつつ

”真面目そうな翔太の見た目”もあって、

急速に支持を伸ばしていて、

最初は”守屋さんと花森さんの一騎打ちだ”なんて言われていたのにも

関わらず、ここにきて、翔太(綾)が勢力を伸ばして来ているー。


「ーーー(わたしが雑魚なんかに負けるはずないー)」

智花はそう思いながら、いつものような穏やかな笑みを

浮かべつつ、檀上から言葉を発したー


「ーー2年C組の守屋 智花ですー」

あくまでも真面目にー、

あくまでも”いつものわたし”でー。


”わたしのジャマをするなんてー許さないー”

内心で智花はそう思いながらも、

それを全く顔に出すことなく、穏やかな口調で、

翔太(綾)に続き、演説を始めたー。


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


生徒会選挙の投票日本番が、着々と近づいてくるー。


「ー翔太!

 俺も、できる限り声をかけておいてやったからなー」


翔太の親友・哲真が言うー。


中身が”綾”だとは知っているものの、人前では

”星村さん”ではなく、”翔太”と呼んでいる哲真ー。


その言葉に、「本当にありがとうー」と、

翔太(綾)は笑うー。


「ーボクも、微力だけど仲の良い子に声をかけておいたよー」

美術部の中性的な雰囲気の女子生徒・倉守詩音が笑いながら言うー。


「君には色々と世話になったしー、

 少しは恩返ししないと、ねー」

詩音がそう言葉を口にすると、翔太(綾)は嬉しそうに

またお礼の言葉を口にするー。


「ー僕と香奈枝も、君を応援するよー」

「ー報道部のあたしの力も、フル活用してあげるからね!」

クラスメイトの敷島郡司と、その彼女で報道部の岡崎香奈枝が

笑いながら言うー。


翔太(綾)の人望と、持ち前のコミュニケーション能力で、

みるみると”次期生徒会長”に近付いていくー。


「ーーーチッ」

智花は思わず自分の座席で舌打ちをすると、

そんな様子を見つめていたクラスメイトの藤沢 孝弘は、

表情を曇らせたー。


”人生は死ぬまでの暇つぶしに過ぎないー”

そんな言葉を豪語している孝弘は、去年、不良男子の柳沢祐樹を

智花が停学に追い込んだ時から、智花に”興味”を抱いているー。


「ーーーー」

そんな智花のことを見つめながら、孝弘は少しだけ目を細めると、

そのまま智花に声をかけることなく、教室の外へと歩いていくー


”ーこのままじゃ、わたしが負けるー?あんな雑魚にー?

 いつも真面目で優等生なこのわたしがー!?”


智花は内心でそう思いながらも、

「わたしは、守屋さんに投票しますわー」と、

お嬢様な転校生・神宮寺 真莉愛から声を掛けられると、

”にこっ”と、”外向けの笑顔”を作って「ありがとうー」と、智花は

微笑んだー。


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


”わたしが、負けるなんてありえないー”


選挙前日ー。

”空気”的に智花は、”このままじゃ、あの雑魚に負けるー”と、

危機感を抱いていたー。


追いつめられた智花は、選挙管理委員が活動している教室の近くに

やってくるとー、

後輩の男子生徒・鈴木 一馬(すずき かずま)に声をかけたー。


「ーーあ…守屋先輩ー…お話ってなんですかー?」

”委員会活動”でも、智花に世話になってる一馬が

そう言葉を口にすると、智花は「お願いがあるんだけどー…」と、

困り果てた表情を浮かべながら、言葉を続けたー。


”もしも、明日の開票でわたしが負けそうになったらーーーー…

 遠藤くんの票を”少し”減らして、わたしが勝つようにしてほしいのー”


とー。


「ーーーえっ…?」

戸惑う一馬ー。


いつも、穏やかで優しくて真面目ー

そんな”守屋先輩”から、そういうお願いをされるとは夢にも思っていなかったー


「ーわたし…絶対に勝ちたいのー…お願いー」

智花は”嘘の涙”を目に浮かべながら呟くー。


”智花”が、”悪だくみ”をするときには、

必ずー”周囲の評判があまり良くない相手”を狙うー。


それは、何故かー。

万が一”失敗”しても、

”わたし、そんなことお願いしていません!”と、

”演技”をして、相手を切り捨てることができるからだー。


”いつも真面目な優等生”

