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趣味で作っていた大作RPGゲームの中に、

ある日迷い込んでしまった林吾ー。


現実世界に戻るための条件は”ゲームをクリアしてエンディングを見ること”


しかしー、彼は”どうせ趣味で作っているゲームだから”と、

ゲームのラスボスを”倒すことが不可能なレベル”に

強く設定してしまっていたー。


憑依能力を持つ”強すぎるラスボス”を倒すことはできるのかー。


★前回はこちら↓★

<憑依>俺が作ったラスボスが強すぎて倒せない①~衝撃~

「ーーーーーー」 仕事を黙々と進める30代のサラリーマン。 「ーーーーーーーーー」 非常に優秀な仕事ぶりで、上司からの信頼も厚い 彼ー、津田 林吾(つだ りんご)は、今日も仕事を素早く片付けーー そしてーー 「お疲れ様でしたー」 定時ちょうどに頭を下げると、そのままオフィスを出たー。 彼は、絶対に残業をし...

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


「ーーあなたはもしかして、勇者さまー…!」


街で”カオリ”を仲間にするサブイベントをこなした林吾は、

”カオリ”にそんな言葉を掛けられていたー。


”カオリ”とは、実在する林吾の幼馴染を”模して”作ったキャラクターだ。

見た目や声は、本物の”香織”そっくりー。


そんな”カオリ”から、勇者さまと呼ばれて、

林吾はニヤニヤと笑みを浮かべるー。


「ーどうかー。どうか、わたしを仲間にしてください!」

カオリのそんな言葉に、

林吾は「えへへへー えへへへへへへへー もちろん」と、

下心丸出しで、カオリを仲間に引き入れると、

早速”防具屋”に向かったー。


”カオリ”の初期装備は、”町娘の一般服”という装備ー。

これと言った特徴もない、普通の装備だー。


それをーー


「ぐへへへへー」

防具屋で”かわいいメイド服”という装備を見つめる林吾ー


これを、着せれば”香織”のメイド服姿を見てると、

同じようなものー…


そんなことを思っていると、

「ーお代が足りないようだね」と、防具屋の店主に言われてしまったー。


「ーーーあ?」

林吾が、そう言いながら”所持金”を確認すると、確かに足りないー


「あぁ、クソッ!メイド服、高く設定しすぎた!

 これ、稼ぐにはかなりの量のイベントをこなさないとダメだぞ!」

林吾はそう叫びながら悔しそうにしていると、

背後にいた”カオリ”は不思議そうに首を傾げたー。



ひとまずー、

林吾は、カオリと共に街で一晩を過ごしたー。

次の日もーーーそして、次の日もー…


「あぁぁ~~~カオリちゃんと友好度上げるのが楽しくて

 やめられねぇ~~!」


林吾は、”ゲームをクリアして、元の世界に戻る”という目的も

忘れはじめー、ゲーム序盤の街にずっと居座りー…

カオリとの”友好度”を上げる日々を繰り返していたー


”このままいけば、結婚イベントー!”

グッ、と心の中でガッツポーズする林吾ー。


だがーー浮かれた林吾は、大事なことを忘れていたー。


それは、憑依能力を持つ魔王ミーデンによる

”魔王の憑依タイム”ーーー


ゲーム内の3日に1回、発生するイベントで、

”主人公以外の仲間のうち、ランダムで一人が魔王に憑依されてしまう”

という、そんな恐ろしいイベントだー。


幼馴染と瓜二つの”カオリ”との時間を過ごしー、

すっかりのぼせていた林吾は、そのことを失念していたー。


「ーーあっ……!」

ビクッと震えると、目を一瞬、赤く輝かせたカオリは、

邪悪な笑みを林吾に向けたー。


「ーー…あっ…や、やべっ…!

 ま、”魔王の憑依タイム”ーー!」

ようやく、そのことを思い出した林吾がそう叫ぶと、

カオリは「クククー…よくぞ分かったなー」と、

”カオリの声”で、魔王の言葉を発したー。


「ーーく…く、くそっ!か、か、カオリから出ていけ!」

そう叫ぶ林吾ー。


だが、”憑依された仲間は絶対に助からない”ことを、

林吾は知っているー。

それもそのはず、林吾はゲームの開発者なのだからー。


憑依されたカオリを倒せば、カオリは死ぬー。

憑依されたカオリから逃げれば、カオリは魔王軍の一員として

後にどこかのボスとして出現するー。


”魔王ミーデン”の憑依は、”自分の魂を分裂させることで”

