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”皮にされた人間”を借りたまま、

返却期限を過ぎても”皮”を返さずに

”希海”を名乗り、逃亡を続ける慎平。


しかし、そのせいでメイドカフェの先輩・梨沙まで

皮にされてしまい、身体貸しの男・若林の執拗な追跡を

受けることになってしまうー。


がー、”意地でも皮を返すつもりはない”慎平は、

梨沙を乗っ取った若林の隙をついて逃亡、

さらには若林が居場所の特定に使っていた”皮”の中に埋め込まれた

発信機の排除にも成功し、

またもや彼の追跡から逃れるのだったー。


しかしー…


☆前回はこちら↓☆

<皮>そろそろ返してもらいましょうか②~逃亡~

”身体貸し”と呼ばれる、”皮”にされた人間を レンタルすることができるサービスで、”美香”という子の皮を借りた慎平。 その後、返却期限の1ヵ月が近付いたころには、慎平は ”皮”を返し、元の人生に戻ることに恐怖を感じー、 ”美香”の皮を着たまま、”希海”と名前を変え、 容姿も変え、住所も変えて、”身体貸し”から借りた...

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


「ーーーーふふふふー

 やっぱり、バイト後のこれはやめられないよなぁ♡」


笑みを浮かべながら、自分の胸を揉む”真桜(まお)”ー


これまでは”希海”を名乗っていたものの、

身体貸しの男・若林にその名前は知られてしまったために、

慎平はさらに名前を変えて、

今は花森 真桜(はなもり まお)という偽名を使っていたー。


慎平が着ているこの”皮”の名前は”美香”だがー、

その名を名乗るわけにはいかないし、

最初の偽名である”希海”も、もう使うことはできないー。


居場所を知られれば身体貸しのあの男は、再び取り立てに

やってくるだろうー。

だから、また名前も容姿もガラリと変えたー。


慎平としては髪が長い方が好きだったものの、

髪をバッサリと切って短くしてー、

メイクの感じも色々勉強してガラリと変えー、

服装もカジュアルなものを中心に固めて

”別人”のような雰囲気を醸し出していたー。


「ーしかしー、”女”ってすごいなぁ…

 僕なんてイメチェンしようとしても、

 大して変わんねぇしー…」


”真桜”は、そう呟きながら、

鏡を見つめつつ、胸をひたすらに揉むー。


現在のバイト先は”小物類”売るお店で、

可愛い小物や飾り、アクセサリーなどが

たくさん売られているお店だー。


このアパートは、保証人などが必要なく、

偽名であっても入居できてしまうような、

ちょっと曰くつきの場所だが、

そんなワガママは言ってられないー。


流石に”女”の皮を着て、外から見れば女でしかない状況で、

慎平自身の名前を使うことはできないし、

かと言って、この皮の名前ー”美香”を使うこともできないー。

そんなことをすれば、あの男…若林に見つかってしまうからだー。


「それにしても、こんな可愛い子ー…

 どうして”皮”になんかなってるんだろうなー…?」

後頭部のあたりを触りながら、少しだけ”皮”の着心地を治すと、

そのまま笑みを浮かべるー。


確かー、最初に”皮”を借りた時には、

罪を犯して逮捕された人間、病気などで余命宣告を受けた人間、

自ら命を捨てることを希望している人間などを回収し

”皮”にしていると、若林は言っていたー。


いやー、確かその時にー


”「ーーまぁ、それと大きな”皮の仕入れ源”となっているのがー…」”


と、言いかけていたような気もするー。

確かあの時、若林はそれ以上は何も言わなかったが、

まだ別の仕入れ源があるのかもしれないー。


「ーこんな可愛いのにもったいないなぁ…」

皮にされた”美香”の事情も知らず、

そう呟く慎平ー。


「よし、今日も十分揉んだし、そろそろー」

そう言いながら、”真桜”は、晩御飯を食べようとし始めるも

「ーーやっぱりー…もうちょっと揉もうー」

と、胸を揉む快感に病みつきになったのか、

そんな言葉を口にしたー。


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


翌日ー。


「ーーあ~これ可愛い!」

バイト先のファンシーショップの常連客の

眼鏡をかけたツインテールの女性が笑うー。


女子大生ぐらいだろうかー。


そんな彼女に、身体を密着させながら、

聞かれた質問に答える”真桜”ー。


”へへへー女の子同士なら

 こんなに近くても何とも思われないんだー

 へへへへへ…”