そんな、”ステータス”は、武器となることを、

智花は知っているー。


「ーーお礼は必ずするからー…

 どうか、お願いしますー」

智花は、後輩の一馬に対しても、そんな丁寧な口調で

お願いをすると、戸惑いながら一馬は

”智花の不正”に加担することを決めたー。


満足そうに立ち去ろうとする智花ー


がーーーー

その時だったー。


「ーー守屋さんー…何してたんだー?」

クラスメイトの藤沢 孝弘が智花の前に姿を現すー。


「ーーーーー!」

智花が表情を歪めるー。


「ーーーーーー別にー」

智花が目を逸らしながらそのまま立ち去ろうとすると、

孝弘は智花の行く手を遮ったー。


「ーーな…何ー?」

智花が困惑しながら孝弘を見つめると、

孝弘は言葉を口にしたー。


「ー守屋さんが”不正”するようなやつだとは思わなかったなー。

 柳沢を停学に追い込んだ時はー…

 まぁ、あのクソ野郎の自業自得だし”暇つぶし”になると思って

 協力したけどー」


孝弘のそんな言葉に、智花は「不正?何のこと?」と、

笑みを浮かべながら、何の悪びれる様子もなく、言葉を口にするー。


「ーーーー悪いことは言わない。やめとけー」

孝弘が鋭い口調でそう言葉を口にするー。

どことなく不愛想で、割と迫力を感じる孝弘の言葉に、

智花は表情を歪めるー。


「ーーー…藤沢くんには、何も関係ないよね?

 遠藤くんと仲良しなわけでもないしー」


智花がそう言うと、孝弘はさらに続けるー。


「ーー”どっちが勝つか分からねぇ”から、

 多少の暇つぶしになるんだろうがー。

 俺はそういう不正ー、大っ嫌いなんだよー。


 最初から結果が決まってるものほど、

 時間の無駄でクソなことはねぇ」


孝弘の言葉に、智花は「っー」と、不満そうに呟くと、

「ーー守屋さんー。正々堂々戦えよー」と、

孝弘がそう言葉を呟くー。


「ーーーーーー」

智花は歯ぎしりをしながら

”この暇つぶし野郎…”と、内心で呟くー。


がーーー

智花は笑みを浮かべるとー、

「わかったー。ごめんね。藤沢くんー。

 藤沢くんのおかげで、わたし、目が覚めたー」

と、そう言葉を口にすると、後輩の一馬がいる選挙管理委員の部屋に

戻って行って、”やっぱりさっきのなしで!”と、

そう言葉を口にしたー。


「ーーーーー」

不満そうに戻って来る智花ー。


「ーーーー…」

孝弘が、そんな智花の様子を見つめながら沈黙していると、

智花は言葉を発したー


「ーーーわたしのこと、みんなに言いふらすつもりならー」

智花は”脅し”を掛けようとそう言葉を口にするー。


しかしー


「ーーいやー言わねぇよー。

 そんな”暇つぶしにもならない時間の無駄”

 俺がすると思うかー?」


孝弘がそう言葉を口にすると、

智花は少しだけ表情を歪めながら、

孝弘を見つめるー。


がー、孝弘が嘘をついて、

”守屋さんが不正しようとしてた!”なんて、

言いふらすようなタイプには見えないー。


「ーーーー言っただろ?

