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とある高校ー


生徒の中に、裏社会で暗躍する犯罪組織幹部の息子がいるという情報を

手に入れた警察の特殊捜査班ー。


特殊捜査班に所属する捜査官の一人が、その男子生徒から

情報を引き出すために、女子高生に変身してその男子に接近することに…。


この記録は、女子高生に変身して、高校に潜入した

捜査官が残した記録…。


(最終週)


☆前回はこちら↓☆

<他者変身>JKに変身した捜査官の日記⑭~父と子~

とある高校ー 生徒の中に、裏社会で暗躍する犯罪組織幹部の息子がいるという情報を 手に入れた警察の特殊捜査班ー。 特殊捜査班に所属する捜査官の一人が、その男子生徒から 情報を引き出すために、女子高生に変身してその男子に接近することに…。 この記録は、女子高生に変身して、高校に潜入した 捜査官が残した記録…...

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☆主要登場人物☆


・山村 彩智(やまむら さち)/坂上 孝治(さかがみ たかはる)

潜入捜査官。現在は女子高生・山村彩智に変身して高校に潜入中。


・小野田 龍吾(おのだ りゅうご)

高校生。犯罪組織ドッペルサイエンス幹部の息子。


・小野田 正昭(おのだ まさあき)

犯罪組織ドッペルサイエンスの幹部とされている男。


・笠倉 千鶴(かさくら ちづる)

孝治の同僚捜査官。女性として自然に振る舞えるよう、孝治を指導した。


・春日部 本部長(かすかべ ほんぶちょう)/捜査班本部長

・郷原(ごうはら)/捜査官の一人。彩智の父親役を担当

・清水(しみず)/捜査官の一人。彩智の母親役を担当


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湾岸地帯の一角ー

水の穏やかな音が聞こえるその場所で、

犯罪組織ドッペルサイエンスの幹部・小野田正昭の息子、

小野田龍吾は震えていたー。


「クククー…息子よー

 よく聞けー。

 お前の好きな女ー…あの山村彩智という女子高生はー

 女子高生ではないー


 本当の正体は、潜入捜査官ー」


小野田正昭が眼鏡をかけなおしながら笑みを浮かべると、

小野田龍吾は、震えながら拾った銃を握りしめるー


「ーお前は、あの女ー

 いいや、”男”というべきかー?


 奴に、いいように利用されてるんだよー」


父の言葉に、龍吾は息をするのも忘れて震えるー。


「ーーー安心しろー

 お前を騙した報いは受けさせてやるー」

小野田正昭が笑うー


「ーさァ、銃をこっちに渡せ」

父の言葉ー


しかし、龍吾は銃を握りしめたままー


「嘘だー…」

龍吾は震えるー


”彩智”との思い出の日々を思い出すー。

高校での彩智との出会いー

同じバンドグループが好きで、意気投合したことー

プライベートでも会う仲になったことー


そんな、彩智との思い出を思い出すー


それらは、全部ー

全部”潜入捜査”のためー…?


「ーーお前を通じて、ドッペルサイエンスの幹部である俺に

 やつは、近付こうとしていたー。

 潜入捜査が終われば、お前の前から”山村彩智”は姿を消すー。


 最初から、”お前に対する愛情”なんて、

 奴には全くないのだからー」


正昭の言葉に、龍吾は困惑するー


父が、どんなことをしているのかは、本当に知らなかったー。

だが、今日、ここに来て、龍吾はしっかりと理解したー。


”親父は、まともじゃない組織に所属しているー”

と、いうことだけはー


「ーーーーー」

「ーーーーー」


穏やかな水の音が聞こえるー。


沈黙する二人ー


「さァ…銃を渡せ、龍吾ー。

 今日のことは、なかったことにしてやるー

 

