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冴えないおじさんを女体化させて

”救済”するー。

そんな活動を行っている”おじさん女体化事業”ー。


しかし、かつて女体化した経験を持つという被害者・美鈴と出会った

勝彦は、次第に”おじさん女体化事業推進委員会”に疑念を

膨らませていくー。


そして、ついにその疑惑は決定的なものとなり、

女体化した勝彦ー、”姫奈”は、美鈴と協力して、

仲間共々、由香里たちから逃げようと決意するー。


☆前回はこちら↓☆

<女体化>おじさん女体化事業③~不穏~

冴えないおじさんを女体化させることで救うー。 そんな理想を掲げている謎の団体、 ”おじさん女体化事業推進委員会” 由香里率いるその団体の話を信じ、女体化した勝彦は、 ”姫奈”という新しい名前も貰い、夢のような生活を始めていたー。 が、そんなある日 ”おじさん女体化事業”の被害者であるという、美鈴が姿を現し、 ...

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


”姫奈”となった勝彦は、自分の姿を鏡で見つめるー。


正直、とても可愛いー。

自分で言うのもおかしな話だがー、

とにかく、かわいいー。


女体化して、”姫奈”となって、まだそれほど時は経ってはいないけれどー、

それでも十分にその”恩恵”を受けることができたー。


買い物をしている時もそうだしー、

何かサービスを利用している時もそう。


自分が”冴えないおっさん”だった時とは違うー。


それにー、女体化して”自分に自信を持つこと”もできたー。


”自分に対する自信”というのは、

己に対する最高の養分だー。

”自身のない僕”

”自身を持っているわたし”

例え、中身が”同じ”であったとしても、

自身の有無だけで、日頃の行動にもそれが表に出て来るー、

ということが分かったー。


ーー長々と考えを巡らせた”姫奈ー”


つまりは”可愛いは正義”ということだー、という結論に落ち着き、

ため息をつくー。


”おじさん女体化事業”が、本当に

自分たちのような冴えないおっさんを救うためにー、

おっさんを女体化させているのであればー

それは、とても素晴らしいことだと勝彦は思うー。


けれどー、由香里たちは

いつしか、美人になって時が経つにつれてー、

”自分が冴えないおっさんだったときの気持ち”を

忘れてしまったのだろうー。


そしてー、女体化おじさん事業の被害者である美鈴が言うようにー、

”女体化させたおじさんたち”を脅し、私利私欲のために

利用するようになったー。


きっと、そういうことなのだろうー。


「ーあ、姫ちゃん!やっほ~!」

廊下で、ツインテールの舞とすれ違うー。


舞はいつものように明るい調子で、

「今度さ~、葵(あおい)と、真梨香(まりか)と一緒に

 遊園地に遊び行く約束してるんだけど、

 姫もどう?

 女子4人で遊園地! おっさんだった頃と違って

 ぜ~ったい楽しいから!」

と、笑いながら言うー。


「ーあ、あははー…じ、じゃあ、わたしもー」

”姫奈”はそう答えると、

舞は「オッケ~!じゃああとで、LINEで詳しい待ち合わせ場所とか送るね~」

と、言いながら立ち去っていくー。


女体化した日に案内してくれた舞とは、

今も仲良しだー。

だが、”舞”は、おじさん女体化事業推進委員会の主任である由香里の

腹心的存在でもあり、ここから逃げ出せばきっとー

”敵対”することになるー。


”姫奈”は寂しそうにしながらも

由香里の部屋へと向かうー。


”できる限り、おじさん女体化事業に関するデータや証拠を

 持ち出してくださいー”


