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精神的なショックが原因で、ニート生活を続ける彼女の明梨。


そんな彼女のために、彼氏の昌磨は

かつて勤務先の事故がきっかけで身に着けた”変身能力”を使い、

明梨の姿で働き、生活費を稼いでいたー。


しかし、ある日、明梨に”化け物”と言われて自暴自棄になった昌磨は、

明梨の姿で好き放題するようになってしまうー。


そんな昌磨を救ったのは、親友の亮介だったー。


亮介の言葉で立ち直った昌磨は、明梨とも和解して

再び元の生活にー…


戻るはずだったー…。


★前回はこちら↓★

<他者変身>ニートな彼女と同棲生活②~彼女のせい~

ニートな彼女と同棲中の昌磨ー。 過去の事故が原因で”他人に変身する力”を身に着けた昌磨は、 その力で、彼女の明梨に変身して、 明梨の姿で、夜の仕事をして彼女を養っていたー。 彼女の明梨の堕落したニート生活。 しかし、彼女の父親が倒れた件で、精神的に強いショックを受けて そうなってしまったという”過去”を知...

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


「ーー店長ー」


夜ー

”明梨”の姿をした昌磨は、

いつも通り、明梨の姿で”夜の仕事”をしていたー。


本物の明梨とはまるで別人のような、キラキラした

パーティドレスを身に着けた”明梨”ー


自分でもそんな姿にドキドキしながらも、

欲望のためではなく、”二人が生活するための”お金を

稼ぎ続けて来たー。


だがーーー


「ーー本当に、申し訳ありませんー。

 体調が、回復しなくてー」


”明梨”の姿をした昌磨が、お店の店長に言うと、

店長は表情を歪めるー。


少し前から急に、”明梨”から体調不良の相談を受けー、

挙句の果てに、今日、”急に辞める”と言い出したのだー。

無理もないー。


「ーーーあんまり急すぎると、困るなぁ」

少しいかつい感じの店長がそう言うと、

明梨は「ーーわたしもーー本当だったら辞めるわけにはいかないんですー」と

悔しそうに呟くー。


”明梨”の姿をした昌磨にはー、

明梨と自分ー、二人分の生活費を稼ぐという使命があるー。


明梨は、バイトの面接を受け始めてはいるー。

だが、今はまだ、どこも採用は決まっていないー。


本当だったら、今、やめるわけにはーー


しかしーーー


「ー!!!!」


突然、”明梨”の右手がドロッとしたスライムのような状態に変わりー、

数秒ですぐに元に戻るー。


「ーーー…お、おまえー…」

驚く店長ー。


その目は”化け物”を見るような目にも見えたー。


「ーーーーーーだからー…辞めないといけないんですー」

”明梨”が苦しそうに言うー。


「ーーーー皆さんに、迷惑をかけたくないからー」

”明梨”が涙目で言うと、店長は困惑しながらも

「ーわかったー…本当はこんな急じゃ、退職できないんだがー…

 俺がなんとかしておく」と、”明梨”の姿をした昌磨の言葉を

受け入れて、そう言葉を口にしたー。


・・・・・・・・・・・・・・・・・・


「ーおかえり~~~」

ボサボサ頭の明梨がスマホをいじりながら笑うー。


「ーーただいま」

”明梨”の姿をした昌磨は、服を脱いで”いつも自分が着ている服”に

着替えてからー、”変身”を解くー。


変身するときもー、変身を解除するときも

”服”はそのままではないためー、

着替える前に変身を解除してしまうと”自分の女装姿”を見ることに

なってしまい、正直、あまり似合わないー。


「ーー…!」

昌磨は表情を歪めてトイレに駆け込むー。


嘔吐ーーー


それもー、”普通の人間”が吐くものではないー。


変身するときー

それに、解除するときー。


昌磨はほんの数秒、”ドロッとした液体人間”のような状態になるー。


その時と同じ”液体”を嘔吐しているー。


元々、この力は就職した製薬企業の工場の設備保全がいい加減だったことで

起きた”事故”により、大量の薬剤や化学物質を浴びた結果、

身に着けたものー。

あの事故で、死んだ人間もいるー。


昌磨は思うー


”くそっー…この間、力を使いすぎたかー”