 さァー」


正昭がそこまで言うと、龍吾は拳銃を握りしめたー。


そのときだったー


「ーーーー!」

小野田正昭が、少し離れた場所を歩いている

彩智の姿をした孝治の姿を見つけて笑みを浮かべるー。


孝治も、当然、警戒しながら進んでいたが、

不運にも、小野田正昭が先に孝治を見つけてしまったー


「ー息子よー。お前はここで待ってろー

 お前を騙したあいつを、父親の俺が、葬ってやるー」


正昭はそう言うと、孝治が進んでいるコンテナが積まれた

エリアの方に向かうー


「ーーーーーーーーーーー」

一人残された龍吾は、銃を握りしめたまま、

静かに唇をかみしめたー。


・・・・・・・・・・・・・・・・・


コンテナが積まれたエリアを警戒しながら進む

彩智の姿をした孝治ー。


犯罪組織ドッペルサイエンスを追い詰めるためー

ここで、小野田正昭を逃がすわけにはいかないー。


可能であれば、正昭の身柄を確保してー

ドッペルサイエンスの首領への道筋を切り開きたいー


「ーーーー(どこにいるー?)」

周囲を警戒しながら、乱れた髪を時々ジャマそうに

抑えながら孝治は進むー


「(こんなことなら、先に元の姿になってからここに来るべきだったー)」

そう思いながらも、彩智の手で、孝治は銃を握りしめるー


だがー

その孝治を、死角から小野田正昭が狙っていたー


”クククー今度こそおやすみー坂上捜査官ー”


ニヤリと笑みを浮かべる小野田正昭ー


その時だったー


「ーーやめろーーーーー!!!!!!」


「ーー!?」

「ーーー!?!?」


コンテナが積まれたエリアを進む彩智の姿をした孝治と、

その孝治を死角から狙っていた小野田正昭が表情を歪めるー


叫んだのはー

小野田龍吾だったー


「ーーー小野田くーー」

孝治は、彩智のフリをして龍吾の名前を呼ぼうとすると、

彩智のすぐそばに姿を現した龍吾は、

彩智を突き飛ばしたー


その直後ー


銃声が、響き渡ったー


「ーくっ… ぅ」


彩智の姿をした孝治を守るようにして、

盾になった龍吾は、苦しそうな表情を浮かべながらー

振り返ったー


「ー親父ぃいいいいいいいいいいいい!」


大声で叫びながら、持っていた銃を

父親の正昭に向かって放ちながら、

正昭の方に突進していくー


「ーーり…龍吾!お、お前は、その女に騙されてー!」

ひび割れた眼鏡が吹き飛ぶ中ー

正昭は表情を歪めるー


「ー親父だってーーー俺を騙してただろうが!!!!!

 こんなーー

 こんなーーー犯罪みたいなことしてたなんてー

 一回も聞いてねええええええええええ!!!」


龍吾はそう言いながら、怒りの形相で、小野田正昭を打ちながら

コンテナに背中をつけて座り込んだ正昭に近付くー。


「ーーー親父ー……

 ーーーーこれが、俺の親孝行だー」


龍吾が言うー。


座り込んだ正昭が「お…やこうこうだと…?」と、

虫の息で呟くー


「あぁ そうだよー」

龍吾は、目に涙を浮かべながら言ったー


「ー暴走した親を止めるのだってー

 立派な親孝行だろ?」


龍吾はそう言うと、正昭にトドメの銃弾を放ったー


「ーーー小野田くん!」

彩智のフリをして、孝治が小野田龍吾に近付くー


小野田龍吾は銃を落として、

その場に倒れ込むー。


父から受けた銃弾は、致命傷だったー。

もう、既に助からないのは、

龍吾自身にも、孝治にもよく理解できたー


「ーーーー」

彩智の姿をした孝治は、唇をかみながら

言葉を発したー


「ーー小野田くんー…

 いえ……

 小野田龍吾ー


 実はー」


彩智の姿をした孝治がそう言いかけると、

龍吾は少しだけ微笑んだー


「ーーいいよー…

 俺にとってはー

 山村さんは、山村さんー

 そのままー、何も言わないでくれー」


龍吾は、それだけ言うと、

孝治は”最後まで”彩智のフリを続けることを決めて

「小野田くんー」と、呟くー


そんな彩智の様子を見て、龍吾は微笑むー


「ーありがとなー」

龍吾は、程なくして、そのまま息を引き取ったー


龍吾が息を引き取る直前ー

彩智の目からは涙がこぼれたー


それはー

”彩智としての演技”を潜入捜査官として最後まで続けたのかー


それともー

心からの涙だったのかー


それはー

彼にしか、分からないー


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


7月2日(土曜日)


