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演劇部の部長・雄星はある日突然、

後輩の加奈から呼び出されー、

とんでもないお願いをされたー。


それはー、”人気者すぎて手が足りないわたしのために、

わたしに変身して、わたしの手伝いをしてほしい”と、いうお願いー。


半分強引に押し通されてしまった雄星は、

加奈が持参した変身薬を飲んだことによって

”いつでも”加奈に変身できるようになったー。


加奈の手が足りない時に、

加奈の代わりをやることになってしまった雄星の運命はー…?


★前回はこちら↓★

<他者変身>先輩もわたしになりましょう!①~お願い~

後輩の森下 加奈(もりした かな)から、 呼び出された先輩・岩本 雄星(いわもと ゆうせい)は、 困惑の表情を浮かべていたー。 加奈は、同じ”演劇部”で活動している後輩にあたる子で、 とても可愛く、成績も優秀、優しい性格の持ち主であることから、 ”人気者”な子だー。 雄星が部長を務めている演劇部でも、とて...

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


「ーーーーーー」

”加奈”の姿をした雄星は、加奈の友達と共に映画館にやって来ていたー。


加奈と同じクラスの清美(きよみ)、桃子(ももこ)の二人と

映画を見つめる”加奈”になった雄星ー。


本物の”加奈”は、今日はバイト先のお世話になった先輩が

今月で辞めることになり、食事に誘われたらしく

”そっち”に向かっているー。


”しかしー、人気者は確かに辛いなぁ…”

加奈の姿をした雄星は、映画館のスクリーンに映る

ゾンビを見つめながらそう心の中で考えるー。


雄星自身、友達はそれなりにいるが、

加奈は”さらに”友達が多いー。

学校でも、バイト先でも、家でも、

”人気者”な加奈は、確かに”身体一つでは足りない”

そんな、状況なのも頷けるー。


こうして、雄星が加奈に変身すれば、確かに

誘いを断る数を最小限にできるし、

”本物”と”偽物”で分担することはできるー。


ただーーー


「ーーーねぇ、加奈、今日は大丈夫なの?」

小声でそう呟く友達の桃子ー。


「ーーえ…?」

”加奈”の姿をした雄星が不思議そうに聞き返すと、

「こ、怖い映画って、加奈、苦手だったよねー?

 いつも悲鳴上げてるのにー」と、

そんな言葉を口にしたー


「ーーえ……」


ただー…

やっぱり”加奈”として振る舞うのには無理があるー。

この前”加奈の弟”とカラオケに行った時にも

”いつもと歌う曲が違いすぎる”なんて言われたしー、

”ちゃんと加奈になれていない”のを、ひしひしと感じるー


「ーあ、あ、…え~え~っとー


 ”きゃ~~~~~っ”」


とってもわざとらしい悲鳴を上げる”加奈”の姿をした雄星ー。


そんな”加奈”を、友達の一人、清美は不思議そうな表情を

浮かべながら見つめていたー。


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


「ーーはいー…あ、はいー

 え~、でも~~…

 西脇(にしわき)さんも、わたしになりましょうよ~!」


”加奈”のそんな声が聞こえるー。


「ーーーーー?」

放課後の演劇部の活動中ー、雄星は部室の少し先の廊下の物陰から

聞こえて来た声を聞いて、首を傾げるー。


話の内容が少し気になった雄星が、その声のした方向に向かうと、

そこには後輩の加奈がいたー


「あっ!」

加奈は、雄星に”待ってください”と言わんばかりに、

手で合図をして、そのまま電話の相手に向かって言葉を発するー


「ー西脇さんが、”わたし”になってくれればー…

 はいー、考えておいてくださいねー」


それだけ言うと、加奈は電話を切って

「すみませんー先輩」と、いつものように笑顔を浮かべたー


「ーーーー…え…も、森下さんー…今のってー?」

雄星は、戸惑うー。


加奈は今、電話相手に確かに

”西脇さんもわたしになりましょう!”と、そう言っていたー。


しかしー、

その言葉はどこかで聞いたことがあるー。


そうー

”先輩も、わたしになりましょう!”と、変身薬の件をお願いされた時の

言葉だー。


「ー今の? あ、はい!スマホです!アンドロイドのスマホ!」

自分が使っている、可愛らしいカバーに入ったスマホを

見せびらかしてくる加奈ー。


「違うよーそうじゃなくて…

 話ー…

 

