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彼女の中には、”守り神”がいたー。


堀本 萌美(ほりもと もえみ)ー


現在、高校3年生の彼女には

生まれつき”声”が聞こえていたー。


何故かは分からないー

だが、その声はとても暖かく、穏やかでー、

いつも萌美のことを守り、導いてくれていたー


悩んだ時は相談に乗ってくれたし、

寂しいときは話し相手になってくれたし、

勉強する時にも、一生懸命サポートしてくれたー。


けれどー彼、”守り神”のことは、

萌美自身、ほとんど何も知らないー


”萌美の中”にいるから、

その姿を見たこともないし、

名前も知らないー。


それでもー、

いつも暖かい雰囲気で萌美を導いてくれる

”守り神”に、萌美はとても感謝していたー。


”ーもうすぐ、卒業だねーお疲れ様ー”


優しい男性ー、という感じの穏やかな声ー。

姿は見えないから年齢は分からないけれども

声を聞く限りでは”若そうな声”に聞こえるー。


「ーーーうん…ありがとう」

萌美はそう呟くと、

「ーーでも、本当に不思議ー」と、

周囲を見渡しながら、少しだけ微笑むー。


”不思議ー?何がだい?”

優しそうなその声が穏やかに呟くー。


「ー何がってー、

 あなたのことよー」

萌美が穏やかな口調でそう呟くー。


「ーわたし、小さい頃はずっと、

 人間には一人ひとり、あなたみたいな存在がいて、

 こういう風に”声”が聞こえてくるのが

 当たり前だと思ってたからー」


萌美はー…

生まれて物心がついたころから、

”内側から声”が聞こえていたー。


萌美にとっては”それが当たり前”だったしー

親も、友達も、先生も、みんなそういうものだと思っていたー。


だがー

大きくなるにつれて”そうじゃない”と気づいたー。


こんな風に”内側から声が聞こえている”のは自分だけで、

他の人たちには、こんな風に声は聞こえていないことを知ったー。


けれどー

不思議と不安はなかったー。


だってー、

”わたしの中の守り神”は、これまでずっと、

色々なことから、わたしを守ってきてくれたのだからー。


”ーーははは…確かにそうだねー…”

萌美の中の”守り神”は笑うー。


”俺のせいで、迷惑をかけてたらごめんね”

守り神が優しい口調でそう呟くー。


「ーーううんー迷惑だなんてー。

 わたしにとってはーあなたも”家族”みたいなものだし、

 お父さんとお母さんと、そしてあなたのおかげで

 今のわたしがいるんだからー

 迷惑なんて思ったことはないよー


 いつも、あなたには感謝してるー」


萌美はそこまで言うと、

近くに人の気配を感じて黙り込むー


”わたしの中の守り神”の声は

萌美以外には聞こえないー。


小さい頃から、よく両親に”ほら!この声!”と言っていたがー

両親はいつも首を傾げているばかりでー、

成長するにつれて”この声はわたしにしか聞こえないんだー”と

理解したー。


小学校に入学したばかりの頃ー

まだ、”みんなこういう声が聞こえている”と思っていた

萌美は、周囲の友達との会話で

”自分の中に守り神がいるのはわたしだけなんだー…”と、

次第に理解していったー。


”ーーははは、それはよかったー…

 ところでー”大学生活の準備”は順調?

 寂しくない?”


守り神が、そう言葉を呟くー。


萌美は返事をしないー。

下校中ー。

周囲に同級生がやってきたためー

”今は喋るわけにはいかない”のだー。


”守り神”は、

萌美の中にいるー


そのため、萌美にも”声”が聞こえるだけだし、

萌美以外の人からすれば、姿も声も見えないー


今、萌美が”守り神”と会話をすればー

周囲からは”独り言”を言っているようにしか見えないー。


当然、萌美と長い間一緒にいる

”守り神”もそれを理解していてー、

萌美に語り掛けることはあっても、萌美からの

返事は、周囲に人がいなくなるまでしっかりと待っているー。


「準備は順調だよ~

 でも、いよいよ4月から一人暮らしなんて想像できないなぁ…」


周囲に人がいなくなったことを確認すると、

萌美はそんなことを呟きながら歩き出すー。


”君が選んだ大学は実家から遠いしー、

 将来のためも考えたら、一人暮らしはきっと、

 良い経験になるはずだよー”


