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元の世界に戻るため、憑依能力を持つ”ラスボス”

魔王ミーデンに立ち向かう林吾。


しかし、魔王ミーデンの力は、想像以上に圧倒的で

決戦の最中に回復魔法使いの神官・ノルンが憑依されてしまったことで

一気に戦術が崩壊、仲間たちは全滅して、

林吾一人だけが、命からがら生き延びたー…


元の世界に戻るためには魔王ミーデンを倒さなければならないー。

果たして、彼の運命はー…?


★前回はこちら↓★

<憑依>俺が作ったラスボスが強すぎて倒せない③~決戦~

趣味で作っていたゲームの世界に入り込んでしまった林吾ー。 元の世界に戻るためには、自作ゲームをクリアしなければならないー。 しかし、よりによって、”自分で作ったラスボス”である魔王ミーデンは、 憑依能力を持つ最強の魔王ー。 林吾が”ラスボスは強ければ強いほどいい”と、強くしすぎて しまっていて、倒すのも困...

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


現実世界ー


「ーーなに?テスト用のプログラムを間違えて

 関係ないアドレスに送ったー?」


上司らしき男が、うんざりした様子で呟くー。


「申し訳ございませんー。

 確認したつもりだったのですがー…

 本当に、申し訳ございませんー」


怒られている社員が必死に謝り続けるー。


「ー全くー…

 極秘に開発している”バーチャルリアリティプログラム”の

 情報が外部に漏れたら、うちは潰れるかもしれないんだぞ!?」


上司らしき男がそう叫ぶと、

部下の男はもう一度、「本当に申し訳ありませんー」と叫ぶー。


この会社は「VR」を超える、ゲームの新技術を開発している会社ー。

ちょうど今から半月ほど前に

”ゲームの世界に入り込むことが出来るプログラムの試作品”を

完成させ、テストしている最中だったー。


が、担当者が”テスト用のプログラム”を資料として、

上司にメール送信する際に

間違えてアドレスの部分にアルファベットをいくつか入力してしまいー、

そのままメールを送ってしまったー



それがーー


”先日、お送りした資料の補足ですー。

 確認の上、ご対応お願いします”


林吾の元に送られてきたメールの正体ー。


林吾は”ウイルスメール”だと誤解していたが、

実際にはウイルスメールではなく、

”開発中のゲームに入り込むプログラムが、間違えて送信されてきたもの”

だったー。


パソコンに表示された奇妙な画面は、読み込み中の画面で、

林吾が見た”ゲームをクリアすれば、元の世界に帰れる”という表示も

いくつか存在する”元の世界に戻る方法”のうちの一つを、見ただけだー。


実際には、他にも”特定のキーワードをゲームの中で口にする”ことで

元に世界に戻れるようになっているが、

慌てていた林吾は、そっちの表示の方は目に入っておらず、

結果的にーーー


”ゲームをクリアする”ことでしか、ゲームの世界から

現実世界に戻れない、そんな状況になってしまっていたー。


「ーーそれで、誰に送ったんだ?」

上司が呆れ顔で言うと、部下の男は頭を下げたー


「それがー…送信済みトレイからメールを消してしまって…」

部下が苦笑いしながら言うと、

「君は本当にどうしようもないやつだな!」と、うんざりした様子で

言葉を口にしたー


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


そんなことも知らず、林吾は”ゲームの世界の中”で、

再び、元の世界に戻るための方法を考えていたー。


”くそっ…あの装備でも勝てないなんてー…

 今からまた魔王ミーデンを倒すための仲間を集めるかー?”


林吾はそんなことを考えながらも

”いやー”と、言葉を口にするー。


ゲーム中で仲間にできるキャラの種類はそれなりに用意はしたー。

だが、無限に仲間にできるキャラがいるタイプのゲームではなく、

先の戦いで全滅した仲間たちは

”仲間にできるキャラたちの中でも強いキャラたち”を集めたものだったー。


そのため、今から仲間を新たに集めてもー

”先ほど全滅した仲間たち”よりも、その総戦力は劣るー。

しかも、これから仲間を集めようとしても

”魔王の憑依タイム”は止まらないー


「くそっ…」

林吾が困惑した表情で森の中を歩いていると、

少し離れた場所から声が聞こえたー


「やつはこのあたりにいるぞ!探せ!」

さっきまで仲間だった女神官・ノルンの声だー。


大人しかった喋り方は別人のように荒々しくなりー、

邪悪な笑みを浮かべているー

あれが、魔王ミーデンに憑依された人間の末路ー


「ーーー…ククククー…

 勇者よー…そこにいるのだろう?」


ノルンが笑みを浮かべながら、森の中を歩くー。


林吾は見つからないように、必死に身を隠して

魔王城付近の森を抜けるー。


「はぁっ…はぁっ…はぁっ…

 死んだらーそれでおわり…」

林吾は冷や汗をかくー。


人生の中で”死”を覚悟したのは、初めてかもしれないー。

それも、こんなに鮮明にー。


そんな風に思いながら、林吾は

”自分のゲームの中で死ぬなんて冗談じゃねぇぞ”と、

ゆっくり歩きだすー。


「ーーーあ、あの…すみませんー」

ふと、声を掛けられた林吾は振り返るー。


そこには、”迷子の娘を探している”と、困り果てた様子の

若い母親が立っていたー。


”このイベントは”母娘の悲劇”ー。

 関わるべきじゃないー”