 もしかして……森下さん、俺以外にも”変身”頼んでたりする?」


雄星がそう言うと、

加奈は「ギクゥ!?」と、オーバーリアクションをしてみせるー。


「ーーー…し、し、し、し、し、してないですよ~」

別の方向を向きながらそう呟く加奈ー。

明らかに嘘だー。


「ーーー…い、いや、俺以外に頼んでてもいいんだけどさー」

雄星は戸惑いながらそう言うと、

加奈は、申し訳なさそうにしながらー

「す、すみませんー。し、知り合いの西脇さんにも同じお願いをしててー

 ほら!わたしが二人よりも、三人!三人よりも四人いたほうが

 さらに捗るじゃないですか!」

と、そう言葉を口にしたー。


「いやいやいや…」

雄星がそう言うと、加奈は「あっ!先輩!もしかして嫉妬してます?」と、

笑うー。


「ーし、嫉妬してないよ!

 そういうことじゃなくてー…

 別に、俺以外に森下さんに変身している人がいるのはいいんだけどー…


 …あんまり、”人”増やしすぎると危険じゃないかな?」


雄星がそう呟くー。


加奈は不思議そうにしているー。


「いや、ほら…

 俺も何度か森下さんに変身してさー…思ったんだけど、

 本当に”森下さん”そのものになるしさー…


 俺はそういうこと絶対にしないけど、

 いくらでも悪いことできちゃうしー、

 森下さん自身になりすますこともできちゃうだろ?


 あまり、色々な人に声を掛けるとー…

 森下さんがーーその…危険なんじゃないかって思うんだー」


雄星はそう呟くー。


加奈に変身している状態は、

その気になれば”森下加奈”として何でもできる状態だー。


あまり、色々な人に声をかけるのは危険すぎるー。


「ーやっぱり先輩は優しいですねー…

 …だからこそー」


加奈はそこまで呟くと、にこっと笑って

「ー大丈夫大丈夫!わたし、信頼した人にしか声を

 かけませんし!」と、そう言葉を口にしたー。


「ーあ、そうだ先輩!”今”変身してくれませんか?」

加奈が笑いながらそう言葉を口にするー。


「えーー…えぇっ!?なんで今!?」

雄星が思わず戸惑いの言葉を口にすると、

加奈は「わたしVSわたしでにらめっこしたいんです!!」と、

嬉しそうに言葉を口にしたー。


”やっぱり、森下さん頭のネジが飛んでる気がする…”

