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とある特撮番組を撮影中ー


女性スーツアクター・佳代子(かよこ)は、

今日も怪人の役をやっていたー。


悪の組織が生み出した怪人・ケルベロスー。


男性怪人の設定ではあるものの、

声は声優が当てるから問題ないー。


ケルベロスとして、

ヒーローと戦っていく佳代子。


やがてー

無事に撮影は終わり、

佳代子は「ありがとうございました」と

頭を下げた。


(ふぅ~今日も終わった~)

そう思いながら、佳代子は

”ケルベロス”の着ぐるみを

脱ごうとするー


しかしー…


ーー!?!?!?


(あれ?脱げない?)


脱げるはずの着ぐるみが脱げないー


そんな風に思いながら

佳代子はここで一人でもがいているのも

恥ずかしい―、と

控室に戻ってケルベロスを脱ぐことにしたー


「--監督!」

スタッフが監督のもとに駆け寄ってくる。


「どうした?」

監督が返事をすると、スタッフが耳打ちする。


「え?ケルベロスの着ぐるみがこれから届く?

 何を言ってるんだ?」

監督がいらだった様子で言うと、

スタッフは申し訳なさそうに言った。


「--実は、手違いで到着が

 遅れていたみたいでして…」

スタッフの言葉に

監督が、首をかしげる。


「いや…ケルベロスの着ぐるみなら

 もう届いてるし

 撮影も終わったぞ」


監督の言葉に「え?」とスタッフは

驚くー。


”まだ到着していないはずの着ぐるみ”が

どうして既にここにあるのだろうかー。


そんなやりとりを見ていた

ディレクターが不気味な笑みを浮かべた。


・・・・・・・・・・・・・・・


「あ…あれ?脱げない!」

ケルベロスの着ぐるみを脱ごうとする佳代子。


しかしー

どんなに脱ごうとしても

何故かケルベロスの着ぐるみは

脱げなかったー


「というか…随分質感がすごいような…」


スーツアクターとして

今まで色々な着ぐるみを身に着けてきた佳代子。


だがー

今日の”ケルベロス”はやけに

リアルというか、

なんだか、まるで生きている”皮”のような

そんな感じがしたのだー


「…って、早く脱がなくちゃ…!」

苦しむ佳代子。

3つ首を化け物のままいるなんて

流石にいやだ。


”も~!上手くはまっちゃったのかな!

 このあと、彼氏と約束もあるのに”


もうすぐクリスマスということで、

彼氏ととある約束をしていた佳代子。


だがー

流石にこのままの格好じゃ

彼氏と会うこともできない。


「もしもし」

佳代子が、彼氏のスマホに連絡を入れた。

彼氏の金五郎がすぐに電話に出る。


”どうしたんだ~?”