昌磨は、はぁはぁ言いながら

”俺はまだ…死ねないー…今、俺が死んだら明梨はー”と、

苦しそうに呟くー。


明梨に”化け物”と言われてー、

自暴自棄になって、明梨の姿に変身したまま、

夜遊びを繰り返したー。


あの時ー、

数週間の間、ずっと”明梨”の姿に変身したままだったー。


今まで一度もそんな長く、変身を続けたことはないー。


その時の”無理”が急激に身体を蝕んでいるのかもしれないおー。


またー吐き気ー。

トイレで激しく嘔吐するとー、

今までよりもさらにドロッとした物体が目に入りー、

手も、何もしていないのに、妙に濡れていることに気付くー


「ーーーくそっ……なんでだよー」

昌磨は歯ぎしりをするー。


だがー、

”俺はもうダメかー”と、思わざるを得ない状況だったー。


「ーー……明梨ー…」


俺が死んだら、明梨はどうなるー?

昌磨は、それだけを考えながら、何とか立ち上がると、

何食わぬ顔で、明梨のいる部屋へと戻って行ったー。


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


「ーーー頼む。力を貸してくれー」


翌日ー。

昌磨が、親友の亮介に何かを頼み込むー


「ーーー…んなこと言ったってー…お前ー」

困惑する亮介ー。


だがー、死を間近にした親友を前に、

亮介は渋々と頷いたー。


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


明梨の父・俊二(しゅんじ)は、

脳の病気を少し前に再発しー、

現在はもう、寝たきり同然の状態だったー。


だがーー


「ーーえっ!?本当?」

明梨がスマホを手に、そう叫ぶー。


ボサボサ頭の明梨のそんな声に、昌磨は

明梨のほうを見つめるー。


「ーーー何かあったのかー?」

昌磨がそう言うと、

明梨は目に涙を浮かべながら言ったー。


「ーー美音からー…

 お父さんが目を覚ましたってー…」


明梨が”信じられない”という様子で声を上げるー。


「ほんとうに!?」

昌磨がそう声を上げると、明梨は目に涙を浮かべたまま頷いたー。


もうー

ずっとー

”このまま”寝たきりの可能性が高いと医師に言われていたー


なのにー

父の俊二が目を覚ましたのだというー。


たった今、妹の美音からそう連絡を受けた明梨は、

今までの堕落した生活が嘘かのように、急に慌てて駆け出すと、

髪を整えー、メイクをしてー、服を着替えるー。



”どちらさまですかー?”

脳梗塞で倒れた父・俊二にそう言われたときー、

明梨は”壊れた”ー。


しかもーー…

妹の美音のことは普通に認識できていた父を見て、

明梨は余計にショックを受けてしまったー。


もちろん、父が”忘れる記憶”と”覚えている記憶”を選んだわけではないー。

偶然、美音を覚えていて、

偶然、明梨を忘れてしまっただけー


けれどー。


”明梨の作ったケーキを食べるのが、楽しみだなー”

