<入れ替わり>村人A、お姫様になる④~未来~(完) (Pixiv Fanbox)
Content
王国の第2王女・アイリーンと入れ替わってしまったボブー。
村の人々の暮らしを知りたい、という理由で、
しばらく入れ替わった状態のまま過ごすことになってしまうボブ。
アイリーンの身体で戸惑う日々を送る中、
王宮では第1王女と第3王女による跡目争いが勃発、
アイリーンの父親であるローランドが第1王女・グレースの配下により
抹殺され、そのグレースも、その罪を第3王女のリリーに暴かれて失脚、
実権を握ったリリーの手により、処断されたー。
「よかったね!お姉ちゃん!」
無邪気に笑うリリー。
しかし、リリーは”入れ替わり”のことを知っているような素振りを見せー…?
★前回はこちら↓★
<入れ替わり>村人A、お姫様になる③~跡目~
王国の姫、アイリーンと入れ替わってしまった 辺境の村の村人、ボブ。 ボブになったアイリーンは、辺境の村が自分の想像よりも 遥かに苦しい状況であることを改めて知り、また、村人たちが 王国に不満を抱いていることも知るー。 そんな中、ボブの妻・チェルシーに”あなたはどちら様ですか?”と、 その正体を見破られて...
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王宮ではー”次期女王”となった、
第3王女リリーの就任の儀式が執り行われていたー
「ーーふふふふ…わたしが女王ー」
笑みを浮かべながら、第3王女リリーは
満足そうに臣下たちのほうを見つめるー。
無邪気な振る舞いをしながら、
「ーわたしが女王になったからにはー
も~っと、もっと、この王国を良くしていくからね!
みんなもついてきて!」
と、いう宣言で締めくくったー。
第3王女リリーの
”無邪気な振る舞い”は、天然なのかー
それともーーー
「ーーーーー…」
第2王女アイリーンと入れ替わったままのボブは
不安そうな表情を浮かべるー
”本当にこのままで良いのだろうかー”
と、いう不安だー。
ボブと入れ替わったアイリーンは
今も”村人”として生活をしているのだろうー。
「しばらくの間、あなたにわたしの代わりをお願いしたいですー!」
入れ替わった直後のボブ(アイリーン)の言葉を思い出すー
”しばらくって言うのは、いったいいつまでなんだー…?”
困惑の表情を浮かべながら、玉座で嬉しそうに笑みを浮かべている
第3王女リリー…いや、新女王となったリリーのほうを見つめるー。
”俺と入れ替わっている間にー
国王様が死んで、第1王女のグレース姫も死んでー
挙句の果てに第3王女のリリー姫が女王就任ー…
アイリーン姫はー……いつ、戻ってくるんだー?”
そんな不安に苛まれるアイリーン(ボブ)ー
そしてー
自分の部屋に戻りながら
”もう、戻ってこないつもりなんじゃー?”と、不安を覚え始めるー
「ーーーー」
部屋に戻ると、
メイドのアニーが出迎えるー。
少し前から護衛の騎士・サミュエルは不在で、
何か任務に赴いているようだー。
元々ー、父親である国王ローランドが死亡した後にはー
第2王女のアイリーンが後継者にふさわしいと言われていたようだー。
だがー、結果は、第3王女のリリーが後を継いだー。
それなのにー、メイドのアニーは特に何も気にしていない様子に見えるー
”ーーーー…もしかしたら、俺がずっと姫様として
生活することになるのかもしれないー
アイリーン姫は、この窮屈な生活に嫌気がさしてー…”
そんな風に思うと、アイリーン(ボブ)はある決意をするー。
「ーーーあの…アニーさん…」
アイリーン(ボブ)がメイドのアニーに声を掛けると、
アニーが「さ、さん!?」と、少し驚いた様子を浮かべるー。
「ーーあ、い、いえー…アニー…
お…わ、わたしもーやっぱりしっかりしなくちゃって思ってー
い、色々、教えてくれるか、、かしらー」
アイリーン(ボブ)がそう言うと、
アニーは少し意外そうな表情をしながらもー
「やっと、自分のことは自分でやる気になったんですかー?」と
笑みを浮かべるとー
「ーまずは…着替えぐらい、自分でできるようになってくださいね」
と、”着替えの指導”をし始めたー
「ーー(はぁ~…姫様って毎日こんな服を着たり、脱いだり
大変だよなぁ~)」
そんな風に思いながら、アイリーン(ボブ)は自分の服を見つめたー。
・・・・・・・・・・・・・・・・・
「ほらほら、今日はもう遅いからー家に入りなさいー」
ボブ(アイリーン)が、子供たちと
心底楽しそうに遊び終えると、
