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かつて仲良しだった幼馴染から、

”この身体は頂いた”という、意味不明な内容の年賀状が届いたー。


しかし、彼はその相手ー、月美とはここ最近は会っておらず、

年賀状の内容に疑問を持ちつつも、軽く連絡を取っただけで、

特にそれ以上は何もしなかったー。


がー、今度はその1年後、ギャルのような風貌になった月美から

年賀状が届き、再び混乱する哲也ー。


けれど、哲也はまたもや具体的な行動を起こすことはなかったー。

”距離”のある相手の異変には、人間、案外気付かないものなのだー。


そして、さらに時は流れー…?


☆前回はこちら↓☆

<憑依>年賀状の悪夢①~奇妙~

「ーーふ~~~…」 新年早々、ため息をつきながら、 ちょっとした用事を終えて、住んでいるアパートに帰宅する男ー。 彼はー、今年、社会人になって初めてのお正月を迎えた 入社1年目の男、石岡 哲也(いしおか てつや)ー 大晦日の昨日は、夜遅くまで起きていたために、 今日は何となくボケボケしたような、そんな1日...

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月美が憑依されてから”4度目”の、12月を迎えたー


「ーーあ~~~…くっそ…すっかり太っちまってー」

月美は、鏡を見つめながらため息をつくー。


「ーーまぁ、こんだけ食ってりゃ当然かー」

月美はそう言うと、”中の男”が大好きなカップラーメンを

嬉しそうに食べ始めるー。


男に憑依された月美は、今やすっかりと太ってしまい、

憑依された当時の華奢な雰囲気とは別人のような状態になってしまっていたー。


昨年ー、”3回目の12月”を迎えた際には

まだギャルのような格好をすることもできていたものの、

今ではそれも似合わないぐらいに太ってしまったー


「ーあ~~~…でも、やめらんねぇんだよなぁ これがー」

カップ麺の麺を食べ終えると、月美は笑みを浮かべながら、

スープまで飲み始めるー。


月美本人だったら、絶対にスープを全部飲むなどと言うことはしないだろうし

カップ麺だって、こんなに好んで食べたりはしていないだろうー。


しかしー、今の月美にはそんなこともお構いなしー。


「ーーあ~~~あ、こんなにムチムチになっちまって」

すっかりゴミだらけになった部屋の中でゲラゲラと笑う月美ー。


がー、こんなに太っても、”快感”だけはちゃんと味わえるー。

月美の胸を揉めば気持ちいいし、

アソコをいじくれば、ちゃんと感じるー。


「ーへへ、この快感さえあれば何でもいいぜー

 それに、どんなに太っても、ぽっちゃりが好きな男もいるからなぁ へへ」


そう思いながら、月美はふとカレンダーを見つめるー


「ーーな~んか、この時期になると年賀状を出したくなるんだよなぁ~

 へへへ」

月美はそう呟きながら、年賀状を今年も書き始めるー。


”月美に憑依した男”はー、

年賀状が今よりも”当たり前”のようにやり取りされていた世代の男ー。

月美に憑依する前の年も、年賀状をたくさん、学生時代の友人に

出したりしていたー。


彼にとって、年賀状を書くことは習慣になっていたー。


がー


「ーーへへ…でも、わざわざ他人の身体で書く必要も

 ない気もするけどなぁ」

月美は独り言のようにボソボソ呟きながら

「あ~…腹減った」と、さっきカップ麺を食べたばかりにも関わらず、

今度はクッキーをぼりぼりと食べ始めたー。


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2027年元旦ー


哲也は困惑の表情を浮かべるー。


「ーーー…どうしたの?」

哲也に声をかける女ー。


哲也は、2026年中に大学時代の後輩だった穂乃果(ほのか)と結婚ー、

去年の元旦時代とは異なり、”妻”との同居生活を始めて居たー。


そんな哲也の元に、また幼馴染の”月美”からの年賀状が

届いたのだー。


「ーーあぁ、これー幼馴染で

 もう何年も直接会ってないし、年賀状以外のやり取りも

 ないんだけどさー…

 何年前だったかなぁ…数年前から、変な年賀状が

 毎年送られて来てさー」


そう言いながら、哲也は”月美”からの年賀状を

妻の穂乃果に渡すー。


「ーー…”憑依”してもう丸3年以上が経ちましたー?」

穂乃果は年賀状に書かれた内容を見て、首を傾げるー。


「ーー…なんか、高校時代と全然違うしー、

 いつも返事に困ってるんだー」

哲也が苦笑いしながら言うー。