少し顔を赤らめながら、その常連客のほうを見ていると

「ーーーえ…?ど、どうかしましたかー?」と、

ツインテールを揺らしながら、その客に不思議そうな顔を

されてしまったー。


「ーーあ…いえ… よく似合いそうだなって」

と、今、案内している商品のことを口にしながら誤魔化す”真桜”ー


”危ない危ないー

 流石に女同士でもやりすぎはおかしいもんなー”

そんなことを思いながら”真桜”は、少し距離を開けて

自分の欲望が”暴走”しないように気を付けるー。



「ーーあ、真桜ちゃん!おつかれさま~!」

バイト先の先輩・芽衣子(めいこ)がやってきて、

微笑みながら手を振るー


「あ、先輩~!」

わざと可愛らしさを意識しながらそう振る舞う真桜ー


”あぁ…かわいい子ごっこも本当に楽しいよー

 えへへー僕が僕のままだったらありえなかったことだしなぁ…”


再びニヤニヤとする”真桜”ー。


が、先輩の芽衣子は気にする様子もなく、

色々な雑談を真桜と交わすー


「ーーーーそれじゃ、お先に失礼します~!」

今日は、真桜と交代でシフトに入っている先輩の芽衣子。

”真桜”はここでシフトは終わりのために、

雑談を終えるとそんな挨拶を口にしながらーー


どさくさに紛れて先輩・芽衣子の後頭部に手を触れたー


”よしー”

笑みを浮かべる”真桜”ー。


「えっ!?」

急に頭を触られた先輩の芽衣子が戸惑いの表情を浮かべるー。


「ーあ、ご、ごめんなさいー」

誤魔化して謝る”真桜”ー。


「ーそこのものを取ろうとしたらー届かなくてー」

丁度、立っている位置的に、

そんな不自然ではない言葉を口にすると、

先輩の芽衣子は「あ、これ?取ってあげるー」と、

そのままそれを手にして、”真桜”に手渡したー


「ありがとうございますぅ~!お疲れ様でした~!」

”真桜”はそう言い放つとバイト先のファンシーショップを後にするー。


”これで、全員確認できたー”

ニヤリと笑みを浮かべる真桜ー。


先輩・芽衣子の頭に触れたのは”わざと”だー。


身体貸しの男・若林は”人を皮にすること”が、できるー。

メイドカフェの先輩だった梨沙が乗っ取られたように

もしかしたら、慎平のことを疑って、また身近な人を乗っ取って

近付いてくるかもしれないー。


梨沙の場合は”後から”乗っ取られただけだがー、

どのタイミングで身近な人が乗っ取られているかは分からないし、

確認しておくに越したことはないー。


だからー、”真桜”は、バイト先の同僚や常連客など、

よく見かける人間の”頭”をさりげなく触り

”違和感”がないかを探っているのだー。


「ーーーー」

露骨に怪しい部分があるわけではないし、

チャックが見えているわけでもない。


しかし、後頭部のあたりを触ると、

”ちょっとした突起のようなもの”があり、

”皮を着ている人間”かどうかはすぐに分かるー。


だからこそ、どさくさに紛れて

”なるべく不自然じゃないタイミング”で身の回りの人間の

頭を触り、”皮”にされて着られた人間ではないかどうかを

”確かめて”いるのだー。


今、調べた”芽衣子”で、このバイト先のスタッフ全員、

”シロ”であることは念のため確認したー。

常連客のツインテールの女子大生も含め、

”よく見る客”も確認済みだー。


「ーへへへ…今度こそ逃げ切ったぜ」

”真桜”を名乗っている慎平は勝ち誇った表情を浮かべるー。


今度こそ、誰にも邪魔させないー。

もちろん”借りたものを返さない”自分が悪いことは理解しているー。


だが、それでも元の人生に戻るなんてごめんだー。

大体、人を皮にして貸し出しているなんてのも、おかしな話なのだー。

絶対に”身体貸し”のやつらだって悪いことの一つや二つはしているー。


それにー、”皮”はたくさんあったー。

一つや二つ無くなったところで、放っておいてくれればいいー。


慎平は、そんな風に考えながら自分を正当化しつつ

”真桜”との生活を謳歌したー。


そしてーー…

その数日後ー…


”昨夜、公園のベンチで遺体となって発見されたのは、

 先月、指名手配されていた若林 邦昭(わかばやし くにあき)容疑者で

 あることが判明しましたー。

 外傷はないものの、警察は事件と事故の両面でー…”


そんなニュースが流れたー


「ーーへへー へへへー

 アイツが死んだー?

