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「いやいやいやいや、俺は農業はやらないってー」


大学生の一人息子・勝村 祐介(まさむら ゆうすけ)は、

いつも通り、そんな言葉を呟いたー。


祐介の実家は、農業を営んでいるー。


しかし、父・厚英(あつひで)は、既に50代ー。

体力的にも、年齢的にも、祖父ー、いや、そのさらに前から

受け継がれてきたこの畑を守るためには、

そろそろ”後継者”を探さねばならなかったー。


そのためー、

厚英は”できることなら、息子の祐介に後を継いでほしいー”と、

そう思っていたー。


けれどー、祐介は”嫌だよ農業なんて”と、

ずっと言っていてー、

就職活動をしている今も、度々父の厚英から、

”後を継いでほしい”と言われては断る日々が続いているー。


もちろん、無理強いはできないー。

何度も何度も”後を継がないか?”とは言っているものの、

祐介本人が”首を縦に”振らない限りは

強引に後を継がせるつもりはないー。


「ーーー祐介の就職先が決まったら、

 いい加減諦めないとなぁ…」

ある日、厚英はそんな風に呟くー


”その日、その瞬間”まで諦めるつもりはないー。


祐介の就職が決まるその瞬間までは、

厚英は何度でも何度でも、機会があれば頼んでみるつもりではいたー。


もちろん、しつこいとは思われるだろうけれどー、

出来る限りのことはしてー、

それでもダメだった場合は、

妻の美香子とも相談して、

”自分の代”で、この畑は終わりにするー

そんな覚悟もしていたー。


「ーーー祐介には、祐介の人生があるからねぇ…」

妻の美代子がそんな風に呟くー


厚英とは10歳以上の年の差がある美代子ー。

だが、祐介が後を継がない、ということになれば

夫の厚英と共に”畑”からは身を引くつもりでいたー。


「ーーあぁ、そうだなー

 本人が首を縦に振らない限りは、俺も押し付けるつもりはないー」


厚英がそう言いながら頷くとー

「でもー」と、厚英はニヤニヤと笑みを浮かべながら

言葉を口にしたー。


「ーーー祐介の就職が決まる日までは、粘るけどなー!」


ニッと笑う厚英ー。


「ーもう、何百回もお願いしたでしょ?

 今更変わらないって」


美代子は半分呆れ顔で、諦めない厚英に対してそう言うと、

「まぁー、そりゃ分かってるんだけどさー」と、

名残惜しそうに畑のほうを見つめたー。


・・・・・・・・・・・・・・・・


「ーー就活は順調かー?」


それから数週間後ー、

父・厚英が息子の祐介にそんな言葉を投げかけると

「はははー、油断はできないけど、

 やれることはしっかりとやってきたからー」と、

祐介は笑いながら返事をしたー。


基本的にー、祐介は父親の厚英とも、

母親の美代子とも、特にその関係は悪くはなく、

互いにいつでも気軽に話せる間柄だー。


「ーー親父、どうせ俺の就活が失敗すれば

 農業、継いで貰えるとか思ってるんだろ?」


ニヤニヤしながらそう言う祐介ー。


「ギクッ!」

厚英が大げさなリアクションで驚いて見せるー。


「ーほ~ら、やっぱりなー。

 でも、残念だけどー、俺は内定をもらって就職するぜ」


祐介がそんな風に笑いながら言うと、

厚英は「ま、まぁ…お前の就職が決まるならー、

親としてそれはもちろん、嬉しいんだがー」と、苦笑いしながら

頷いたー。


少し残念そうにしている父・厚英の姿を見て、

祐介は少し、気を紛らわせようと、

「ーーーここで仕事してちゃ…ほら、出会いもないし?」

と、そんな冗談を口にしたー。


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


だがー


”事件”は起きたー。


「ーなんだこれ?」


ある日ー。

畑の一角ー、トマトを栽培しているスペースで、

”見たことのない形状のトマト”が見つかったー。


長年農業に従事してきた厚英でも、見たことのないトマトー。

首を傾げながらネットで確認してみても、

やはり、その情報はほとんど存在せず、

困惑するー


「ーーー…これは、新種かー?」

厚英がそんなことを呟きながら、

しばらくそのトマトを見つめること数分ー…


「ーー………」

”どんな味がするのか”と気になった厚英は、

そのトマトを軽く水洗いするとー、

それを、口の中へと放り込んだー。


これが、キノコだったら流石に食べるようなことはしないがー、

”毒入りトマト”なんて聞いたことがないし、

少なくとも、ここには生えるはずなどなかったー


「ーーー…!」

トマトを口にした厚英は、驚きの表情を浮かべるー


”うまい!”

