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友人の真紀から教えてもらった”禁忌の呪文”ー。


奥手で、自分自身にも自信がなく、

小さなことでもすぐに悩んでしまう性格の加恋は、

このままでは、彼氏の奈津雄に嫌われてしまうのではないかと

いつも、いつも悩んでいたー。


そんな加恋は、自分自身にその禁忌の呪文を使い

”己自身”を洗脳したー。


やがて、加恋は自信に満ち溢れた表情で、

細かいことにも悩まずー、別人のように変わることに成功したものの、

ついに、加恋の当初の想いとは別の方向に、

運命は、ねじ曲がり始めてしまうー…。


☆前回はこちら↓☆

<MC>己を操る②~変わっていく~

奥手で、引っ込み思案な加恋は、 彼氏の奈津雄から”つまらない”と思われていないかどうか、 いつもいつも、気にしていたー。 しかし、”自分を変えたい”とは思いつつも、 なかなかそう簡単に”変わる”ことはできず、 時ばかりが流れていくー。 そんな中、加恋は ”人を操ることができる呪文”を、有人の真紀から紹介されるー...

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


「さっきはごめんー…言い過ぎたよ」

彼氏の奈津雄は、加恋を見つけ出すと戸惑いながら

そう言葉を口にするー。


最近の加恋の様子はおかしいー。

以前の自然な加恋が好きだった奈津雄は、

豹変していく加恋の様子に心を痛めていたー。


がー、”最近の加恋は何だか嫌だなー”と、言ってしまったことに

罪悪感を感じ、奈津雄は加恋の元を訪れて、

謝罪の言葉を口にしていたー。


”ーーーせっかく”付き合ってあげてた”のにー

 …調子に乗らないで。すっごく不愉快ー”


さっき、加恋に言われた言葉が、何度も何度も

頭の中に響き渡るー。


「ーー加恋を不愉快にさせて、本当にごめんー」

奈津雄は今一度そんな言葉を口にすると、

加恋は表情を歪めながら、言葉を口にしたー。


「ーわたし、奈津雄のためにこんなに可愛くなったの!

 それなのに、あんな言い方、2度としないで!」


とー。


「ーーわ、分かったよー…

 で、でも、本当に俺はー、”いつもの加恋”で十分なんだー

 そんな、無理をしなくても、いいからー。」


奈津雄がそう言うと、加恋はまたムッとした表情を浮かべるー。


「ーーーーか、加恋と喧嘩する気はないんだー!

