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薄れていく…

意識が遠のいていく…


「お父さん!お父さん!

 救急車呼んだからーー頑張って!!」

亜優美が必死に呼びかけてくれているー


けれどー

その声を最後にーーーーーー


竜二の意識は

途切れた。


・・・。

・・・・・・。

・・・・・・・・。


「---お父さんなんか、死んじゃえー」

暗闇ー


憑依された亜優美が、

悪い笑みを浮かべながら言う。


竜二は、地面に這いつくばっていた。


ヒールを履いた亜優美が、

竜二の手を踏みにじる。


「死ね…!死ね…!死ね!!!」

亜優美が憎悪のまなざしを竜二に向ける。


「--亜優美…俺は…」

竜二は、苦しみながら地面を見つめるー


どんなにつらくてもー

どんなに苦しくてもー


そうー

どんなことがあってもー

亜優美を救うと決意したんだー


竜二は顔を上げて、

亜優美のほうを見たー


「----!」


「--俺は、もう迷わない…

 どんなことがあっても

 亜優美を守るー

 

 俺はもう、逃げないー」


かつての罪からもー

亜優美からもー

すべてと向き合い、そして、立ち向かうー


憑依された亜優美が歪みー

世界が歪むー


そして、世界は光に包まれたー


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


電子音が聞こえる。


ここが地獄か?


白髪男の気持ちは分かる。

自分の娘が、バイト先で酷使され、

そのあげく自殺したとなれば

憎むのも当然だろう。


竜二はおごり高ぶっていた。

会社を大きくするためなら多少の犠牲は…と。

娘の亜優美や妻・栄子の為、

会社を大きくすることだけを考えてきたーーー


だがーー

間違っていたーーー。


視界が開けてきたーーー。


そこは、、、病院だった。


「----お父さん」

傍らに、亜優美の姿があった。


高校の制服に身を包み、

心優しい笑みを浮かべた

亜優美の姿がーーー。


「……良かった……」

それだけ言うと、亜優美は涙ぐんで竜二の手を握りしめた。


あれから2日間、眠っていたらしいー。


「---……亜優美、、ごめんな…

 俺のせいで辛い思いをさせて…」


俺のせいだ。

竜二はそう思ったー。


白髪男の行動も、竜二がもっと下の社員やバイトに

気を使っていれば…


だが、亜優美は首を振った


「ううん……大丈夫。

 私は大丈夫だよーー。」


亜優美はそう言うと、静かにほほ笑んだ。


「俺ーー間違ってた…。

 会社を大きくすることだけを考えてた」


竜二がそう呟くと、

亜優美が優しくうなずいた


「うん………

 そうだね…。


 でも、、私はお父さんの娘だから…

 これから一緒に、間違ったところは直して、

 傷つけた人たちに謝っていこうよ…

 私も頑張って手伝うから!」


---亜優美は優しい。

どこまでもーーー


竜二にとって、亜優美は、大切な宝だーー。


あの白髪男には

謝っても、謝りきれない…。

既に、彼の娘はこの世に居ないのだからー。


あの男と立場が逆だったらー?

あの男が会社を経営していて、

そこで亜優美がバイトをしていてー

酷使された挙句に亜優美が死んでー

目の前に憑依薬があったらー?