とー。


今までに食べたどんなトマトよりも美味しいー。

そんな風に思いながら”なんだこのトマトは!?”と、

不思議そうに、まだ半分ほど残っている

そのトマトを見つめたその時だったー


身体の全身に、強い違和感を感じたー。


何かー、全身が”ゆらぐ”ような、

言葉に言い表しがたい、今までの人生で

一度も経験したことのないような違和感をー。


「ーーな…何だー…!?」

”痛い”とか、”苦しい”とか、そういう感覚ではないー。

だが、この感覚はー、普通ではーーーー


そんな”異様な感覚”に困惑しているとー

やがて、自分の手に、何か不思議なものが触れる感触がしたー


「ー!?」

ビクッとして”触れたもの”を確認する厚英ー。


すると、そこにはー”長い髪”が、見えたー


「ーだ、誰かいるのか?!」

近くに”女”がいるのかと勘違いした厚英が

そう呟くがー、

その時ー、”自分の声”が、

まるで女のようなー、

いやー…まるでどころか、女そのものの声に

なっていることに気付いたー。


「ー!?!?!?」

よく見れば、手も色白の綺麗で華奢な手に

変わっているー


「ーえ…!?!?え…!?!?え…?」

気付けば自分の服がぶかぶかになっていて、

”明らかにサイズの合わない大きな服”を着ている状態に

なっていた厚英ー。


しかも、視線を落とすと、そこには

自分にはないはずの、外から見ても明らかに分かる”胸の膨らみ”が

見えたー


「ーな、な、な、なんだこれはあああああああ!?!?!?」

大声で悲鳴を上げる厚英ー。


その叫び声の数分後ー


「ーー!?」

妻の美代子が、トマトを栽培しているハウスの中に

駆け込んできたー。


”知らない女の声”が聞こえたため、美代子が

様子を見に来たのだー


「ーー!?」

美代子が驚くー


そこにいたのは、美代子から見れば

”夫の服を着ていた見知らぬ女”


「ーーえ…?ど、どちら様ですか?

 どうしてうちの畑に!?」


美代子がそう叫ぶと、

”美少女”になってしまった厚英が

「ち、ち、違うんだ!」と叫ぶー。


「ーへ、変なトマトが生えていて、

 それを食べたら、き、急にーこんな状態にー」


可愛い声で叫ぶ厚英ー。


しかし、妻の美代子はそれを信じようとしないー。


「ーーど、ど、泥棒ー!?」

美代子がそう叫ぶー。


”勝手にトマトを栽培しているビニールハウスの中に入り込んで

 トマトを食べた泥棒”