 でも、今の加恋がどうしても無理をしてるように見えてー、

 辛いんだー」


奈津雄のそんな言葉に、加恋は

「ーーわたしが”付き合ってあげてる”ってこと、忘れないでよね」と、

釘を刺すようにそう言葉を口にすると、

そのまま不機嫌そうに立ち去っていくー。


「ーーふん!何なのあの態度ー

 ”今の”わたしなら、いくらでももっともっとかっこいい男が

 寄って来るのに、”付き合ってやってる”のにー、偉そうにー」


不満を一人でぶつぶつと吐き出す加恋ー。


オカルト系のサークルに所属する真紀から教えてもらった

”洗脳”の呪文ー。

当初、それに手を染めたのは、”奈津雄に嫌われたくない”という

純粋な思いだったー。


こんな気弱な自分が、少しでも勇気を振り絞れたらー。

そんな、思いだったー。


けれどー、自分を洗脳し続けた結果ー、

”元々の加恋”が願っていた部分よりも”先”に進んでしまったー。


今の加恋は、自分に絶対の自信を持ちー、

心底”わたしは可愛い”と信じて疑わないー。

高飛車で、プライドも高く、

強すぎるメンタルは、周囲からの静止の言葉も聞き入れないほどに

変わってしまっていたー。


「ーあ~ぁ、むかつく…」

帰宅した加恋はイライラしながら鏡を見つめるー。


そしてー、

”また”ーーー

呪文を唱えるー。


「ー”お前は”かわいい」

「ー”お前は”誰よりもかわいい」

「もっと自信を持てー、もっともっともっとー」


目が一瞬、赤く輝くと加恋はビクンと震えて、

ニヤリと笑うー。


「ーーあぁ…わたしってばーーー可愛すぎでしょ?ふふふ♡」

加恋は、自分に酔いしれながら、自分を抱きしめると

嬉しそうに笑みを浮かべたー。


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


「ーーごめんなさいー

 こんなことになるとは思ってなかったのー」


数日後ー。

”加恋”の様子を見かねたオカルト系サークルに所属している真紀が、

彼氏の奈津雄のところを訪れて、そう言葉を口にしたー。


「ーーーーー…そ、そういうことだったのかー…」

奈津雄は、戸惑いの表情を浮かべるー。


”真紀が、加恋に教えた洗脳術ー”

どうやら、加恋はそれを自分自身に使って、

自分を変えようとした結果、加恋本人が望んでいたよりも強く、

その効果が出てしまっているようだー。


「ーー本当に効果が出るなんて思わなかったしー、

 それにー…こんなことになるなんてー…」

慌てた様子の真紀ー。


真紀の話に同席していた加恋の親友である泰恵も、

戸惑いながらその言葉を聞いているー。


「元に戻す方法は、あるのー?」

泰恵が心配そうに言うと、真紀は「あ…うんー」と、

頷きながらスマホを操作し始めるー。


”呪文”について書かれているサイトには、

”元に戻すための呪文”も書かれていて、

洗脳術を使った人間が、洗脳された側の人間にその呪文を

唱えることで、”正気”に戻せるということが書かれていたー


「ーーー…いや…それじゃ、ダメじゃないかー…?」

奈津雄が不安そうに言うー。


「え…?」

真紀と泰恵の言葉に、奈津雄は続けるー。


「ー塩原(しおばら)さんの言う通りならー…」

奈津雄は、真紀のことを言いながら、真紀の方を見つめると、

「ーー”加恋”を洗脳したのは”加恋自身”なんだろ?」と、

そう言葉を続けるー。


つまりー、加恋を正気に戻せるのは、加恋本人のみー。

しかし、今の加恋が人の話を聞き入れるとは思えないー。


「ー…た、確かにー…」

真紀が戸惑いながらそう言葉を口にすると、

奈津雄も、泰恵も困惑した表情を浮かべたー


「ーー…わたし、とにかく今日、加恋に話をしてみるー…

 今の加恋だって”これ”を使ったことは覚えてるだろうし、

 説得すれば、なんとか分かってくれるかも」


真紀がそれだけ言うと、奈津雄は心配そうな表情を浮かべるー。


が、自分自身、責任を感じている真紀は

「わたしに任せて」と、二人に言い放つと、

その日の夕方、加恋を呼び出して、

「今の加恋は、効果が出すぎている状態だから!」と、

必死に説明を繰り返したー。


「ー別に、わたしは全然困ってないから大丈夫ー。

 あんな”根暗”なわたしになんか戻りたくないしー

 

 ああいう女ってすっごくウザいしー」


加恋は以前の自分のことを”ウザい”とまで言い放つと、

笑みを浮かべながら、そんな言葉を口にしたー。


「ーーか、加恋ー」

呆然とする真紀ー


「ーでもでも、今までの加恋はそんな風に言わなかったし、

 それが”洗脳”されてる証拠!

 そもそも、加恋がどうして”自分”を洗脳したのか、思い出して!」


真紀がそう言うと、

加恋は「ーーー…奈津雄に、嫌われないためー…」と、

少し戸惑いながら言葉を口にするー。


「そう!そう!それ!

 でも、最近、彼も困ってるみたいだよー?

 新崎くんを困らせるために変わりたいって思ったわけじゃないでしょ!」


真紀の説得は続くー。


だがーー

加恋は言い返すー。


「ーー…でも、今の奈津雄はなんかうざいー

 こんなに可愛いわたしが”付き合ってやってる”のに、

 元のわたしに戻れとか、あり得ない!」


加恋はそう言うと、”功くんに乗り換えちゃおっかなぁ~”と、

笑みを浮かべながら同じ大学に通う別の男子の名前を口にするー


「ーーか、加恋!

