Home Artists Posts Import Register

Content

「ーーー最近、美亜(みあ)おしゃれになったよね~」

フードコートで飲み物を飲みながら楽しそうに談笑する

女子高生三人組ー。


「え~?そうかなぁ~?」

笑いながら美亜が言うー。


本人は、自覚のないような素振りを見せているものの、

確かに美亜は最近おしゃれになったー


黒かった髪は、今は茶色に染まりー、

最近はメイクもするようになり、

スカート丈も短くなったー。


私服もみるみるおしゃれになってー

今や別人のようだー。


少し前に”大人しい性格の彼氏”と別れたため、

”新しい恋人ができた”だとか、

”彼氏と別れたことをきっかけにおしゃれになった”だとか、

色々な”噂”が友達の中で流れているものの、真相は分からないー。


「その指輪ー綺麗だよね~」


友達が、美亜が最近身に着けだした指輪を指さしながら言うー。


美亜はその言葉に、とても嬉しそうに反応するとー

「ふふっ♡ いいでしょー。わたしの宝物なの!」と、

指輪を愛おしそうに撫でたー。


そういえばー…

美亜がどんどんおしゃれになっていってー

変わっていく中で、一番最初に気付いた変化が”指輪”だった気がするー。


”実は、プロポーズされちゃってたりしてー”

美亜の友達が、内心でそんなことを呟いていると、

美亜は「あ、ちょっとトイレに行ってくるねー」と、笑みを浮かべながら

立ち上がったー。


もう一人の友達が「うん!」と返事をすると、

そのままトイレに向かう美亜ー。


「ーーーーーー」

トイレにやってきた美亜は「いい、身体ー♡」と、

呟くと、ペロッと自分の指を舐めて笑みを浮かべるー


そしてーーーー

”指輪”が、不気味なー

グロテスクな形をした生物のようなものに姿を変えていくー。


その生物は、美亜の指に食いつくようになっていてー

美亜から離れようとしないー。


美亜が最近”変わった”のはーーー…

”美亜の意思”ではないー


美亜は”寄生虫”に寄生されていたー。


自分の指に付着したグロテスクな生命体を

じーっと見つめる美亜ー。


「ーうふふふふふふ……♡

 この身体ー、本当にいいよなぁ♡」


美亜がニヤニヤしながら呟くー


”この身体”とはー、

寄生虫のことではないー。

”美亜の身体のこと”だー。


指輪ぐらいのサイズしかない寄生虫に、美亜は完全に支配されているー。


この寄生虫はー

”人の体内”ではなくー、

”人間の外側”に巣くいー、”支配”するー。


人間の免疫力は、予想以上に強く、

寄生虫の類が体内に入り込んでも、大抵の場合”駆除”されてしまうー。


しかし、この寄生虫は”それを回避して”人間を支配することに成功したー

”進化した寄生虫”だー。


人間の皮膚に噛みつき、人間を支配するー


しかし、今の美亜の指についているような”グロテスクな生物”が、

常に身体のどこかについていれば、当然、他の人から

奇妙な目で見られるし、駆除されてしまうー。


そうならないためにー


身に着けたのが”擬態”能力ー


美亜の指の寄生虫が再び”指輪”に変わっていくー。


この寄生虫は、その身体の支配を継続するため、

常に人間の皮膚に噛みついたような状態でいる必要があるためー、

”人間が身に着けるもの”に擬態するのだー


指輪ー

ネックレスー

ピアスー

イヤリングー

腕時計ー


ありとあらゆるものに擬態しー、

その人間の外側に張り付き、寄生するー。


「ーーーふふふ」

美亜は満足そうに髪を少し整えると、笑みを浮かべるー


そしてー、

振り返ったー


「ーーー!!!」

美亜が驚くー。


一緒にフードコートにいた友人の一人、紗季(さき)が、

驚いた表情を浮かべて立っていたのだー

丁度、鏡の死角になっている場所に紗季が立っていたため、

美亜は紗季に気付くことができなかったー


”どこから見られていたのかー”