 へへへへー!」


”真桜”は、思わず笑みを浮かべるー。


例の身体貸しの男・若林が遺体となって発見されたー。

そんなニュースに思わずガッツポーズをする”真桜”ー。


若林は、最初に慎平の元を尋ねて来た際の件が原因で、

既に指名手配されており、

2度目に慎平の元を訪れてきて以降は、行方不明になっていたー。


がー、

原因は不明であるものの、どうやら若林は死んだようだー


「ーーこれで…これで、僕はーー

 ”女”として生きていける!

 今までの自分とおさらばできる!!」


嬉しそうに叫ぶ”真桜”ー。


今日は、とても気分がいいー。

心弾む状態でバイト先のファンシーショップにやってきた慎平は

今日も”真桜”として楽しそうにバイトを始めるー。


「ーなんか今日はすっごいご機嫌ねー」

先輩の芽衣子のそんな言葉に、

”真桜”は「え~?そう見えますか~?」と笑うー。


ちょうどやってきていた

常連のツインテールの女子大生も、笑いながら

「何かいいことあったんですか?」と、微笑むー。


「ーえへへ…ひみつ~!」

”真桜”は、そう言い放つと、

その日は1日中、ご機嫌な様子で過ごしたー。


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


夜ー


バイトを終えて、家に帰宅しようとして

歩いていると、

ふと、背後から気配がしたー。


「ーーー!?」

ビクッとして振り返る”真桜”ー


すると、そこにはー


「ーーあ…こんばんはー」

いつも、バイト先のファンシーショップにやってくる

ツインテールの女子大生の姿があったー。


「ーーー…あ…ど、どうもー」

”真桜”が少しホッとしながらそう呟くと、

「ーーたまたま、お姿を見かけたので、声を掛けようと思ってー…

 驚かせちゃってごめんなさいー」

と、コンビニの袋を手にしながら、彼女は笑ったー。


「ーーあはは…今、帰りですかー?」

”真桜”が笑いながら、近付いてくる常連客の女子大生に

話しかけるー。


「ーーー」


何で、こんな時間に、

しかも、人通りの少ないこの道で急にこの子が

現れるのだろうかー。


ふと、そんな不安を感じた”真桜”は、咄嗟に持っていた鞄を落とすー。


「ーあ、大丈夫ですかー?」

常連客のツインテールの女子大生がそう言葉を口にしながら、

鞄から散乱したモノを拾ってくれている間に

どさくさに紛れてさりげなく”後頭部”を確認する”真桜”ー


がーーーー…

”大丈夫”だー。

”皮”ではなかったー。

皮にされた人間の後頭部には独特の手触りがあるー。

そこを引っ張ることで、”皮”を脱がせることができるのだがー、

常連客のこの子にはそれがないー。


一瞬、ヒヤッとしたものの、彼女はただ、

”真桜”の前に姿を現しただけなのだろうー。


荷物を拾ってくれた常連客の女子大生が

”真桜”に荷物を手渡してくるー。


「ありがとうございますー」

”真桜”がそれを受取ろうとしたその時だったー


「ーー!?!?」

突然、ツインテールの常連客にガッ、と腕を捕まれるー。


「ーーえ…????」

青ざめながら真桜が、ツインテールの女子大生を見つめると、

彼女は穏やかに微笑んでいたー。


「ーー”俺”から逃げられると思ったー?

 ”吉岡”さんー」


その言葉に、皮を着て”真桜”を名乗っている慎平は驚くー。

”吉岡”とは、慎平自身の苗字だー。


「ーー…え… え… え…」

とぼけようとする”真桜”ー。


が、ツインテールの女子大生は笑みを浮かべながら言ったー。


「ーーもう無駄だよ。アンタが本当に”吉岡さん”かどうか

 確証を得られるまで、あの店に通ってたけどー、

 今の行動で確認しましたよー


 ”俺”が”皮”じゃないかどうか、後頭部をさりげなく

 確認しましたよねー?」


ツインテールの女子大生が自分の頭を指差しながら言うー。


”真桜”は確信するー

こいつは間違いなく若林だとー。

発信機は取り除いたはずなのに、いったいどうやってー?