金五郎の言葉に、

佳代子は申し訳なさそうにして呟いた。


「ごめん!ちょっと撮影が長引いちゃったから

 遅れるかも!」


そんな佳代子の言葉に

金五郎”わかった!お疲れ様”と

優しい言葉をかけてくれたー。


「---はやく…脱がなきゃ!」

ケルベロスの着ぐるみが脱げないー


「--しょうがないなぁ…」

恥ずかしいけれど、他の人に

脱ぐのを手伝ってもらおうー


そんな風に思いながら

佳代子は立ち上がったー


着ぐるみを脱げなくなっちゃったなんて

とほほ…と思いながら

廊下をケルベロスの姿のまま歩いていた佳代子は

男性スタッフを見つけて

”すみませーん”と叫んだ。


「---!?」

「---!?」


スタッフが驚くー


いいや、違う。

驚いているのはスタッフだけじゃない。


佳代子もだったー


声がーー


声が、この世のものとは思えない

恐ろしい声になっていたー


「あひぃっ!?」

スタッフが尻もちをつくー


「--え?、ちょ、、、ち、違うんです!」

佳代子が叫ぶ。


「こ、このケルベロスの着ぐるみを…!」

佳代子が言い終える前に

スタッフの男は慌てて走り去ってしまった。


「え…どうなってるのー?」

口から出るのは、佳代子の声ではなく、男の

ような図太い声ー。

そう、怪人の声だ。


「--ちょ、、ちょっと!?」

佳代子は驚くー

今まで色々な着ぐるみを着て

色々な怪人を演じてきたが

声まで変わるなんて、そんなこと

あるはずがー


「--!?」

ギリギリギリギリギリギリギリ


突然、激しく締め付けるようなー

そんな不思議な痛みを感じたー


「ぐっ…あぁあああああああっ♡」

ケルベロスの着ぐるみを着たまま

佳代子はその場に蹲るー


痛いー

でも、少しだけ気持ちイイー

そんな、不気味な感覚ー


「---あ…あ…」

自分の身体を見つめる佳代子ー


さっきまでー

”着ぐるみ”と一目で分かるような

質感だったケルベロスの着ぐるみがー

不気味に波打っているー。

まるで、生きているかのようにー


生きているケルベロスの皮を

はいだかのように…


「--な、、な、、なに…これ…」


ケルベロスの皮は、佳代子に

次第に”定着”しつつあったー。


「た、、助けて…!」

佳代子が恐怖を感じて

そのままスタジオから飛び出す。


「なんだあれ?!」

「きゃあああああっ!」


通行人たちが驚くー

ケルベロスの姿をした佳代子が

街中を走るー


「誰か…誰か…助けてぇ!」

口から出るのは自分の声ではないー

”怪人”の声ー


いったい、いったい、どうなっているのかー


「-----」

走り去っていく佳代子の姿を見つめる男の影があったー。


特撮番組のディレクターだ。


彼はー

更に番組のリアリティを追求するためにー

先祖が使っていたという”禁断の錬金術”に

手を出したー


その結果ー

”ケルベロスの皮”が生まれたー。

”怪人の皮”をこの世に具現化することに

成功したのだー


そうとも知らずー

普通の着ぐるみだと思って

佳代子は”ケルベロスの皮”を身に着けたー


闇の錬金術で生み出された皮を着た人間が

どうなるのかは分からないー。


ディレクターは笑みを浮かべる。


「佳代子さん…

 あなたにはモルモットになってもらう…」

とー。


・・・・・・・・・・・・・・


「ひーっ!?」

「なんだあれ?」

「コスプレしてる人がいるー!」


街中の人々が反応する。


「あぁぁああああ…あっ…あぁああああああ!」

ケルベロスの皮が佳代子の身体を

さらに締め付ける。

佳代子は苦しそうに悲鳴を上げる。


「た、、たすけて…たすけて…!」

佳代子が悲鳴を上げながら

ケルベロスの皮を身に着けたまま

街中を徘徊するー


そしてー


「---!?な、なんだ!?」

偶然目の前に現れたのはーー

佳代子の彼氏・金五郎ー。


「--き、、金五郎…!」

佳代子は救われたような気持ちになる。


「ひっ!?な、なんだ?俺に近寄るな!」

金五郎が少しビビりながら言う。


”着ぐるみ”相手ならビビるほど

ヤワではないー

だがー”ケルベロスの皮”は、

まるで本物のケルベロスかのように

”リアリティ”に満ち溢れていたー


口から、紫色の液体を吐きだすケルベロス。


「---ち、違う…わ、、わたし、、佳代子…!」

ケルベロスの皮を身に着けた佳代子が

叫ぶー。


グギギギギ…


ケルベロスの皮が、佳代子をさらに締め付ける。

着ぐるみを着ているー

それだけのはずだった佳代子がー

今は逆に、着ぐるみー

”ケルベロスの皮”が動くためのパーツに

されてしまっているー


皮は、中身がなければ動けないー

その、動くための中身として

佳代子の身体が利用されているー


「ぎやああああああああああああ!」

激しい刺激が脳に走る。


中に佳代子がいるとは夢にも

思っていない金五郎が唖然としながら

その様子を見ている。


「---わたしは、、かよ…こ…

 わたしは……

 お、、、おれ…かよ…こ??


 お…おれ、、、俺様はケルベロスだぁ!