ケーキ屋さんになりたい、と小さい頃から言っていた明梨の

そんな夢を応援し続けてくれていた父の、その言葉にー、

明梨は立ち直れなかったー。


あれ以降ー、父はどんどん記憶障害を起こしていきー、

最後には脳の病気が再発し、寝たきりになってしまったー。


昌磨がタクシーを呼んで、共にタクシーに乗り込むー。


”どうしてタクシー?”と思われそうだったが、

既に昌磨の身体は小刻みに腕が震えていてー

運転すらできない状態だったー。


がー、幸い、明梨は”意識を取り戻したお父さん”のことで

頭がいっぱいで、特に気にする様子はなかったー。


「ーータクシーの支払いを済ませてから、先生に話を

 聞きに行くから、明梨は先に」

昌磨は先に明梨を病院に向かわせると、

昌磨はタクシーの支払いを済ませて、ため息をついたー。


・・・・・・・・・・・・・・・・・


「お姉ちゃん!」

妹の美音が、受付前で明梨と合流するー。


「お父さんが目を覚ましたって、本当?」

明梨が言うと、美音は泣きながら頷くー。


少し話を交わした後に

「わたしが案内するから」と、美音が

涙を拭いて、明梨を”お父さん”の待つ病室へと案内し始めたー。



そしてーーーーー


病室にたどり着くとーー

そこには、父・俊二の姿があったーーー


「ーーーーー!」

俊二が、病室に入って来た明梨を見て、驚きの表情を浮かべるー。


「ーーおとう…さんー」

明梨が目に涙を浮かべながら言うと、

父・俊二は「ーーーーあかりー…」と、名前を口にしたー。


明梨は泣きながら、父・俊二に近付くと、

「ーーやっとー、やっとわたしのこと、思い出してくれたー」と

父親に抱き着きながら涙をこぼしたー。


「ーーーー」

父・俊二は、そんな明梨の頭を撫でながら、

「ーーごめんなーーー明梨ー」と、優しく呟くー。


「ーーお父さん、忘れたくて明梨のことを忘れたんじゃないんだー。」

申し訳なさそうに言う父・俊二ー。


その言葉に、明梨は泣きながら頷くー。


妹の美音は、背後でその姿を見ながら、涙を浮かべているー。


「ー明梨も、美音も、お父さんの大切な誇りだー。

 だから、明梨ー…

 いつまでも苦しんでちゃだめだー


 お父さんは、元気に笑ってる明梨が好きなんだからー」


父・俊二の言葉に、

明梨は泣きながら頷くー。


「ーーー明梨の作ったケーキ…

 お父さんは、食べられないかもしれないけどー

 でもーー絶対に空から見守ってるからー」


俊二のそんな言葉に、明梨は何度も何度も頷くー。


「ーーーー…」

そんな明梨を見つめながら父・俊二は少しだけ苦しそうな表情を

浮かべると、妹の美音が心配そうにー

「ーそ、そろそろー」と、言葉を口にするー。


明梨が「お父さん…大丈夫?」と心配そうに呟くー。


「ーあぁ…大丈夫だよー」

父・俊二はそれだけ言うと、明梨のほうをまっすぐと見つめたー


「この先、何があってもー

 お父さんは、明梨のことも、美音のことも応援してるー。

 死んだあとも、ずっとずっとずっとー

 二人を見守ってるー。


 だからーーー

 二人とも、頑張れー」


父・俊二は力強くそう言うと、

穏やかな笑みを浮かべたー。


父の体調がだんだんとまた悪くなってきた様子を見て

明梨は悲しそうな表情を浮かべながらもー、

「ーーーわたし、頑張るー…」と、力強く、父に対してそう返事をしたー。


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


「ーーーーーーーはぁ~~~~~~…」


病室から、明梨と美音が立ち去ったあとー、

父・俊二はーーー


いいやーーー


”父・俊二の姿をした昌磨”は大きくため息をつくー。


そしてー、

直後に激しく咳き込んで、”泥”のようなものを嘔吐するーーー



「ーーおい」

数分後ー、病室に入って来た親友の亮介が昌磨を支えるー。


「ーーはは…上手く行ったかなー?」

昌磨が悲しそうな目で笑うと、

亮介は「あぁ、あぁ、上手く行ったー」と、頷くー。


明梨の父ー、俊二は意識を取り戻してなどいないー。

明梨と話をしたのは、”明梨の父に変身した昌磨”だー。


「ーーこれで…明梨、立ち直ってくれればいいけどー…」

昌磨がそう言うと、亮介は

「後はー、明梨ちゃん次第だろー。

 お前は出来ることをやったー。もう、十分だー。

 お前は、明梨ちゃんにとって、最高の彼氏だよ」

と、優しく言い放ったー。


「ーーーありがとなー…」

昌磨が、寂しそうに笑いながら言うー。


自分の最後が近いことを悟った昌磨はー、

最後に、”明梨を立ち直らせよう”と、

明梨の父・修二に変身して、明梨に声をかけるー、

そんなことを思いつき、先日、亮介に相談したのだー。


亮介と、明梨の妹・美音にー、

そして、病院の先生の協力も得てー、今日、こうして