 どっちが勝つか分からないのを見る方が

 暇つぶしになるってー。


 それだけだー。


 人生なんて、”暇つぶしの集合体”なんだからー」


 前に言った通り、俺は守屋さんに投票するからー。

 つまんねぇことはするなよ?」


孝弘はそれだけ言うと、そのまま智花の前から立ち去っていくー


「ーーー」

智花は、そんな孝弘の後ろ姿を見つめながら

不満そうに目を細めたー。



そしてーー

翌日ーーー


「ーー生徒会長はーー…

 2年C組 遠藤翔太くんに決まりました!」


生徒会選挙が終わりー…

翔太(綾)が、生徒会会長となったー


”ーーーー…”

智花は目を見開きながら、瞳を震わせるー。


壇上から、2年C組の列にいる孝弘の方を

睨むようにして見つめると、

智花はにこっ、と笑顔を作ってから

翔太(綾)の方に向かって歩いていくー。


「遠藤くんーおめでとう」と、優しく言葉をかける智花ー。


「ーー守屋さんー…うん、ありがとうー。

 僕、守屋さんの分まで頑張るよ!」

翔太(綾)が何も知らずに笑いながら、智花に向かって言い放つと、

智花は「うん!わたしにもできることがあったら、何でも言ってね!」と、

笑顔で応じたー


”ーーー雑魚の分際でわたしのジャマをしてー”

笑いながら、智花は内心で激しい怒りの炎を燃やすー。


歯ぎしりをしながら体育館の檀上から降りる智花ー。


「ーお互い、残念だったねー」

もう一人の生徒会長候補・花森 茜がそんな言葉を掛けて来るー。


「ーーーーうん。花森さんも、お疲れ様ー」

優しく微笑む智花ー。


しかし、”裏”は、完全に怒り狂っていてーーー


帰宅した智花は、自分の部屋で

怒りに任せて、物に八つ当たりをしー、

何度も何度も机を怒りに任せて叩いていたー。


守屋 智花ー。

彼女の”裏表”がここまで激しくなってしまった理由ー…


それはーー…

小さい頃の”出来事”が原因だったー。


小さい頃、先生から褒められた智花は

”褒められる喜び”を知ったー。

以降ー、真面目にずっと頑張っていた智花ー。


しかしー、ある日のことだったー。

体育の授業が終わり、いち早く教室に戻った時に

友達の机にぶつかり、その上に置かれていた”眼鏡”を壊してしまった

ことがあったー。


本来の性格は臆病な智花は、

”どうしようー怒られちゃうー”と、そんな風に思いながら

慌てて眼鏡の位置を戻し、”知らんぷり”をしたー。


その時はただ”怖かったー”

怒られるのが、怖かったー。


でもーー…

授業が終わり、その子が自分の眼鏡が壊れていることに気付き、

先生が”誰が壊したの?”と、クラスの子たちに聞き始めたその時だったー。


”普段から真面目な優等生”の智花のことを疑う人間は誰もおらずー、

普段から、眼鏡を壊された女子のことを揶揄っている男子生徒が

犯人だと疑われ始めたー。


そのままー、その男子が”犯人”扱いされーー

智花は最初から最後まで一切疑われなかったー。


”ーーー普段、いい子のわたしはーー疑われないー

 普段、いい子のわたしは、怒られないー?”


智花は、その時初めてそう思ったー。


そしてーー…

智花は、その頃から”自分の失敗”を他人に押し付けるように

なっていったー。


”普段から、先生や周りの子”に良く見えるように振る舞うことばかりを

意識するようになり、

やがてそれを”ステータス”と考えるようになったー。


”優等生”という”ステータス”を身に付ければ、

誰にも疑われないし、誰にも怒られないー。


そんな環境が続き、智花は

周りを見下すようになったー。


”どいつもこいつも、わたしに簡単に騙される馬鹿ばっかり”だとー。


”裏の顔”を持つ優等生ー

守屋 智花は、こうして”完成”したのだったー


「ーーー絶対に、許さないー…雑魚のくせにー」

智花は、”翔太”に生徒会選挙で負けたことに激しい怒りの炎を

燃やしながら、そう呟いたー。


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


”生徒会長 遠藤 翔太”ー


翌日、そんな風に書かれているのを見て

綾(翔太)は、

「なんか、僕の名前が載ってると落ち着かないー」と、

思わず苦笑いするー


「ははは!明日、身体が元に戻っちゃったりしたら、

 翔太、お前が正真正銘の生徒会長になっちゃうかもしれないぜ?」


哲真が笑いながら言うと、

綾(翔太)は「えぇっ!?なんか本当に元に戻りそうで怖いよ!」と、

冗談を返すー。


翔太(綾)は「ごめんねー。なんか無茶言ってー」と、

改めて、”勝手に人の身体で生徒会長になったこと”を詫びると、

「ううんー。それは全然大丈夫ー。

 お互いに気を使って、何もできないまま卒業ー、なんてことに

 なるよりいいしーやりたいことはやったほうがいいよー」

と、綾(翔太)は笑いながら言葉を口にするー。


「ーーー」

それにしてもー…


”生徒会長 遠藤 翔太”