 うへへへへへ!」


佳代子に異変が生じたー


「しゃあああっ!~!」

突然四つんばいになると、

目の前にいる金五郎を躊躇なく襲う佳代子ー


”特撮番組の設定”通り、

佳代子は、その鋭い牙で

金五郎をーーー

”噛み砕いた”


「うおっほ!いいぞ!」

背後からこっそり

皮を着こんだ佳代子の様子を見ていた

ディレクターが叫ぶ。


ケルベロスの皮を着た佳代子はー

まるで本物のケルベロスのように

金五郎を襲いー

喰らい尽くしている。


”あぁ…や、、やめ…やめて…

 え…えへ…うふふふ…

 あははははははは!”


佳代子の心までもが

皮に汚染されていくー


「素晴らしい!」

ディレクターは叫んだー


これぞ、特撮番組のリアリティ。

もう、スーツアクターが着ぐるみを着て

撮影するなどという、

古いやり方は終わった。

これからはよりリアリティのある皮を被せて

本物の怪人を作りだし、

プロデューサーやディレクター

ヒーロー役の人間が一致団結して

悪の怪人を倒していくー

そう、ノンフィクションの特撮番組の

時代が到来しt


ズバァ!!


「---ぎゃおおおおおおおっ!」

ケルベロスの皮に完全に

支配されてしまった佳代子は、

ディレクターに襲い掛かり、

ディレクターを容赦なく八つ裂きにした。


この世のものとは思えないような

雄叫びを上げるー


皮は時間の経過と共に

さらにリアルになっていきー

本物の生き物のように蠢いているー


中にいる佳代子は、自我をほとんど失い、

身も心もケルベロスに成り果てていたー


「--とまれ!」

騒ぎを聞きつけた警官たちが駆けつけた。


パトカーに包囲されるケルベロスー。


雄叫びをあげるケルベロス。


警官たちは戸惑っているー

”本物の化け物?”


それともー

”中に人間がいるー?”


いずれにせよ、危険な存在で

あることには違いない。


警官たちはもう一度警告するー


佳代子にー

ケルベロスの皮を身にまとった佳代子にー


”はぁ…はぁ…”

皮を着こんだ佳代子の身体は

酷使されて限界に来ていた。


だがー

身体が突き動かされるー

皮によってー。


佳代子がケルベロスの皮を身に着けているのではなくー

ケルベロスの皮が、佳代子の身体を身に着けているー

そんな状態にー

逆転してしまっていたー


「---害獣め!」

地元の猟友会の人間が駆けつけ、

猟銃を放ったー。


その弾によってー

ケルベロスの頭部が吹き飛ぶー


警官たちは驚く-


皮の中からー

綺麗な顔立ちの女性の頭が出てきたからだー。


佳代子は、白目をむきながら

涎をボタボタと垂らし、ヒクヒクと震えているー


「おれは…おれさまは…けるべろすだぁ」


ケルベロスの頭部が吹き飛んだことで、

佳代子の本来の声で、佳代子は叫ぶー


「おれは…けるべろすだぁ…

 た、、たすけ、、、て、

 うひ、、ひひひひひひひひ」


佳代子はぶるぶる震えながら、

ケルベロスの皮を半分身に着けたまま

ふらふらと、猟友会の男の方に向かっていくー


「ひぃっ!?」

猟友会の男が思わず発砲したー


ケルベロスの皮がさらに吹き飛ばされるー


そしてー

皮は砕け散りー

中から佳代子が出てきたー


佳代子は白目をむいたまま

ゲラゲラと笑い、激しく痙攣を起こしているー


「お、おい!?大丈夫か!?」

警官が駆け寄るー


だが、佳代子はしばらく震えた後に、

口から泡のようなものを大量に吹き出しー

そのままー

溶けるようにしてなくなってしまったー



衝撃的な

スーツアクターの暴動事件…。


当の本人の佳代子は溶けてなくなりー

”ケルベロスの皮”を作ったディレクターは

もうこの世にいないー


誰もー

その事件の真相を知ることは

できないのだったー


永遠にー。



おわり


・・・・・・・・・・・・・・


コメント


1話完結の皮モノでした~!

本当はクリスマスの入れ替わりモノを

用意していたのですが、

まだ23日だし、明後日にしよう…となったので

急きょ、皮モノに変えちゃいました!


クリスマスの入れ替わりモノは25日に~!


今日もありがとうございました!

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