美鈴からのそんな連絡を受けて、

”姫奈”は「分かりましたー」と答えると、

そのまま由香里の部屋に向かうー。


かつて、勝彦と同じように女体化した”美鈴”はー、

おじさん女体化事業の本性に気付き、逃げ出した”元・おじさん”ー。

既に、美鈴が逃げ出した時に親しかった”三人”ー

真桜、璃子、茂美は、行方不明になっていて、

先日、女体化した勝彦が、由香里にその名前を確認しても、

由香里は”存在しない”としか答えてくれなかったー


つまり、もう三人は消されているのだろうー。


このままでは、自分も、仲間たちも

由香里に利用されて、捨てられるー。

そんな運命が、待っているー。


だがー…


「ーーーー主任はいません」

”姫奈”がそう言うと、電話相手の”美鈴”は、

”主任はいつもこの時間、会議に出席していますー”とだけ答えるー。


”できる限り、おじさん女体化事業の証拠や情報を持ち出してください”

美鈴のそんな言葉に、”姫奈”は緊張した様子で返事をすると、

由香里の机から、重要そうな書類を確認しー

それを写真に収めるなどして、データを収集していくー。


由香里は”おじさん女体化事業”の存在を世間に隠そうとしているー。

その証拠となるデータや写真を持ち出すことで、

美鈴は”純粋に冴えないおじさんたちを救おうとしていた頃に戻って欲しい”

と、由香里に交渉するのだと言うー。


由香里がそれに応じるかは分からないー。

けれどー


「ーーーー!」

おじさん女体化事業に関するデータや書類を十分に集めて、

一部の書類を持ち出す準備をしていた”姫奈”は、

主任の部屋の扉が開いたことに気付いたー


「ーーーあ~~~~~~…姫ちゃんさ、何してるの?」

ツインテールの舞が、少しイライラした様子で

”姫奈”を見つめるー。


舞は、少し前に由香里から指示を受けて、

”姫奈”のことを、それとなく監視していたのだー。


「ーーえ…え~っと、こ、これはー…」

”姫奈”は表情を歪めるー。


「ーねぇー何してんの?」

舞が、いつものような笑顔ではなくー、

怒りを露わにして近付いてくるー


”逃げて下さい!早く!”

美鈴の声がスマホから響くー。


”捕まったら終わりです!早く!”

美鈴がそう叫ぶー。


”姫奈”は、以前、美鈴から見せられた

”おじさん”が処分される映像を思い出すー。


女体化した時にも使った例の装置で

レーザーを照射されて、スライムのように、おじさんが

溶けていった、ショッキングな映像のことだー。


”データさえあれば、どうにでもなります!早く!”

美鈴のそんな言葉に、”姫奈”は、「ごめん!」とだけ叫んで、

舞に突進するー。


不意打ちを喰らった舞は壁に叩きつけられて

「あ!おい!こら!!!」と、男だった頃の口調で叫ぶー。


すぐに舞は、「いけないいけないー」と、何度か咳払いをすると、

「待って!ねぇ!」と、大声で叫んだー。


しかしー、”姫奈”は立ち止まらなかったー。

なんとか、”おじさん女体化事業”の本部から脱出すると、

そのまま、荒い息を吐き出しつつ、”美鈴”と、合流したー。


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


「ーー本当に、ありがとうございましたー

 これだけあれば、十分ですー」


少し離れたファミレスで美鈴と合流すると、

”姫奈”は美鈴に対して、

おじさん女体化事業の本部から回収した書類や、

女体化した人間の名簿、データなどを手渡したー。


「これがあれば、たくさんの人を救えます」

美鈴はそれだけ言うと立ち上がったー。


「ーそんなに、上手く行きますかねー?

 主任が、データを手に、主任を脅しても

 主任はそう簡単に折れるとは思えませんがー」


”姫奈”がそう言うと、

美鈴は「心配いりませんー。あとはわたしに任せて」とだけ言い放ちー、

そのまま立ち去って行ったー。


・・・・・・・・・・・・・・・・・・


後日ー


”おじさん女体化事業”のことが、大々的に報道され始めたー。


”おじさん女体化事業推進委員会”の本部には

報道陣が集まり、警察の立ち入りも受けているー。


「ーー…こ、これはー…」

”姫奈”は混乱するー。


話が違うー。

美鈴の話によればー、

”由香里が隠したがっているデータを入手することで、

 由香里の悪事を抑え込み、女体化したおじさんたちが

 普通に過ごせるようにするー”と、そんな趣旨のことを言っていたー。


がーー…

今、この状況は何だー?