”守り神”は、そう呟くー


「珍しく、あなたも”一人暮らし”を推してたもんね」

萌美が苦笑いしながら言うと、

”ははー…ちょっと強引に思われちゃったならごめん”と、

守り神は少し照れくさそうに答えたー


「ーーううんー

 あなたはこれまでずっとわたしのことを第1に考えてくれていたんだしー

 今回も、そうなんでしょ?」


萌美の言葉に、

”もちろん”と、守り神は即答したー


これまでの人生、萌美は本当に”守り神”にたくさん助けられてきたー


勉強も教えてくれたしー

学校で悩んだ時には相談にも乗ってくれたー。

もちろん、親も相談には乗ってくれるけれど、

萌美の全てを常に見ている”守り神”にはより相談しやすかったし、

より状況もしっかりと把握していてー…

的確なアドバイスをくれたー。


数えきれないほどー、

守り神は萌美を守ってくれているのだー。


「ーー…でも~、いい加減、名前、知りたいなぁ~」

萌美が家の近くまでやってくるとそう呟くー


”はははー…名前…かぁー…”

守り神はそう呟くー。


萌美は小さい頃から、何度も何度も

”あなたの名前を教えて?”と、

自分の中にいる”守り神”に尋ねているのだがー、

守り神は名前を教えてくれないー


ずっと”そのうち教えるからー”みたいに誤魔化されたりしてー

未だに”守り神”の名前を、萌美は知らないのだー。


”ーー”その時”が来たら教えるからー

 その時までのお楽しみということで”


「またそれぇ~?」

萌美が少し不貞腐れたように呟くー


いつも”こう”なのだー。


「その時って何なの~?

 もう長い間教えてもらってないケド~?


 一人暮らしを始めるとき?

 大学入学?

 それとも成人したとき?

 就職したとき??


 ね~ね~そろそろ教えてよ~!」


萌美がそう言うと、

”止まって!”と、突然”守り神”が叫んだー


「ーーー!」

死角となっていた脇道から飛び出してきた車にびくっとしながらも

”守り神”がいち早くそれに気づいてくれたおかげで、

萌美は車に轢かれることなく、無事だったー


「ーーーあ…あぶなかったぁ…」

つい”守り神”との話に夢中になってしまっていた萌美ー。


”ー昔から、君のそういうところは変わらないなぁ…”

守り神が苦笑いすると、

萌美は恥ずかしそうにしながらも

「また一つ、助けられちゃったね」と、穏やかな笑みを

浮かべたー。


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


耐えたー


耐えて、耐えて、耐えて、耐えて、

ひたすら耐えたー。


スーパーで売られているトマトよりも、

自分で一から育てたトマトの方が愛着が沸くー


コンビニで売られているカレーライスよりも、

自分で一から作ったカレーの方が美味しく感じるー


ペットも、大人になった状態から飼うよりも、

生まれた時から飼っているペットの方が

より、強くー深く、愛情が沸くー。


”乗っ取る身体”も同じー


生まれた時からー

じっくりーじっくり、じっくり、じっくりー

育て上げたー

この身体の方がー

乗っ取り甲斐があるし、

乗っ取った時の達成感と、快感は何者にも代えがたいー


だからー

今までずっと”育てて”きたー


親切な”守り神”を装いながらー

この女が熟成するのを待ったー


最初から熟したトマトを買うよりもー

1から育てて熟したトマトは、より美味しいー。


そういう、ことだー


1から育てたこの女はー

何よりもエロくー

”俺好み”の器だー。


”ククククー

 あと少しだー


 最初から”大学生になって一人暮らしを始めたら”

 俺のものにするって決めていたからなー”