ボブの妻、チェルシーの近くにやってきて、
穏やかな笑顔を浮かべたー
「村の暮らしはー大変ですけどー
村でしか味わえないことも、色々あるのですねー」
ボブ(アイリーン)がそう言うと、
妻のチェルシーは穏やかな笑みを浮かべながら
子供たちの後ろ姿を見つめたー
ただー、辺境の村は、
アイリーン姫の想像以上に”貧しい”状態だったのも事実ー
薬すらまともに手に入らず、チェルシーのような人間が
病気も治療も満足に行えないー、
そんな状況に陥っているー
「ーーこうして、女同士で対等に話せる機会も
なかなか王宮ではないものですからー」
ボブ(アイリーン)が笑うと、
チェルシーは「ー夫に”女同士”って言われると、
何だか不思議な感覚ですー」と言いながら、笑うー。
姫に対する敬意を持った喋り方をしながらも、
チェルシーは、王宮の人間とは違い、
ボブ(アイリーン)に自然体で接してくれたー。
アイリーン姫は、そんなチェルシーに改めて感謝の意を述べるー。
「ーーーーー」
がー、チェルシーは少し不安も感じていたー
「それでー…夫とは”いつ”元通りになるおつもりなのでしょうかー?」
そう尋ねて来るチェルシーに対して、
ボブ(アイリーン)は「”時が来たら”必ずー」と、呟くー。
「ーー大丈夫ですよー
村人の身体を盗むお姫様ー…なんて、聞いたことないでしょう?」
ボブ(アイリーン)が穏やかに笑うー。
「それは、確かにそうですねー」
チェルシーがそう返事をすると、
ボブ(アイリーン)は星空を見つめながら呟いたー
「ーーー”時”は、もうすぐですー」
とー。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・
それからも、時は容赦なく流れていくー
アイリーン(ボブ)は剣の稽古に励んでいたー。
元々”村一番のハンター”と呼ばれていた
ボブは、アイリーンの身体でも、優れた能力を発揮していたー
”斧が剣になっても、なんとかなるものだなー”
「ーーふ~~~」
稽古を終えると、汗をぬぐいながら稽古場から出て来る
アイリーン(ボブ)ー
すっかり”王女”としての生活にも慣れー、
アイリーン(ボブ)は次第に王宮の人間の信頼を
取り戻しつつあったー。
「ーありがとうございますー」
使用人にお礼の言葉を述べると廊下を歩き始める
アイリーン(ボブ)ー
”姫様ってのもーなかなかいいもんだなー”
アイリーン(ボブ)はそんな風に呟きながら、
ふと、王宮内の装飾に反射した自分の顔を見つめるー。
”綺麗ー”
自分でも、そう思ってしまうアイリーン(ボブ)ー
入れ替わった当初は、とにかく必死でそれどころではなかったがー
今は”この美人な姫様に俺がなってるなんてー”と、
そんな感情を楽しむ余裕さえ、できていたー。
「ーーーお姉ちゃんー」
ふと、背後から声がしたー
ーー!?
驚いて振り返ると、そこにはやつれた表情の
現女王・リリーの姿があったー。
リリーに呼び出されて、リリーの部屋に移動する
アイリーン(ボブ)ー
そこで、アイリーン(ボブ)は驚きの表情を浮かべるー
部屋が暴れたかのように散らかっているのだー
「ーーーもう、わたしには女王なんて無理!
モード村のやつらも、スイープ島のやつらも、
わたしに意見ばっかりして!
も~~~~!知らない!」
頬を膨らませるリリー。
そして、リリーは
「お姉ちゃんはどこにいるの!?すぐ呼び戻して!」と、叫ぶー。
リリーは”策謀”には長けていたもののー
子供のように無邪気で、拗ねやすい性格は”素”なのも事実ー
女王に就任後、自分の思い通りにならないと拗ねて
すぐに王宮からの支援などを打ち切る行為を繰り返すなどしてー
既に”女王としての仕事”は、事実上破綻寸前の状態だったー。
リリーに、女王など務まらなかったのだー
リリーは言うー。
”入れ替わりを仕組んだのはわたし”
だとー。
入れ替わりの宝玉を、とある場所で部下に命じて入手し、
伝説の秘宝の”嘘の噂”をアイリーンの耳に届くように流しー
アイリーン姫が”誰か”と入れ替わるように仕向けたー。
アイリーンと
誰かが入れ替われば、アイリーンは失脚ー、
アイリーンが失脚すれば、長女のグレースは必ず
実権を握ろうと動きだすと、リリーは計算し、
その通りになったのだー
父・ローランドをグレースに殺害させ、
グレースの罪をリリーが暴き、グレースを処断しー、
アイリーンは中身が入れ替わったため女王になれずー
”リリーが女王になる”
そういう計画を、リリーは練っていたのだー。
けれどー
「もう、女王なんて嫌!