”明梨の父親”に変身して、明梨に言葉をかけるー…ということを

実際に実行に移したー。


「ーーー大事な人を残して、消えるー…」

昌磨は呟くー。


「ーそうなったからこそ、分かるんだー。

 明梨のお父さんも、絶対ー、こう、思ってるってー」


昌磨がそう言うと、亮介は「ーーそうだな」と、頷くー。


そこにー、

明梨の妹の美音がやってきて、

頭を下げるー


「ーお姉ちゃん、本当にうれしそうでしたー。

 ありがとう、ございますー」


とー。


「ーーはははー

 いいさーー…


 それより、美音ちゃんー…演技、上手かったねー」


昌磨が笑いながらそう言うと、

美音は「わたし、高校では演劇部だったので!」と、

得意気な表情で微笑んだー


「ーーそっかー」

昌磨はそう言うと、立ち上がるー。


「ーここは、任せていいか?」

昌磨が言うと、亮介は「おぅ」と、頷くー。


タクシーで明梨と別れたあとー、

予め待機していた亮介が、昌磨を支えながら病室に移動ー、

父・修二に変身するまでをサポートするなど、

亮介は”裏方”の手伝いをしてくれたー。


感謝の気持ちを抱きながら、昌磨は病室の出口で振り返るとー、

「ー亮介ー。お前は最高の親友だー。ありがとうー」と、

言葉を口にしたー。


その言葉に、亮介は思わず目に涙を浮かべるー。


「ーーっ…バカ野郎ー。

 ー人前で泣くなんて、俺の柄じゃねぇから、そう言うこと言うなー」


亮介はそう言うと、

昌磨と”友”として抱擁を交わしたー。


「ーー俺にとっても、お前は最高の親友だー。

 ーーーそっちに行くまでに、面白れぇ話、いっぱい蓄えとくからー

 覚悟しとけよな」


亮介がそう言うと、昌磨は「ははー楽しみにしてるよ」と、

笑ったー。



そしてーー

その日の夜は、明梨と共に過ごしたー。


これが、最後の一晩ー…


後悔のないように、明梨と幸せなひと時を過ごしたー。



「ーーー明梨の作るケーキ、俺も楽しみにしてるーー」

昌磨がそう言うと、明梨は「うんー」と、微笑んだー。


「ーーーーおやすみ」


夜ー。

昌磨と明梨が、就寝するー。


「ーーーありがとうー」

昌磨のそんな言葉に、明梨は「わたしこそー」と笑いながら

昌磨に背を向けたー


明梨の目から涙がこぼれるー。


「ーーーーーーー」


昌磨が、数日前から”かなり調子が悪そう”なことに

明梨も気づいていたー。


「ーーーー…昌磨ー」

けれどー、明梨は何も言わなかったー。


昌磨の決意が、痛いほど、伝わって来たからー



”ーーわたしがこんなじゃなければ、違う未来も、あったのかなーーー”


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


翌日ー


”ーーー明梨のケーキ、絶対食べに行くー。

 約束するー”


そんな書置きだけ残して、昌磨は消えたー。


昌磨が今、どこにいるのかは分からないー。


そのまま、命果ててしまったのかー

それともー…


「ーーーー」

けれど、明梨はもうー、迷わなかったー


「ーー必ず、夢を叶えるからー…


 昌磨ー

 待ってるからねー」


明梨はそう呟くと、寂しそうに窓の外を見つめたー。


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


数年後ー。


明梨は、大学時代の友達と連絡を取りー、

共同で、小さなケーキ屋をオープンさせていたー。


”父・修二”はあの後すぐに、息を引き取ったー。


けれどー、昌磨が”変身”して告げた言葉は

きっと、父・修二本人も思っていたことだろうー。


そしてーーー


「ーいらっしゃいませ~!」

明梨が笑顔でやってきたお客さんに声をかけるー。


「ーー!!!」

明梨が、その”客”を見て驚くー


「ーーー約束ー、したもんなー」


その男が、優しく笑うー。


目に涙を浮かべる明梨ー。



それはー

奇跡か、それとも幻かーーー


いいやー、どっちだっていいー。


「ーーー昌磨ーーー…

 わたし、夢、叶えたよー」


明梨はそう言いながら微笑むと、

昌磨はにっこりと笑いながら「おめでとうー」と、言葉を口にしたー



おわり


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


コメント


最終回でした~!☆


ダークな感じに一度は転落しつつも、

最後は何だか切なく、でも希望を持てるような、

そんなエンドにしてみました~!


お読み下さり、ありがとうございました~!!★

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Comments

miss

タクシーの支払いを済ませてから、先生に話を  [機器]に行くから 聞き

無名

ありがとうございます~~~! 機器に…★ 早速修正しておきました!!