萌美の”中”に潜む守り神は

そんな”邪悪なこと”を思いながら

寝静まっている萌美の中で少しだけ笑ったー


彼はー

”守り神”などではないー。


彼はーーーー

”萌美が赤ん坊の頃”に、

萌美を”皮”にして内側に入り込んだ男ー…


”しかしー

 人を皮にして着るってのは不思議だよなー

 俺より明らかにサイズが小さかったこの女でも

 着ることができるんだからー…”


赤ん坊だった萌美を皮にした時のことを思い出すー。


皮になった萌美はー

ゴムのように伸びてー

それを引っ張りながら、男は萌美を着たー


着終えると、赤ん坊だった萌美の身体のサイズに

合わせるような形で、自分の身体が縮みー、

そのまま男は萌美になったー。


いつでもー

”乗っ取る”ことはできるー。


だがー、男はあえてそれをしなかったー


”女子高生までの間”この女がどうやって生きるのかー

素のこの女を知り尽くした上でー

”それを全て奪い取る”


その瞬間に、

何よりも興奮を感じるからー


長い、長い、長い年月をかけてー

熟成させた”その実を”収穫するときにー

何よりも強い喜びを感じるからー


「ーーーー」

小学生の時に、学校の授業の一環として

行ったトマトの栽培ー。


その、一生懸命実った”トマト”を

人間の都合で、ぶちっ、と引っこ抜きー

それを食したその時ー、

彼はとてつもなく興奮したー。


”はぁぁぁぁ…たまらんー…

 萌美というこの女を”収穫”して

 俺のものにするその瞬間ー


 あと少しーあと少しだー

 約18年かけて育て上げたこの”果実”を

 収穫するその日はー…近い”


・・・・・・・・・・・・・・・・・・


「ーー卒業生代表ー

 堀本 萌美ー」


高校2年から3年にかけて、生徒会長を務めていた萌美は

卒業式当日、卒業生代表として文章を読み上げて、

壇上を後にするー。


”守り神”が、色々教えてくれて、勉強も教えてくれて、

萌美は、成績トップクラスの優等生になっていたー。


可愛い容姿に、優れた頭脳ー

萌美は、”守り神”によって非のうちどころのない優等生

になっていたー。


もちろんー

”男”が萌美を皮にした段階では、萌美は赤ん坊だったから、

”どんな姿”に成長するかは分からなかったー


当然、男もそのリスクは承知した上で、

萌美を支配したー。


自分が中にいれば”太らないようにアドバイスしたり”

”おしゃれについてアドバイス”したり、

ある程度は誘導することができる自信はあったし、

”美人とイケメンの両親の子供”を選んだためにー

容姿にもある程度恵まれるだろうという計算もあったー


そして、その計算はその通りになったのだー。


”この身体は最高の身体だー”


「ーーーふ~たのしかったぁ…」

卒業式後のクラスの集まりも終えて

萌美が満足そうに微笑むー。


”高校生活、お疲れ様ー”

守り神がいつものように優しく声を掛けるー。


「ーーうん。ありがとうー」

萌美が、”内側から聞こえる声”は

守り神などではなく、

”18年も身体を熟成させてから完全に支配する”という

悪趣味の中の悪趣味を極めたかのようなこの男の

正体に気付くこともなく、感謝の言葉を口にするー。


”次は、一人暮らしの準備だねー

 物件はもう決まってるみたいだし、

 まぁ、後は荷物をまとめたり、色々家電を選んだり

 するぐらいだと思うけど”


守り神のそんな言葉に、

萌美は「少し寂しくなるかなぁ…」と、

一瞬寂しそうにするも、

「でも、あなたはずっと一緒だもんね!」と

嬉しそうに呟いたー


”ーーーー”

守り神は、そんな萌美の言葉にニヤリと笑みを浮かべたー


がー

当然、”中”に潜むその男の浮かべた笑みなど見えるはずもなくー

萌美は”収穫”の時ーー

彼女にとっては”破滅”となるその時が

着々と迫っていることに、まだ、気づいていなかったー。


②へ続く


・・・・・・・・・・・・・・・・・・


コメント


18年間も同じ子の中に潜んでいるなんて、

かなり悪趣味ですネ~笑


次回はいよいよ、

この男の人が言うー、”収穫”の時を迎えることになります~笑


次回もお楽しみに~☆

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