お姉ちゃんを、呼び戻してー」
リリーが叫ぶー
「そ、そう言われましてもー…」
アイリーン(ボブ)が戸惑いながら言うと、
「ーじゃあ、あんたがその身体で女王をやればいいじゃん!」と、
泣きわめくようにして叫んだー
「ーーーーーーーーーーー」
その様子を見ていた何者かが、笑みを浮かべて
その場から立ち去ったことに、
アイリーン(ボブ)も、リリーも気付けなかったー。
その数日後ー。
スイープ島視察に出かけたリリーは、
その道中で、”暗殺”されたー。
野盗の仕業だったのだと言うー。
そしてーーー
タイミングを見計らったかのように、
ボブ(アイリーン)が、騎士・サミュエルと共に
城へやってきたー
”内密に”とのことで、
アイリーン姫が普段使っている応接間にやってきたボブ(アイリーン)ー
「ーーおかげで、良い経験が出来ましたー」
微笑むボブ(アイリーン)
アイリーン(ボブ)が「いえ」と、頭を下げると、
「ーわたしがいない間に、お城が大変なことにー
ご迷惑をおかけしましたー」
と、ボブ(アイリーン)は頭を下げたー
「ーーーーー」
父・ローランドも、姉も妹も死亡してしまった今ー、
「わたしが女王になるしかありませんー」と、
ボブ(アイリーン)は言うー。
そしてー
”ボブの身体で村人の生活を知ることができたのは
とても大きな経験だったー”と、
改めて感謝の言葉を述べたー
「ー必ず、あなたの村も含めー…
王宮からの支援が行き届くように、この王国を
作り替えていきますー」
ボブ(アイリーン)が微笑んだー。
横にいた騎士・サミュエルが入れ替わりの宝玉を
ボブ(アイリーン)に手渡すー
”これで、元に戻れるー”
「ーーーー」
ボブ(アイリーン)が、サミュエルのほうを見て
口元を動かすー。
サミュエルが頷くー
”帰り道に、吊り橋が落ちて事故に遭うー
残念ですー”
という意味深なメッセージをボブ(アイリーン)が
サミュエルに伝えるー。
それに気づかず、アイリーン(ボブ)は
入れ替わりの宝玉に手をつけようとしたがー
直前で、手を止めたー
「ー姫様ー…
ひとつ、お聞きしたいのですがー」
アイリーン(ボブ)が言うと、
ボブ(アイリーン)は「えぇ…何でしょう?」と、
笑みを浮かべるー
「ー姫様は”こうなること”を全て分かっておられたのでは?」
とー。
「ーーー」
ボブ(アイリーン)はその言葉に、少し躊躇ったような表情を浮かべたあとー
全てを語ったー。
実はーーー
”宝箱”を開けると入れ替わってしまうー…
そんな”リリーの罠”には、最初から気付いていて、”あえて”引っかかったことー
アイリーンがその辺の村人と入れ替わりー
王宮でいつも通り振る舞えなくなれば、
必ず、第1王女のグレースは今が好機と、
父のローランドを暗殺して、自分が実権を握ろうとして、
第3王女のリリーがそれを利用し、グレースを失脚させて、
自分が女王になりー…
最後には、”女王の器”ではないリリーが、女王の仕事に嫌気がさして
それを放り出すー
そう、アイリーン姫は読んでいたのだー。
サミュエルにだけは”入れ替わり”のことも事前に伝えてあり、
時々、村にいるボブ(アイリーン)に現状を報告しに行っていたー。
つまりー
アイリーンは、
父・ローランド、第1王女グレース、第3王女リリーの全員が
失脚するのを待っていたのだー
「ーーー…わたしのことを、悪魔の女と呼んで頂いても構いませんー」
ボブ(アイリーン)はそう前置きした上で言うー。
「でも、こうするしかなかったのですー」
とー。
父・ローランドは穏健な国王だが、
”王宮から離れた場所”にまで目を行き届けることができず、
結果的にボブの村のような、苦しい環境に置かれた村が多く存在しているー
グレースやリリーでは、この王国を統治することはできないー
”苦しむ民を救いたい”
その一心で、アイリーンは心を鬼にして、
家族が全員失脚するよう、仕組んだのだー
「ーーーーーー」
呆然とするアイリーン(ボブ)ー
ボブ(アイリーン)は
「わたしはーーー…民の皆さんのためならー
心を鬼にする覚悟ですー
王国の平和のためならー残酷なこともー…しなくてはいけません」
と、言い放つー。
「ーですがー、わたしが女王になったあとには、
あなたの村もー必ずー、支えることをお約束しますー」
ボブ(アイリーン)はそう言うと、頷いたアイリーン(ボブ)を見て、
「本当に、ありがとうございましたー」