あれから1か月ほどが経過したー。

任務を終えた俺は、元の姿に戻り、

こうして、捜査官・坂上孝治として

普通に過ごしているー。


今日はちょうど、ドッペルサイエンスの件の

ちょっとした事後調査があって、

春日部本部長と話をしてきたところだー。


1月前に負傷した春日部本部長も、今では

本部での指示などができるぐらいには、回復しているー。


あの事件で、犯罪組織ドッペルサイエンスの幹部・

小野田正昭を追い詰めることには成功したー。

だが、結局、小野田正昭も、他の構成員もほとんどが死亡し、

残された構成員から有力な情報を得ることができなかったー。


だが、ドッペルサイエンスは小野田正昭や、他の幹部を

失ったことでその勢力を急激に弱めたのか

最近ではその活動も沈静化しつつあるー。


女子高生として過ごした日々は、

数々の潜入捜査をこなしてきた俺にとっても、

新鮮で、忘れられない経験となったー。


もう1回やりたいか?、と言われればそんなことはないし、

女子高生になるなんて経験、もう、したくないー。


共に捜査を行ってきた笠倉さんも、同期の西尾も

あの事件で命を落としたー


そしてー

女癖が悪い、とか色々言われてはいたけれど、

純粋な男子高校生だった小野田龍吾も死んだー。



ーーあの事件を振り返るのは、このぐらいにしておこう。

勢力を弱めたとはいえ、ドッペルサイエンスもまだ健在だし、

俺は明日からまた新たな任務にあたるー。


しばらくはまた忙しい日々の始まりだー。


それはそうとー

忙しくなる前にー

”あいつの墓”にでも顔を出しておくかー


まぁー

あいつは、俺のことなんて知らないと思うがー。



潜入捜査では、多くの人と出会い、

そして、多くの人を欺くー。

欺く相手が全て悪人とは限らないー。


悪人の周囲にも、悪人じゃない人間はいるー。

そんな、人たちも騙すことになるー。


時々、情が湧いてしまう捜査官もいるー。


けどー

それでもー

自分を見失ってはいけないー。


俺も、そうだー。


”自分を見失ったとき、潜入捜査官は死ぬ”


師匠から、そう言われたこともあるー。


俺はこれからも、色々な人を騙すことになるだろうー。

小野田正昭のような悪人も、

小野田龍吾のような善人も、どっちも含めて、だー。


それでも俺は、

この道を選んだ人間として、

これからも、自分を見失わずに、戦っていきたいー


世の中に蔓延する、犯罪とー。



さて、そろそろ時間だー。

また、明日から新たな潜入捜査の始まりだー


・・・・・・・・・


・・・・・・・・・・・・・・・・


「ーーワンダフルー!」


黒い手袋をはめた手で拍手をしながら、

青い光が交差する空間で、

”久遠”は、笑みを浮かべたー。


”久遠様ー

 ”ドッペルサイエンス”はどういたしますかー?”


そんな声が、その空間に響き渡るー。


「あぁ、ドッペルサイエンスならもういらないー

 私が支配する組織は、他にもいくらでもあるからなー


 残党は、処分しておけ」


”久遠”はそれだけ言うと、静かに笑みを浮かべながらー


「ーーおめでとうー

 潜入捜査官諸君ー

 私の組織の一つは、君たちの活躍のおかげで、壊滅したー」


そう呟くと、久遠は、青白い空間の中でワインを開けると、

そのまま静かに、ワインを堪能し始めたー


闇はいつまでも続くー


”久遠”ある限りー。



おわり


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


コメント


変身した捜査官の日記、ついに完結デス~!☆


ここまで到着するのに、

連載開始当初の予定よりも時間がかかりましたが、

こうして書ききることができてよかったデス!


来週からは土曜日枠初の”入れ替わり”が

登場するので、そちらもぜひ楽しんでくださいネ~!


謎の”久遠”は、また別作品でお目に掛かれる日が

来るかもしれないですネ~


お読み下さりありがとうございました~!


※毎週土曜日の更新(コンパクト枠)とは?

(いつもと同じ説明デス↓ 既に知ってる方は読まなくて大丈夫デス!!)

毎週土曜日(以前は火曜日でした!)は、

私が仕事の都合で書く時間を確保できないので、

本来更新は難しいのですが

少しでも皆様にご恩返しということで、他の6日間で毎日

少しずつ執筆して、土曜日にも、作品をお届けしています!

そのため、いつもより少し文章量が少ないため

毎週土曜日の作品は、100円プランでも読めるようにしてあります!

(※土曜日枠のお話は必ず完結まで100円プランで読めるようにします!

  途中から上がったりはしませんので、安心してください)

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