いや、しかもー、この子は”皮”じゃないはずだー

皮なら、後頭部に”外からでは見えないとっかかり”があるはずーー


「ーーーあぁ、あぁー

 自己紹介が送れましたねー。

 俺は、”身体貸し”として働いている鴻沼 亜梨紗(こうぬま ありさ)と

 言いますー。


 ”若林”ってのはー、ふふー

 まぁ、俺が着てたお気に入りの”皮”でしてねー」


ツインテールの常連客・亜梨紗が笑うー。


「ーーえ……え???」

”真桜”は表情を歪めながら戸惑うー。


「ーーん? だから、これが”俺”の正真正銘の

 自分の身体ですよー?

 あの付け髭の胡散臭い”若林”が、俺が着てた皮ですー。


 吉岡さんのせいで、指名手配されちゃいましたからー

 公園で脱ぎ捨てて、人間の状態に戻して放置したのが

 先日、遺体として見つかっただけですねー」


亜梨紗は笑うー。


「ーーえ……ま、まさか…あんたー…女?」

”真桜”は震えるー。


今まで自分を執拗に追い回していた身体貸しの男・若林は

”皮にされて乗っ取られている人間”に過ぎずー、

”中の人”はこのツインテールの女・亜梨紗だったのだー。


「ーーあぁ、はははー

 自分のこと”俺”って言う女もいるんですよ?」

亜梨紗が笑うー。


「ーーー…~~~~~…」

”真桜”は掴まれたままの腕を振りほどこうとしたー


「ーー逃げられねぇって言ってるだろ?」

亜梨紗はそう言うと、”真桜”に向かって何か注射のようなものを打ち込むー。


着ていた”皮”が勝手にぬるぬると脱げていくー。


中から出て来た”慎平”が、怯えた表情を浮かべながら

「い…いやだ…!お、男に戻りたくない!自分に戻りたくない!」と

泣き叫ぶー。


が、亜梨紗は笑ったー


「大丈夫ー。アンタはもう、”自分”にすら戻れないから

 何も心配する必要ないよ」


とー。


ツインテールの可愛らしい雰囲気の亜梨紗ー。

しかし、その中身は邪悪で、

今の慎平からすれば、悪魔にしか見えなかったー。


「ーーーそういや最初に”皮”をどこから集めているのか、って

 話をしましたよね?覚えてます?」

亜梨紗の言葉に、震えながら慎平は頷くー


確か、逮捕された人間、余命宣告を受けた人間、自ら死を望む人間ー

そういった人たちだと聞いたー。


それとー


”「ーーまぁ、それと大きな”皮の仕入れ源”となっているのがー…」”


若林ー…いいや、この女は確かそこまで言って、言葉を止めていたー


「ーーあんたみたいな、”借りたまま返さない”やつもー

 ”仕入れ源”なんだよ」

亜梨紗は邪悪な笑みを浮かべるー。


「ーーー!」

逃げようとする慎平ー。

が、さっきとは別の注射器を首筋に打たれた慎平は、

自分の身体からみるみる力が抜けていくことに気付くー。


「ー皮を持ち逃げしようとするやつにはー

 ”皮”になってもらうー

 

 まぁ、あんたみたいな男の皮なんて、ほとんど需要はないけどー

 中には”マニア”もいるからなー。」


亜梨紗はそれだけ呟くと、笑うー。


「ぁ… ぁ… いやだー…ゆる し ぇ…」


最後は言葉にならず、慎平はそのまま”皮”になったー。


何事もなかったかのように、亜梨紗は

”皮”にした慎平と、慎平が着ていた皮”美香”を回収すると、

そのまま歩き始めるー。


「ーーっていうか、やっぱこいつも

 俺のこと男だと思い込んでたのかー」


亜梨紗はそう呟くと、

「ーーこの見た目も面倒くせぇよなー色々」と、

自分の身体を触りながら歩き出すー。


彼女は、男兄弟3人に囲まれて育ったせいか、

普段から男のような振る舞いに、男のような言葉遣いをしているー。


その上、普段は”男の皮”を着て行動しているために、

”いつも”慎平のようなやつからは、男だと思い込まれているー。


「ーまぁ、どう思われても関係ないけどなー」

亜梨紗は”正真正銘”自分の身体を見つめながら笑みを浮かべると、

そのまま皮にした慎平を回収し、闇の中へと姿を消したー



おわり


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


コメント


最終回でした~!☆

持ち逃げに失敗…★!


ただ、このお話の場合は、慎平くんが

ちゃんと返却していればよかっただけなので、

慎平くんの自業自得な感じですネ~笑

(一応、”身体貸し”はちゃんと返却すれば

 何もされないので、安心(?)な設定デス~笑)


お読み下さりありがとうございました~!

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