林吾はそう思いながら「すみません。急いでいるので」と、

その母親を無視して、逃げるように走り出すー。


このイベントの依頼人である”母親”は、既に魔王ミーデンに

憑依されていて、”一般人のフリをして勇者に近付いてくる”キャラだー。


娘を探してほしい、と言葉巧みに”死者の墓場”と呼ばれる場所に誘導されて、

そこで、豹変した母親、そして魔物に襲われるイベントだー。


そんなイベントに関わっている時間はないー。



「ーーわしか?わしは戦いはできないが、避けることはできるぞ」


街中で出会った老人に声をかけた林吾はそう言われたー。


「いいから、力を貸してくれー」

林吾はそう言って、その老人を仲間にするー。


が、その老人は”回避能力だけが高い”

お世辞にもあまり使えないキャラクターだ。


「ーー早く、仲間を集めないとー」

林吾は、焦りの表情を見せながらも、各地を巡り、

仲間を集めていくー。


幸いにも、”そこそこ強い”魔法使いのミーアを仲間にすることが

できた林吾は、安堵するー。

この調子で、また仲間を集めればー…


「ーーー!」

そう思っていた林吾の”希望”は打ち砕かれたー。


移動中に、突然笑みを浮かべたミーアが、

回避能力だけが高い老人と、その後に仲間にした攻撃力しか取り柄がない山賊を

魔法で抹殺していくー


「ーーえ… ま、まさかー」

林吾が青ざめながら言うと、

「ーぐふふふふふ 勇者よー この女の身体は貰ったぞ!」

と、憑依されたミーアが嬉しそうに笑うー


「く、くそぉおおおおおお!!!!」

一番強い仲間だったミーアが憑依されたことで、再び仲間が全滅した

林吾は、必死に逃げたー


必死に、必死にーーー


「ーーーーーーーー」

そして、ついには”姥捨村”と名のついた村にたどり着き、

そこで体育座りをして、絶望していた林吾ー。


「ーー…もう、ダメだーおしまいだ」

ボソボソと呟く林吾は、すっかり、魔王ミーデンに立ち向かう

気力を失っていたー


「ーーーーーーーーーーーー」

「ーーーーーーーーー」


「ーーーーーーーーーーーーーー」


気力も失い、呆然と”姥捨村”で暮らす老人たちを見つめる林吾ー。


「おや、あんたどうしたんだいー?」

姥捨村のおばあさんに声を掛けられた林吾ー。


だがー、

林吾はフッ、と笑ったー。


「お前らは、自分がプログラミングされた存在だとは知らないんだろうな」


そんな言葉に、おばあさんは”意味不明”という様子で首を傾げるー。


「ー分からないか?お前らはゲームキャラってことだよ。

 それも、村のNPCその1とその2だ」


林吾は、ゲームキャラに向かってそう言い放つとー、

自虐的に笑うー。


がー、その数秒後ー

”あること”を思い出して、突然叫び声を上げながら立ち上がったー


「ーーーな、なんじゃ!?」

姥捨村のおじいさんが驚いた様子で叫ぶー。


すると、林吾は嬉しそうに叫んだー


「魔王ミーデンを倒す方法ー

 あるじゃねぇか!」


とー。


林吾はそう叫ぶと、早速走り出すー。


そうだー

”テストプレイ用”に、味方キャラのレベルを全員LV99に上げて、

能力値も最強にする、そんな場所を作っておいたー。


そのことを、林吾は思い出したー。


テストプレイのために、”主人公を無敵にしたりする”場所やコマンドを

開発者が用意しておくことは、よくあることー。

林吾も、テストプレイ用にそんな場所を用意しておいたのだー。


場所は姥捨村近くの墓場ー。

とある墓場を調べることでーーー


「ーうおおおおおおおおおおおおおおおおっ!!!」

林吾はレベル99に上がったことを確認すると、

そのまま魔王ミーデンの城に向かって走り出したー。


レベルだけではないー。

攻撃力も、防御力も全て999ーー

”MAX”だー。


林吾は笑いながら武器を捨てて、

そのままダッシュするー


「ーーーむ?貴様は勇者ー 懲りずにまた来たのかー!」

魔王ミーデンに憑依されている女神官ノルンが、魔王城の近くで

林吾を発見して、笑みを浮かべるー。


がー、林吾はノルンを完全無視ー。

そのまま突進していくー


「ー死に急ぐか!」

ノルンはそう叫ぶと、回復魔法を応用した闇の魔法を放つー


しかしーーー


”no damage”