 いったん、”洗脳”を解除してから、元の自分に戻って

 冷静に考えたほうがいいよ!」

真紀がそう言うと、

「ーーそんなの絶対にいや!”あんなわたし”に戻りたくないの!」と、

加恋は声を荒げるー。


「ーあんな臆病で、ゴミみたいなわたしはもう嫌なの!」

加恋がそう叫ぶと、何かをブツブツと呟き始めたー


「ーーー…!」

真紀は、ハッとするー。


”呪文”ー。

加恋が真紀に対して”洗脳術”を使おうとしているー。


だがーー

真紀がハッとした時には遅かったー。


「ーー二度とわたしに口出ししないでー

 ”わたしの前から、永遠に姿を消して”ー」


加恋がそう言うと、真紀は瞳を震わせながら

「ーー…それが、加恋の望みならー」と、

洗脳に抗うことはできず、その場を立ち去ってしまうー。


翌日ー。

”加恋と永遠に会わないようにー”

真紀は大学を辞めて、そのまま行方を晦ましてしまったー



それを知った奈津雄と、泰恵は困惑するー。


”洗脳を解除できるのは、洗脳した本人だけー”

しかし、今の加恋本人に、その気がないのであればー、

解除することはできないー。


”第3者”が加恋を操っている以上に、厄介な状態かもしれないー。


だがーーーー


「ーー俺に考えがあるー」

奈津雄は、そう呟くと「え…?」と、戸惑う泰恵の方を見ながら、

「ーー元はと言えば、俺が加恋にもっとはっきりと

 ”今の加恋が好きだよ”って伝えてあげなくちゃいけなかったんだー」と、

悲しそうに言葉を口にすると、

その日ー、奈津雄は加恋を呼び出したー。


ますます派手になって、

まるで夜の仕事をしているかのように、キラキラした加恋が

笑みを浮かべながらやってくるー。


「ーー奈津雄ー

 話ってなに?

 わたしー、人気者すぎて忙しいのー。

 手短にしてくれる?」


加恋がクスッと笑うー。


まるで女王様のような仕草ー

もう、加恋であって、加恋ではないー…

そう言い切れるぐらいに、加恋は変わってしまったー。


それでもー…


奈津雄は小声でブツブツと何かを呟くー


「ーーはぁ?何言ってんのー?

