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「ーーーえ…?また?」

彼女の梅村 涼香(うめむら りょうか)が、

驚き半分、呆れ半分、という表情でそんな言葉を口にしたー


「ー頼む!あと1回…!あと1回だけ!」

そんな彼女の反応に、彼氏の内山 修吾(うちやま しゅうご)は、

必死に頼み込むようなポーズをしながら、そう呟くー。


「え~~~~…でも、この前、”最後”って言ってなかったっけ?」

涼香は、戸惑いながらそんな言葉を口にするー。


涼香は、とてもおしゃれな感じな子だがー、

それを気取るような気配もなく、誰に対しても優しいー、

そんな感じの子だー。

見た目は若干派手だが、中身は穏やかー

そう、表現すれば良いだろうかー。


そんな彼女に対して、彼氏の修吾が今、必死にお願いしていたのはー


「ーーー頼む!あと1回だけ”涼香”を着たいんだー!」

修吾はそんな言葉を口にするー。


何も事情を知らない人間が聞いたら、

”何をお願いしているのか”も、分からないような、そんな不思議な言葉ー。


「ーーう~んーー…あの”皮にされるときの感触”が

 正直、苦手なんだよね…」


涼香がそう言葉を口にするー。


そうー

修吾は、彼女の涼香に対して”とんでもないこと”をお願いしていた。


それはー

”涼香を皮にして、着たい”というお願いだー。


”人を皮にする力”

修吾は、そんな力を持っているー。

きっかけは、ネットで買った”得体の知れない”ドリンクー。

”これを飲むことで”人を皮にする力が手に入る、と

そう説明されていて、

修吾は興味本位でそれを購入したのだー。


もちろん、毒入りのドリンクである可能性もあったー。

だが、昔から”警戒心”よりも”好奇心”が勝ってしまうタイプの

修吾は、後先考えずにそれを飲んだ結果ー、

本当に”人を皮にする力”を手に入れてしまったのだー。


がー、修吾は”常識”も兼ね備える人間だ。

そういう力を手に入れた途端、身の回りの人間を勝手に”皮”にして

支配する…と、いうような凶行に及ぶ人間もいるかもしれないー。


しかし、修吾はそのようなことはせずにー、

”人を皮にする力”を使う際には、必ず相手に承諾を得ることを

自分の心の中で決めていたー。


勝手に人を皮にして、着るー。

そんなことをすれば法律に触れなかったとしても、犯罪のようなものだー、と

修吾は、ちゃんと理解して、この力を使っていたー。


「ーーふぅ…いいよ」

涼香が少しため息をつきながら、そんな言葉を口にするー


「え!?ホントに!」

修吾が嬉しそうに言うと、

「ーーでも、これが最後だからね?」と、

釘を刺すように、涼香が修吾に言い放つー


「も、もちろん!今度こそ最後だ!約束する」

修吾がそう言うと、涼香は少しだけ笑いながらー

「でも、そのヘンな力、手に入れたのが悪い人じゃなくて

 本当によかったよねー」

と、言葉を口にするー


「あ~…まぁ、犯罪者とかがこんな力 手に入れちゃったら

 やばいよなー…


 っていうかー…こんな力があるなんてー

 もしかしたら既に世の中に出回ってたりしてー」


修吾が冗談を口にすると、

涼香は「え~…身の回りに”着られてる人”がいるかも、とか、怖くない?」と、

苦笑したー。


「ーでも、修吾は立派だと思うー」

涼香がふと、そんな言葉を口にするー。


「え?いきなりなんだよー」

笑う修吾ー。


「ーーううんー

 だって、”そんな力”持ってたら普通ー、ちょっと使って

 みたくなっちゃうと思うしー。


 修吾、絶対に相手が”いいよ”って言わなきゃ、その力、使わないでしょ?」


涼香のそんな言葉に、修吾は笑いながら頷くと、

「ーまぁ、でも、大事なことじゃん?」と、涼香に言い放つー。


「ーふふ、そう言い切れるところが、修吾のいいところだもんねー。


 わたしだったらー

 その力使って色々しちゃいそうだしー」


涼香が”自分にはそんな力、決して手に入らない”と、理解した上で

そんな冗談を口にすると、

「はははー、悪に染まった涼香とか、ちょっと見てみたいなぁ~」と、

修吾も冗談めいた口調で呟くー。


「ーーーーわたし、こう見えても結構、”欲深い”し、 

 結構、頑固なところもあるよー?」

そう口にしながら、悪戯っぽく笑う涼香ー


二人は、今日もいつも通りー、

楽しく雑談をしていたー。


がーーー


”既に”