多数の人間に同時に憑依することも可能で、

女王・アレシアに憑依した状態のまま、他の人間に

憑依することもできるのだー


「ーーくくくくー いい女だな?」

カオリがニヤッと笑いながら挑発的に胸を揉むー。


まるで、現実世界の幼馴染・香織が目の前で憑依されたかのような光景に、

「えへ…た、確かにー」と、思わず返事をしてしまう林吾ー。


「ーーーふんー…仲間が目の前で憑依されて、

 現実逃避を始めたかー」


憑依されたカオリは、林吾の言葉をそんな風にあざ笑うと、

目を再び赤く輝かせながら、

”魔王の魔力”で、紫色の弾丸のようなものを放ち始めたー。


本来、魔法が使えないカオリの身体でも、

憑依している魔王ミーデンの力で、強引に魔法を使わされている状態ー


「くっ、くそっ! や、やべぇ!」

林吾はそう叫ぶと、慌てて逃げようとするー。


「ーーククー逃げるのか勇者よ!」

カオリのそんな言葉に、林吾は振り返るー。

”同じ声”なのに、別人のように聞こえるー。

憑依とは、やはり恐ろしいものだー。


「クククー。逃げるのあれば、

 この街の人間は皆殺しだー。

 お前の大事な”この女”の身体で、なー」

カオリがニヤッと笑いながらペロリと唇を舐めるー。


その様子に、ゾクッとしながらも、

「ーーう、うるさい!俺はただのサラリーマンだ!」

林吾はそう叫ぶと、猛ダッシュして逃げ始めるー。


そうー

まだ、戦うための防具や武器を揃えていないー。

もしも、ゲームの中で”死んだら”どうなるか分かったもんじゃない。


ここは”逃げる”以外の選択肢は存在していなかったー。


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


「はぁ…はぁ…」

なんとか逃亡した林吾は、

”とにかく、このゲームをクリアするために真剣にやらないとー”

と、改めてゲームクリアに対する決意を固めるー。


”自分の装備を整えること”

”魔王の憑依タイムに対抗するため、とにかく仲間を増やすこと”


その2点に絞って、林吾はすぐに行動を開始したー。

こんなところで、死ぬわけには行かないー。


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「ーー勇者も、あの程度かー」

憑依されたカオリが、闇の鎧に身をまとった状態で

姿を現すと、

ゲーム中の舞台となっている王国の女王・アレシアは笑うー。


アレシアは”ゲームのプロローグ”の時点で憑依されている女王で、

アレシアが憑依されているために、王国は魔王のやりたい放題に

なってしまっているのだー。


”ラスボス戦”では、この”憑依されたアレシア”が第1形態として

立ちはだかり、

憑依されたアレシアを倒すと、第2形態…”魔王ミーデン”戦へと

進んでいくー。


が、ラスボスは強い方がかっこいいぞー!と、林吾が

叫びながらパラメーターを最強クラスにしてしまったため、

正直、勝てる気がしないー。


「ーーククク…まぁ良いではないかー」

アレシアは、笑みを浮かべながら立ち上がると、

「ーどんどん、身体は増えるのだからー」と、

カオリを見つめると、そのままカオリにキスをしたー


憑依されたアレシアと憑依されたカオリのキスー。

その光景は、何とも不気味で、妖艶な光景だったー。


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サブイベント

”武器屋のおっさん”をクリアした!


そんな表示を見つめながら、

剣と鎧を入手した林吾が笑みを浮かべるー。


あれから3日ー。

林吾の周りには仲間が8人ー、

そして、林吾自身もそれなりに強そうな剣を手にしていたー。


しかし、それでも魔王ミーデンを倒すためには、

まだまだ力が足りない。

ゲーム自体は”自由度”が高く、今からでも魔王ミーデンの城に

突入することはできる。

がー、各地にいる魔王軍の幹部を倒せば倒すほど

”魔王を倒すために有利なアイテム”を入手することができる

仕組みになっていて、それをまずは入手したいー。


”焦って死んだら、それで終わりかも知れないからなー”

林吾がそんな言葉を口にしていると、

背後に立っていた女戦士・アマンダが突然襲い掛かって来たー。


「ーぐふふふふふふふ…」

笑みを浮かべるアマンダー。


「ーアマンダ!?」

林吾の仲間たちが戸惑いの声を上げるー。


「ーくっ…魔王の憑依かー」

林吾はそう言いながらも、すぐに振り返ってアマンダを蹴り飛ばすー。


”憑依されたのが、リミアじゃなくてよかったー”

心の中でそんなことを思うー。


”リミア”とは、回復魔法を使う巫女ー。

このゲームにおいて、回復魔法は非常に重要な存在で

今現在、林吾の仲間で回復をメインに使うキャラはリミアしかいないー。


そのため、そのリミアが憑依されてしまうと”不利”なのだー。


「ーーーーぐ…くくく 貴様、分かっているのかー?

 反撃をすれば、傷つくのはこの女だー」

アマンダが笑みを浮かべながら言うー。


「ーーあぁ、分かっているさ」

林吾は淡々とそう言い返すー。


「ーーくくくくくく この前、町娘に憑依した時とは

 随分違う反応だなー。勇者よ」

アマンダはそう言い放つとそのまま武器を手に、

林吾に向かっていくー。


”装備は整った”ー

それに、この数日で”レベル”も上げたー。


「今度は、逃げないー!」

林吾はそう言い放ちながら、アマンダを攻撃するー。


悲鳴を上げて倒れ込むアマンダ。

林吾の仲間たちの一部が「そ、そんなー…仲間なのに!」と、

困惑の表情を浮かべるー。


だがー、林吾は”魔王に憑依された人間は助からない”と、

冷静に仲間たちに説明しー

そのままアマンダの方に向かっていくー


「た、助けてー…あ、あたし、あたしよ!林吾!」

”正気を取り戻した”アマンダがそう叫ぶー


しかしー、林吾は静かに首を横に振ると、

うすら笑みを浮かべながら、言葉を続けたー。


「ーー”そういうセリフ”で油断を誘うー」

小声でそう呟く林吾ー。


「ーー!?!?くっ…何故わかったー?」

アマンダが表情を歪めるー。


「ーー当たり前だろー?