もはや別人のように太ってしまった月美の写真を見つめながら

哲也は「ーなんか…あったのかな?」と少し心配そうに呟くー。


が、やはり”憑依”は本気にしていない様子でー、

「ーまぁ、返事は出しておこうかなー」と、言葉を続けたー。


結局ー

この年も哲也は、”憑依”を本気にせず、年賀状を返しただけで、

それ以上は何もすることはなかったー。


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「ーーーーー…くそっ!」


憑依してから5度目の年末ー。

月美は、不健康そうな顔色で爪をガリガリとかじっていたー。


月美を乗っ取ってから、

メイドカフェでバイトをしたり、女配信者として色気を使って

ファンを増やし、収入を増やしたりして生計を立てて来た男ー。


しかしー、昨年、激太りしたことで

メイドカフェを解雇され、配信者としての人気も大幅にダウンー、

収入減に襲われていたー。


しかも、不健康な生活を続けていたせいか、

体調も崩しがちになってしまい、

月美はイライラする日々を繰り返していたー。


「ーーはぁ~~~~…」

割引されたカップ麺を口にしながら、

月美はため息をつくと、

部屋の中のゴミを蹴り飛ばしながらスマホをいじり始めるー。


最近では、ネットで”他人を攻撃する”のが趣味になってしまった月美ー。

自分の身体を弄びー、ネットで他人を攻撃するー

そんな堕落した生活を送り続けて居たー。


そしてー、今年も月美は年賀状を書き始めるー。

まるで、何かに取り憑かれたかのように、年賀状を無心で書き、

自分の写真をプリントしたはがきをそのままポストに入れると、

月美はガリガリと爪をかじりながら、自分の部屋へと戻って行ったー。


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2028年元旦ー


「ーーー…あ~~…そういえば、去年も来てたね」

哲也の妻・穂乃果が苦笑いするー。


昨年に妊娠が判明し、もうすぐ出産を迎える穂乃果ー。


そんな穂乃果が、”月美”からの年賀状を手に、

哲也と会話を交わしているー。


”ー金がないし、もう助けてくれよ!”などと書かれた

月美の年賀状に、さすがに哲也も気味の悪さを覚えるー。


「もうー、返事しなくてもいいかー」

少しため息をつきながらそう言うと、

妻の穂乃果は「う~ん……哲也がそう思うなら、それでも

いいんじゃないかなー?」と、少し戸惑いながら言葉を口にしたー。


がー、少し間を置いてから

「でも、心配なら1回話してみたらー?幼馴染なんでしょ?」と、

穂乃果は提案するー。


「ーーいいのか?」と、逆に戸惑う哲也ー。

そんな哲也に、穂乃果は

「ーうんうん。幼馴染なら、気になることもあるでしょ?」と

優しく微笑むー。


哲也も、穂乃果も、固い絆で結ばれていて

お互いに微塵も浮気など疑っていないー。

それ故の、言葉だー。


「ーー…はは、ありがとなー。

 でも、まずはやっぱり穂乃果と、穂乃果の中の赤ちゃんが

 最優先だからなー」


と、哲也はそう言うと、”まずは落ち着いてから考えるー”と、

そう言葉を口にしたー。


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2029年元旦にも年賀状が届いたー。


”月美”はかなり体調が悪いらしく、

”この身体はやべぇな”などと書かれていたー。


無事に生まれた息子・勝馬(かつま)を抱っこしながら

妻の穂乃果も困惑した表情を浮かべるー。


がー、哲也はやはり、時間を取ることが出来ず、

月美とは会うことも、話すこともなく、1年を終えたー。


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2030年元旦ー


”年賀状”が届いたー。


だがー…

その内容は”今まで”と違っていたー


「ーーーー…」

哲也はその年賀状を見つめるー。


”ー何年も、おかしな年賀状を送ってごめんなさいー。

 信じてもらえないかもしれないけれど、

 わたしは本当に”憑依”されてましたー。

 

 けど、去年、わたしの異変に気付いて

 高校時代の先輩が助けに来てくれてー、

 今、こうして無事に解放されていますー。


 体調も何とか少しずつ回復してー、

 色々奪われてしまったけれど、今はこうして、

 ”自分の身体”を自由に動かせるー。

 そんな幸せを改めて感じていますー。


 色々迷惑をかけてごめんなさいー。

 そして、ありがとうー”