そう、思いながらもー


「ーーーーーあ、紗季もトイレに来たんだねー」

美亜が微笑みながらそう言うとー、

紗季は、美亜の指にはめられた指輪を指さしたー。


「それ…何ー?」

怯えた表情の紗季ー。


「ん?これ?」

美亜は笑みを浮かべながら指輪を見つめるー。


「ーわたしのたからもの♡」

美亜はそう言いながら指輪を撫でると、

”先に戻ってるね”と、言いながら

トイレから出て行こうとするー。


しかしー

紗季はそんな美亜を呼び止めたー


「ーーー今、見たのー」

紗季が美亜の腕を掴みながら、

美亜のほうを見つめるー。


美亜は、少しだけ微笑みながら

紗季のほうを見つめ返すー


「見たって、何をー?」

美亜はなおもにっこりと笑うー。


「ーそ、その指輪ー…

 い、今…”化け物”にーー…」


紗季の言葉に、美亜を支配している寄生虫は

”見られたのかー”と、小さな声でボソッと呟くー


女子トイレで寄生虫が擬態を解くなどー

”無警戒”すぎるー。


だがー、そんな無警戒の行動には、意味もあったー。


「ーーー化け物ってなぁに?」

クスクス笑いながら、美亜が言うー。


「この身体ー、本当にいいよなぁーーーって…

 言ったのも聞いたよー…


 あ…あなたーーー…誰なの!?」


美亜に向かって怯えた表情で叫ぶ紗季ー。


美亜は「ひっどいなぁ~…

友達に向かって、あなた誰、とかー

わたしの宝物を”化け物”とかー」と、なおもニヤニヤしながら呟くー


茶色に染まった髪とー

少し派手になったメイクー

そんな顔を、紗季に近付けるとー

美亜は「そんなに言うんだったら、確認してごらんー」と、

”自分の身体”から、指輪が離れないように、慎重に

指から指輪を外すとー、それを大切そうに掴んだまま、

紗季の方に差し出したー。


「ーーーー…」

紗季は、怯えた表情を浮かべながらも、美亜のほうを見つめるー。


「ーほら、わたしの指輪ー

 ”化け物”なんかじゃないでしょー?」


その言葉にー

紗季は警戒の表情を浮かべながらもー

美亜からそれをーーー

受け取ったー


次の瞬間、美亜が「ぁ…」と、声を上げて

トイレの床に崩れ落ちるー。


指輪を受け取った紗季がビクッと震えて

ニヤッと笑みを浮かべるー


「見られちゃったなら仕方ないやー

 ”引っ越し”完了~~…」


ニヤニヤと紗季が笑うと、指輪に擬態していた寄生虫が

紗季の腕に巻き付きー、そのままブレスレットに”擬態”するー


「ーーふふんー…わたしの宝物」

紗季はそう呟くとー

「ー今までありがとうーなかなかいい住み心地だったよー」と、

白目で痙攣している美亜を見つめてー

そのまま、トイレの外に出たー


トイレの外に出た瞬間ー

紗季は叫ぶー


「と、友達が急に倒れてっ!」

とー。


周囲の利用客が驚いて駆け付けるー。


フードコートで待機していたもう一人の友人、百恵(ももえ)も

到着すると、驚いた様子で「美亜ちゃん!?」と、

トイレの床で意識を失っている美亜を呼びかけるー


「ーわ、わたし、後からトイレに来たんですけどー

 そしたら、美亜が倒れててー」


紗季がそんな”演技”をしながら、デパートの従業員に

説明するとー、やがて駆け付けた救急隊に、

美亜は緊急搬送されたー


「美亜ちゃんー…大丈夫かなー?」

心配そうに呟く百恵ー


紗季はそんな言葉に返事をせずー

笑みを浮かべながら、自分の腕に巻き付いた

寄生虫ー

いいやー、ブレスレットを見つめたー


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


謎の寄生虫は、いつ、どこで現れたのかー

それは、分からないー。


だが、突然変異により、

人間の”外側”から人間に寄生し、

さらにはアクセサリー類に擬態することで、

人間を支配してきたー。


主に寄生虫が狙うのは、人間の”女”ー


理由は、単純だったー。


”繁殖”するためー。


男の肉体を奪っても、繁殖は難しいー。

それに、寄生した身体で出産することに意味があるー


寄生虫のDNAを直接受け継いだ人間が生まれるからだー。


「ーーーねぇー…今度さー…わたしとヤらない?」

支配された紗季は、学校で不良男子を誘惑すると、

笑みを浮かべるー。


寄生虫に支配された人間はー

性欲が何倍にも膨れ上がりー

身体は激しく興奮した状態が続くー。


紗季を支配した寄生虫は

紗季の身体から溢れ出る欲望を感じながらー

男を誘惑していたー


”寄生虫と人間のハイブリッド”とも言える

子供を産むためにー


「ーーー…急にどうしたんだよー…紗季ちゃんー?」

ニヤニヤする不良に、紗季は「これが本当のわたしー」と、

不気味な笑みを浮かべたー。


・・・・・・・・・・・・・・・・・・


「ーーあ、お姉ちゃんおはよ~!今日もお出かけ?」


紗季の妹・千夏(ちなつ)が笑いながら言うー。


「ーーうん!ちょっと友達と~」

そう言いながら、満足そうに化粧をした自分の顔を見つめる紗季ー。


「ーあ、お姉ちゃん!最近、彼氏でもできたんでしょ~?」

笑いながら言う千夏ー。


千夏に対して、胸元を強調するかのような服に、

ペンダントを光らせながら紗季は微笑むー

先日は、ブレスレットー、今日はペンダントに擬態しているー。


「どうして~?」

紗季の言葉に、千夏は即答するー


まさかー

”お姉ちゃん”が、”お姉ちゃん”ではなくなっているなどとはー

夢にも思わずにー


「だってお姉ちゃん、最近すっごく綺麗になったし!」


その言葉に、紗季は「ふふー」と、笑うと

鏡を見つめながらー

「確かに綺麗だねーーー ”この人間はー”」

と、笑みを浮かべるー。


「え?」

千夏が首を傾げるとー、

紗季は「なんでもな~い」と、言いながら

外に向かう支度をするー。


「ーーーー」

母親の方を見つめる紗季ー。


”仲間ーね”