自分は、同じことをしたかもしれないー


…白髪男・相楽の悲しみが癒えることは永遠にないだろう。


けれど、できる限りのことはしていきたい。

それで、許されることではないけれども…


亜優美と竜二は、

久しぶりに心からの会話を楽しんだ。


亜優美はー自分が何をされていたか、

理解し、とても傷ついていたー。

けれども、それでも気丈に振る舞っていた。


亜優美はーーとても強い子だ。


「---じゃあ、おとうさん、また明日も来るからね!」

亜優美が去り際に言う


「あぁ、あんまり無理するなよ!」

竜二が言うと、

亜優美は「会いたいから来るの!」とほほ笑んで

病室から立ち去って行った。


「-----ありがとう。。戻ってきてくれてーーー」

竜二は、涙を流しながらそう、呟いた。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


病室から出た亜優美は、鏡を見ながら悲しそうな表情を浮かべるー


そしてーーー

”もう一人”の見舞い相手の病室へと向かったー


・・・・・・・・・・・・・


あの日ー。


救急車を呼び、父親の竜二の搬送についていこうとした

亜優美を白髪男・相楽は呼び止めたー


「----亜優美…

 君は、家に戻れ…」


相楽が言う。


「---!?」

亜優美が振り返ると、相楽は涙を流しながら言ったー


「すまないー…

 本当にすまない…

 早くしないと…君のお母さんが危ないんだ…」


相楽の言葉に、

亜優美は驚くー。


白髪男・相楽の友人で憑依薬を提供した男・栗原が、

亜優美の家に向かい、亜優美の母親を

滅茶苦茶にしようとしているー


と。


亜優美の父・竜二を徹底的に追い詰めるためにー

相楽が栗原にそう頼んだのだと…


「お母さん!」

亜優美は部屋を飛び出した。


「----」

白髪男・相楽は、

今はもういない、自分の娘・香奈の写真を

握りしめると、その場で涙をこぼしたー


・・・・・・・・・・・・


亜優美が家に駆け付けた時にはー

亜優美の親友である2人の女子生徒…

美月と由恵がそこにはいたー


美月が叫ぶ。

「由恵…お前は黙ってみてろ」


とー。


美月は、ニット帽の男・栗原に憑依されたまま

亜優美の母親を滅茶苦茶にしようとここにやってきたー


「--お父さん…もうやめて…!」

その栗原の娘である由恵が叫ぶー。


最初は、これでいいと思ったー

自分を見下している亜優美が滅茶苦茶にされれば

それでいいと思った。

だから、由恵は父親たちが企てている計画を

黙認し、亜優美が壊れるのを待っていたー


けどー

実際に、憑依された亜優美を目の当たりにしてー

抜け殻のように、自分に従う亜優美を目の当たりにしてー

由恵は、”失ったもの”の大切さに気が付いたー


いつの間にかー

亜優美も、美月も由恵のそばからいなくなってしまったー


憑依されて変えられてしまった亜優美は、ただの抜け殻ー

父に憑依された美月は、別人ー


大事なものを、失ってしまったー


「……美月!由恵!」

その会話を聞いていた亜優美が駆けつける。


「お母さん!」

亜優美は母親の無事を確認すると、

美月のほうを見た


美月はー

憑依されているー

自分と同じようにー。


「---…亜優美?元に戻ったの?」

由恵が尋ねるー。

亜優美は頷いた。


そんな亜優美に由恵は「ごめん…」と呟く。


「変なことに巻き込んで、本当にごめん…」

由恵はそう言うと、

美月のほうに向かって叫んだ。


「お父さん!もう、やめよう…。

 美月を解放して!

 ぜんぶ、ぜんぶ終わりにしよう」


由恵の言葉に

美月は舌打ちする。


「--ど、どうして、俺を裏切るのか!?

 由恵!

 お前は、そこの亜優美がいなくなればいい!って、

 言ってただろうが!」


美月が声を荒げる。

その表情には焦りが浮かんでいるー


「---うん…でも、、

 やっぱり…

 やっぱり、人を乗っ取って好き放題したり

 壊したりするのは間違ってるって…

 そう、気づいたの」


由恵はそう呟くと、

美月のほうを見る。


「---わたしと一緒に…

 償おう…お父さん…」

由恵が言うー


憑依薬で起こした事件のことを

ちゃんと償おうー

由恵は、そう思った。


”憑依薬”なんて信じてもらえるかはわからないー

警察にも相手にされないかもしれない


それでも、もう、これ以上

誰かを巻き込むのは終わりにしようー。


由恵は、そう思った。


「------はは、、、はははははは…」

美月が笑うー


実の娘の由恵ー

亜優美ー

そして亜優美の母・栄子ー


もう、逃げられないー


美月は「そうかそうか…」と呟く。


「----お前なんかもう娘じゃない!」

美月は大声で叫ぶと、

狂ったように自分の胸をもみ始めた。


「俺はなぁ…!ずっとずっと女の身体が欲しかったんだよ!