 俺が”作った”んだからー このゲームは」

林吾はそう囁くと、驚くアマンダにトドメを刺したー


”憑依された仲間”にトドメを刺すのは心が痛むー。

しかしー…、”魔王の憑依”に抗うことができないのは、

自分がよく分かっているー。

自分自身が作ったゲームなのだから、

”奇跡”など起きないことは知っているー。


それにー…


アマンダの遺体に近付き、悲しみに暮れている他の仲間たちを

見つめながら林吾は思うー。


”ー所詮、コイツらはゲームキャラだー。

 プログラムの塊でしかないー”

林吾は心の中でそう割り切ると、

”必ずゲームをクリアして、元の世界に戻ってやる”と、

心の中で改めて決意したー


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


5つの地方それぞれを占領している”魔王”の配下たちー。


それを、一人一人撃破し、

魔王ミーデンを倒すためのアイテムを入手していくー。


1か所目の魔王軍の拠点を陥落させー、

2か所目の魔王軍の拠点も難なく陥落させたー。


しかし、3か所目ー…。


「ークククク…また会ったなー勇者よー」

すっかり悪女の装いになった”カオリ”と再会する林吾ー。


林吾の仲間は”3日ごとに”一人、魔王ミーガンに憑依され、

これまでに既に5人が死亡したー。

しかし、サブイベントをこなし、仲間を増やしつつここまでやってきたー。


がー、ここに来て”憑依されたカオリ”が姿を現したー


「ふふふふーさぁ、どうしたの勇者さまー?

 わたしを斬らないと、ここは攻略できないー」

煽るようにして、”カオリ”の口調でそう言い放つ魔王ミーガン。


「ーーーぐぬぬ…」

林吾は表情を歪めるー。


これまで倒して来た”憑依された仲間”は、愛着のあるキャラも

いたものの、林吾にとっては”所詮ゲームのキャラ”でしかないー。


もちろん”カオリ”もゲームのキャラだー。

が、その容姿・声など、あらゆる部分を現実世界の幼馴染・香織と

瓜二つの状態にしてしまったため、

まるで”香織”が魔王に憑依されて、目の前にいるような、

そんな錯覚に陥ってしまうー。


「ーゆ、勇者様!?どうしたのですかー?」

仲間の一人、巫女・リミアが叫ぶー。


しかし、林吾は攻撃できず、カオリに容赦なく蹴り飛ばされるー


「クククー…まさか貴様、この女が好きなのか?」

カオリの刺々しいハイヒールに踏まれながら、林吾は悲鳴を上げるー


「ーーーククーーなら、わたしがその命、消し去ってあげるー」

カオリが、邪悪な笑みを浮かべながら、

ハイヒールに魔力を込めて、そのまま林吾の顔面を踏みつぶして

粉砕しようとするー。


”ーー…こいつは香織じゃないーこいつは香織じゃないー”

自分の心に言い聞かせる林吾ー。


そして、反撃をしようとしたその時だったー


「うおおおおおおお!」

仲間の一人、サブイベント”孤高の重戦士”で仲間にしたキャラ、

ディムが背後から、憑依されたカオリを攻撃するー。


バランスを崩したカオリに隙が生じたのを見て、

林吾は落としていた剣を握ると、そのままカオリを突き刺したー


「ーーがっ…… …い、痛いー…痛いよ勇者さまー」

カオリが目から涙をこぼすー。


「ーそういう演技は俺には通用しないー。

 だってー、魔王ミーガンはそういう奴だと、俺はよく知ってるからー」

林吾がそう言うと、カオリはニヤッと笑いながら、

「ーー貴様は”次”、必ず殺すー」と、そのままその場に倒れ込んだー。


これで、3つの拠点を攻略したー。

5つの拠点を攻略することで、魔王撃退のためのアイテムが揃い、

最終決戦が有利になるー。


が、それでもー…


”あぁ、くそっ…魔王ミーデンの能力、強くしすぎたなー…

 ホントに勝てるのか、俺ー…”


林吾はそんな風に思いながら、

”とんだクソゲーだぜ”と、自分の作っているゲームに対し

毒づきながら、静かに歩き始めたー


③へ続く


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コメント


自分で作ったゲームで苦しむ林吾…☆!

ちゃんと魔王を倒すことはできるのかどうか、

ちゃんと元の世界に戻ることはできるのかどうか、

それは、この先のお楽しみデス~!


今日もありがとうございました~!

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