”姫奈”が入手して、美鈴に渡した情報が全て流出して、

大騒ぎになっているー。


世間は”おっさんの女体化”など許しはしないー。


それどころかーー

”女体化したおじさんの名前”まで全て報じられているー。


「ーーー…くそっ!どういうことなんだー!?」

”姫奈”は美鈴に電話を掛けるー。


だが、美鈴に電話は繋がらないー。

まさか、これは、おじさん女体化事業の主任である由香里側が

何かを仕掛けたのかー?


いやーーー


”姫奈”はテレビの画面を見つめるー。

おじさん女体化事業の本部に立ち入りが入り、舞が慌てて対応している

様子が映っているー


これでは、おじさん女体化事業は終わりだー。

由香里が仕掛けたにしては、おかしな状況ー。


居ても経ってもいられず、

”姫奈”は、おじさん女体化事業の本部に、報道陣をかき分けて

乗り込むーーー


そこにはーーー

髪がボサボサの状態で、やつれ果てた由香里の姿があったー


「し、主任ーこれはー」

”姫奈”がそう言うと、由香里は、”姫奈”を見て、涙目で言ったー


「ーーあなたはーー…愚かですー」

とー。


「ーーえ…」

”姫奈”が困惑するー。


「ーあなたでしょう?”外部の人間”に、女体化事業のデータを

 渡したのはー。

 その結果が、これですー。この事業は、もうおわりー

 わたしたち”おっさん”は世間から猛バッシングを受けー、

 もう、行き場なんてないー」


由香里は悔しそうに涙をこぼすー。


「ーーこ、これは…どういうー?」

呆然としながら”姫奈”が確認の言葉を口にすると、

由香里は涙目のまま「舞から聞きましたー」と言葉を口にするー。


「ーあなたは”美鈴”を名乗る女に、うちのデータを渡したようですねー」

とー。


”姫奈”は表情を歪めるー。


「ー舞が昨日のうちに調べてくれましたー

 ですが、あの女はー、”おじさん女体化事業”で女体化した人間では

 ありませんー」


由香里のそんな言葉に、

”姫奈”は「え…じ、じゃあー…」と、狼狽えながら言うー。


「ーあの女は、正真正銘、”元から女”ですー

 ”元おじさん”なんかじゃないー」

由香里はそこまで言うと、

「ーあなたは、利用されたんですー」と、涙目で呟いたー。


「り…り…利用ー…?」

信じられない、という様子の”姫奈”ー


「ーそうです。

 舞が、昨日調べてくれた結果ー、

 彼女はわたしたちをつぶそうとしている団体の一員であることが

 分かりましたー。


 わたしたちを、壊滅させるために、あなたを利用したー」


由香里の言葉に、呆然とする”姫奈”ー。


”美鈴”は、女体化したおじさんなどではなく、正真正銘の女性ー。

”姫奈”に接触して、おじさん女体化事業に不信感を抱かせたうえで、

内部資料を持ち出させて、それを世間に公表ー、

おじさん女体化事業を壊滅に追いやろうとしているのだー。


美鈴が言っていた”真桜、璃子、茂美”などという人間は存在しないー。

だから由香里は”記録にない”と答えたー。

本当に、いなかったのだからー。


由香里は言うー。


”おじさん女体化事業”は、

政界の大物が”不幸な中年男性の増加”は、将来社会問題になると考え、

秘密裏に発足したものだとー。

しかし、”おじさんを女体化させる”などということは

世間の明るみには出来ないー。

明るみになれば大バッシングを受けるし、確実に実現しないからだー。

それでも、”不幸なおじさんを救いたい”と考えた政界の大物は、

秘密裏に、おじさん女体化事業をこうして進めて来たのだとー。


「世間は、知らなければ何も騒がないし、何も思わないー

 女体化したわたしたちも、幸せに暮らすことができるー

 