と書かれているプリントをもう一度見つめる綾(翔太)ー


”遠藤 翔太”

という、自分自身の名前ー

それが、”僕の手”から離れてしまったことを、改めて実感するー。


テストの答案用紙に書くのも”星村 綾”だしー、

今は自然とそう書くようになったー。


”名前が、自分の手からこぼれおちるー”


なんだか、とても寂しい感じを覚えながら

綾(翔太)は、今一度”生徒会長 遠藤 翔太”と書かれた

プリントを見つめて、

少しだけ寂しそうに微笑むのだったー


㉟へ続く


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


★2-Cの日常★


「ーー須藤くんー君に聞きたいことがあるんだー」

背後から声を掛けられた翔太たちのクラスメイト、

須藤 渉が振り返ると、

そこには転校生の渡海 和之の姿があったー。


「ーーん?あぁ、渡海かー。どうしたんだ?」

渉がそう言葉を口にするー。


渉は昨年、”綾”に告白したクラスメイトー。

綾(翔太)は悩んだ末に、それを断っているものの、

渉は恨み言一つ言うことなく、それを受け入れ、

その後も普通に接しているー。


「ー君、去年、星村さんに告白したんだってねー?」

和之の言葉に、渉は「ん?あぁー…何で知ってるんだ?」と、

戸惑いながら笑うー。


すると、和之は言葉を口にしたー。


「ー隣の座席の君なら、星村さんのこと色々とーー」

和之がそう言葉を口にするー。


どうやら、”綾”のことを色々と聞きたいようだー。


渉は、そんな和之の方を見つめながら思うー


”こいつ、まだあきらめてないのかー”


この渡海 和之が、夏休み前から、綾に必死に

アプローチを仕掛けているらしいー…と、いうことは

それなりに噂になっているー。


渉自身も、綾(翔太)と、綾の親友である穂乃果が

そんな話をしていることを聞いたー。


話の感じでは”ストーカーじみた行動”もしているようだー。


それを知る渉は、和之の方を見つめながら言うー。


「ー振られたなら、潔く諦めろよー?

 あんまりしつこくしてると、星村さんにも迷惑だぞ?」


渉がそう言い放つー。


去年ー、綾に振られたとき、それは勿論ショックだったー。

でも、”恋愛”は、相手がいて成立するもの。

一方通行であってはいけないと、渉は理解しているし、

”振る”ことは悪いことではない。

振られた時には、潔くそれを受け入れ、飲み込むべきだと、

渉はそう考えているー。


「ーーー……っっ」

和之は不満そうに、渉を見つめるー。


「ーー星村さんはー、僕と結ばれるんだー…絶対に!」


”振られた同士”ー

渉に協力して貰えると思っていた和之ー。

しかし、渉の協力を得られないと悟り、不満そうに立ち去っていくー。


そんな、和之の後ろ姿を見つめながら

渉はため息をつくと、

「ーーなんかやらかしそうなやつだなー…」と首を横に振りながら

「念のため、明日、星村さんにも伝えておくかー」と、

心配そうにそう言葉を口にしたー。


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


コメント


2学期に突入しました~!☆

(物語内の)昨年は、あまりスポットを当てなかった

生徒会選挙のお話を描いて見ました~!☆


このあとは、昨年も描いた体育祭や文化祭などの

行事も描きつつ、2学期が進んでいきます~!


まだまだ入れ替わり物語を楽しんでくださいネ~!


今日もありがとうございました~~!☆


★関連話★

(※こんな話あったの?いつだっけ?という場合の参考にして下さいネ~)


・藤沢 孝弘の過去 ⇒第19話

・渡海 和之の告白 ⇒第33話

・須藤 渉に告白された綾 ⇒第20話

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