 憑依薬の研究を始めたのもそのためだ!

 ひひ…やっと手に入れたんだ…

 美月ちゃんは俺のものだ…!

 俺が、美月だ…!くひひ…」


顔を撫でまわす美月。


「も、もうやめてお父さん!」

「美月を返して!」

由恵と美月が叫ぶー


追い詰められた美月は本性を現して

叫ぶー。


「美月は俺のものだ!誰にも渡さねぇ!」

美月は髪を振り乱しながら、亜優美たちに

突進すると、そのまま玄関から逃走したー


「待って!」

由恵が、美月を追いかけて亜優美の家から飛び出す。


「お母さん!大丈夫?」

亜優美は放心状態の母・栄子の無事を確認すると

由恵と美月の後を追ったー



「--この身体は誰にも渡さない…

 誰にも…!」


美月がはぁはぁと言いながら走るー。

それを追う由恵ー。


そしてー


赤信号を無視した美月の横からー

乗用車が突っ込んできたー


「---!!!」

驚く美月ー


「---お父さん!美月!」

由恵は、

憑依している父と、憑依されている美月の名前を呼ぶとー

美月を突き飛ばしてー

そのまま自分がーーー


「------!!!!」


亜優美が駆けつけた時にはー

車に轢かれて血を流す由恵とー

放心状態で近くに座り込む美月の姿があったー


・・・・・・・・・・・・・


「由恵ー…」

あれから2日ー


由恵は助かった。

けれどー意識が戻らない。


亜優美は悲しそうに、由恵の手を握るー。


あのあと、

美月に憑依していたニット帽の男・栗原は

「ふざけやがって!」と叫びながら、

美月の身体から抜け出したー


今も行方は分かっていないー。


「---また、一緒にお話ししようね…」


いつかー

いつかきっと、戻ってきてくれるー


そう信じて、

亜優美は由恵の手を静かに握りしめたー。


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後日ー


「…おはよう…」

登校した亜優美に、親友の美月が言う。


「うん。。

 色々あったけど…

 ごめんね、美月にも迷惑かけたよね…」


亜優美が申し訳なさそうに言うと、

美月も「ううん、親友でしょ」と笑った。


亜優美も微笑み、

ありがと、美月! と笑うー。


「また…、

 また3人で、遊べる日が来るといいね」

美月が悲しそうにほほ笑むー。


亜優美は「うん」と静かに答えたー。


「あーーー、

 私、先生に提出物出しに行かなきゃ!」


亜優美はそう言って、慌てた様子で

提出書類を持って、教室から飛び出すー


白髪男・相楽は自首して逮捕されたー。

亜優美の母・栄子は、父・竜二と再び和解したー


いろいろあったけれどー

また、穏やかな日常が戻ってきたー


・・・・・・・・。


1週間後ー


父・竜二は退院した。


「ただいまー」


「おかえりー」


父・竜二と、

娘・亜優美は、

ようやく、本当の再会を果たしたのかもしれないー


プレゼントに送ったワインを手に、

「わたしは飲めないけど、回帰お祝い!」と

亜優美はやさしく微笑んだー。


・・・・


・・・・・・


・・・・・・・・・・


病院ー


眠ったままの由恵がーーー


「---------!!!!」


目をカッと開いたー。


そしてーー

由恵は、少しだけほほ笑んだー。



おわり


・・・・・・・・・・・・・


コメント


ムスメの身代金リメイクが

ようやく完結になりました~!

ここまでお読みくださりありがとうございました~!


普段はなかなか過去作品のリメイクとか

する機会がないのですが

PixivFANBOXを作って更新する回数が全体で増えたので

今回、リメイクに挑戦してみました!


もともとの作品を書いたのが数年前なので

いろいろと忘れている部分もありましたし

「この設定は無理がありすぎじゃ…?」

(そもそも憑依自体が無理ありすぎかもですケド…笑)な

ところもあったりして

色々組み替えたりする作業を楽しみながら

書くことができました!


原作とはまた違う最後になりましたが、

少しでもお楽しみいただけていればうれしいデス!

ここまでお読み下さり、ありがとうございました!!


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