少しずつ”それ”は、始まっていたー。


いや、少しどころではないー。

”ある程度”進んでいる、とでも言うべきだろうかー。



帰宅した修吾はため息をつくー


「ーーは~~~…この前で”最後”にするつもりだったのにー」


修吾はそう言いながら鏡を見つめると

「でもーーーー」と、言葉を口にするー。


「ーーーーーーー…」

何かをボソッと呟いた修吾ー。

その声は、アパートの近くを通過した電車の音にかき消されて、

本人の耳にすら、届くことはなかったー。


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


土曜日ー。


「ーーーーーーーじゃあ…いつも通り”2時間”ね」

涼香がそんな言葉を口にすると、イスに座るー。


「ーーー分かった」

修吾がそう約束をすると、人を皮にする力をイメージしながら

右手に力を込めていくー。


すると、右手が謎の光を発し始めるー。


「ーーー…すごい」

涼香は、前に置かれている鏡越しに、修吾の光る手を

見つめると、思わずそんな言葉を口にするー。


「それ、熱くないの?」

興味深そうな涼香ー。


修吾は笑いながら自分の光る手を見つめると、

「こんな見た目だけど、不思議と熱くもなんともないんだよなー」と、

当然のことを呟くかのように言葉を口にするー。


「ーーふ~ん…綺麗でいいなぁ」

涼香はそう言うと、深呼吸をしてから「はい、じゃあいつでも」

と、そう呟くー。


”皮”にされる瞬間ー

痛みはないのだが、後頭部がぱっくりと割られるような

そんな”感触”がするー。

痛みはないし、かゆみもないー

ただ、何だか頭がめくれるような、そんな気持ち悪い感覚ー。


涼香は、それが苦手だったー。


「ーーー今回は”おごり2回”ねー」

涼香が目を閉じながらそう呟くー。


”涼香を着た”あとには、

必ず修吾が涼香に何かを奢っているー。


いつも1回分なのだが、

涼香は”今回はアンコールだから、2回”と悪戯っぽく言うと、

修吾は「わかったわかったー!2回奢るよ!」と返事をしてから

改めて涼香に向かって、手をかざしたー。


「ーーうっ…」

涼香がそう言葉を口にするとー

「あぁ、来た来たー…これ、すっごく気持ち悪い」と、

苦笑いするー。


既に、涼香の頭の一部がペロリと割れているー。


「ーーゆ、ゆっくりやらないで早く! 