苦笑いしながら、雄星はそれを承諾すると、

その場で”加奈”に変身ー


加奈は「わぁ!双子みたいですごいですね~!」と、

笑いながら、隣にやってきて、スマホで自撮りを始めるー


「ーーえへへへへー」

嬉しそうに笑う加奈ー。


どこまで本気なのかー

それもよく分からないー。


けれどー、悪い子ではないしー…

そう思いながら、雄星はもう少し、様子を見ることにしたー。


それからもー”自分の身体が足りない”という状態に、加奈が陥る度に

雄星は加奈の手助けをする日々を送ったー。


「ーーーあはははー、加奈ってばやっぱり怖がり~!」

友達と一緒に遊園地を訪れる”加奈”に変身した雄星ー。

”本物の加奈”は、今日は弟の直治と買い物に出かけているー。


”加奈”は毎回”友達”のほうを任せたり、”バイト先”のほうだったり、

”弟”だったり、本物である自分が”偏り”が出ないように

毎回上手く調整しているー


今回は”本物”が弟と、”偽物”である雄星が友達と

一緒に行動しているー。


加奈から聞いた情報を元に、”楽しそうに”はしゃぎながら

怖いアトラクションに乗る時は悲鳴を上げるー…


いやー、雄星も絶叫マシンの類は苦手だったために、

自然と悲鳴が上がったー。

唯一、女子っぽい悲鳴を上げることだけに気をつけていれば、

特に問題はなかったー。


家族ー、友達ー、バイト先ー…

”加奈”の色々な”場所”での振る舞いを、変身を繰り返すうちに、

学んでいく雄星ー。


この前、加奈が電話していた”西脇さん”なる人物もそうだし、

恐らく加奈は複数の人間に、雄星と同じようなことを頼んでいるー。


がー、雄星は一度も”自分以外”の”偽物の加奈”とは出会うことのないまま、

1か月半が過ぎ去ろうとしていたー。


そんな、ある日ー


「先輩もすっかり、人気者のわたしになれましたね!」

放課後の部室で、演劇部の活動が終わると、加奈は

そんな言葉を口にしたー。


「ーーははは…そ、そうかなぁ~…

 まぁ、でも最近は違和感を持たれるようなことは

 なくなったけどー」

雄星がそう言うと、加奈は拍手をしながら、

「先輩は無事にわたしになれました~!」と、言葉を口にしたー。


加奈のそんな言葉を聞きながら、水稲のお茶の残りを飲み干すと、

雄星は「ーまぁ、何だかんだで楽しいこともあるけどさー」と、

笑うと、加奈は「それは良かったですー」と、微笑むー。


そしてー、突然、加奈は改まったような態度でお礼の言葉を

改めて口にするー。


「先輩、本当にありがとうございますー

 この御恩は、わたし、一生忘れませんー」


加奈のそんな言葉に、雄星は「え…?ええ?大げさだなぁ」と、笑うー。


「ーだって普通、こんな怪しいこと、協力してくれる人なんて

 絶対いませんしー、

 先輩、ちゃんと”わたし”を演じてくれてますしー」


加奈がそう言うと、雄星は「ーー他人の姿で悪さをすることなんてしないよ」と、

穏やかな口調で笑ったー。


「ーふふー…

 先輩なら、”わたし”を任せられますねー」

ボソッと呟く加奈ー。


「ーーーありがとうございましたーー」

どこかーー達成感に満ち溢れた、儚げな笑みーーー



その翌日ーーー…


「ーーー!?!?!?!?」

起床した雄星は”加奈”になっていたー。


「ーー!?!?!?寝てる間に変身したのかー?」

”加奈”の姿をした雄星は、戸惑いながら

変身を解除する手順を踏むー。


がー、変身は解除されないー


「え…ど、どうしてー?」

自分の部屋で”加奈”の姿になってしまった雄星は、

戸惑いの表情を浮かべながらも、

家族に見つかった混乱してしまうー、と、家族に見つからないように

何とか家を飛び出しー、

そのまま学校に向かうー。


”ーなんで、変身を解除できないんだー!?”

戸惑う”加奈”姿の雄星ー。


ようやく学校に到着して”加奈”を探すも、

加奈の姿は見当たらないー。

やがてー、周囲から”加奈”扱いされて、そのまま授業が始まってしまいー、

仕方がなく、”加奈”として1日を過ごした雄星ー。


授業の合間にも、何度も何度も”加奈”に連絡したものの、

連絡はつかずー…

ついに、加奈は姿を現さなかったー。


”おいおいー”

このままでは、雄星の家に帰ることもできず、

止むを得ず”加奈”の家に向かうー。


がー、やはり加奈は”不在”で、雄星は”加奈”として、

加奈の家で1日を過ごしたー。


”今頃、俺がいないって騒ぎになってるだろうなぁー…”