そんな風に思ったのだー。


「ーー…え?ち、ちがっ!待ってくれ!話せば分かるー!」

厚英は必死に自分が厚英だと信じてもらおうとするー。


「ーーー…け、警察をー」

だが、お構いなしに美代子は警察に通報しようとし始めるー


無理もない行動、と言えばそうかもしれないー。


だが、厚英としても通報されるわけにはいかなかったー


「美代子!美代子の誕生日はー」

妻・美代子の個人情報を口にし始める女体化した厚英ー。


誕生日、血液型、好きなもの、嫌いなもの、

昨日の晩御飯、初デートの場所、プロポーズの言葉、

結婚記念日、自分の誕生日、年齢、血液型、フルネーム、

去年の誕生日プレゼント、

思いつく限り、何でも口にしたー。


下手をすればー

”勝村家のこと”を調べまくっているヤバい女扱いされてしまう

可能性もあったため、とにかく、”ストーカーですら調べることができない

レベル”で個人情報をマシンガンのように、可愛い声で

発していくー


「美代子の体重はーー」


そこまで叫んだところで、

「あ~~~~~!もういいよ!わかった!」と、美代子が叫ぶー


「ーー本当に、アンタなんだね?」

美代子が確認すると厚英が「そ、そうなんだよー」と、呟くー


目の前にいるのは、

とても可愛らしい美少女ー

高校生かー、大学生ぐらいの年齢に見えるー。


変なトマトとやらを食べたら

性別だけではなく、年齢まで若返った、とでも言いたいのだろうかー。


「ーーーーどうしよう?」

厚英が困惑しながら、美代子に言うと、

美代子も困惑して「ど、どうしようって言われても…ねぇ…?」と、

二人揃って戸惑いの表情を浮かべたー。


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


「ーーーマ、マジでー?」

大学から帰宅した息子の祐介は、

母親の美代子の隣にいる”女体化した父・厚英”を見て

困惑の表情を浮かべたー


既に厚英は美代子に言われて着替えて、

美代子の服を貸してもらって、座っている状態ー。


「ーー……ーめ、滅茶苦茶可愛いじゃん…」

顔を赤らめながら祐介がそう言うと、

女体化した父・厚英は恥ずかしそうに顔を赤らめながら

目を逸らすー


「ーな、な、なんだよその反応ー…

 い、いつも通りにしてくれよー」


祐介は”逆にそんな反応されると意識してしまうだろ”と

言いながら起きた出来事を、美代子と、女体化した厚英本人から

聞かされたー


「ーそっ…そっか~…

 で、でも、何でいきなりそんなー…?」


可愛らしいスカートに、若い子が着そうな服装で

身を固めている女体化した厚英を見て、

祐介は「も、もしや親父の趣味か!?」と叫ぶと、

厚英は「ち、違っ!」と、顔を真っ赤にして反論しようとするー


それを見た妻・美代子がー

「ー女の子になっちゃったお父さんに会うものが、

 わたしの若い頃の服しかなかったからー」と、

苦笑いしながら言ったー。


母・美代子は若い頃はとても可愛かったー…

と、聞いているー


祐介はそんな”可愛かったころの母”のことは知らないが、

そんなころに着ていた服なのだろうー。


「ーー…あぁ、なるほどー」

若い頃と今の母・美代子は体格も変わっているため、

”今の美代子の服”では、女体化した父にはサイズが合わないー。


「ーーー……で……どうするんだ?

 何か手伝えることがあれば手伝うけどー」


祐介がそう言うと、

厚英は「ま、まぁー…今のところはー」と、呟きながら

「祐介が帰ってくるまで、色々試してたけど、結局ー

 元に戻れないから、”寝れば治るかな”って話を

 母さんとしてたところだ」

と、戸惑いながら呟いたー


「ーーー……」

そんな”女体化した父”を、戸惑いの目で見つめる祐介ー。


「な、な、治ると、いいなー」

ドキドキした様子の祐介を見て、

女体化した父・厚英は

「な、何そんなソワソワしてるんだー?

 お前らしくないぞ?」

と、苦笑いしたー。


「ーーん、ま、まぁ…そうなんだけどー 

 頭の理解が追い付いていないって言うか…

 見た目が違うだけで、親父を親父として

 見れないって言うかー…


 なんかこうー

 目の前に可愛い子がいるのに、それが親父なんて

 信じられないって言うかー…」


祐介はそこまで言うと、

困惑した様子で頭を掻きむしりながら、

「その、つまりー、頭がバグってるんだよ」

と、目を逸らしながら言い放ったー。


「ーーって、いうか、スカート履いてるなら

 その座り方はやめろって!

 その…見えそうで、落ち着かない」


祐介のそんな言葉に、

厚英は「父親のスカート中を見て興奮するのかお前は!?」と、

困惑した様子で言い返すー


「ーい、いやしねーよ!

 しないけど、いやーでも、その姿ならー

 ドキドキするっていうかー


 あぁ、もうダメだー

 頭がおかしくなりそうだから

 俺は今日はもう寝るわー…」


祐介は首を横に振ると、

「とにかく!明日の朝には戻ってるといいな!」と、

自分の部屋へと戻って行ったー


「ーーーーーー」

女体化した厚英と、妻の美代子が、そんな祐介の

後ろ姿を見つめながらため息をついたー


年齢のせいか、厚英は女体化したあとにエッチなことー

などということよりも、まずは”どうすれば元に戻れるのか”

ばかり心配していたー。


しかしー、息子の祐介の反応を見て、

あることを思いついてしまったー


「なぁ、美代子ー」

女体化した厚英がそう言葉を口にするとー

「ー?」と、美代子が首を傾げるー


「”この姿”で、お願いすればー

 祐介、後を継いでくれたりしてー?」


女体化した厚英のとんでもない発想にー、

妻の美代子は「え…そ、それはー」と、

戸惑いの様子を見せながら

”目の前にいる美少女”を見つめたー。


②へ続く


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


コメント


女体化して美少女になってしまった

お父さん…★

色々大変なことになりそうですネ~!


翌朝、元に戻れるといいですネ~笑

(戻ってしまったら②の冒頭で<完>になってしまうので

 さすがにそれは…★)

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