幼馴染・月美からの年賀状は、そんな内容だったー


「ーーーーー」

哲也は表情を歪めながらも、

「ーーー月美ー」と、その名を口にすると、

「ーもしも本当に”憑依”されてたならー、何もできなくてごめんなー」と、

そう呟いたー。


人は、遠くの人の異変に気付くことは、なかなか難しいー

そして、距離の遠くなってしまった人の問題に首を突っ込みー、

救い出すのは、もっともっと難しいー。


哲也の幼馴染・月美が憑依され、好き放題された5年以上の時間ー。


月美に憑依したのは、月美の近所に住んでいた中年の男ー。

彼に憑依されたあとも、月美は潜在意識の中で、

何とか助けを求めようと、必死に叫び続けて居たー。

その強い月美の執念が、月美を乗っ取った男に、

”年賀状を書く”という行動を取らせたー。


封じられているはずの月美の意識が、男に影響を与えたのだー

そして、元々多くの年賀状を毎年出していた男は、

月美の身体で、無意識のうちに月美の知り合いたちに、

”憑依”のことを知らせるような内容の年賀状を書いたー。


男は、最後まで気付かなかったものの、

それは、月美が潜在意識の中で必死に叫び続けたことによって、

男の行動に無意識のうちに影響を与えた結果によるものー。


がー、その年賀状を受け取った哲也をはじめ、

最初はみんなイタズラだと思ったし、

確認しに行った者も、”憑依された月美”が”何でもないよー”と、

誤魔化したため、それ以上追求する者はいなかったー。


しかし、2029年の元旦の年賀状を受け取り、

月美の体調の悪そうな写真を見た高校時代の先輩の男が、

月美の家に乗り込み、”憑依”のことを知りー、

男と対決ー、月美の中から男を追い出すことに成功してー、

月美は正気に戻ったのだったー。


しかしそれは、哲也の届かないところで始まりー、

届かないところで終わりを迎えたのだったー。



結局、哲也は月美のそんな異変に気付かぬまま、

年賀状を見終えるー。


この翌年以降ー、

月美からの年賀状は届かなくなり、

そのまま、哲也と月美が人生の中で大きく交わることはなかったー。

がー…それは、まだ今の哲也にとっては先の話ー。


現在ー

2030年元旦ー。

「ーーーーーーーー」

昨年の元旦まで、哲也の家に一緒にいた妻の穂乃果はもういないー。


穂乃果は、子供の勝馬を残して他に男を作り、

去年の春ごろに出て行ってしまったー。


”そんな女だとは思わなかったー!”


”これが、本当のわたしなのー♡”


それが、最後の会話ー。


今、哲也は一人、子供の勝馬を育てているー。

”勝馬だけは絶対に守る”と、そう決意しながらー。


哲也は、”何も知らない”ー

人は、案外気付かないものなのかもしれないー。

遠くだけではなく、”近く”で起きた異変にもー…。


どちらの憑依にも、直接的に気づくことができなかった哲也は

この後、息子の勝馬と共に苦しいながらも、

なんとか生活を続けていくのだったー…。


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「ーーふふふふ また遊ぼうねー?」

哲也の”元妻”となってしまった穂乃果が、

夜の街で笑みを浮かべながら男にそう言葉を口にすると、歩き出すー。


「ーククククー…

 ”前の女”よりもこの女の方が、色気があるし、声もいいしー

 むしろ、正体がバレてよかったかもなー」


哲也の妻だった頃とは別人のように派手になってしまった穂乃果ー。


”月美”から追い出された男が、

”そういや、年賀状を送ってた相手の一人に、美人な妻がいたなー”と、

思い出し、その後、穂乃果に乗り換えたのだー。


そして、男に憑依された穂乃果は豹変し、哲也と子供を捨てて

そのまま家から去ったのだったー。


「ークク、あの夫ー、”わたし”のことを酷い女だと思ってるんだろうなぁ~…

 …な~んか、そういうの興奮しちゃうー♡」

穂乃果は不気味な笑みを浮かべながらそう呟くと、

そのまま笑みを浮かべながら、ゆっくりと歩き出すー。


「ーまた”こいつ”も、劣化してきたら”捨てる”かー へへ」

穂乃果はそう呟くと、そのまま夜の闇へと消えたー。



おわり


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コメント


”年賀状だけのやり取りの相手の異変…”

そんな感じのものをテーマに考えた憑依モノでした~!☆


私はあまり年賀状の世代(?)ではないのですが、

小さい頃の担任の先生と”年賀状だけの繋がり”があるので、

そこから思いつきました~笑


2話完結で、物語の中で5年以上経過しているのは

珍しいですネ~笑


お読み下さりありがとうございました~!☆!

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