 それなのにー」


由香里は悔しそうに言うー。


”新しい名前”が用意できるのも、政界の大物がバックにいるからで、

誰かを傷つけるような不正をしているわけではないー、と。

しかし、それを知る人間が増えればリスクも高まる、として、

由香里は、”姫奈”にも、他のメンバーにも話さないようにしていたのだー。


「ーーーで、でも…おじさんがレーザーで溶けていく映像がー」

”姫奈”は、美鈴から見せられた映像のことを口にするー。


がーー


「そんなの、フェイク映像に決まってるだろ!」

由香里が、泣きながら机を叩いてそう叫んだー。


美鈴に見せられた映像は”フェイクー”


「ーーもう…おわりーー

 もう、おわりですー。

 全部、全部、あなたのせいー…


 これでわたしもー…

 俺も…惨めなおっさんに逆戻りだ!」


由香里が泣きながらその場に蹲るー。


「そ…そんなー」

呆然とする”姫奈”ー。


そこに、電話がかかって来るー。


電話に出るとー、

相手は”美鈴”だったー。


”女体化事業のガードは固くて、外部の人間じゃなかなか全貌を

 掴むことはできなかったし、そのまま騒いでも、妄想で片づけられる

 ところだったー。


 でも、

 ありがとうーーー

 あなたのおかげで、おじさん女体化事業を潰すことができるー”


美鈴は笑うー


「ーーふ…ふざけるな…!だ、騙したな!」

”姫奈”がそう叫ぶとー、

美鈴はクスクスと笑いながら答えたー


”おじさんは、おじさんらしく生きればいいのよー

 女になって喜んでるあんたたちなんてー

 わたしからすれば、超不愉快ー”


美鈴がそう吐き捨てるー。


「ーーくそっ…!よくも、よくも騙したな!

 この事業で救われている人もたくさんいたのに!!」


”姫奈”がそう叫ぶー。


だが、美鈴は冷たい口調であざ笑うように返事をしたー


”それを壊したのは、あなたー。

 ほら、ネットをみてごらんー?

 ”おじさん女体化事業”が大炎上してるー

 これが、世間の声よ


 冴えないおじさんは、いつまでも冴えないおじさんのままー”


美鈴のそんな言葉に、

”姫奈”は、煮え滾る怒りを感じながらスマホを握りしめるー。


「ーどうして、どうして俺たちがこんな目に遭わないといけないんだ!」

とー。


”ーーさぁ? そんなこと知らないし、興味もないー

 じゃあねー”


美鈴はそれだけ言うと、そのまま電話を切ったー。


ガクッと膝を折る”姫奈”ー。

由香里も、うなだれたままー。


やがてー、

警察の立ち入りも始まりー、

代表の由香里も、”姫奈”や舞、他の女体化したおじさんたちも

話を聞くために、と警察に連行されたー。


おじさん女体化事業は壊滅ー、

後ろ盾だった政界の大物も失脚しー、

勝彦たちは”男体化”させられて元の姿に戻されたー。


「ーーーー」

”夢”のような時間を自ら、消してしまったー。


勝彦は、そのことを思いながら、絶望の表情で空を見上げたー。



おわり


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


コメント


最終回でした~!☆


このまま普通に過ごしていれば、

勝彦たちにとっては、幸せな日々が続くはずだったのに、

騙されてしまいましたネ~…!


お読み下さりありがとうございました~!☆

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Comments

たそがれ

美鈴は酷すぎますね。 ただ気に食わないというだけで騙して、徹底的に潰そうとするなんて。 美鈴には何らかの報いが下って欲しいところですね。 例えば、おじさん達の復讐でおじさん化させられるとか。

無名

これも懐かしい作品…☆! たくさんのコメントありがとうございます~! (私もコメントは嬉しいので、遠慮せずに書きたいときはどんどん送ってくださいネ~笑) 美鈴はとっても酷い子でしたネ~! 今のところまだ天罰が下る続編はないのデス…笑