 完全に皮になれば意識も飛ぶから!」

涼香がそう言うと、修吾は「ごめんごめんー!」と、

慌てて涼香の頭に出来たチャックをそのまま、一直線に

下まで下げたー


「ーーーー」

涼香は、完全に”ペラペラ”とした皮のような状態となり、

言葉を発さなくなるー。


修吾は、そんな涼香の皮を身に着けると、

そのまま、”涼香”になったー。


「ーーー…はぁ~…なあんだか、マイホームに帰って来たって感じー」

涼香になった修吾が、そんな言葉を口にしながらー

「ただいまーー」と、涼香の身体を抱きしめながら

そう言葉を口にするー。


”最初に”涼香を皮にして着た時には

”女の身体”にドキドキしてしまって、ほとんど何もすることすら

できなかったー。


本当にただ、部屋の中をウロウロして、

鏡を見て、”本当に自分が涼香になってる”という現実に

語学力を失い、ひたすら「すごい…」と、呟きー、

最後にやっと「わたしは涼香ー」と、他の言葉を呟いてー

またドキドキしてその場に座り込むー、という

完全に挙動不審な”皮ライフ”を送ったー。


その後、2回、3回と涼香に許可を取り、

皮にしてもらっているうちに、

だんだんと”女性”として行動することにも慣れて来て、

7回目には、涼香の身体で外出することも楽しんだー。


8回目、9回目ぐらいになると、

”女としてのおしゃれ”にも目覚めてー、

そして、”10回目”に涼香を皮にする際に

”ちょうど区切りがいいし、今回で最後でいいかな?”と、

涼香から言われて

「ーもちろん!」と答えて、

”おわり”のはずだったー。


がー、”11回目” ”12回目”と、

「あともう1回」が続き、今回で”13回目”ー。


彼女の涼香も、よく付き合ってくれてるなぁ、と

自分でも思いつつ、今日も涼香の身体で、

おしゃれな格好をして、自撮りを繰り返していたー。


ただー、”自撮り”のルールとして、涼香自身のスマホで

行うこと、ネット上には絶対に公開せず、自分のスマホに

送ったりもしないことを、涼香と固く約束していて、

修吾もそれを守り続けていたー。


「ーーあ~~…この見下すような目のわたしもたまんない~!」

「ーーーーあ~~~わたしの足~」

涼香は、いつもの涼香がしないような過激な自撮りを見ながら

嬉しそうにそう言葉を口にするとー、

「ーと、いけないいけないー、つい涼香を着てると、

 ナチュラルに自分のこと”わたし”って言っちゃいそうになるんだよなー」

と、そんな言葉を口にするー。


涼香の身体のまま、散々おしゃれを楽しみー、

おしゃれな格好で”散歩”をしてー、

存分に涼香の身体を楽しんだー。


そしてー、修吾が涼香でいられる時間ー

”2時間”があっという間に過ぎ去り、

涼香を”解放”する時間がやってきたー。


名残惜しそうに、鏡の前で”自分”の姿を見つめる涼香ー。


もちろん、”人を皮にする力”は、

その気になれば、もっと長い時間、続けて支配することも

可能ではあると思うー。


”2時間”というのは、あくまでも涼香との約束の時間であり、

修吾自身の能力の”限界”ではないー。


「ーーーーー…わたしは涼香ー」

涼香を着ている修吾は、そんな言葉を口にするとー、

”返したくない”という思いが、自分でも抑えきれないぐらいに

強まってしまいー、そのまま”涼香”として、

家のことをし始めてしまうー。


やがて、”涼香”として部屋の掃除をしたりー、

”涼香”として洗濯物をしたりー、

”涼香”として晩御飯の準備をしたりー、

まるで”わたしが涼香”と言わんばかりに涼香の時間を奪っていくー


だがーー


「ーーー!!!!」

晩御飯の準備を終えたところで、涼香を着ている修吾は

表情を歪めたー


「ーーー…ーーー…!」

急に、”我に返った”、

そんな表現が正しいだろうかー。


「ーーっっ…何やってるんだよ俺はー」

涼香の皮を着たまま、涼香の声でそう呟くと、

修吾は慌てて涼香の皮を脱ぎー、

そして、涼香に手をかざしたー


「ーーーー…ぁ」

涼香が、”皮”から”人間”に戻るー。


だがー、既に外が暗くなっているのに気づくと、

涼香は「え…」と、表情を歪めたー。


「ーーーごめん」

修吾はすぐに謝罪の言葉を口にするー


「え…ど、どういうことー…?」

涼香が困惑した様子で、背後の時計を見つめるー。


2時間どころか、6時間近く経過しているー。


「ー…ち、ちょっとー…2時間って約束でしょー…?」

涼香は、不安そうに、少し怒った様子でそんな言葉を口にするー。


「ーご、ごめんーー……本当に、ごめんー」

修吾が謝罪の言葉を何度も何度も口にするー。


なんだかー

自分でも、自分にブレーキをかけられないような、

そんな感覚だったー。


いやーーー…

それは今回が初めてではないー。


そもそも修吾は、最初は”1回”しか涼香を皮にするつもりは

なかったのだー。

それが、どんどんやめられなくなりー、

”10回目”で最後にしようとしたのに、

11回目、12回目、13回目と来てしまったー


そして、この先ー…

”どうなるのか”修吾にも何となく想像はついたー


「ーーーーー…約束…守ってくれないんだったらー

 もう、着られるのは無理ー。

 修吾が、絶対約束守ってくれるって思ってたから、

 そうしてただけだしー…

 こういうことがあるとー…」


涼香は動揺しながらも、冷静に言葉を選ぶー。


「ーー…本当に、ごめんー

 それで、それでいいよー。」


修吾も戸惑いながら、そう言葉を口にするー。


”約束を破られて、6時間も乗っ取られていたー”


涼香は、”怖い”と、そう思ったー。


”2時間で必ず解放される”

そういう信頼があったからこそー、

”人に身体を貸す”という、

涼香からすれば”リスクまみれ”のことができていたのだー。


しかしー…

その約束を破られてしまった今ー

下手をすれば”一生、身体を返してくれないかもしれない”という

不安が、急激に膨れ上がるー。


「ーーーー…今日はもう帰って」

涼香が困惑した様子でそう呟くと、

修吾は「うんー。ごめん…そうする」と、申し訳なさそうに頷きながら

そのまま涼香の家を後にしたー。


・・・・・・・・・・・・・・・・・・


帰宅した修吾は、ソワソワした様子で何かを呟きながら、

部屋の中をウロウロしていたー。


「ーーーなんで、俺がここにいるんだー」


そんな、意味不明な言葉を呟く修吾ー。



既に”異変”は進んでいたー。

取り返しのつかないところまでーー…。



②へ続く


・・・・・・・・・・・・・・・・・・


コメント


不穏な雰囲気漂う皮モノデス~!


どうなってしまうのか、次回もぜひ見届けて下さいネ~!

今日もありがとうございました~!


暑さに雨に、連日大変ですが、

皆様もお気をつけてお過ごしください!☆

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