雄星は、そんな心配をするー。


けれどー、

翌日も、次の日も、その次の日も、

本物の加奈は姿を消したままで、

雄星が”加奈”の姿から、元の姿に戻ることもできなかったー。


やがて、”雄星”は行方不明扱いになってしまい、

加奈の姿をした雄星は困惑するー。


「ー本物の森下さんはどこにー…?」


戸惑いの日々を送る雄星ー。


本物の加奈が消息を絶った理由を、雄星は色々と考えたー。


その結果ー…

”西脇さん”という存在を思い出したー。


加奈は、雄星以外にも”わたしになりましょう!”と、

雄星に誘ったのと同じように、誰かを誘っていたー。


その”相手”と、何かあったのだろうかー。

雄星は、加奈の姿のまま”西脇”さんー、

そしてまだ他にもいるかもしれない”加奈に変身した人間”を

探したー


だがー、見つからなかったー


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


あれから、5年ー。


雄星は”加奈”として生活を続けているー。


”雄星”は、失踪した扱いのままー。

両親はきっと、悲しんでいるー。


けれどー、元に戻れず、本物の加奈も見つからずー、

雄星は、”加奈”として大学に通っていたー。


「ーーお待たせ~!」

今やすっかり心も女子大生になった”加奈”の姿をした雄星ー。


今日は友達と一緒に、ショッピングだー。


結果的に”雄星”としての人生を失い

”加奈”として生きていくことになってしまった雄星ー。


本物の加奈はどうしてしまったのだろうかー。


雄星は、そのことについて、ある仮説を立てていたー。


それはー、

”雄星以外の、加奈に変身していた人物のうち、誰かとトラブルになり、

 既に本物の加奈はこの世にいない”という説だー。


そしてー、雄星が変身を解除できなくなったのは

”本物の加奈が死んだから”だと、そう推測していたー。


加奈が生きていれば、5年も何も言ってこないことはあり得ないー。


「ーーー…森下さんー…」

雄星は、今でも時々”本物の加奈”のことを思い出すー。


しかしー、

今の雄星の選択肢は”加奈として生きていく”ことだけーー。


「ーーーホントに、”わたし”になっちゃったよー」

加奈姿の雄星は、自虐的に笑みを浮かべながら、

静かにそう呟いたー


・・・・・・・・・・・・・・・・・


”これが、わたしの理想ー”


男は、笑みを浮かべたー。


5年前ー。

”加奈”は、”人気者”な、自分に疲れ果てていたー。

加奈は元々、一人でいるのが好きな性格だったー。


けれど、いつの間にか人気者になってしまい、

”人気者の自分”を演じるうちに、全てに疲れ果ててしまったー


両親からの期待ー。

友達からの期待ー。

バイト先からの期待ー。


全部、投げ出したくなって、命を絶つことまで

考えるようになってしまったー


”本当の自分”と、”周囲の考える加奈”の間に

強いギャップが出来て、加奈はいつも

”明るい自分”を演じることになってしまって、疲れ果てていたー。


そんな中、加奈は”自分の全てを捨てる方法”と、

ネットで検索していた際に変身薬にたどり着いたー。


身勝手だけどー、

弟や友達、家族を悲しませずに、”自分”が姿を消す方法ー

そんな方法を探し求めー、

加奈は思いついたー。


”わたしの代わりにわたしをやってくれる人を探そう”

とー。


そしてー、”先輩”をターゲットに選んだー。


変身薬を手に入れ、加奈に変身して貰い、

しばらくの間は”加奈としてちゃんと振る舞えるよう”

練習期間を与えたー。


十分に、雄星が”加奈”として振る舞えるようになったタイミングで、

加奈は”雄星の水筒のお茶”に、変身薬を混ぜたー。

加奈の持っていた変身薬は”飲む分量”によって、永久に変身効果を

継続させる状態にもできるのだー。


それで、雄星が”加奈”に変身した状態がずっと続くようにしたー。


その上で、加奈はーーー

”ホームレスの男”に変身しー、その男の姿で、姿を消したー。


今は、偽名で細々と”一人”暮らしをしているー。


チヤホヤもされず、誰からも期待されず、

工場で働き、家に帰る日々ー。


けど、一人が好きな加奈には、それが理想の人生だったー。


雄星の前から姿を消すにあたり、

”電話をしているフリ”で、雄星に

”俺の他にも、森下さんから変身を頼まれている人がいる”と、誤認させたー。


雄星の性格上、きっと今頃、

”森下さんは、他のやつとトラブルになって殺されたのだろうー”とか、

考えているはずだー。


”西脇さん”なんて本当はいないし、

あのとき、雄星に聞かれた電話は、

スマホを耳に当てて一人で喋っていただけー。


そこは”演劇部”の本領発揮と言ってもいいー。



そんな”加奈”は、今日は久しぶりに

”わたしになった先輩”の様子を見に、大学の近くにやってきていたー


「ーまた明日~!」

”加奈”に変身した雄星が大学から出てきて、友達に手を振っているー。


今やすっかり、”加奈”だー。


「元気そうで何よりです、先輩ー

 ーーー”わたしの人生”を押し付けてごめんなさいー」


”男”に変身して、孤独な生活を満喫している加奈は、

離れた場所からそう呟くー。


とりあえず、雄星が元気そうで安心したー。

声をかけるつもりはないし、

加奈自身、”今の孤独”に満足していて、

”元のわたしに戻りたい”と思ったことは一度もないー


”男”に変身している加奈は、

”加奈”として過ごす雄星が元気そうであることに安心すると、

そのまま、満足そうにその場から立ち去って行ったー。



おわり


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


コメント


加奈になった雄星くんも、

孤独を手に入れた孤独が好きな加奈も、

何とかうまくやっていけそうな結末でした~!☆


でも、雄星くんの両親からしてみると、

急に雄星くんがいなくなってしまったので、

視点を変えるとバッドエンドな部分もありますネ~…!★


お読み下さりありがとうございました~~~!

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