紗季は微笑むー。


紗季の母親、敏子(としこ)は既に”仲間”だったー。


敏子がいつも身に着けている

”婚約指輪”が、”仲間”だー。


寄生虫同士はー

”擬態しているアクセサリー”を見分けることができるー


既に、寄生虫はかなりの数ー

人間を支配しているー。


探せばーーー

必ず、見つかるー。


クラスにも”二人”いたー。


紗季は「ーーお母さん、行ってくるねー」と、言うと、

母の敏子は「たっぷり”楽しんで”来なさい」と、笑みを浮かべたー。


当然ー、紗季に寄生した寄生虫だけではなくー

母親・敏子の方に寄生している寄生虫にもー

”同じように”紗季が”寄生”されていることに気付いているはずだー。


「ーー(この家で支配されてないのはーこのメスの妹だけかー)」

紗枝はそう思いながらー”まぁいっかー”と、

そのまま外へと出かけたー。


「ーー生殖行為ーいっぱいしなくちゃ、ね♡ ふふー」

支配された紗季には、もはや”自分の意思”など

存在していないー。


・・・・・・・・・・・・・・・・・・


「ーーーーーあ…こんにちはー」


美亜から紗季にー

”寄生虫”が移動したあの日ー、

フードコートで一緒にひと時を楽しんでいた女子生徒・百恵は

美亜が入院している病院を訪れていたー。


偶然鉢合わせした美亜の母親に対して頭を下げる百恵ー。


「ーーーーーあ、百恵ちゃんー…こんにちはー」

美亜の母親が悲しそうに言うー。


百恵はー”意識を取り戻さない”美亜のほうを見つめるー。


「ー美亜ちゃんー…」

心配そうにそう呟く百恵ー


「ーーーー」

美亜の母親も、娘の美亜が”最近、ちょっと変わった”ことには

気付いていたー。

けれど、高校生という年頃だし、そういう年頃だと、

それほど深くは心配していなかったー。


しかしー

まさか、こんなことになるなんてー。


病院の先生も、美亜の身体に、大きな異常は見当たらないのだと言うー。


「ーーー早く元気になって、また一緒に遊ぼうねー」

そう呟きながら、美亜の手を握る百恵ー


ふと、美亜の指に、”指輪”がないことに気付くー。


だが、百恵はすぐに”病院に運ばれたあとに外されたのかな”と、

思いながら、それ以上は気にしなかったー



”ククククー”


病室を通りがかった女性看護師が笑みを浮かべるー。


”我々に”寄生”されていた人間はー

 そう簡単には目を覚まさないー

 仮にー目を覚ましたとしてもー…

 重い障害が残ることも、あるー”


そう思いながらクスクスと笑う女性看護師の腕には

ブレスレットが輝いていたー。


・・・・・・・・・・・・・・・・・


「いらっしゃいませー」


商店街の一角で、おばあさんが経営している

アクセサリー店にやってくる二人組の女子大生ー


「ーーーあ、これ可愛い~!」

そのうちの一人が、

微笑みながら、可愛らしいペンダントを手に掴むとー

その瞬間ー


一瞬ピクッと震えて、笑みを浮かべたー


そのままペンダントを身に着ける女子大生ー


もう一人の友達が「えっ?勝手につけちゃダメだよ!」と、

慌てるもー、店主のおばあさんは

「ーー大丈夫だよー。あんたも、気に入ったものがあれば

 自由に見に付けてもらって構わないよー」と、微笑むー


その言葉に、もう一人の女子大生も、「いいんですか?」と、言いながら

嬉しそうにお店にあった可愛らしい指輪を身に着けるとー

そのまま二人は邪悪な笑みを浮かべたー


今日もまた、2人の女子大生が”寄生”されたー


2人は、寄生虫が擬態したアクセサリーを身に着けた瞬間ー

肉体も精神も支配されてしまったー


各地で、日々、寄生虫による支配は拡大しているー。


人類が、それに気づかずー

対策も打てないままー。



②へ続く


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


コメント


今回は、導入部分(?)的なお話でした~!★

擬態する寄生虫…!


私のペンダントも、もしかすると…?笑


続きはまた次回デス~!

Files

Comments

No comments found for this post.