と、入れ替わりの宝玉で元に戻ろうと、提案するー。
アイリーン姫の平和を願う心は真実なのだろうー。
だが、そのために家族の死を遠回しに”実現”させるなどー
アイリーン(ボブ)はそう思いつつ、
口を開いたー。
「ーーー入れ替わりのことを、知っていたのはー?」
とー。
その言葉に、ボブ(アイリーン)は言うー
「わたしと、あなたと、サミュエルと、リリーだけのはずですー」
入れ替わりを仕組んだ張本人のリリーと、
入れ替わった姫とボブ、そして側近の騎士サミュエルー
入れ替わりを知るものはー、この4人だけなのだと言うー。
「ーーなるほどー…ではー」
アイリーン(ボブ)はそう言葉を口にするとー
突然、剣を手に、騎士サミュエルを斬りつけたー
「ぐあぁっ!?」
突然のことに驚き、一瞬で絶命するサミュエルー
「ー!?!?!?」
ボブ(アイリーン)が目を見開くー
「姫様ー…何か月も”姫”を押しつけておいてー
今になって、身体を返せー…
それは、都合よすぎではありませんか?」
アイリーン(ボブ)が笑うー
ボブ(アイリーン)は「あ…あなたはー…」と、
呆然としているー
アイリーン姫は読み違えたー。
どんなに村で慕われている優しい村人でも
貧しい生活から”姫”としての生活を何か月も味わえばー
”戻りたくない”という気持ちが芽生えるー。
アイリーン姫として、ここ最近、一生懸命努力してきたボブは
”俺がアイリーン姫だー”という考えに、
いつの間にか至ってしまっていたー
「ーあなたを消せばー
入れ替わりを知る者は、いないー」
アイリーン(ボブ)が言うと、
ボブ(アイリーン)は震えながら言葉を口にしようとしたー
だがー、
それを遮り、アイリーン(ボブ)が言うー。
「村の暮らしを良く知る俺の方がー
より良い王国を作れると思いますー
ですので、姫ー
申し訳ありませんが、この身体はお返しできませんー
”平和のためなら、残酷なこともしなくてはならない”
たった今、姫がおっしゃった言葉ですー」
アイリーン(ボブ)は、ニコッと笑うとー、
逃げようとしてボブ(アイリーン)をそのまま斬り捨てたー
返り血を浴びてー
アイリーン(ボブ)は、「これでー…俺が、姫ー」と、
自分の手を見つめてー、クスクスと笑い始めたー
・・・・・・・・・・・・・・・・・
第2王女・アイリーンが女王に就任したー
ボブが元々住んでいた辺境の村や、
その他の貧しい村に、手厚い施しをしていくアイリーン(ボブ)ー
妻であるチェルシーとは、ボブがボブであったころのように
接することはもうできないが、
とにかく、手厚い支援を行ったー。
姫の立場を奪ったー
とはいえ、それは暴政をするためではないー
本来のアイリーン姫以上にー
各地の村に一生懸命施しをしていくアイリーン(ボブ)ー
だがーーー
ボブにも、誤算はあったー。
第1王女グレース、第2王女アイリーン、第3王女リリー…
誰もが、自分の中で”計算”を働かせてー
そして、誰もがどこかで”読み違え”をしていたー
人間は、全てを予測できるほど、優れた生き物ではないのかもしれないー
ボブも、そうー。
アイリーンになった、ボブの誤算ー。
それはー
ボブになっていた間に、アイリーンが
ボブの妻・チェルシーに入れ替わりのことを話していることー
そしてー、
”辺境の村”ばかりに支援を繰り返していることによってー
今度は身近なところで不満が高まっていることー
それをー
アイリーンになったボブは、読むことが出来ていなかったー
「ーーーーー」
ある日の夜ー。
アイリーン姫の”貧しい村ばかりを手厚く支援するやり方”に
不満を爆発させた、王族に連なるものたちがー、
短刀を手に、アイリーン姫の居住区に忍び込んでいたー
またー、王宮で騒動が始まるー。
入れ替わりさえなければ”普通の村人”で一生過ごすはずだった
ボブの人生はー、
お姫様になったことで、大きく変わってしまったー
一生得られなかったであろう良い経験を手にすると同時にー
一生遭遇しなかったであろう、悪い経験もー
することになってしまったー。
王宮がまた、騒がしくなるー。
おわり
・・・・・・・・・・・・・・・・・・
コメント
村人とお姫様の入れ替わりでした~!★
素直に姫に身体を返していたほうが、
まだ良い結末を迎えられたのかもですネ~!
お読み下さり、ありがとうございました!★!
今日は寒いので、体調を崩さないように
気を付けて下さいネ~!