 わたしを呼び出しておいて、ブツブツ独り言とか、あり得ないんだけど!」


加恋がイライラしながら、そう言葉を発するー。


「ーーーーー」

がー、

奈津雄は、悲しそうに表情を曇らせてからー

加恋の方を真っすぐと見つめたー。


「ーーー”元の加恋”に戻れー」

奈津雄の”命令”する口調ー

そして、”赤く光る目”ー

それを見た加恋は、表情を歪めるー


「ま、まさか、あんたー…!」

加恋が怒りの形相で叫ぶー。


「ーーーごめんー

 こうするしか、加恋を元に戻す方法は、ないんだ」


奈津雄はそう言うと、

真紀が失踪する前に、真紀から聞いていた洗脳術のサイトを元にー、

加恋を”洗脳”したー。


”己に洗脳されている”加恋を、

さらに上から洗脳するー


「ー君は奥手な人間だー」

「ー君は優しい人間だー」

「ー君は人見知りで、心配性でー」


元の加恋のことを”洗脳”していくー

元通りの加恋のことを思い出しながら、

ひとつひとつ、加恋を”正して”いくー


「ーーふ… ふざ… け…ないで…」

加恋が目を見開いたまま、必死に抵抗するような言葉を吐き出すー。


「ーーーごめん、加恋ー」

奈津雄は目から涙をこぼしながら

加恋を”洗脳”したー…。


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


それから、時は流れたー


「ご、ごめんねーーーー…

 わたしなんかと話してても、つまらないよねー?」


加恋が申し訳なさそうに言葉を口にするー。


加恋は、元に”戻ったー。

あのあと、加恋の親友である泰恵の力も借りて、

失踪したオカルト系サークルに所属していた真紀を見つけ出しー、

加恋にお願いして”真紀”の洗脳を解除してもらったー。


真紀を洗脳したのは、加恋であるため、

”解除の呪文”を使うことで、無事に真紀は正気に戻ったー。


大学への復帰もなんとか実現し、真紀は日常を取り戻しているー。


が、洗脳されている間のことを、

真紀は”最初に逆らえない感じで押しつぶされそうになって、

すぐに楽になってそれが常識になる、すごく怖い感じー”と、

そう語っていたー。


「ーーーつまらなくなんてないさー。

 俺は、加恋が好きだから一緒にいるんだからー」


奈津雄が優しく、そう言葉を掛けるー。


「ーーごめんねー」

けれど、加恋はどんなに言葉を掛けても、

ネガティブなままー。


なぜならー…


加恋は”元に”戻ったのではなくー、

自分自身を洗脳して、変わってしまった加恋を、

”さらに上から”洗脳しただけなのだからー。


もちろん、”今の状態”になったあとに、

加恋自身が”己”にかけた洗脳術が解けるかどうかは試したー。


が、できなかったー。

真紀によれば、

”上から順番に解いていかないと、元には戻らない”ようでー、

加恋を完全に”正気”に戻すには、

まず、奈津雄が加恋の洗脳を解きー、

そこから、加恋が己自身の洗脳を解く必要があるー。


”奈津雄に洗脳された状態の加恋”である、今の加恋が、

”自分自身の洗脳を解除しようとしても”

”後から施された洗脳”が解除されていない状態では、

それができないのだー。


がー…

奈津雄が加恋の洗脳を解けば、また、加恋が自分自身を操った状態ー、

つまり、”高飛車な加恋”に戻ってしまいー、

その状態の加恋を説得しても、自分自身を正気に戻すことは

してくれないだろうー。


もうー

どうすることもできなかったー。


せめて、できたのはー

”元の加恋”「風」の加恋にすることだけー。


今の加恋は、元の加恋のようであって、

そうではないー。

奈津雄の洗脳により、”元の加恋みたいな加恋”に

なっているだけだー。


「ーーーーごめんねー」

だからー…どんなに言葉を掛けても、

今の加恋はポジティブになることはないー。


あの時に”洗脳”された通りにー、

加恋は、”その通り”にしか過ごせないからー…。


真紀や泰恵とも相談して、何とか”正気”に戻す方法はないかどうか

模索したりー、

洗脳の内容を少し変えてみたり、色々試したものの、

解決策は見つからなかったー


どんな振る舞いになろうとも、

今の加恋は”元の加恋風の加恋”になるのが限界ー。


「ーーーーー…俺こそ、ごめんー」

奈津雄は、加恋に対してそう言葉をかけるー。


”ーもっと早くー、加恋がそんな洗脳術を自分に使わずに済むような

 言葉をかけてあげられていればー”


奈津雄は、心の中で何度も何度も何度も、後悔を繰り返したー。


でもー…

もう、加恋は”元の加恋”には戻れないー。


奈津雄は、せめて加恋のことをこれから先、

支え続けることが”俺”にできることだとー、

悲しそうに、加恋の方を見つめるのだったー…。



おわり


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


コメント


最終回でした~!☆

なんだか、悲しい結末に…★!

でも、そのままエスカレートし続けて、破滅してしまう結末…は、

なんとか回避できましたネ~!


今回は珍しく、他の話とのスケジュールの兼ね合いで、

②⇒③の隙間が少し空いてしまいましたが、

普段は同じ話の次の話が1週間以上できる限り空かないように

しているので、こうなることは、滅多にないので

安心してくださいネ~!


(今回は合間に長編と日記の曜日が挟まり、さらに

 完結するお話と、月の後半なので早めに連載開始したい次のお話…

 など、色々な都合上で少し合間が空きました…★

 

 事前に私のメモでスケジュールは決めてあるので

 完結しないまま忘れちゃうことは絶対にないので、

 心配しないでくださいネ…★!)


お読み下さりありがとうございました~~!☆!

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