「ー!?」

ノルンが驚いて目を見開くー。


林吾はそのままノルンを無視してノルンにタックルーーー


”9999ーーー”

ノルンに上限値のダメージを与えると、ノルンは一瞬にして砕け散ったー。


そしてーー


「ーークククー 勇者よー またー」

魔王ミーデンの元にたどり着いた林吾はー、

魔王ミーデンの顔面を思いっきり殴りつけたー。


”9999ーーー”


「ーーがっ…!?」

魔王ミーデンとの戦いー

つまり”ラスボス戦”は一瞬にして終わったー。


どんな、チートな能力を持っていようと、

ゲームのキャラは”創造主”には勝てないのだー。


「ぐおおおおおおおっ!」

魔王ミーデンが砕け散るーー


王国に、平和が取り戻されるー。


「ーー…やった!やったぞ!」

林吾が、そう叫ぶと”エンディング”が始まったー。


だがーー

エンディングが始まってすぐに、林吾は表情を歪めたー


”このゲームのエンディング”はー

”魔王を倒した主人公”が、魔王の呪いによって

衰弱して死んでしまうという恐ろしくバッドなエンディングー。


林吾は、”いずれ”ハッピーエンドルートも作ろうと思っていたもののー

今はまだ、そのエンディングは作っていないー


「ーーー……ま、待てよー…? お、おいー…まさかー」

林吾がハッとしてそう叫ぶー。


”エンディングが終わったら”ー

現実世界に戻れるー

もし、そうなのだとしたらーー


「ーーお、おいっ!待て!待て!エンディングはタイム!!おいっ!」

林吾はそう叫ぶー。


がー、エンディングは勝手に流れ続けて、

やがて、林吾は自分の身体が急激に”重くなる”のを感じたー。


魔王ミーデンを倒した主人公が、魔王が残した”呪い”によって、

その身体を蝕まれていくー。

つまりー…主人公としてこの世界に入り込んだ林吾の身体が、

蝕まれていくー


「ーーぐっ… ぐ… ぐぐぐぐぐぐ…」

林吾は苦しそうにしながらも、何とか歩こうとするー。


がー…

その場で倒れ込んでしまい、林吾は意識を失ったー。


気付いた時にはー、

林吾は、とある村の民家の中に寝かされていたー。


”勇者さまー”

”勇者さまー”

”勇者さまのおかげで、魔王はいなくなりましたー”

”勇者さま、ありがとうー”


そんな言葉を村人たちから掛けられるー。


「ぐ…ぐ……お前らみたいなNPCにお礼を言われても、嬉しくねぇ…!」

そう叫びながら、林吾はよろよろと歩き出すー。


しかしー、このゲームの「THE END」は、

勇者が息絶えたところで、表示されるー。

林吾が死ななければ、エンディングは終わらないー。


「ーふ、ふざけんなー…

 く、くそっ…とんだクソゲーだぜ…」


林吾は、森の道の中にへなへなと座り込むと、

ぼそりとそう呟いたー。


「ーーーあぁ…くそっ…」

林吾は、身体の調子がさらに悪くなることを感じながら、空を見上げたー。


「ーこんなことなら…ハッピーエンド、作っておけばよかったー」

そう呟くと、林吾は自虐的な笑みを浮かべながらー

空に何か文字が表示されたのに気づくー


”THE END”


そんな文字が近付いてくるー。


”ーーーあぁ、おわったー”

エンディングが終わったー。


”勇者の死”で終わる、エンディングが終わったー。


林吾は、そう思いながらその場で静かに目を閉じたー。


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


現実世界ー。


それからしばらくして、

”バーチャルリアリティプログラム”を開発していた会社が、

”メールを誤送付した相手”をようやく突き止め、

警察同伴のもと、林吾の家に踏み込んだもののー、

そこには”抜け殻”になった林吾の姿があったー。


「ーーーーーーーーーーーーーーー」

現実世界に残された”林吾”の身体は生きているー。


だがー、

ゲームの世界で”死”を迎えてしまったからだろうかー。


林吾の身体は生きていてもー、

林吾が意識を取り戻す様子はなかったー。



おわり


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


コメント


最終回でした~!☆

バッドエンドしか用意されていない世界に

自分が入っちゃう…★


私もよくバッドエンドを書くので、ぶるぶるデス~笑

(でも私はハッピーエンドも書くのできっと、セーフデス…)


お読み下さりありがとうございました~!

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